ショパンの『ワルツ第3番(華麗なる円舞曲)』、ワルツ集の前半に収められている珠玉の名曲です。この曲はショパンのワルツ集の中では比較的スローテンポで、静かで厳かな雰囲気の作品です。

そしてこの曲は弾けば弾くほど、独特な味わいを感じられるところが醍醐味だと思います。まさに噛めば噛むほど味が出るスルメイカのような曲だと個人的には感じております。

「ゆったりした雰囲気の曲を弾けるようになりたい」、「ショパンの名曲の数々に触れたい」という方は必見です。


はい、こんにちは!
ピアノ弾きのもぐらです。

しばらく地中にもぐっておりました。
ふと気がついたら、もう夏の足音が迫っているかのようです。

というか夏のように暑いので、もう夏なのでしょうか……?

季節というのは、本当に目まぐるしいものです。
最近は特に気候の変化が激しいですので、皆様もどうかお身体ご自愛くださいね。

それほど難しくはない!技術的な難易度は低め


では、本題に入りますね。

まず、この曲の難易度としては、だいたいツェルニー30番くらいを練習されている方であれば、充分弾ける程度です。

とにかくこの曲は構成上、技術的に学ぶべきことというのはそれほど多くはありませんので、人によっては「ちょっと物足りない」と感じてしまわれる方もおられるかもしれません。

ですが、この曲を弾く上での最大の醍醐味は、冒頭でも申しましたように噛めば噛むほど味が出るスルメイカのように、弾けば弾くほど味が出る奥深さなのです。

ですので、1回マスターできたからといって弾くのをやめてしまうのは、もったいないというか、とにかく1回弾けただけではこの曲の魅力は味わいきれないと私は思っております。

これはこの曲に限ったお話ではありませんが、技術的にそれほど難しくない曲ほど譜面の中に見えない魅力がたくさん隠されているものです。

つまり「難易度的に簡単=単純」というわけでは決してないのです。

メリハリが大事!繰り返しの多い構成でも気を抜かない


まずは、以下の動画を視聴してみてください。



この曲は譜面をご覧になるとおわかりになると思いますが、いくつかの場面の繰り返しによって構成されています。
ですので、譜面の量のわりには覚えるべきことはそれほど多くはありません。

尚、ここでは一曲を以下のようにいくつかのセクションに細切れにして、セクションごとにご説明していきます。

セクションA1(最初~0:32)
セクションB1(0:33~1:06)
セクションC1(1:06~1:29)
セクションD1(1:29~2:22)
セクションB2(2:22~2;54)
セクションC2(2:55~3:18)
セクションD2(3:19~4:10)
セクションA2(4:11~4:39)
セクションE(4:40~5:11)
セクションA3(5:12~終わり)

※カッコ内の時間は動画に沿ったものです。動画をよく視聴し、曲全体の構成を予めしっかりと把握しておくことで、実際の練習もスムーズにできるかと思います。

それでは、さっそく練習に入っていきましょう!

もぐら式!弾き方のコツ

セクションA1 ~厳かな雰囲気を大切に~

セクションA1からゆったりとした厳かな旋律が始まります。
この冒頭部分はほんの数小節だけですので、わりととっつきやすいかと思います。

※ 『Lento.』の意味は『緩やかに』

ここで重要になってくるのは左手です。この左手はベースとなる下段の音(『ラ』の音)をしっかりと持続させつつ上段の主旋律を響かせる必要があります。

ちなみに左手に出てくる主旋律の指の運びに関しては、なるべく譜面に忠実に弾いたほうが弾きやすいかと思います。
ですが、もちろん自分で弾きやすいと思うやり方があれば、そのやり方を優先しても大丈夫です。

そして譜面の5小節目には、左手にトリルが出てきます。
このトリルに関しては、あまり「弾こう、弾こう」と意識しないほうが良いのですが、そうはいっても身構えてしまう部分です。私も未だにここで身構えます。

ちなみに一般的に「トリル」というと、イメージ的には「なるべく繊細に細かく軽く」という感じですよね。

ですが、こんな言い方をするのは妙ですが、そもそもこの曲の雰囲気はお世辞にも決して軽快とは言えません。

そのため、この部分のトリルは仮にモタモタと重く弾いたとしても、まあ粒の揃ったトリルっぽさは確かに感じられませんが、曲の雰囲気的にはそのほうがむしろ良い味を出しているという捉え方もできるのです。

