ショパンの『ノクターン第20番嬰ハ短調遺作』、哀愁漂う情緒的な旋律が特徴的な珠玉の名作ですね。

この曲は旋律が特徴的であるため、一度聴いたら頭から離れない何とも印象深い作品となっているように思います。
ショパン先生の作品には印象深い作品が数多くありますが、その中でも特にこの曲には大きな魅力を感じます。

また、この曲は映画『戦場のピアニスト』の中でも演奏された曲で「聞いたことがある」という方もおられるかと思います。かく言う私も、当時映画を観て「なんてすごい曲なのだろう!」と心を揺さぶられた覚えがあります。

「ショパンのノクターンを弾いてみたい」、「この曲に憧れている」という方々は必見です。


【映画『戦場のピアニスト』ピアノソロ曲集:ドレミ楽譜出版社】

上記で触れた、映画『戦場のピアニスト』の中で使用された、ショパン先生の名曲が収録されている曲集です。この曲だけでなく、他の作品も弾き応え抜群です。

また、映画のワンシーンの写真コラージュも入っていて、映画の雰囲気も感じられるおすすめの一冊です。

ピアノソロ 戦場のピアニスト (ピアノ・ソロ)




こんにちは!ピアノ弾きのもぐらです。

そういえば最近、口を開けば「暑い」とばかり言っているように自分で思います。

巣穴は地中なので少しは涼しいかと思いきや、いよいよ扇風機を回してみても暑さに勝てない状況になってきました。

というわけで、ついにクーラーを導入しました。やはりクーラーは涼しいなぁと感心しております。

毎日暑い日が続きます。とにかく皆様も、どうかお身体ご自愛くださいね。

難易度は意外と低い!


さて、本題に入りますね。

この曲は聴いているとけっこう難しく感じられるかもしれません。
ですが譜面をよく見ると、案外それほど難易度は高くないということがおわかりになるかと思います。

この曲を実際に練習してみた印象としましては、ショパン先生の作品の中ではわりととっつきやすく、しかも有名な曲なので弾いていてとても楽しかったように思います。

そのため、まだショパンを弾いたことはないけれど挑戦してみたいという方にとっては、まさに打ってつけの作品なのではないかと私は個人的に思っております。

また教則本を基準に考えてみますと、ツェルニー30番を練習中の方であれば少し時間はかかるかもしれませんが、頑張って練習をすればマスターできてしまうくらいかと思います。

とにかく「難しそう」という観念は取っ払って、この際思い切って挑戦してみましょう。


シンプルな構成で弾きやすい!

では、最初に以下の動画を聴いてみてください。



この曲の弾き方をお話しするにあたって、この記事では一曲を以下のように細切れにして考えていきます。

セクションA1(最初~1:19)
セクションB(1:20~2:04)
セクションC(2:05~2:29)
セクションA2(2:30~3:06)
セクションD(3:07~終わり)

※カッコ内の時間は動画に沿ったものです。動画をよく視聴し曲全体の雰囲気や大まかな特徴を捉えておくだけでも、練習はかなりスムーズになるかと思います。

この曲の構成はとてもシンプルです。ただ、似たような場面でも微妙に変化がある箇所もありますので、しっかりと譜読みをして変化を見落とさないように気をつけましょう。

また、この曲は技術的な面では確かにそれほど難しくはありませんが、場面ごとにそれぞれ違った雰囲気があり、いかにそれをその都度表情豊かに表現できるかが大事なカギとなってきます。

そのため構成を見る際は、どのような表情をつけたいのかという自分の理想や個性も含めて考えていくことが重要です。

それでは、さっそく練習に入っていきましょう!

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA1 ~繊細に静かに~

セクションA1では、さっそく有名な旋律が始まります。
ここはとにかく情緒豊かに旋律を歌うように鳴らすことが大切です。

ですがここは同時に、情緒豊かにしようと抑揚をつけて弾こうとするあまり、全体の音量が知らず知らずのうちに大きくなってしまいがちな部分ですので、音量のバランスにも気をつけていきましょう。

※『Lento』の意味は『緩やかに』
※『una corde』の意味は『シフトペダル(左のペダル)を踏む』

ここでは冒頭にテンポの表記がありますが、それほど厳密に考えなくても、ゆったりとしたテンポという部分だけ守っていれば特に問題はないかと思います。

そして『X』のような記号は『ダブルシャープ』と呼ばれ、その音を半音上げてさらにもう半音上げるという意味となります。
つまり、上の譜面では『ファ』の音にダブルシャープがついているので、実際の鍵盤上では『ソ』の音を鳴らすということになります。

