ピアノを始めたばかりの場合、楽譜に書かれている音とリズムを理解し、それを正しく弾くことに精一杯で表現をするというのは無理なので、初歩の教材には記号などはほぼ出てこないと思います。
最初はト音記号とヘ音記号くらいで、その後少しずつタイやリピート記号などが出てくると思います。
楽譜には音符とリズム以外にもいろいろな情報がたくさん書き込まれています。レベルが上がるごとに記号や楽語も増えて行きます。音が読めてリズムが読めるようになっても、まだまだ覚えることはたくさんあるんですよ。
楽譜に書かれているたくさんの記号や用語はこのように弾いて欲しいと書き込まれた作曲家からのメッセージです。(作曲者とは別の人が解釈を付け加えて出版されるということもありますので、必ず作曲者からの指示とは限りません。)
演奏する私達は、その記号や用語を頼りに作曲家の想いをくみ取って演奏しなくてはいけません。楽譜の中に長々と説明を文章で書くことはできないので、記号や用語を使って示してくれています。
この記号や用語をちゃんと理解して弾かないと作曲者の想いとは違う仕上がりになってしまいますので、よく出て来るものはなるべく覚えるようにしましょう。全てを覚えるのは大変だと思いますので、わからないものが出て来たらその都度調べるようにしましょうね。
テンポを表す「速度標語」、どのような強弱で演奏するのかを示す「強弱記号」、音符をどのように演奏するのかを個別に指示する「表情記号」など記号や用語はたくさんあります。
たくさんあって覚えるのはとても大変だと思いますが、ピアノを弾く上で大切なことです。今回は初級、中級レベルの曲によく出て来る記号と用語について書いていきますので、少しずつ覚えて下さいね!(ト音記号やヘ音記号、音符の名前と長さ、♯、♭、♮については書いていません。)
リピート記号について
教材にもよると思うのですが、反復させるリピート記号というのが初歩の教材ではよく出てくるのではないかと思います。
リピートさせるといってもいろいろあるんですよ!いろんなパターンを書き出してみますね。
6つ書き出してみました。数字は演奏する順番を書いています。
1と2はよく見ますよね!2のようにリピート記号に挟まれている場合は挟まれているところだけをリピートします。リピート記号が片方しかない場合は初めに戻ります。
3はピアノの楽譜にも出て来ますが、歌の場合にもよく使われるリピートの仕方ですね。リピートする時は1度演奏した1カッコを飛ばして2カッコに行くので気をつけましょうね。
4は初歩の教材では割と出て来るリピートの仕方です。D.C.というのはダ・カーポ(Da Capo)を略したもので「初めに戻る」という意味です。このダ・カーポとセットで出て来るのがFine(フィーネ)です。
フィーネが書かれていないと永遠に初めに戻れという指示になってしまいますので、必ずどこかにFineが書かれているハズです!!ダ・カーポとフィーネはセットで覚えましょう!!
5はD.C.に文字は似ていますが、よく見るとCがSになっていますね。これはダル・セーニョ(Dal Segno)の略で、「セーニョマークに戻る」という指示になります。
ダ・カーポは初めに戻りましたが、ダル・セーニョは初めではなく、セーニョというマークに戻るので、セーニョの位置をしっかり把握しておかなくてはいけません。何ページも前に戻るということもあります。ダル・セーニョはピアノ曲にはあまり出て来ませんが、歌の楽譜や伴奏譜によく出て来ます。
ダル・セーニョはフィーネとセットになっている場合もありますが、6のようにコーダに飛ぶようになっている場合が割と多く、リピート記号の中では1番複雑な演奏順をさせられることもあります。
間違いやすいタイとスラー
音符にかかる線が2種類ありますよね!タイとスラーです。同じような感じで音符にかかっている線ですが、このタイとスラーは指示されていることが全く違います。
同じように見える線をどのように見分けるのか知っていますか?何となくではなく言葉で説明できますか?
