ブルグミュラーの25の練習曲、日本ではかなり有名な練習曲集ですね。おそらくピアノを習ったことのあるほとんど方々が一度は見聞きした、あるいは実際に弾いたことのある曲集かと思います。だけどこのブルグミュラーの『乗馬(貴婦人の乗馬)』、曲集の中では最後というだけあってけっこう難しく感じませんか?

「これから弾けるようになりたいけれど難しそう」、「前に途中で挫折してしまった」
そんなお悩みを抱えていらっしゃる方々は必見です。


それではさっそくブルグミュラーの25の練習曲『乗馬』の弾き方をお話していきますね!


まずはここで軽く自己紹介。
音楽大好き、ピアノ弾きのもぐらと申します。たくさんの方々にピアノの楽しさを知ってもらうため、畑の地中でジャガイモをガリガリかじるかたわら、ピアノの弾き方を教えております。

小分けにして練習すれば難易度は高くない!


さて、難易度についてのお話に入る前にひとつ、この記事にて解説させて頂く内容は主にピアノ初級者(音符や指示記号等の楽譜の読み方など、基礎的なことをある程度習得できている)から中級者の方々の目線に立った内容となっております。


では本題に入りますね。
『乗馬』についての具体的な難易度としては、だいたいツェルニー30番の前半から中盤くらいまでをクリアした方であれば充分弾けるかと思います。この『乗馬』には曲の随所にいろんな技術が盛り込まれていますが、一つ一つ小分けにして練習していけばそれほど難しいということも無いのです。

さらにこの曲が弾けるようになるということは、同時にいろんな技法もマスターでき、他曲の練習効率のアップも期待できるので、まさに一石二鳥なのです。

「でもやっぱり難しそう」と思っていらっしゃる方々へ。私は難しそうな曲に出会ったときこそ「絶対弾ける、弾けるに決まってる! 弾けないわけがない!」と弾けるようになるその日までひたすらしつこいほどに自己暗示をかけます。そうするとモチベーションも自然と維持しやすくなります。

いろんな場面が出てくる楽しい構成!


次に『乗馬』の全体的な曲の構成を見ていきましょう。

尚、この記事では曲の場面展開を意識して一曲をいくつかのセクションに分けて、セクションごとに説明していきます。
まずはこちらの動画を視聴してみてくださいね。



この動画に沿って以下のようなセクションに分けました。動画を参考にして、曲の全体像をおおまかにつかんでおくと練習しやすいです。

セクションA:(最初~0:33)
セクションB:(0:33~1:03)
セクションC:(1:03~1:32)
セクションA′:(1:32~1:47)
セクションD:(1:48~2:01)
セクションE:(2:01~終わり)

※各セクションのカッコ内の時間は動画における時間です。


それではさっそく各セクションの弾き方についてお話ししていきますね!

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションAの弾き方 ~とにかく軽快に~

何だかさっそく楽しそうな雰囲気です。セクションAではスタッカート(意味:音を短く切る)が重要なポイントになってきます。

※Allegroの意味は「速く」、marzialeの意味は「勇壮に、行進曲風に」

まず、最初の速度表記には「Allegro:速く」とか「4分音符=152」とあります。
「4分音符=152」というのは、「1分間に四分音符が152回鳴る速さ」という意味です。1分間が60秒であることを基準に考えると、けっこう速いテンポを求められていることがわかります。でもこれは一応の目安として表記されているので、あまりとらわれることなくまずはゆっくりと練習をしていきましょう。


そして問題のスタッカートですが、音を短く切って弾こうとすると乱雑な弾き方になってしまうことがあります。そうするとどうしても耳障りな響きになってしまいます。
かつて私もこの曲のスタッカートには随分と悩まされました。単に音を短く切ればいいと私はナメておりましたが、意外にもスタッカートというのは奥が深い技法なのです。

そして、試行錯誤した末に私はスタッカートのコツを考え出しました。

コツと言っても特別難しいことではありません。まず、手首をほんの少し上に持ち上げて手全体をやや丸めぎみにします。その状態のまま、指の腹ではなく指の先端で鍵盤を押して音を切ります。
そうすることで耳に心地よい優しい響きのスタッカートになります。ぜひ試してみてくださいね。

☆セクションBの弾き方 ~三連符と和音の掛け合いが面白い~

セクションBはおそらく、この曲の中では弾く人の個性が最も強く表れる部分であると私は思います。自分の味をグイグイ出していきましょう。(0:33~)


セクションBの醍醐味は何と言ってもこの三連符と和音の掛け合いです。
三連符は低い音から高い音へと盛り上げましょう。弾き始めがフォルテ(意味:音を大きく)なので、けっこう強めに弾くと次の和音とのギャップが大きくなって表情豊かになります。

そして三連符ではフォルテだったわけですが、和音の部分での強弱表記はピアノ(意味:音を小さく)となっており、つまり和音のところは急激に音量を下げる必要があることがわかりますね。ここのポイントは、和音の直前にある休符でいかに一瞬にして手や腕の力を抜き切ることができるかということです。休符も重要な要素なので、しっかりと念頭に置いて練習しましょう。

☆セクションCの弾き方 ~突然の転調でも怖くない~

「むむっ、なんか調が変わったぞ!」と、急に不安になるのは私だけでしょうか。
セクションCは今までハ長調だったのが今度はヘ長調になります。でも「難しそう」と怖がらなくても大丈夫。片手ずつ楽譜を見ながらゆっくり過ぎるほどでいいので丁寧に練習すれば、どうということはありません。(1:03~)


