どんな曲?

今回紹介するベートーヴェンのソナタ第25番作品79は、1809年に作曲されました。「かっこう」はベートーヴェンがつけた名前ではなく、展開部にかっこうの鳴き声みたいなメロディーが流れることからつけられたようです。


■ 目次

難易度は?

ツェルニー30番を学習中の方でも弾ける難易度でしょう。初めてソナタを弾く方でも、シンプルな曲構成なのでソナタ形式の勉強もしやすいと思います。

また展開部で腕を交差させながら弾くところがあるので、ちょっとプロっぽい雰囲気も味わえます。(私個人の感想です。)

ベートーヴェンのソナタの中では短い曲で、全楽章通して弾いても10分以内で演奏できます。


楽譜は、ソナタが一通り収録されている「ソナタ集」を買うのもよいですが、重くなるし、譜面台に置きにくくなってしまうので、この曲だけが収録されている楽譜を紹介します。



練習のポイント

今回は提示部、展開部、再現部に分けて解説します。

提示部(1~50小節目)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜1
冒頭のalla tedescaは「ドイツ風に」という意味で、これはドイツ舞曲のレントラー(Ländler)という3拍子の踊りを表しているようです。

左手の伴奏の音量が大きくなりやすいので、軽く弾きましょう。私も練習し始めた時はどうしても大きくなってしまいました。

手をバタバタさせるのではなく、手首の位置を固定したまま弾くようにしましょう。また指も上げすぎないで弾くと不必要な大きさの音は出なくなります。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜2
12小節目~22小節目(動画0:12~0:21)は、遠くにきれいな音がキラキラと響いているようなイメージで弾きましょう。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜3
37と38小節目の左手にsf(スフォルツァンド)が出てきます。(動画0:32~0:33)

sfは特に強くという意味なのですが、この曲ではあまりジャーン!と弾かずアクセントをつける程度で十分だと思います。

弾いたときに手首が下に下がったままではなく、弾いた後に力を抜いて手首を浮かせるような感じで弾くとべチャッとした音質にならずに軽やかな感じに聴こえます。

展開部(51~123小節目)

提示部に出てきたメロディーがホ長調に転調されて出てきました。(動画1:28~)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜4

60小節目からは手を交差して演奏する部分が出てきます。(動画1:34~)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜5
緑色の〇で囲んだところが左手で弾くところなのですが、この部分がかっこうの鳴き声に聞こえます。

交差して演奏するとき、提示部の最初の部分と同様に、右手の伴奏は手首を固定させて指もバタバタ動かさない方がいいでしょう。

緑色の〇で囲んだメロディーを響かせて「カッコー」と聞こえるように弾きましょう。少し指先を固くさせ弾くと響きやすいですよ。


120~124小節目は再現部に向けて盛り上がっていきます。(動画2:27~2:30)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜6
この楽譜では1拍目から2拍目にかけてペダルを踏んでいますが、演奏者によっては123~124小節目は踏みっぱなしで盛り上げて演奏している方もいます。

また124小節目で少し溜めて演奏している方もいるので、自分のイメージに合う演奏の仕方を研究してみてください。

再現部(124~206小節目)

提示部に出てきたメロディーが再びでてきました。(動画2:30~)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜7

135小節目(動画2:40~)から提示部の12小節目と同じようなメロディーが出てきますが、提示部の時と雰囲気が変わって聞こえるように弾けるといいですね。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜8
私のイメージですが、提示部の時は遠くに聴こえるキラキラとした音で、再現部のこの部分は自分の近くまではっきりと聞こえるキラキラとした音という感じです。


196~203小節目の左手はワルツのリズムになります。(動画3:30~3:36)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜9
ブンチャッチャ♪ブンチャッチャ♪という感じでしょうか。
1拍目の低い音は軽く響かせて、2拍目と3拍目はかわいらしく軽めに弾きましょう。

この楽譜では1小節通してペダルを踏むように書かれていますが、私は軽い感じを出したいので踏んでも1拍目のみで演奏しています。


最後の3小節はソシレ、ソシレ、ソシレ、と区切れて聞こえないように練習しましょう。(動画3:37~)

ベートーヴェン「ピアノソナタ第25番ト長調作品79第1楽章」ピアノ楽譜10
つながって聞こえるように演奏するためには、親指をくぐらせるときに3の指をギリギリまで離さないことを意識してゆっくり練習しましょう。

慣れると3の指が離れずにつなげて弾くことができるようになります。

まとめ

・伴奏の部分は手首を固定させて、指はバタバタ動かさずに弾きましょう。
・展開部のかっこうの鳴き声に聞こえるように耳を澄まして練習しましょう。


私は中学生の時に受けたコンクールの課題曲で、この曲を初めて弾きました。当時は「なんか速い曲」というイメージに強く影響されてしまい、とにかく速く弾かなきゃ!と思い込んで練習していました。

その結果、全体的に雑な仕上がりで弾いている方も聞いている方も落ち着かない演奏になってしまいました。

この曲に限らず速い曲に挑戦される方は、まずは速さに捉われず一つ一つの音をきれいな音で弾くことを意識して練習してみてください。


First picture By Morinotousan kachofugetsu.


「ピアノソナタ第25番ト長調Op.79」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1960年にブタペスト音楽出版から出版されたパブリックドメインの楽譜です。

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