この部分は和音を弾きますがとにかく音量を小さく抑え、それでいて和音を構成する音一つ一つが欠けてしまわないように気をつけることが大事です。


※ 『tre corde』の意味は『シフトペダル(左のペダル)を離す』
※ 『dolce』の意味は『やさしく』

ここから本題といった感じですね。(0:22~)

この箇所の難関は、やはり特徴的なトリルです。繊細かつ軽やかな響きにしていきたいところですが、けっこうトリルは苦手だという方もおられるかと思います。
かく言う私も、この曲のトリルには悩まされました。

というのも、この曲におけるトリルの在り方は、他の曲におけるそれとはちょっと違うもののように思えるからです。

具体的に他の曲におけるトリルの在り方としては、どちらかというと装飾音的な、いわば脇役的な役割に思えるのですが、この曲におけるトリルというのは、何だかトリルそのものがもはやメインのように思えるのです。

そのような意味で、この曲はトリルそのものが見せ所というか、とにかく大事なポイントとなりますので、しっかりときれいに鳴らせるように頑張っていきましょう。

とはいえ、いきなり高速でトリルを鳴らすのはちょっと大変かもしれないですので、最初はトリルの中に含まれる音符の数を少なめにして、ゆっくり確実に鳴らすことから始めていきましょう。

正直かなり退屈な練習に思えるかもしれませんが、これに慣れていけばそのうち自然と音の数も増えていきますので、粘り強く地道に取り組みましょう。


※ 『-』は『テヌート』と呼ばれ、意味は『音を充分に保って』

ここは右手と左手をどのように合わせるかで一度は悩んでしまう箇所だと思います。(0:58~)

両手の合わせ方の目安としましては、最初の右手3連符二つが左手における4つの八分音符の塊の中に、そして後の右手5連符と3連符二つが左手における次の4つある八分音符の塊の中に収めるようなイメージで弾いていくと、すっきりとまとまるかと思います。

また、この箇所では指の運びや臨時記号など、注意すべきところもたくさんありますので、とにかく片手練習をしっかり行いましょう。



この箇所も右手にトリルが出てきますが、その後にある32分音符については直前のトリルとつながっていると考えて、装飾音的に弾くというのが無難かと思います。(1:09~)

また、ここでのトリルそのものも、中身を見れば32分音符の塊だと捉えるとわかりやすいかと思います。つまりそのような意味で、上記の通りトリルとその後の32分音符はつながっていると考えられるわけなのです。

☆セクションB ~情緒の起伏を表現~

セクションBからはセクションA1を受けて、さらに場面が展開していきます。(1:20~)

これはこの部分だけに限ったお話ではありませんが、とにかく右手の旋律を歌うように弾いていくことが重要です。

特にこのセクションBは曲調の起伏が大きい部分ですので、譜読みの段階でしっかりとどのように曲の雰囲気が変化していくかを把握しておくと、臨機応変に対応できるかと思います。


この箇所は高揚感を感じさせる部分です。(1:27~)
特に、右手の和音の中でどの音が主旋律を成しているかを把握し、同じ和音の中でも主旋律となる音を目立たせることで、響きにメリハリが出てくるかと思います。

また、上の譜面の次にも同じようなフレーズが出てきますが、今度は音が短調に変化しますので、上の譜面の旋律とは打って変わって哀愁漂う旋律となります。

この箇所は、たとえば「喜び」と「哀愁」というようにセットで捉えてイメージを固めて解釈してみても面白いです。また、たとえば「問い」と「答え」というイメージで弾いてみても面白いですね。

上記の例に限らず、自分なりにイメージを膨らませることで、一つ一つの旋律に一体感や脈絡が生まれ、そしてだんだんとそれらがつながって自分なりの一曲として成り立っていくのではないかと私は思いますし、それこそが表現をしていく醍醐味だとも思います。

譜面にある指示だけに留まらず「こうしたらどんな響きになるのかな?」という疑問を常に持ち続けることで、同じ一曲でもまったく違った作品に変化します。

ですので、技術面である程度マスターできてきたら、今度はその曲の持つ特徴や可能性と、自分のイメージや個性をすり合わせる時間も意識して取るようにしてみましょう。


※上の譜面の『シ♯』の上についている記号は『フェルマータ』と呼ばれ、意味は『音を倍くらい伸ばす』

ここでは上記の譜面の通り、一時的に拍が五拍子に変化します。(2:00~)
ですが、この箇所での拍の変化については、それほど意識しすぎなくても大丈夫かと思います。

ただ、この箇所はリズムが少し変則的ですので、最初はこの箇所をどのように弾いたらいいのかと戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
ここはまず片手練習を万全に行い、リズムの特徴を捉えていくことが大事です。

