ソナタまで弾けるようになった方は、ベートーヴェンのピアノソナタを1曲くらいは勉強したのではないでしょうか?

本格的にピアノを学ぶものにとって、ベートーヴェンのピアノソナタは避けては通れない作品だと思います。彼のピアノ作品の中で1番重要なものはやはりピアノソナタです。

鍵盤楽器のためのソナタはベートーヴェンよりも前に活躍したハイドンやモーツァルトも作曲していますよね!

しかし、彼らはピアノを想定して書いたのではなく、主にチェンバロやクラヴィコードなどを想定して書いていました。

対してベートーヴェンはピアノで作曲し、ピアノで弾くことを想定して書きました。他の鍵盤楽器を考えることなくピアノのために作曲をした初めての作曲家だったのではないでしょうか。

それはピアノの楽器自体の発展も深く関係しています。

ピアノソナタは彼にとって、とても重要な作品で一時期だけ作曲したのではなく、生涯をかけて作曲しています。

今回はそんなベートーヴェンのピアノソナタ全曲の難易度順について書いていきたいと思います。

ピアノソナタは多くの作曲家が作品を残している


ピアノソナタは多くの作曲家が作曲しています。それぞれの作曲家がどのくらいソナタを書いているのかを見ていきましょう。

【ベートーヴェン以外の作曲家のピアノソナタ作品数】

ハイドン:52曲
モーツァルト:18曲
ショパン:3曲
シューベルト:21曲
シューマン:3曲
リスト:1曲
プロコフィエフ:9曲
ラフマニノフ:2曲


この他にもソナタを書いた作曲家はたくさんいます。

※ハイドンとモーツァルトはピアノを想定して書いてはいませんでしたが、現在はピアノで弾かれるので入れました。

作品数を見ていくと古典派に活躍したハイドンの曲数がとても多いですね。ロマン派に活躍した作曲家(ショパン~リストまで)はシューベルトを除いて比較的作品数が少ないことがわかりますね。

ロマン派以降にソナタの曲数が少ないのは性格的小品など、いろんなタイプの曲を作曲することができるようになったというのが1つの要因だと思います。

もう1つはソナタ形式という形式自体が作曲数を減らす原因だったのではないでしょうか。

ソナタはかなり決まりごとがあり、作曲家自身の思いを曲に込めるのには窮屈だったのではないかと思います。

その窮屈な形式がロマン派以降あまり作曲されなくなった要因ではないかと思います。(ソナタとソナタ形式についてはソナチネアルバム第1巻ソナチネアルバム第2巻の記事で詳しく書いています。)

ベートーヴェンのピアノソナタは何曲あるのか

ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ集 第1巻/ヘンレ社/原典版

他の作曲家がソナタをどのくらい書いているのかを見てきましたが、ベートーヴェンはどのくらい作曲したのでしょうか?

彼はピアノソナタを32曲作曲しました。古典派の作曲家(ハイドン、モーツァルト)はソナタを多く作曲していましたよね。

ベートーヴェンも32曲と多く作曲しました。

ベートーヴェンはいろんな時期を経て、苦悩しながら自身の気持ちやピアノの発展と共にピアノソナタをどんどん成長させていきました。(ベートーヴェンの苦悩についてはワルトシュタインの記事で書いています。)

32曲のピアノソナタは少しずつ作曲され、そして出版されていきました。

32曲と作品数が多いので現在では、2巻にわけて楽譜を出版しています。出版社によっては3巻になっているものもあるようです。

ベートーヴェンのソナタの楽譜って見たことありますか?

とても分厚くて重いんですよ…。レッスンに行くときなど、持ち歩くのが大変でした…。

レッスンでは1曲を見てもらうわけではなく、だいたい2、3曲見てもらうことが多かったので、ベートーヴェンの楽譜プラス2、3冊となると重くて…ちょっとした筋トレです…。

書かれた時期と特徴について


ベートーヴェンの作品は初期、中期、後期の3つに分けて考えられています。32曲のソナタがどの時期に書かれたのかを見ていきましょう。

★初期(1782~1802)

ウィーンに移住し、ハイリゲンシュタットで遺書を書くまでの時期が初期とされています。この頃はピアニストとしても活躍し、作曲家としても徐々に認められていく時期でした。

初期の作品にはハイドンやモーツァルトの影響が作品に出ていると言われています。

ピアノソナタとしては、全体の規模を拡大しようとしていたようで楽章数が4楽章の曲が多くあります。(それまでのソナタは3楽章が基本の形でした。)

