「ノヴェレッテン」ってどんな曲?
1838年に「トロイメライ」で有名なロベルト・シューマン(Robert Alexander Schumann, 1810-1856)によって作曲されました。
ノベレッテ(ノヴェレッテン)は「Novelletten」と書き、短編小説のことを指します。シューマンは読書が好きで、文学的な要素を音楽に反映させています。
シューマンは文学者になるか音楽家になるか迷った時期があり、評論家としても多くの文章を遺しています。文学的な要素を音楽に込めて表現するのはシューマンにとって自然なことだったのでしょう。
以前、私が解説したシューマンのパピヨンも「生意気盛り」という小説からインスピレーションを得て作曲されています。
パピヨンの練習のポイントをまとめた記事はこちら
https://shirokuroneko.com/archives/12276.html
■ 目次
難易度は?
最低でもツェルニー40番は修了しておいた方がよいと思います。かなり難しい曲です!
3度と6度の重音をきれいに弾ける技術が必要で、手首をいかに柔らかく使えるかが試される曲だなと感じています。
またシューマンらしい声部が絡み合っている曲なので、それぞれの声部の役割を勉強する必要があります。
練習のポイント
ノベレッテ第5番だけでなく、ノベレッテ全体にも言えることなのですが、テーマを挟みながら様々な曲調の音楽がつながっています。今回はテーマを含め大きく5つの部分に分けて練習のポイントを解説します。
①テーマ(1~32小節目、動画0:04~1:08)
曲中に何回か出てくるテーマです。途中、転調されて出てくるところもあります。全体的に指先を固くしてはっきりした音を出すようなイメージで弾きましょう。
sfはやりすぎと言っていいぐらいにしっかり音を出しても大丈夫です。
また1小節目の1拍目のように音が離れているところは、メトロノームに合わせる必要はなく、次の音を弾く準備ができたところで音を鳴らすと無理なく弾けます。
「ララシ♭ソ#ラ」で一区切り、「ラレミラーシド#レ」で一区切りということを意識して弾きましょう。
12小節目の後半~16小節目(0:28~0:36)は私は1小節ごとにスラーがついているような感じで弾いています。
17小節目の右手の高いシの音に向かってだんだん高く飛んでいくイメージをして弾いています。
②33~87小節目(動画1:08~3:16)
私がこの曲を聴いていて「あ、シューマンらしいな」と感じている部分です。単純なメロディーと伴奏ではなく、副旋律も入ってくるので「弾きにくい!」と感じる方もいると思います。
まず、どれが主旋律(一番大切なメロディー)になるのか確認しましょう。主旋律が一番よく聴こえるように音量を調節して弾けるように練習しましょう。
私は1小節ずつ、何度も、ゆっくり、繰り返して練習しました。時間がかかる練習方法に見えますが、これが一番確実で、1週間でだいぶ変わります。
61~64小節目(2:24~2:31)で最初のテーマが転調されて出てきます。弾き方のポイントは最初のテーマと同じです。
ト短調→変ロ長調→変ホ長調→ハ短調…と61~64小節目だけでも転調が多いです。このように調がコロコロ変わっていく様子も楽しめるといいですね。
65~67小節目(2:31~2:37)は左手のスラーと右手のスタッカートの違いをはっきり出しましょう。
スラーのなめらかに音楽が流れるパートとスタッカートの軽やかにはずむパートが合わさってるので、私は弾いてて楽しい部分でもあります。
③88~143小節目(動画3:16~5:08)
②33小節目~87小節目とは違い、メロディーと伴奏と分かれているので弾きやすい部分です。赤い線はソプラノ歌手、水色の線はテノール歌手が歌っているように弾くといいでしょう。ソプラノとテノールの二重唱です。
この部分は弾きやすい分単調に聴こえてしまうので、曲の盛り上がりを研究して自分が歌いやすい音楽を奏でましょう。
124~130小節目(4:31~4:39)の左手のトレモロはドラムロールをイメージして私は弾いています。
よくテレビで結果発表の前にダダダダダ…と鳴っているティンパニーの音です。(スネアドラムの時もありますが、この部分はティンパニーの音がしっくりくるような気がします。)
Pのように音が小さい時は左手の手首はあまり動かさないように静かに弾きましょう。
また右手ですが、ピンク色の線で塗った「ラーソーファ#」というメロディーと「ラレミラーシド#レ」というテーマが両方聴こえるように練習しましょう。
片手だけで2つのメロディーを弾くのはかなり大変です。
④144~196小節目(動画5:09~6:53)
私はここがこの曲一番の難所だと思います。
これまでと比べると音符の数が少なくて弾きやすく見えますが、実際に弾いてみると上手く脱力ができず、2小節だけで腕が痛くなる人もいます。
コツとしては拍の頭にある8分音符は、弾く瞬間だけ力を入れてすぐに力を抜きます。
そのあとに続く16分音符は音が「タンタタ、タンタタ」としっかり聴こえていれば力を入れて弾く必要はありません。
152~159小節目(5:34~5:49)の左手はさらに難しくなります。
鍵盤の同じところで弾くのではなく、前にずらしながら弾くと弾きやすくなります。
図で表すとこのようになります。これはあくまで一例なので、自分が弾きやすい方法を探してみてください。
⑤197~254小節目(動画6:54~10:12)
この部分はペダルを踏むタイミングがとてもシビアだと思います。
私は拍の頭(水色で囲んだ音)で踏んで、拍の裏(囲んでいない音)で離します。このとき、スラーで繋がって聴こえるか、拍の頭の音と拍の裏の音が混ざってしまっていないか確認しながら離すタイミングを微調整します。
これも1小節ずつ、何度も、ゆっくり、繰り返して練習しましょう。こればかりは根気です。
205小節目(7:29~)からの6度の重音は、指の間が広がらないと大変です。
マッサージをしたり、ハノンの49番と59番で6度の重音の練習をして慣れていきましょう。
222小節目(8:10~)からは両手ともに6度の重音が出てきます。減7の和音という不気味な和音で構成されているので、弾いていてもちょっと気持ち悪いなと感じるかもしれません。
238~242小節目(8:49~9:14)と250~252小節目(9:34~9:52)の赤で囲んだところはテーマのリズムの最初の部分でもあります。
この部分はppなので、赤で囲んだところは少し音を引き立たせるように、右手とは違う固い感じの音で弾きましょう。
まとめ
・転調や曲の雰囲気の変化を楽しもう。・1小節ずつ、何度も、ゆっくり、繰り返して練習しよう。
ノベレッテの1番と8番は演奏する方はいるのですが、5番を演奏している人は私の音楽高校時代、音楽大学時代では自分以外誰もいませんでした。
なかなか選ばれない曲ですので、人とかぶりたくない方にはオススメです♪
「ノヴェレッテンOp.21」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1879年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されその後再版されたパブリックドメインの楽譜です。Op.21全8曲が収録されており、第5番Op.21-5は27ページからです。
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