☆セクションC ~3連符で変化を出そう~

セクションCでは3連符が印象的な旋律が出てきます。(2:05~)

ここはセクションA1セクションBとは雰囲気もガラッと変わります。そのため、弾く人によってはもしかするとここで緊張感が緩むという方もおられるかもしれません。

ですが、だからといって一音一音の響きが雑になってしまってはもったいないですので、丁寧に繊細に音を鳴らすことを心がけていきましょう。

※ 『Animato』の意味は『いきいきと速く』

ここからいきなり三拍子に変わります。

先ほどの五拍子の部分でも言えることですが、拍子がいきなり変化すると混乱してしまうという方もおられるかもしれません。そんなときはピアノを弾く前に、拍を手拍子だけで確認しておくとスムーズに練習ができるかと思います。

手拍子で確認するというのは至ってシンプルで、譜面を最初から目で追いながら、ひたすら指示された拍子を手拍子で叩いていくという方法です。4拍子なら「1,2,3,4」、3拍子なら「1,2,3」といった具合です。

そうすることで、少しずつその曲のリズムが理解できてくると思います。


※ 『due corde』の意味は『弱音ペダル(シフトペダル)を半分くらい踏む』

このセクションCではペダルの指示が一小節ごとにありますが、セクションCに関してはあまりペダルを多用しないほうが、私は何だかしっくりきます。(2:12~)

ですが、あまりにも音が切れ切れになってしまうというのも不自然ですので、もしペダルをあまり使いたくないという場合は、なるべく一つ一つの音をなめらかに弾くことを意識しましょう。

また、ある特定の音だけ大きな音になったり、逆に小さすぎて音が消えてしまったりしてしまわないよう、ここでは音の大きさが均等になるように気をつけて弾いていきましょう。


※ 『Adagio』の意味は『緩やかに』
※ 『tutte corde』の意味は『弱音ペダル(シフトペダル)を離す』
※ 『rit.』は『ritardando』の略称で意味は『だんだん遅く』

ここはこの曲全体で考えますと、曲の前半を締めくくる大事な箇所です。(2:18~)
特に最初の左手の一音は、響きの中でとても重要な音ですので、鍵盤を深くまで押すようなイメージで鳴らしていきましょう。

そして右手は、鍵盤上を3連符のまま上昇していきます。

ここは指の運びには充分に気をつけて、長いスラーをしっかりと守ってなめらかに弾いていきましょう。ここは一箇所でも旋律が切れてしまうと、そこで曲の流れも止まってしまいますので細心の注意が必要です。

☆セクションA2 ~似たような箇所でも違いがある~

セクションA2はセクションA1の再来を感じますが、所々セクションA1とはまた違った弾き方をする箇所も出てきます。(2:30~)

ここでは曲の終盤へと向かうことを意識して弾くことで、セクションA1との雰囲気の違いを出せるかと思います。


上の譜面における二小節目のフレーズは、音がだんだんと上昇する形となっています。(2:47~)

この箇所も指の運びが重要になってきます。指がもつれなくなるまで、何度も片手練習を行いましょう。ここでは、なるべく譜面に指示されている運指に対して忠実に弾くことをおすすめします。



この右手のトリルで弾く全音符ですが、案外注意が必要な箇所だと私は思います。(3:03~)

というのは、ここは同時にクレッシェンド(意味:音をだんだん大きく)とデクレッシェンド(意味:音をだんだん小さく)の表記もあるからです。
つまり、トリルを弾きつつ音の強弱もつけていく必要があるということなのです。

この箇所のコツとしましては、全音符の入りと終わりでトリルの速度を微妙に遅くすることです。別な表現に変えますと、トリルの最初と終わりはトリルを構成する音の数を減らすということです。

このような工夫をすることで指に余裕が出て、全音符の最初と終わりでトリルを弾きながら音量を小さめに調節しやすくなるのです。

つまり、どちらかというとクレッシェンドよりもデクレッシェンドに重きを置いて、いかにトリルの音を小さくしつつ入り、そしてまた小さくしつつ終わることができるかが重要なのです。

☆セクションD ~粘り強く練習しよう~

セクションDは曲の終盤、とにかく静かに繊細に鳴らす技術が求められます。(3:07~)