●作曲されたピアノソナタ:1番~11番までの11曲
●初期の代表的なピアノソナタ:8番「悲愴」

★中期(1802~1816)

ハイリゲンシュタットで遺書を書いた後から甥カルルの後見人になるまでの時期が中期とされています。

中期の作品には初期のようなハイドンやモーツァルトの影響は作品から見られなくなり、ベートーヴェンらしい個性や作風が目立つようになっていると言われています。

耳の状態は徐々に悪くなっていきましたが、創作は最も充実していた時期でもあったようです。

●作曲されたピアノソナタ:12番~27番までの16曲
●中期の代表的なピアノソナタ:14番「月光」17番「テンペスト」21番「ワルトシュタイン」23番「熱情」26番「告別」

★後期(1816~1827)

甥カルルの後見人になった頃から亡くなるまでを後期とされています。この頃は甥カルルとの関係に悩み、自身の耳の状態のことなど、いろいろと心労が多くあった時期でもありました。

後期の作品は中期よりさらに内面的な深みを増していると言われています。

●作曲されたピアノソナタ:28~32曲までの5曲
●後期の代表的なピアノソナタ:29番「ハンマークラヴィーア」

遺書を書いた後の中期の充実ぶりはすごいですよね!!有名なソナタはほとんどこの時期に書かれています。苦悩を乗り越え、そしてその苦悩を創作意欲に変えてしまうところがすごいです!!

タイトルはベートーヴェンがつけたのか


32曲のピアノソナタは作品番号ではなくタイトルで呼ばれているものも多くありますよね。タイトルで呼んでいるソナタを見ていきましょう。

◆タイトルで呼ばれているソナタ

8番「悲愴」、12番「葬送」、14番「月光」、15番「田園」、17番「テンペスト」、21番「ワルトシュタイン」、23番「熱情」、24番「テレーゼ」、26番「告別」、29番「ハンマークラヴィーア」

一般的に呼ばれているのはこの10曲だと思います。

この中でベートーヴェン自身がつけたタイトルは8番「悲愴」26番「告別」2曲しかありません。

「悲愴」に関してはベートーヴェン自身がつけたのかは実はよくわかっていないそうです。しかし、初版から「悲愴」と書かれていたので自身がつけていたのではないにしても、了承はしていたものと思われます。

他のタイトルは通称です。なぜそのように呼ばれるようになったのかを見ていきましょう。

◆通称タイトルの由来

●12番「葬送」:第3楽章が「葬送行進曲」となっているため曲全体が葬送と呼ばれています。

●14番「月光」:13番と14番は「幻想曲風ソナタ」というタイトルがついています。
ドイツの詩人で音楽評論家でもあったルートヴィヒ・レルシュタープが「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」とコメントしたことが由来とされています。

●15番「田園」:ハンブルグの出版社クランツが1838年の出版時に「Sonate pastrale」と書き加えて出版したことが由来とされています。

●17番「テンペスト」:この曲の解釈を弟子がベートーヴェンに尋ねた際に「シェイクスピアのテンペストを読め」と言ったことが由来とされています。

●21番「ワルトシュタイン」:ワルトシュタイン伯爵に献呈された曲のため、そのように呼ばれています。

●23番「熱情」:ハンブルクの出版社クランツが1838年に連弾用に編曲したものに「熱情」と書き加えて出版したのが由来とされています。

●24番「テレーゼ」:伯爵令嬢テレーゼ・フォン・ブルンスヴィックに捧げられた曲のため、そのように呼ばれています。

●29番「ハンマークラヴィーア」:ベートーヴェンがシュタイナー社へop.101以降のピアノソナタに「ピアノフォルテ」に代わって「ハンマークラヴィーアのための大ソナタ」とドイツ語表記で記すようにと手紙に書いたことが由来とされています。この29番だけが「ハンマークラヴィーア」と呼ばれるようになりました。

