作曲家としては有名なシューマンですが、「トロイメライ」ぐらいしか一般的には知られていません。

またピアノを習っている方でもシューマンの曲で勉強するのは「ソナタ」「謝肉祭」「幻想小曲集」あたりだと思います。

しかし、実はシューマンにはまだまだ知られていない聴きごたえのある曲があります!

今回は一般的にはまだマイナーな曲集である「8つのノヴェレッテン 作品21」について各曲の難易度と簡単な特徴を紹介します。

■ 目次

どんな曲?

「トロイメライ」で有名なロベルト・シューマン(Robert Alexander Schumann, 1810-1856)によって1838年に作曲されました。

ノベレッテ(ノヴェレッテン)は「Novelletten」と書き、短編小説のことを指します。シューマンは読書が好きで、文学的な要素を音楽に反映させています。

発表会やコンクールなどではあまり演奏されないので、曲が被りたくないけどかっこいい曲・壮大な曲を弾きたい方にオススメです。

楽譜はこちらから購入できます。



各曲の難易度と特徴

今回は「とりあえず通して弾ける」ようになるには、どれぐらいの技術が必要かという点を重視して難易度を設定しています。難易度が易しい順に紹介していきます。

★☆☆…ツェルニー40番学習中でも弾けるかも

第4番ニ長調Op.21-4
シューマン「ノヴェレッテン第4番ニ長調Op.21-4」ピアノ楽譜1

ノヴェレッテンの中で一番弾きやすいワルツ曲です。

シューマン「ノヴェレッテン第4番ニ長調Op.21-4」ピアノ楽譜2
途中ヘミオラという、2拍子に聴こえるところ(赤ので囲んだところ、19-20小節目)があります。拍子の感覚の変化も楽しめる曲です。(動画0:18-0:21)

シューマン「ノヴェレッテン第4番ニ長調Op.21-4」ピアノ楽譜3
25小節目から32小節目までは全部ヘミオラ(2拍子に聴こえるところ)です。(動画0:24-0:30)

他にも何回かヘミオラが出ているので演奏を聴きながら探してみてください。

個人的にはチャイコフスキーの「花のワルツ」に雰囲気が似ているなと感じでいます。


第6番イ長調Op.21-6
シューマン「ノヴェレッテン第6番イ長調Op.21-6」ピアノ楽譜1

スタッカートとスラーの違いを楽しむ曲というイメージを私は持っています。

シューマン「ノヴェレッテン第6番イ長調Op.21-6」ピアノ楽譜2
95小節目から102小節目(動画1:34-1:31)のメロディーは途中転調されながら何回かでてきます。

とても美しいメロディーなので、この曲の聴かせどころです!


第1番ヘ長調Op.21-1
シューマン「ノヴェレッテン第1番ヘ長調Op.21-1」ピアノ楽譜

ノヴェレッテンといえばこの曲!といわんばかりに、よく演奏される曲です。

最初の勇ましいテーマがかっこいい曲です。

かっこいい曲を弾きたい方、和音をしっかりつかめる方にオススメです。

★★☆…ツェルニー40番修了程度は必要

第7番ホ長調Op.21-7

シューマン「ノヴェレッテン第7番ホ長調Op.21-7」ピアノ楽譜

オクターブが曲の大半を占めます。

付点2分音符が116(4分音符に直すと348)というものすごく速いテンポを指定していますが、あくまでも速度感を表しているため、この速さで弾きなさいという訳ではないと私は考えています。

フレーズを大きくとらえて、軽快に弾いてほしいとシューマンが考えているのかと思います。


第5番ニ長調Op.21-5
シューマン「ノヴェレッテン第5番ニ長調Op.21-5」ピアノ楽譜

こちらでも曲の解説をしています。https://shirokuroneko.com/archives/12615.html

このノヴェレッテンの中でも曲の雰囲気がよく変わる曲です。

長い曲に初めて挑戦する方も楽しく練習できる曲だと思います。

(私みたいに飽きっぽい方にもオススメです。)


第8番嬰ヘ短調Op.21-8
シューマン「ノヴェレッテン第8番嬰ヘ短調Op.21-8」ピアノ楽譜

こちらでも曲の解説をしています。https://shirokuroneko.com/archives/12853.html

ノヴェレッテンの中で一番長い曲ですが、同じテーマが繰り返されているので、譜読みはそれほど時間がかからないと思います。

★★★…ツェルニー40番修了かつ手首を含む腕全体の脱力がカギになる

第3番ニ長調Op.21-3
シューマン「ノヴェレッテン第3番ニ長調Op.21-3」ピアノ楽譜1

A-B-Aの3部形式です。Aの部分はスタッカートの音がきれいに響かせられると良いですね。

スタッカートだけでなくスラーやアクセントが付いていたり、sfからいきなりppになって強弱変化が大きかったり、突然ritard.がついていたりと速度変化が忙しいです。

細かい記号も含めておそらく譜読みは一番大変かもしれません。

シューマン「ノヴェレッテン第3番ニ長調Op.21-3」ピアノ楽譜2
Bの部分は91-94小節目の左手の移動が難しいです。(動画1:59-2:10)

上記に挙げた動画はしっかり弾いている感じですが、私が聞いたことある演奏者はこの楽譜の指定のテンポよりも速く弾いていました。

演奏者によってテンポの取り方が様々に表れるところです。

シューマン「ノヴェレッテン第3番ニ長調Op.21-3」ピアノ楽譜3
95小節目以降、何回か出てくるシンコペーションのリズムにより、なんか落ち着かない感じ、切迫した感じがでています。(これはリズムだけでなくシューマンらしい和音の変化も関わっています。)


第2番ニ長調Op.21-2
シューマン「ノヴェレッテン第2番ニ長調Op.21-2」ピアノ楽譜

A-B-Aの3部形式です。

Aの部分に出てくる右手のこの音型(上記の楽譜)がとても難しいです。多分、「ノヴェレッテン」の中で一番難しいと思います。

音にもよりますが、親指で連打する所があるので、力が入ってしまうと連打が出来ず、バテてしまいます。

この音型さえクリアできれば、Bの部分(動画2:06-5:14)はゆったり弾けるので、通して弾けるようになると思います。

余談

そもそも私が「ノヴェレッテン」を知ったきっかけは、音楽高校に通っていた時、先輩が演奏していたからです。

その時の先輩の楽しそうに弾いている姿と曲の雰囲気のかっこよさに衝撃を受け、すぐに先生に「ノヴェレッテン弾きたい!」と言ったぐらいです(笑)

紹介したようにかなりレベルが高い曲ばかりですが、シューマンらしさを存分に感じることができるので、シューマンが好きな方には是非挑戦してほしいなと思います。



「ノヴェレッテンOp.21」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1879年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されその後再版されたパブリックドメインの楽譜です。

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