そして、セクションCは今までとは打って変わって軽快さよりもなめらかさが求められます。長めのスラー(意味:なめらかに弾く)がそれを物語っています。そして表記の「delicato」とは「繊細に」という意味なので、ここでは常に優しく鍵盤に触れることがポイントです。


そしてこの部分、特に右手が難しいと感じる方、けっこう多いのではないでしょうか?私もここはかなり手こずりました。指の運びが複雑ですよね。しかも1オクターブ高くなるという、いかにも大変そうな部分です。(1:07~)

練習していた当時の私は「え? なんで音高くなるの? べつにそのままでもいいじゃん!」などと、大変不躾ながらブルグミュラー先生に対してそんな文句をこぼしていたものです。

まあそんな私の昔はさておき、ここでのポイントは、やはりゆっくり丁寧な片手練習あるのみ、としか言えないのですが、実はここが上手く弾けるようになるということは大幅なピアノの技術のレベルアップを果たせるということでもあります。なぜならこのような弾き方というのは、難易度の高い他の曲にも多く出てくるからです。

なので、今後のためにもしっかりマスターしたいところなのです。
頑張りましょう!

また、セクションCでは必要に応じてペダルも適切に入れることでより一層響きがなめらかになります。

☆セクションA′の弾き方 ~セクションAの繰り返し~

次はセクションA′です。最初のセクションAを繰り返すだけですね。セクションAが確実に弾けていれば、問題なくクリアです。(1:32~)

セクションAとA′はこの曲の大きなテーマというか、顔というべきでしょうか。楽譜をよく見渡すと、先ほどのセクションBにも4小節だけですが出てきますよね。

このような何度も出てくるフレーズというのは弾き方は確かに同じではありますが、出てくる場所によっては同じフレーズでもその存在意義が大きく変わってくるということもあるので、楽譜を読む際はそのあたりに着目して読んでみると、また何か新たな発見があるかもしれません。

☆セクションDの弾き方 ~終盤へ向けてテンションを上げよう~

あともうちょっとです。セクションDでは何かを期待するかのような独特な盛り上がりが感じられますね。(1:48~)



まず、上の譜面と下の譜面(1:55~)を見比べてみてください。基本的に同じようなフレーズですが、弾き方が違うのがわかりますね。

でも特に着目すべき部分は左手。両手の弾き方は違えど、譜面上下共に左手については同じ音ですね。もうすでにお気付きの方もいらっしゃると思いますが、この部分の主旋律は右手ではなく実は左手なのです。

なので、上の譜面のスタッカートでも下の譜面の三連符でも、際立たせるのは左手なので、右手はなるべく控えめな音量で弾くとすっきりとした響きになります。

そしてフレーズごとにクレッシェンド(意味:音をだんだん大きく)して終盤へとバトンをつなぎましょう。

☆セクションEの弾き方 ~音階が弾ければ大丈夫~

ようやく最後のセクションです。ですが何やら音符がいっぱいで難しそうに見えますよね。
でも大丈夫。セクションEでは基礎的な音階が弾けてさえいれば、さほど難しいということはありません。(2:01~)

※「assai」は「非常に、より一層」という意味で、ここでは「cresc.」(=『クレッシェンド』の略)と併用されているので「より一層盛り上げる」という意味になります。

気をつけるべきところは、所々両手で弾く部分です。
私はこの部分について「1オクターブ違うだけで、同じ音をただ両手で鳴らすだけの簡単な箇所」とまたもやナメていたら、やはり打ちのめされました。(2:05~)

これは悪い例としてのお話ですが、私の場合この部分をさっさと速度を上げて練習してしまい、そうしたら右手と左手の音がバラバラになってしまって悩んだことがありました。

この部分の練習方法としては、まず音階が片手ずつ弾けるようになること、それをクリアしたら今度は両手で遅めのテンポから練習することをおすすめします。

何度も申しますが、ゆっくりと、です。たとえ片手ずつが速く弾けたとしても両手はメトロノームを使用してゆっくり弾き始め、徐々にテンポを上げていきましょう。それこそが一番の近道です。

おさらいしよう!弾き方のコツのまとめ


では最後にブルグミュラー25の練習曲『乗馬(貴婦人の乗馬)』の全体的な弾き方のポイントを以下にまとめました。


1、スタッカートは手首をやや上にして手を丸めぎみにして指の先端で弾く(特にセクションAセクションBセクションA′セクションD
2、休符も大事な要素なのでしっかり休むこと(特にセクションD
3、譜面をよく読み、とにかく片手ずつメトロノームを使用してテンポをキープしながらゆっくり丁寧に練習する(特にセクションC
4、場面ごとに主旋律は右手なのか、それとも左手なのかをよく把握しながら弾く(特にセクションD
5、音階は音の粒を揃え、特に両手で音階を弾くときは音がバラバラにならないように気をつける(特にセクションE


最初はけっこう難しそうだと思っておられた方も多かったと思いますが、コツはたったの5つだけ。案外シンプルなのです。

この曲は弾き込めば弾き込むほど、いろいろな発見があるところが醍醐味だと私は思います。そして発見すればするほど、この曲をもっともっと好きになるはずです。
それでは練習、頑張ってくださいね。畑の地中から全力で応援してます!

by ピアノ弾きのもぐら


「乗馬(貴婦人の乗馬)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1852年にショット・ミュージック社から出版され、その後シャーマー社により再販された楽譜です。「25の練習曲」全曲が収録されており、第25曲「乗馬(貴婦人の乗馬)」は36ページ目からになります。


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