ベートーヴェンに限らず、作曲家自身がつけていないタイトルって結構あるんですよね。

作曲家がタイトルをつけていないものに関しては、タイトルによってイメージが限られてしまうことを望んでいなかったので、タイトルをつけなかったのだと思います。

しかし、聴く人にとってはタイトルがついている方が曲を覚えやすく、イメージがしやすくなりますよね。

作曲家がつけたものにしろ、通称にしろ、タイトルがついている曲の方が広く知られていて有名な曲が多いように思います。

全曲の難易度順

それでは32曲のピアノソナタの難易度順について書いていきますね!
全曲の難易度順と有名な曲のみ抜き出した難易度順の2タイプ書いていきます。


●全曲の難易度順

・★の数で難易度を表し、10段階で曲を振り分けています
・数字はソナタの番号です
・同じ難易度のものは数字の小さい順に並べています

★          20番 ト長調 Op.49-2

★★         19番 ト短調 Op.49-1

★★★        25番 ト長調 Op.79

★★★★       5番 ハ短調 Op.10-1
           6番 ヘ長調 Op.10-2
           10番 ト長調 Op.14-2

★★★★★      4番 変ホ長調 Op.7
           8番 「悲愴」ハ短調 Op.13
           9番 ホ長調 Op.14-1

★★★★★★     1番 ヘ短調 Op.2-1
           7番 ニ長調 Op.10-3
           11番 変ロ長調 Op.22
           13番 変ホ長調 Op.27-1
           16番 ト長調 Op.31-1
           18番 変ホ長調 Op.31-3

★★★★★★★    2番 イ長調 Op.2-2
           3番 ハ長調 Op.2-3
           15番 「田園」ニ長調 Op.28
           22番 ヘ長調 Op.54
           24番 「テレーゼ」嬰ヘ長調 Op.78
           27番 ホ短調 Op.90

★★★★★★★★   12番 「葬送」変イ長調 Op.26
           14番 「月光」嬰ハ短調 Op.27-2
           17番 「テンペスト」ニ短調 Op.31-2
           28番 イ長調 Op.101
           30番 ホ長調 Op.109
           31番 変イ長調 Op.110

★★★★★★★★★  21番 「ワルトシュタイン」ハ長調 Op.53
           23番 「熱情」ヘ短調 Op.57
           26番 「告別」変ホ長調 Op.81a
           32番 ハ短調 Op.111

★★★★★★★★★★ 29番 「ハンマークラヴィーア」変ロ長調 Op.106


●有名な曲のみの難易度順

★★★★★      8「悲愴」
★★★★★★★    15「田園」,24「テレーゼ」
★★★★★★★★   12「葬送」,14「月光」,17「テンペスト」
★★★★★★★★★  21「ワルトシュタイン」,23「熱情」,26「告別」
★★★★★★★★★★ 29「ハンマークラヴィーア」


全体を見ていくと難易度順が番号順ではないことがわかると思います。

ベートーヴェンのピアノソナタはテクニック的に難しいのはもちろんですが、曲を表現するという点でも難しいです。

粒はしっかりそろえて弾かなければなりませんが、モーツァルトのような軽い印象ではいけないし、ただ重く弾けば良いというものでもないんですよね。

ベートーヴェンのソナタを弾くときの注意点は強弱を確実に守ることです。激しく弾くところは熱中して弾く!

この強弱の急激な変化は彼の気性の激しさから来ているものなのかもしれません。心穏やかな人は多分あそこまで急激には変えないでしょう。

しかし、そこがベートーヴェンらしいところであり、魅力でもあると思います。作品の中で自分を表現するということはその後のロマン派へもつながっていきます。

指揮者、ピアニストとして活躍したハンス・フォン・ビューローはベートーヴェンのピアノソナタを音楽の「新約聖書」と評しています。(「旧約聖書」はバッハの平均律クラヴィーア曲集)

それだけベートーヴェンのピアノソナタがピアノ作品の中でも重要な作品だということなのです。

タイトルがついている彼のピアノソナタはピアノを習う学習者も弾きますが、ピアニストもリサイタルで弾いたり、CDに収録したりしますよね。

学習者とピアニストの両者が弾く曲は他にもたくさんありますが、ピアニストがそのリサイタルでメインの曲として取り上げているかとなると、ベートーベンのピアノソナタ以外の曲ではなかなかそのような曲はない気がします。

それだけテクニック的にも曲の内容的にも充実した作品ということなんだと思います。

ベートーヴェンのソナタは弾いていてあまり楽しい作品ではないかもしれませんが、勉強になります!この難易度を参考にしてお好きな曲に挑戦してみて下さい!!

まとめ

◆ベートーヴェンはピアノで作曲し、ピアノのために作品を残した作曲家
◆古典派はソナタの曲数が多く、ロマン派以降はソナタの曲数が少ない
◆ベートーヴェンのピアノソナタは32曲
◆作品は初期、中期、後期の3つの時期に分けられる
◆中期が1番充実していた
◆ベートーヴェンがつけたタイトルは8番「悲愴」と26番「告別」の2曲のみ
◆難易度順は番号順ではない



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