私はこの曲での一番の難関は、このセクションDだと思っております。未だに私もこの曲を弾く際には、この終盤に悩まされることが多々あります。

ですがその分、ここをクリアできれば美しく曲を締めくくることができますので、頑張っていきましょう。

※ 『una corda al fine』の意味は『終わりへ向けてシフトペダル(左のペダル)を踏む』

譜面をパッと見ると、この箇所は一体何が起こったのだろうかと思えてしまいます。(3:12~)
当時練習していた私は、この箇所のことを『魔の35連符』と思わず勝手に名付けてしまいました。

ここで頭を悩ませてしまうという方も多いかもしれません。

たった四つしかない左手の八分音符の中に、35個もの音符で構成された音階を収めるには、一体右手はどのくらいの速度で鍵盤を駆け抜けなければならないのだろうかと考えますよね。

ですが、この箇所はいろいろな音源を聴いてみると、譜面の雰囲気の通りすごい速度で右手を弾く人もいれば、なぜかそれほどハイスピードではない人もいるといったように、弾き方が分かれるところなのです。

私自身は正直なところ、未だにこの箇所はハイスピードでは上手く弾けません。
とはいえ、練習していた初期の頃は「とにかく速く!」と思いながらひだすら練習しておりました。

練習をしていると、たまに奇跡が起きてものすごく速く弾けることもあったのですが、どうもその響きにはどこか違和感があるようなのです。

そこで、試しにこの箇所だけ速度を無理のない速さにしてみたところ、何だかこのほうが雰囲気的にしっくりくるように思い、それ以来この箇所の右手を速く弾くことへのこだわりは消えたような感じがしております。

あくまで上記は私個人の体験談ではありますが、少なくとも繊細さや情緒等を表現する余裕を失ってまで無理に速くする必要は無いように私は思います。

もちろん速く繊細に弾けるに越したことはありませんが、「何だかちょっと違うなぁ」と思ってしまうのであれば、それほど速さには縛られずに、無理の無い弾き方で丁寧に弾いたほうがよっぽど綺麗な音色になるかと思います。

ちなみにこのような形のフレーズは、右手の音符の数に変化こそありますが他にもいくつか登場します。他の箇所でもやはり速度より、どちらかというと繊細さや軽快さを重視して、神経質にならずにのびのびと弾いていきましょう。


※ 『poco acceler.』の意味は『少しずつだんだんと速く』
※ 『a Tempo』の意味は『はじめの速度に戻す』

ここは速度に関する表記が細やかに書かれていますが、それほど厳密にこの表記にとらわれなくても大丈夫ではないかと思います。自分なりに「こう弾きたい!」というイメージを描いていきましょう。(3:26~)

一つだけ守るべきことは、とにかく音量を小さく抑え、そして一つ一つの音を繊細に丁寧に弾くことです。

また、ペダルの表記も小刻みに指示されています。とにかく音が濁ってしまわないように気をつけましょう。

おさらいしよう!全体的な弾き方のまとめ


ここまでショパンの『ノクターン第20番嬰ハ短調遺作』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ここで、以下にて全体的な弾き方のコツをまとめました。

  1. 和音は一つ一つの音が欠けてしまわないように気をつける(特にセクションA1
  2. トリルは弾きづらさを感じたら、音の数を少なめにしてゆっくり徐々に音を増やす練習をする(全体的に)
  3. 旋律の響きの変化をしっかりと察知し、高揚感を表現する(特にセクションB
  4. とにかく繊細さを心がける(全体的に)
  5. 拍で混乱したときは、基本の拍の変化を手拍子で確認する(特にセクションC
  6. 臨時記号、フレーズの変化を把握して違いを出す(特にセクションA1セクションA2
  7. 長い連符の音階は速さに縛られず、どちらかというと繊細さや軽快さを重視して弾く(特にセクションD

以上の7つのコツを念頭に練習をしてみてくださいね。

この曲は冒頭でも申しました通り、難易度自体はそれほど難しくはありませんが、弾いていくなかでいろいろなことを考えさせられる一曲ですので、マスターした後も何度も繰り返し弾いて、自分だけのものに仕上げていってほしいなと思います。

そして、まだショパン先生の作品に触れたことがないという方も、ぜひこの曲を皮切りにその奥深さにどんどん触れてみてくださいね、楽しいですよ。

それでは練習、頑張ってくださいね!畑の地中から全力で応援しております。

by ピアノ弾きのもぐら


「ノクターン第20番」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1920年頃にモーリス・スナール社から出版され、その後再版された楽譜です。


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