同じ音で隣にある場合にあるものをタイと呼びます。タイでつながれた2つ目の音は弾かないでのばしておかなくてはいけません。この画像の場合は4分音符にタイが書かれているので、1拍+1拍となり、2拍分のばしておくということになります。
スラーは同じ音ではなく違う音にかかっているもので、2つ以上の音にかかります。2つ以上であれば何個にでもかけることができます。長いものだと何小節にも渡ってスラーが書いてあるということもあります。
スラーが書かれている場合は音をプツプツと切らないように滑らかにつないで弾いて欲しいという指示になります。
タイとスラーはどちらか一方しか出て来ないというわけではなく、長くスラーが書いてある場合にタイも途中に出て来て、両方出て来るということもあります。そのためしっかりと違いを理解して見極めなくてはいけないのです。
強弱記号とそれに関連する記号
弾き方を指示する記号が少しずつ出始めると強弱記号も登場し始めます。まずはピアノとフォルテが出て来るのではないかと思います。
他にも基本的な強弱記号はこのようなものがあります。
↓
ピアニッシモよりも弱く弾く指示のPPPもあります。上にも書いた通り、2つの呼び方があります。(
フォルテの方も同じです。)
音楽で使われている楽語や記号はほとんどがイタリア語です。(ドレミファ~もイタリア語です!)
イタリア語はローマ字読みをすればほぼ読めてしまうので、読み方に苦労するということがないので嬉しいですね♪
読みやすくて、発音も割としやすいとは言っても、やはり外国語です。カタカナで表記をするのは少し難しいところがあるので、表記が少し違うことがあると思います。
よくあるのは小さい「ッ」が入っていたり、なかったりする場合です。
例えば、mpだと、メゾピアノと表記される時もあればメッゾピアノと表記される時もあります。これはどちらの表記も同じmpの記号のことを言っているので、私はどちらでもOKと思っています。
しかし中学校の音楽のテストでは教科書通りの表記で書かないと×にされてしまう場合があるようなので、気をつけて下さい。この他にも「ッ」が入っていたり、抜けていたりする記号や言葉が出て来ると思いますが、どちらでも良いです!
強弱記号に付随するものでだんだん大きくする「クレッシェンド」とだんだん小さくする「デクレッシェンド」がありますね。これも強弱記号とセットで覚えておくと良いですね!
上の画像のようにクレッシェンドとデクレッシェンドは表記の仕方が省略パターン、全部書くパターン、記号パターンの3種類があります。
この他にデクレッシェンドと同じ意味の言葉があるのを知っていますか?
dim.と略されるもので、略さず書くとdiminuendo(ディミヌエンド)となります。こちらは略したものだけで記号はありません。
デクレッシェンドとディミヌエンドは音楽用語としては同じ意味なのですが、言葉としてのニュアンスが若干違うんだそうです。
クレッシェンドの元になっている単語はCrescereでこの単語は成長する、増加するという意味なんだそうです。それに反対の意味なる単語「de」をつけて出来たのがデクレッシェンドです。
ディミヌエンドの元になっている単語はDiminuireでこの単語は減少するという意味なんだそうです。
元々「成長する」という意味を持つ言葉にdeをつけて反対の意味に変えているデクレッシェンドと、元々「減少する」という意味を持つディミヌエンドでは確かに少しニュアンスが違う気がしますよね。
デクレッシェンドは言葉で書いてあるということはあまりなく、記号で書かれることが多いです。言葉で書かれる場合はdim.(ディミヌエンド)と書かれていることが多いと思います。
※表記の仕方は違いますが、演奏の仕方としてはどちらも同じく「だんだん弱くする」という認識で大丈夫です。
クレッシェンドは記号で書かれていたり、cresc.と文字で書かれていたり、どちらもよく出て来ます。文字で書かれている場合は何小節にも渡ってだんだん大きくしていく場合が多いです。
記号で書かれる場合はあまり範囲が広くない場合がほとんどなので、記号が書いてあるところからすぐにだんだん大きくする必要がありますが、文字で書かれている場合は範囲が広い場合が多いので、言葉が書いてある場所よりも少し遅れた場所からクレッシェンドをかえるくらいでちょうど良い感じです。
クレッシェンドとデクレッシェンドの記号が小節の中に両方出て来るという場合もあると思います。これは音をだんだん大きくして、だんだん小さくするというよりは、少し膨らませて戻すというニュアンスで捉えると良いのではないかと思います。強弱で考えてしまうとやり過ぎな気がします。
覚えておいて欲しい表情記号
今回の記事は手書きが多くてすみません…。PCでは記号を書けないので手書きがやりやすくて…。真っすぐ書けてないし、修正テープしているし…読みにくくて申し訳ありません!!!
この4つはよく出て来るので覚えておいて欲しい記号です。
スタッカートは音を短く切るという意味なのですが、いつも同じ感じで弾くわけではなく、書いてある音符によって弾き方が違ってきます。
例えば4分音符のスタッカートと8分音符のスタッカートでは音の切り方を変えなくてはいけません。
スタッカートが書いてある場合はその音符の半分の長さくらいにすると良いと言われていますので、4分音符のスタッカートは8分音符くらいの長さに、8分音符のスタッカートは16分音符くらいの長さにということになります。
切るというと全てがすごく鋭利な感じで、短くしなくてはいけないような気持ちになりますが、そういうスタッカートもあれば、音と音の間を空けるというような感覚のふわっとしたスタッカートもあるんです!