ですので、この部分はそれほどプレッシャーに思わなくても大丈夫です。それよりも、曲の雰囲気を優先させましょう。

セクションB1 ~旋律の流れをスムーズに~

ここでようやく曲の本題に入った感じがしますね。(0:33~)
セクションB1では、いかに右手の主旋律を情緒豊かに表現できるかが重要になってきます。


この部分の右手の旋律ですが、スラーがやや細かく指示されています。
このスラーの部分で大事なのは、スラーがついている最後の音を、その都度雑にならないように丁寧に弾くことです。

特に四分休符の直前の八分音符は、休符を意識するあまりつい短く切ってしまいがちですが、そうするとその音だけがやけに強調されてしまい、旋律の流れがぎこちなくなってしまいます。

ですので、特に四分休符の直前の八分休符は他の音と同じく丁寧に、そして譜面上には指示はありませんが、なるべくテヌート(意味:音を保つ)気味に弾くと、全体的に自然な響きになります。


この部分は急にたくさん右手に連符が登場するので、一見何やら新しい場面のように感じられるかもしれませんが、ここは先ほどの旋律(上記でお話しした部分)の変奏です。(0:45~)

ここでの「変奏」というのは「元となる旋律があり、それをちょっとアレンジしたもの」という意味合いとなります。

ちなみに、なぜこの部分が変奏であるかは、譜面の左手部分をご覧になればおわかりになるかと思います。というのも先ほどの譜面の左手とこの部分の左手は、ほぼ同じ形だからです。

また、この部分の右手に関しても、譜面の指番号にはなるべく忠実に弾いたほうが練習しやすいかと思います。ここはしっかりと片手練習を繰り返して、指がもつれないように気をつけましょう。

セクションC1 ~音の躍動感に注目~

セクションC1もほんの数小節だけです。(1:06~)
ここでは曲の雰囲気に盛り上がりを感じますね。躍動感を意識しながら弾いていきましょう。


ここで出てくるトリルは「装飾音的に弾く」と考えても大丈夫です。
また、上の楽譜での1小節目と3小節目は、とにかく音がばらけてしまわないように気をつけましょう。

そしてこの箇所を両手で合わせる際は、遅めのテンポで一つ一つ音の響きを確認しながら練習しましょう。

セクションD1 ~調の変化を楽しもう~

セクションD1では、今までの雰囲気とは打って変わって、朗らかな旋律に変化します。(1:29~)
ここでは臨時記号の変化が激しいですので、譜読みの段階でその変化を予め把握しておきましょう。

※ 『Sostenuto.』の意味は『音の長さを充分に保って』

ここではイ短調からイ長調に変化します。調号にもそれが表れていますね。

この箇所の強弱の指示は『f(フォルテ)』(意味:音を大きく)になっておりますが、だからといってそれを意識しすぎて、ガツガツと弾いてしまうと繊細さが失われてしまいますので、あくまで他の箇所との全体的なバランスを考えた上で表現していきましょう。


ここからはまたイ短調に戻ります。(1:54~)
そして、先ほどのイ長調の旋律と形はほぼ同じですが、ここでは一転して物悲しい雰囲気に変化した旋律が登場します。

ここを見ると私は、調号とはこれほどまでに雰囲気を大きく左右するのか、と驚かされます。調合の変化一つで同じ旋律がこんなに変化するなんて、何だか不思議に思えますよね。

調というのは、たとえばハ長調やイ短調など、全部合わせると24も存在します。そして途中で調が変化する曲というのも、この曲に限らず他にもたくさんありますので、いろいろと譜面を眺めて研究してみるのも楽しいですね。

セクションB2、セクションC2、セクションD2、セクションA2 ~表現に工夫を~

ここまで来れば、この曲はだいたいマスターできたようなものです。
しばらくは、セクションB2(2:22~)、セクションC2(2:55~)、セクションD2(3:19~)、セクションA2(4:11~)という順番で以前のセクションの繰り返しが続いていきます。

ちなみに私はこの部分を弾いていると、うっかりセクションA2が終わった後にまたセクションB2に入ってしまい、謎の無限ループにはまって永遠にこの繰り返しが終わらず、次のセクションになかなか移ることができない、という事態にどういうわけか陥ります。

でも、おそらくそんなことになるのは私だけかと思いますので、このあたりはあまり気にしなくても大丈夫だと思います。

とにかくこの部分は、ぼんやり弾いていると何だか面白みのない演奏になってしまいますので、抑揚を意識して強めにつけてみるなど、自分なりに各セクションに違いや個性を出せるように、工夫をしていきましょう。

