皆さんはピアノの発表会でどんな曲を弾きましたか?発表会でよく弾かれる曲と言えば、どの曲を思い浮かべますか?

曲はたくさんありますが、ピアノの発表会で弾く曲というのはあまり難し過ぎてもいけないし、地味過ぎてもいけないので、割と似たりよったりになってしまうのではないかと思います。

上級レベルになれば、どんな曲であっても人に聴かせられるまでまとめられると思います。

しかし、そこまでのレベルに達していない場合は、音色や弾き方をそれ程こだわらなくても良いようなものを選ぶ必要があります。最後まで弾ければ形になるような曲というのがやはり発表会で選ばれやすい曲なのかなというふうに私は思います。

今回は発表会で聴き映えする曲というのはどのような曲なのかについて考えていきたいと思います。(もうすでに若干答えがチラついている気がしなくはないですが…(笑))

■ 目次

映えるって何だろう?音楽で映えるとは?


ここ数年「インスタ映え」や「映える」という言葉をよく聞きますね!(もう古い??(笑))

映えるという言葉を辞書で引いてみると「光を反射して輝く」、「まわりと調和して一段と華やかに美しく見える」とありました。

SNS関連でよく聞く言葉なのでSNS用語のような感覚でいましたが、昔からある言葉なのですね!

「映える」という言葉を調べていて、このサイトを見つけました。ぜひ読んでみて下さい!
https://florist-westvillage.com/archives/23548/

奥深い。自分の中でしっかりと物事を消化された方の文章は非常にわかりやすく、重みがありますね!

辞書を調べて言葉を表面的にしか捉えられていなかった自分が恥ずかしい…。「映える」という言葉の本質を少し感じることができた気がします。

昔から使われている「映える」という言葉と「インスタ映え」などで用いる若い世代が使う「映える」は少し意味合いが違うのかもしれませんね。

音楽における「映える」とは何なのでしょう?

私は先ほどのサイトの方のように本質を捉えられているとは言えないので、表面的にはなってしまいますが、自分なりに考えてみました。

色々考えていると、「映える曲」という場合と「聴き映えする曲」という場合では何だか感覚が少し違うような気がしてきました。

「映える曲」とは先ほどの辞書のように「まわりと調和して一段と華やかで美しく見える」という感覚で、演奏している人の曲に対する理解が深く、曲との相性がとても良いため、その曲がより一層素敵に聴こえるという感じに私は思います。(あくまで私の感覚です。)

一方、「聴き映えする曲」とは「インスタ映え」と同じような感覚で、表面的な意味合いが少し強くなるのかなと私は思います。素敵に聴こえてテクニックも見せられる曲という感覚です。

よりよく見せるために少し演出を加えたりすることを「盛る」(使い方合っていますか?(笑))というようですが、そのような「盛る」ことができるような起伏のある変化の多い曲のことを「聴き映えする曲」というのかなと私は考えました!

クラシック音楽の場合、楽譜に書いてあることを守る必要があります。しかし、強弱やテンポの指示などには幅があり、感覚的なものなので範囲内であれば演奏する人に任されているということになります。

そこをどのように捉えて音として表現し、いかに自分らしさを出すかが腕の見せ所ですね♪

私が思う聴き映えする曲の条件


音楽における「映える」とは何かについて色々私の考えを書いてきましたが、ここからは「聴き映えする曲」だけに焦点を絞って書いていきます。

「聴き映えする曲」というものにはいくつか条件があるような気がします。

「静と動」、「陰と陽」のように対照的な部分が分かりやすく出てくる曲
タイトルがついていて、ストーリーを感じられる曲


以前、ピアノの発表会におすすめの日本人作曲家の曲を紹介した記事を書かせて頂き、その記事の中で、発表会で選ばれる曲とはこういうものではないかなというものを書いています。

今回の記事と少し似たような内容になっていますが、発表会での曲選びについて私なりの考えを書いていますので、よろしければ読んでみて下さい♪

明確に性格の異なる部分がある作品というのはその対比を上手く表現できれば、割と上手に弾けているように聴こえます。

穏やかな曲や起伏の少ない曲などは音色にこだわったり、弾き方に神経を使わなくてはいけなかったりするものが多いので、それよりは弾きやすいのではないかと私は思います。

あとは「手を交差する」、「跳躍などで音域を広く使っている」、「グリッサンドなどテクニック的なもので動きが大きいものが多く含まれている作品」は視覚的にも派手さが出るので聴き映え+見映えがすると言えるかもしれませんね。

オススメ曲を紹介!【ストーリー性、対比編】


発表会でよく弾かれる曲の中から特にオススメの曲を7曲選んでみました!

