今回ご紹介するベートーベンのピアノソナタ第10番は、全音楽譜のソナタアルバム第1巻に収録されています。

この「ソナタアルバム」はソナチネ(初級~中級)が終わった後に中級~上級の第1歩としてよく使われる曲集で、いわゆるクラシックの王道を学んでいる方の必修教材になります。

これからソナタに入るという方も、ベートーベンを弾いてみたいという方も、ぜひ挑戦していただきたい一曲です♪

■ 目次

難易度は?


譜読みはわりと易しめで、チェルニー30番程度(中級レベル)です。
右手は親しみやすいメロディー、左手は分散和音で構成もとてもシンプルです。

中間部分は右手が細かく動く部分があるので、速弾きのテクニックは必要ですね。
しかしピアノソナタ初心者の方には、取りかかりやすい曲だと思います。

ベートーベンのソナタの中でも有名な「月光」や「悲愴」、「熱情」などは短調で激しいイメージがありますよね。

ベートーベンは頑固で気難しい人だったと言われているので、なんとなく性格が表れているような曲が多いです。

でもこのピアノソナタ10番はとても明るくて可愛らしい感じが、ベートーベンの曲にしては珍しい作品です。
あまり有名な曲ではありませんが、私は隠れ名曲だと思います!

速度表記のAllegroは「軽快に」という意味なのでやや速めですが、中間部分で細かいパッセージが出てくるので、自分の弾きやすい速度で練習してみましょう♪

ソナタアルバムの楽譜はこちら♪



ベートーベンの他にもハイドン、モーツァルトの同じくらいの難易度の曲が収録されています。
独学や趣味の方にも人気の1冊です。

弾き方のポイント

ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜1 (動画冒頭~)

まずはじめに、ソナタとは
・提示部
・展開部
・再現部
の3部に分かれています。

これに序奏や終結部(コーダ)が含まれたりもします。

この曲はアウフタクトで始まりますね。
しかし拍を意識しすぎず、テーマとなる大事なメロディーなのでなめらかに弾き始めましょう。

右手の問いかけ(メロディー)に対して左手(分散和音)が答えているイメージで、右手と左手が会話をしているみたいですね。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜2 (動画0:39~)

26小節目から次のテーマが始まります。

ここは右手(女性)と左手(男性)がデュエットで歌っているように、お互いの音を聴きながら綺麗なハーモニーを楽しんでください♪

右手は3度で動きますね。細かいスラーを意識して、軽やかに演奏しましょう。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜3 (動画1:08~)

47小節目から右手に内声が加わります。
メロディーとベースの音を邪魔しないように、裏拍で入ってきます。

dolceは「甘く、優しく」という意味なので、音数が増えますが強くなりすぎないように注意しましょう。

ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜4 (動画1:34~)

63小節目から展開部に入ります。

提示部とよく似ていますが、ト短調で始まって少し暗い感じになります。
臨時記号に注意しましょう。


ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜5 (動画1:55~)

79~80小節目でデクレッシェンドをして、81小節目から急にフォルテになりますね。
一瞬息を吸ってからフォルテに入りましょう。

メロディーが左手になり、右手で3連符の分散和音を刻みます。
赤線を引いてみましたが、右手と左手がずれないようにゆっくりのテンポから練習しましょう。

右手を適当に弾いてしまうと、どこかで「あれ?」とずれてしまいます!


ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜6 (動画2:33~)

次は104~106小節目にかけてクレッシェンドをして、107小節目からフォルテで右手が盛り上がっていきます。

ここは左手をしっかりと出して、右手は転ばないように左手に合わせるイメージで演奏しましょう。

そして124小節目に向けて少し落ち着いて、125小節目から再現部に入ります。

さて、ラストまであと少しです!

ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜7 (動画3:17~)

再現部に入り、137小節目からは最初の提示部と調が変わっていますね。
雰囲気は変わりますが、提示部の形と同じなのでここからは弾きやすいと思います。

さっきの激しい部分は何だったんだ?と言わんばかりに、初めの穏やかな気持ちを思い出して落ち着いて演奏しましょう。


ベートーヴェン「ピアノソナタ第10番ト長調Op.14-2第1楽章」ピアノ楽譜8 (動画4:28~)

187小節目からは終結部(コーダ)になります。

p(ピアノ)からf(フォルテ)を繰り返して、最後はポンっと優しく終わります。
嵐の後に穏やかな天気が戻って、鳥のさえずりが聞こえて終わる、というイメージですね。

こんな可愛らしい終わり方をするのもベートーベンの曲の中では珍しく、私の好きなポイントでもあります。

まとめ

・ベートーベンのソナタの中では易しい方だが、速弾きのテクニックも必要な曲
・右手と左手が会話をしているように、お互いの音を聴きあって演奏する
・穏やかで可愛らしい部分と、速くて激しくなる部分のメリハリをつける

以上がポイントになります!

この曲は「月光」や「悲愴」に比べたらあまり知られていませんが、とてもシンプルで美しい隠れ名曲です。

ベートーベンが好きな方も、ベートーベン初心者の方もぜひ挑戦してみてくださいね♪



「ソナタ第10番」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1862年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社からから出版され、その後再版されたパブリックドメインの楽譜です。

ベートーベン(ベートーヴェン)「ピアノソナタ」の記事一覧

 ピアノ曲の記事一覧