みなさんの好きな生き物は何ですか?
犬、猫、それともウサギ。いやいや鳥、または魚でしょうか。
きっと皆様それぞれに好きな生き物がいることと思います。
(ちなみに私はオオサンショウウオが大好きです。あんな風に気ままに生きたい。)

と、まぁこのようなことを書きましたが、今回弾き方を考える曲に出てくる動物は犬でも猫でも、ましてやオオサンショウウオでもありません。
では何が出てくるのかというと、ズバリ「馬」です。
「馬」と聞いてピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そう。今回はブルグミュラー25の練習曲の最後を飾る曲、「貴婦人の乗馬」の弾き方を考えていきたいと思います。

ピアノ歴20年、無駄に歳だけとりたくない!・・・結構言われるのですよね。
「何年も弾いているのに、そんなこともしらないの?」って・・・。
どうか皆様は、私と同じ轍を踏まれないように。
それでは張り切って参りましょう。



貴婦人の乗馬の難易度は?


さて、冒頭でも書きましたが、この曲はブルグミュラー25の練習曲の25番目の曲です。
(練習内容にもよりますが)25の練習曲自体がバイエルを終えてから使われることの多い楽譜なので、バイエル終了~ソナチネ前半程度の難易度。おおよそ、そのくらいと見て良いのではないでしょうか。
発表会でも大人気のこの曲、軽快にリズミカルに弾ききりたいものですね。

ブルグミュラーってどんな人?


ヨハン・フリートリッヒ・フランツ・ブルグミュラー(1806-1874)は
ドイツ生まれの作曲家・ピアニストです。

彼の家は音楽一家で、音楽監督や指揮者など様々な音楽活動に励んだ父を持ち、また彼の弟は大変音楽的才能に恵まれており、ピアノ曲のみにとどまらず、室内楽、交響曲、ピアノ・コンチェルトなど様々な作品を多く書き、高く評価されていましたが、26歳の若さで亡き人となりました。

ブルグミュラー自身は、26歳のころにパリへ移住しピアノ教師をしながら作曲家としても活動し、バレエ曲や舞台用のオーケストラ作品、歌曲などを手がけました。
そうして書き続けたピアノ用の小品の数は600曲以上。
当時も彼の作った曲の中では、いわゆる「本格的な作品」ではなく、練習曲などの方が人気が高かったようです。

家庭でも親しみやすい彼の音楽はパリの市民から愛され、やがて1874年、68歳にてその生涯を終えました。
数多くいる現代に名を残す作曲家の中でも、有能なピアノ教師として教育用作品を多く書いたことで現代に名を残している珍しい方です。

へぇ、ブルグミュラーはピアノの教師だったのですね。
ですが、当時作曲家としては成功しなかった・・・ということでしょうか。
少し調べてみますと、当時は彼の弟の方が有名だったようです。
彼の死をショパンやシューマンが惜しみ、メンデルスゾーンは葬儀のために葬送行進曲を書いたほどだったとか。

う~ん、現代では知名度が逆になっているような・・・?歴史の流れって、おもしろいものですねぇ。

時に勇ましく、貴婦人は行く


暴れ馬、じゃじゃ馬、塞翁が馬――。
馬といっても色んな馬がいますが、この曲は「貴婦人の乗馬」です。
・・・とはいえ、最近では「貴婦人の」が省かれて単に「乗馬」と表記されているものも多いようですね。

原題「La chevaleresque」の意味を調べてみると「騎士的な(chevaleresque)」「女性(La)」
という意味だそうです。
つまり、優雅さのなかにも勇ましさや果敢さが見え隠れする貴婦人、ということでしょうか。

個人的には「貴婦人の」という邦題があった方が曲のイメージが付きやすいのですが、これも時代の流れでしょうか?

されど貴婦人は優雅たれ


冒頭の8小節は、軽やかに。ですが「marziale(マルチアーレ)」には、勇ましいという意味があります。
やはり「貴婦人」でありながらも「騎士的な」ということでしょうか。
ですが出撃したり、戦いに行く曲ではありませんので、やはり優雅さは備えておきたいところです。

短めのスタッカートで軽さを出して、そして所々出てくるスラーは守って優雅さを失わないようにしましょう。
スタッカートとスラーがきっちりと区別して弾けると、メリハリがきいて、より魅力的な曲になりますよ。

(動画00:28~)

9小節目、11小節目は、1小節の間にfからクレッシェンドで広がり、急にpとなります。
fで走りこんで~、pでは優雅なお顔。
「だるまさんが転んだ」をイメージして弾いてみてはどうでしょうか。
鬼が後ろを向いている間に本気(f)をだして、鬼がこちらを向けば、さっきと変わらない涼やかな態度(p)で馬に乗っている。こんな練習も有りじゃないですか?

優雅と優美、兼ね揃え

(動画00:56~)

17小節目からは、これまでのイメージとは一転して、3連符が続きます。
強弱記号はpで「delicato(デリカ―ト)」。
繊細、優美といった意味があります。
優雅に弾けといったり、次は優美に弾けといったり細かいですが、ここはやはり優美に弾きたいところ。

3連符は指がからまったり、また動かそうと必死になって音がすべってしまいがちです。
運指を守って弾くのが一番無理なくひけるでしょうか。
17小節目からは、全体的な音の大きさがpですので
途中にでてくるクレシェンドも9小節目のように大きく弾くのではなく、軽やかなpの表現の範囲内で収めるようにしてください。

ご覧になって?この馬の乗りこなしを!

(動画01:35~)

※楽譜は35.36小節目。
33、34小節目では右手が裏拍、左手がメインのメロディを奏でます。
続く35、36小節目ではまた右手がメインに。
左手の「ソララ♯シドソミド(ソ)」→右手で「(ソ)レーミレド♯レファミドミシレドシラ」

今どちらがメインなのかを考えて弾くようにしましょう。
右手の裏拍はリズムが崩れやすいですので、慣れないうちはワザと表拍にも音を入れて練習すると、つかみやすいと思います。
(慣れてきたら表拍の音は抜いてくださいね)

(動画 01:48~)

さて、右の裏拍が終わったと思ったら、次は最後の難関です。
といっても音階なので、皆さんの中には曲の練習の前に基礎練習などで弾きなれている方もいるのではないでしょうか。
レガートではございますが、音をそろえて、またテンポが揺れないようにしましょう。

42小節目からは、「cresc.assai(クレッシェンド・アッサイ)」の記号もあります。
「assai」とは非常に、極めてといった意味があるので、ここはクレッシェンドを極めて!=とても盛り上げて!
というところでしょう。
最後のffに向けて、盛大に盛り上げて行きましょう。

まとめ

1.貴婦人の乗馬は、バイエル終了~ソナチネ前半くらいの難易度。
2.ブルグミュラーは、教育用の多くの曲を残した作曲家、ピアニスト。
3.貴婦人は優雅なだけではない。時に勇ましさをも備え持つ。
4.スタッカートなど強弱表記もハッキリと。
5.中間部は、軽やかさや美しさを最優先して。
6.メインの旋律をとらえながら、極めて盛大に弾ききりましょう!

皆さんの想像する貴婦人はどんなご婦人でしょうか。
また、乗りこなす馬はどんな馬でしょうか。
そうした事も想像してみると、色んな弾き方が楽しめるかもしれませんね。
あなたの理想の「貴婦人の乗馬」を、是非弾きこなしてください♪


「貴婦人の乗馬」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1852年にショット・ミュージック社から出版された楽譜です。「25の練習曲」全曲が収録されており、第25曲「貴婦人の乗馬」は34ページ目からになります。

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