乗馬 ブルクミュラー


ブルクミュラーの中で明確な対比がある曲と言えば「乗馬」ではないでしょうか。

曲集の最終曲となっているだけあって、この曲集の中では一番テクニック的に難しく、リズミカルに弾く部分、歌う部分、技巧的な部分と様々な要素が短い曲の中に詰め込まれています。

ストーリー性も感じられる曲なので、楽しんで弾く事ができ、実力もつく良い楽曲だと思います。聴いている人も楽しめますね。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/5480.html

人形の夢と目覚め エステン


この曲は非常にストーリー性の高い曲で、夢から目覚めて、お人形が踊るという内容ですが、説明がなくても聴いただけで想像ができる素敵な曲です。

音楽を演奏する場合には想像力も必要なので、楽譜を読むだけではなく、そこから感じたことを自分なりにイメージしてみるという練習にもなると思います♪

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/11790.html

エリーゼのために ベートーヴェン


ペダルが上手に踏めるようになったら挑戦して欲しい曲です。

この曲は嘆きのようなメロディーが何度も出てきますが、その間にいつも違う別の展開が来るという曲の構成になっています。別の展開なのにいつも同じテンションというのはおかしいので、その対比をしっかりと弾き分けられるようにしましょう。

このくらいのレベルの曲になってくるとただ弾くだけでは、子供っぽく聴こえてしまうので、ある程度ニュアンスをつけながら弾く必要があると思います。

それには曲から何かを感じ取る必要があります。教えられたものだけでは上手くいかないので、弾く本人が何を感じるかということが必要になってきます。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/16484.html

ユーモレスクOp.101-7 ドボルザーク


穏やか要素が多めで一見地味な曲のようですが、激しく劇的な部分もあり、メリハリがちゃんとある名曲です。

劇的と書きましたが、一気に盛り上がるのではなく、じわじわと徐々に盛り上がっていきます。気持ちを少しずつ高めていきながら、徐々に盛り上げて弾くことはなかなか難しいと思います。一気に盛り上げたいところを我慢…まだ我慢といった感じです。

このような盛り上がり方は他の曲にもたくさん出てきます。良い勉強になると思いますので是非挑戦してみて下さい♪

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/3712.html

花の歌 ランゲ


とても華やかできれいな曲ですよね♪

歌う部分ももちろんありますし、技巧的な部分もしっかりあり、弾いている人も聴いている人も満足できる曲だと思います。いろんなテクニックが必要な曲なので弾けると達成感が味わえると思います。

この曲はrit.をするところがいくつも出てきます。テンポの揺らぎや曲の場面転換をしっかり意識しながら弾くことが必要で、ロマン派の作品を弾く上で大切なことが学べる楽曲だと思います。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/14782.html

ワルツOp.69-2 ショパン


流れ落ちるようにレガートで弾かなくてはいけない部分、リズムを生かしてどんどん前へ進む部分という全く性格の違うものが出てきます。

1つの曲の中で拍の取り方を少し前のめりにしたり、戻したりということができると対比が上手くいくのではないかなと思います。

いつも同じ拍の感覚はありつつ、それがある部分では柔軟に揺れるという感覚が掴めると、やりすぎて不自然という感じにはならないと思うのですが、なかなか難しいです…。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/5426.html

小犬のワルツ ショパン


超有名曲ですね!この曲を弾けるようになるのを目標にされている方も多いと思います。先ほどのワルツと同じでこちらも全く違うタイプのものが組み合わされて1つの曲になっています。

先ほどのOp.69-2の方は3拍子を強調するように左手を弾くと何だか野暮ったい感じに仕上がってしまいますが、こちらの小犬の方は3拍子をしっかり意識して弾く方が、小犬という印象になって可愛らしく仕上がると思います。

同じ音型の伴奏だからといって、いつも同じ弾き方をするわけではありません。曲のイメージによって弾き方は常に変えていきます。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/1652.html

オススメ曲を紹介!【見映え編】

ここからは聴いている人に「わぁーすごい!」と思ってもらえるような上級者向きの見映えのするオススメ作品について書いていきますね。

「ロンド カプリチオーソ」 メンデルスゾーン


最初は穏やかに始まるんですけど…

あれ?様子が…
1:19~

ここからコロコロと場面転換が半端なく続く…
2:06~

そして怒涛のラストスパート!!!!!
6:22~

カッコいい曲ですよね!!このラストスパートを見せられると思わず拍手したくなること間違いなし!ガンガン飛ばすところもあれば、しっかり歌う部分もあって大好きな曲です♪

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/9793.html

「ピアノのために プレリュード」 ドビュッシー


最初から主張強め→開始8秒ほどでモヤモヤゾーンへ

と油断していたら、急展開!!
49秒~

そしてグリッサンド2回からの急転直下
1:03~

ここの手の動きに注目!かぶさっている…
1:28~

後半に3回グリッサンド!!
2:37~

どうですか?機械的に正確に弾くというテクニックが必要な曲ですが、おもいっきりの良さも必要なイケイケなカッコいい曲です♪

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/925.html

「映像第1集 運動」 ドビュッシー


何この手の位置…おかしくない??(笑)