そのような意味で、実はこの部分こそがこの曲の一番の難点であると言えます。

セクションE ~臨時記号をしっかりと把握しよう~

セクションEでは、終盤に向かうために雰囲気に変化が生じます。(4:40~)
左手が主に主旋律となります。


この箇所の左手には長めのスラーがついていますので、スラーが途中で切れてしまわないように気をつけましょう。
ここは指の運び上、意外と弾きにくい箇所でもあるので、まずはゆっくりと片手練習を繰り返し重ねていきましょう。


ここからは全体的にホ長調の響きになります。(4:53~)
いきなり臨時記号がドッと増えますので、一つ一つの音を正確に確認していきましょう。

また、セクションEは確かに左手が主旋律ですが、この箇所については一瞬だけ右手に主旋律の響きを感じられる箇所があるように思います。(特に上の譜面の3小節目等)

そのように考えますと、この箇所については左手と右手の掛け合いのような動きになっているとも捉えることができます。

そして、セクションEではペダルの踏み方にも注意が必要です。
とにかくいろいろな音がたくさん出てきますので、基本的にはあまり深く踏みすぎないことが大事です。

また、どうしても音の濁りが気になって仕方がないという場合は、まったくペダルを入れないという選択肢も有りだと私は思います。その場合は特にスラーを意識して、旋律が途中で切れないように細心の注意を払いましょう。

セクションA3 ~全体像を踏まえて曲を締めくくろう~

終盤であるセクションA3は、セクションA1セクションA2(4:11~)の繰り返しとなります。(5:12~)

ここで重要なことは、この場面に入る前にしっかりと気持ちを切り替えることです。特に、前にあるセクションEのテンションをそのまま引きずってしまうと、何だか曲がダラダラとした印象になってしまいます。

また、この曲に限らずショパンのワルツというのは、構成上けっこう同じ場面の再来が多いのです。

特に、最初に出てきた場面が終盤にも出てきて、そのまま曲を締めくくるというパターンの作品がわりと多く見られます。

確かに繰り返しの多い構成というのは、練習する上では一見単純に感じられます。
ですが、最初にあった旋律がそのまま最後の締めくくりにもなるわけですので、実は繰り返しといえど、曲の中ではまったく違う役割になっているのです。

ですので、このような繰り返しの多い曲を弾く場合は、一つ一つの場面をある程度マスターした後、今度は曲全体を改めて振り返る時間をつくりましょう。

そうすることで、一見単純な繰り返しだと思っていた各場面に何らかの変化や特徴を見出すことができ、すると各場面のつなげ方や表現の方法というのも自分なりに掴めてくるかと思います。

とにかく、どのような曲にも言えることですが『木を見て森を見ず』という状態にならないことが重要なのです。

最初にしっかりと全体的な構成を把握し、なるべく最初のうちに「こういうふうに弾きたい!」というイメージを固めておきましょう。

要点を確認しよう!全体的な弾き方のコツのまとめ


ここまでショパンの『ワルツ第3番(華麗なる円舞曲)』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ここで、以下に全体的な弾き方のコツをまとめました。

  1. トリルや装飾音は、曲の雰囲気を踏まえて適切に表現する(特にセクションA1セクションB1セクションC1セクションA2セクションB2セクションC2セクションA3
  2. スラーの表記や指番号など、細かな指示を見落とさない(特にセクションB1セクションC1セクションB2セクションC2
  3. 両手の音がばらけてしまわないように、まずはゆっくり練習する(特にセクションE
  4. 調の変化や臨時記号は一つ一つしっかり確認する(特にセクションD1セクションD2
  5. 繰り返しにもまたそれぞれ違った役割がある(全体的に)

以上の5つのコツを念頭に、練習をしてみてくださいね。

そして何度も申しますが、この曲は弾けば弾くほど味が出てきます。

ちなみにこれは私個人の感想ですが、最初にこの曲をマスターしたとき、実のところ「何だか雰囲気が悲しそうだし繰り返しも多いし、いまひとつ楽しくないなぁ……」というのが正直な印象でした。ショパン先生、ごめんなさい。

ですが、何度も弾いていろいろな発見をしていくうちに、いつのまにか私はこの曲の独特な魅力にすっかり惹かれておりました。あれは本当に不思議な体験でした。

そのようなわけで、一つの作品にめぐり合ってそれを練習するというのは何かの縁だと私は思います。その縁を大切に、練習に励んでいきましょう。

それでは、頑張ってくださいね!
畑の地中から盛大に応援しております。

byピアノ弾きのもぐら


「ワルツ第3番Op.34-2」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1894年にシャーマー社から出版された楽譜です。「ワルツOp.34」全3曲が収録されており、Op.34-2は10ページ目からになります。

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