どんな音符にスタッカートが書かれているのかをよく見て弾き方を決めなくていけませんね。
テヌートは音を充分にのばすというように書いてあることが多いですが、実際に演奏する場合は(出て来る部分や曲にもよりますが)その音を丁寧に弾くという感じで若干テンポもゆったりめにするという感覚です。アクセント程の強調をするのではないのですが、少し慎重に丁寧に弾くといった感じです。
やり過ぎるとアクセントに聴こえてしまうので、その場所に合った音にするという微妙なラインを探るということになりますね。
速度標語
強弱記号が楽譜に書き込まれた曲を弾く頃には楽譜に速度標語も出て来るようになっているのではないかと思います。
まずは基本的な速度標語を書き出していきますね!
他にもたくさんあるのですが、これがよく出て来る速度標語です。
これらの標語に意味を弱めたり、強めたりする言葉を付け足したものでよく使われるものがあるので、それも加えて並べてみますね。
-inoと-ettoを付け加えると元の意味を弱める言葉になります。
AndantinoはAndanteのゆっくり歩く速さという、ゆっくりという部分が弱められて中ぐらいの速さに近い感じになります。
AllegrettoはAllegroの快速という速さが弱められるので、中ぐらいの速さに少し近づく感じになります。
-issimoを付け加えると元の意味を強める言葉になります。フォルティッシモはフォルテにissimoを付け加えて強めたものです。
同じ要領でPrestissimoはPrestoを強めたものなので、プレストよりも速いテンポということになります。
この他にもAllegro moderatoやAllegro vivaceというように2つの速度標語をつなげたものもあります。アレグロ モデラートは「ほどよく速く」という意味になります。中ぐらいの速さよりも少し速く、でも速すぎないようにという速さとしては曖昧な指示になります。
Allegro vivaceはアレグロよりもただ速くすると考えるよりもヴィヴァーチェの「いきいきと、活発に」という意味をより強調させる感じに捉えるといいのかなぁと思います。
rit.とrall.の違い
クラシックの場合テンポはいつも一定になっているわけではなく、だんだん遅くする部分があったたり、途中でテンポがガラッと変わったりしますよね。初歩や中級レベルの教材でもだんだん遅くするという意味のrit.とrall.の2種類がよく出て来ます。曲の最後に出て来ることもあれば、曲の途中に出て来ることもあります。
曲の途中に出て来る場合、テンポを戻すという意味のa tempoとセットになって出て来ることが多いので、覚えておきましょう。
rit.(またはritard.)はritardando(リタルダンド)が略されたもので、だんだん遅くという意味です。
rall.はrallentando(ラレンタンド)が略されたもので、こちらもだんだん遅くという意味になります。
楽語辞典や楽典の本をみると同じ意味と書いてあるので、同じ意味合いで捉えて問題ないと思いますが、言葉が違うのでやはりニュアンスの違いはあるようです。
rit.の方はわざと遅らせるような感じで、rall.の方はもっと自然な感じでゆるやかになっていくという感じなのだそうです。
この他に文字だけ見るとrit.によく似ているriten.というものがあります。これはritenuto(リテヌート)と言い、ただちに速度をゆるめるという意味です。rit.とrall.は「だんだん」だったのに対してriten.は「ただちに」なので意味合いが少し違うので注意が必要です。
この他にも速度を変える表記はたくさんあります。ゆっくりするのではなく、逆に速めるものもあれば、だんだんゆっくりしながら弱くしていくというように、2つの意味も持ち合わせたものもあります。
速度標語や楽語、記号などはその曲の全体的な雰囲気やある部分の性格を決める重要な要素の1つになっています。書いてある指示は見逃さず、分からないものがあれば調べて楽譜に書き込むようにしましょう!!
今回はよく出て来る記号や楽語などについて書いてきましたが、いかがだったでしょうか。
中学校の音楽のテストではこのような記号の意味や読み方を書く問題が出る場合がありますので、中学生の方はピアノを弾かない方も少しずつ覚えておくとテストの時に苦労しないで済むかもしれません♪
まとめ
◆楽語や記号はほとんどがイタリア語◆ほぼローマ字読みで読める
◆わからない記号や楽語がでてきたら必ず調べて楽譜に書き込む