いきなり雷にでも打たれたかのよう…
0:35

ここからの手の動きをよく見て下さい。
1:15~

確かに運動だな。これ以上の運動はないというくらいの指の運動だ。改めて手の動きをよく見ると…手の動きが気持ち悪い…。でも魅力を感じるんですよね~。

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/2673.html

水の戯れ ラヴェル


穏やかな曲っぽい

ではない…気がしてきた
1:53~

これは戯れじゃないね…
2:29~

ほら、荒れ狂っているじゃん!!
2:35~

タイトルと出だしの印象だけで曲をイメージしてしまうと、とても穏やかで華やかな曲なんだろうと想像されると思いますが、全体を通して聴くとわかるように実は結構荒れ狂っています。(笑)

高速連打に黒鍵グリッサンド!!曲全体を通して音域をフルに使っているので、見映えはすごいですよね。

難所が色々あって難しい曲ではありますが、音の響きがとっても素敵でどこをとってもきらきらしていて素敵な曲で、大好きです♪

この他にもテクニック的に難しく見た目が派手なものはもっともっとたくさんありますが、私の好きな見映えがする曲をご紹介してみました!

今回ご紹介した作品は最上級に難しい曲ではありませんので、気長に練習すればきっと弾けるようになると思います!

(参考記事:https://shirokuroneko.com/archives/1718.html

聴き映えしないと感じる曲を弾く場合は…


聴き映えしないと感じるということはその曲についてそれほど魅力を感じていないということだと思います。

弾いている人がつまらない曲だなと思いながら弾いているのに、聴いている人が素敵だなと思ってくれるはずがありません。

その曲の素敵だなと思う部分をたくさん見つけて、その曲のことを好きになる事がまずは大切です!!

みんなは知らないかもしれないけど、この曲の魅力を自分だけは分かっているぞ!!というくらいまでその曲のことを理解する気持ちがあれば、どんな曲でもきっと素敵に弾けるでしょう。

曲の良さというのはすぐに気づけるものもあれば、時間がかかるものもあります。(年齢的なものもありますし…)

一見、単調そうな曲であっても起伏が全くないということはありえませんよね!どこかしらにその曲なりの盛り上がりポイントがあるハズです。

そこをしっかりと感じ取り、きちんと理解した上でちゃんと膨らませて弾くと聴く人もそこを感じ取ってくれるものです。(やりすぎ注意!やりすぎると場の雰囲気を壊してしまって一気にしらけるので盛りすぎ厳禁!!)

あまり曲調に変化のない曲だと思っていたものを色彩豊かに弾かれるとグッと惹きつけられます♪

自分はここが好きでこの部分を聴いて欲しいと思うポイントをいくつか見つけて、弾きながら良さをアピールしているつもりで弾くと単調な曲も地味には聴こえません!

聴いている人に対してその曲の良さをプレゼンしているイメージで弾くと良いですよ!!語りかけるように弾き始め、だんだんと熱を込めて、聴いている人が曲を聴き終えたらCDを買いたくなったり、ダウンロードしたくなったりするくらいまで、曲に対する自分の想いを音に乗せて、最後はたたみかけるように猛プッシュです!!!(笑)

「静と動」、「陰と陽」というようなわかりやすく対照的なものがそれほど感じられない曲でも、「自分はこう弾きたい!」、「この曲が好き!」という気持ちがちゃんとあって、それが音に少しでも表せていれば、結局はどんな曲も素敵に聴こえて、「映える曲」となるハズです。

発表会で弾く曲というのは演奏する人が決めるというよりも、先生が決めて下さることが多いのではないかと思います。先生が選んで下さった曲があまり好みの曲ではないということが中にはあるかもしれません。

もちろん、自分好みの曲や憧れの曲に変更するというのも良いのですが、先生が選んで下さった曲を好みの曲ではないからと、すぐにはねのけてしまうのは少しもったいないなぁと私は思います。

先生はいろんなことを考えて下さっていて、次のステップに進むためには少し違うタイプの曲も挑戦してみたらどうだろうかとその曲を選んで下さったのかもしれません。

少しその作品に触れてみて、やはり違う曲がいいなというのであれば、変更するのも、もちろんアリだと思います♪出来ればいろんなタイプの曲に触れて欲しいなとピアノを教えている立場の私からするとそのように思うのです。

食わず嫌い(ピアノの場合は弾かず嫌い?(笑))のような状態にならないで、ちょっとは味見してみて下さいね!!

まとめ

◆対照的な部分が出てくるメリハリのある楽曲を選ぶと聴き映えする
◆交差、音域が広い、グリッサンドなど手の動きが大きいものは聴き映え+見映えする



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