ベートーベンのピアノソナタ第1番は、コンクールの課題曲によく使用される曲です。
今回ご紹介する第1楽章は、ピアノソナタ初期の作品でありながらベートーベンらしさが全面に感じられます。
短調ですが暗いイメージではなく、なぜか心が弾むような情熱に満ち溢れています。
ベートーベンは気難しい人だったといわれていますが、音楽に対する思いは率直で情熱的だったことが曲から分かります。
有名なピアノソナタである「悲愴」や「熱情」より譜面は簡単そうに見えますが、弾いてみるととても奥が深いので私は隠れ名曲だと思います。
曲の長さも長すぎず短すぎず、発表会にもおすすめの曲ですよ♪
難易度は?
実はこの曲、ピアノ学習者によく使われている「ソナタアルバム」の第2巻に収録されています。全音のピアノピースでは「D(中級上)」レベルになっていますし、ヘ短調という♭が4つの調なので、譜面を見た感じより少し難しく感じられるかもしれません。
しかしシンプルなソナタ形式で同じ伴奏のパターンが多いので覚えやすく、弾いていてとても楽しい曲ですよ♪
(ソナタ形式とは、提示部・展開部・再現部の3部からなる形式です。)
短調ですがとてもエネルギッシュで、何か新しいことが始まるようなワクワク感もありますね。
余談ですが、この曲はモーツァルトの交響曲からヒントを得て作曲されているのではないかとも言われています。
その曲がこちら。
モーツァルトの交響曲第25番の第1楽章です。
こちらはト短調ですが、冒頭のメロディーが確かに似ているような、、、
こういった作曲家同士の繋がりを発見するのも面白いですよね♪
弾き方のポイントは?
(動画冒頭~)※動画は繰り返しがあります。
初めに注意したいのがアウフタクトです。
曲を聴いただけだと、冒頭部分が何だかリズムがずれているように聴こえます。
これがこの曲の面白いポイントですね。
しっかり2拍子を意識しないとリズムが崩れてしまうので、1拍半、心の中で数えてから弾き始めましょう。
ずれるように感じてしまう場合は、赤丸で囲った1拍目の音を意識して1小節ごとに拍を感じると良いですよ。
さらに音が上行するところで少しクレッシェンドをかけると、勢いがついてメリハリが出てきます。
ただ、p(弱く)の中なので強く叩かないように注意しましょう。
(動画0:10~)
7小節目の右手の和音はアルペジオの記号が付いているので、少し強調するためにペダルを使ってみましょう。
フェルマータが付いている休符は、1拍休んで一息吸ってから次の左手のメロディーに移ります。
(動画0:21~)
15~19小節目は同じフレーズが3回続きます。
このしつこい感じが、とてもベートーベンらしいのです(笑)
3回目のフォルテの部分に向けて、だんだん前に迫ってくるイメージで演奏しましょう。
(動画0:27~)
また出ました、メロディーのしつこい繰り返しです(笑)
繰り返しですが、つまらなく聞こえないのがベートーベンのすごいところ!
22、24小節目にスフォルツァンドを付けることで緊張感を保っています。
ここも強調するようにペダルを使いましょう。
ちなみにスフォルツァンドは、上から叩いて弾くと雑に聞こえてしまいます。
「体重をかけて押し込む」というイメージで、少し前かがみになるくらいで演奏すると自然に力が入れられますよ。
この繰り返しパターンやスフォルツァンドは何度も出てくるので、「また出た!」と探しながら弾くのも楽しいです。
(動画0:40~)
33~39小節目の左手はシンコペーションというリズムで、裏拍にスフォルツァンドが付いています。
2分音符の音に合わせて、ペダルを使って強調しましょう。
この時、右手が左手につられないように要注意です。
右手はスラーがかかっているメロディーを一息で歌うように、滑らかに演奏しましょう。
(動画1:57~)
49小節目からは展開部に入りますが、ヘ短調の平行調(同じ調号)である変イ長調で始まります。
長調になるので、楽しげな明るい気分で弾き始めましょう♪
しかしすぐ短調に戻って、転調を繰り返します。
ベートーベンはかなり気分屋だったのでしょう(笑)
次が少し難しい部分です。
(動画2:17~)
67小節目の終わりから左手にメロディーが移ります。
左手も右手と同じようにメロディーが弾けるように、ここは要練習です。
右手は楽譜を見ないでも弾けるくらいに覚えて、左手に集中しましょう!
(動画2:25~)
73小節目の終わりから左手と右手で交互にスフォルツァンドの音が出てきますね。
両手でメロディーの掛け合いをする、面白いところです。
「ミ♭~ラ♭~レ♭~ソ~ド~ファ~」と繋がって聞こえるように演奏しましょう。
楽譜を見ながら弾く時は、上の図のように丸を付けておくと分かりやすいですよ。
(動画2:46~)
93~100小節目までは、再現部に向けてのつなぎとなっています。
左手は4分音符で一定のリズムを刻みますが、クレッシェンドでだんだん大きくするのにつられてテンポが崩れないように注意しましょう。
もやもやしていた視界がだんだん晴れていくようなイメージで、101小節目~の再現部に向けて気持ちも盛り上げていきます。
提示部はpで始まっていましたが、再現部はfで力強く演奏しましょう!
再現部は提示部とメロディーのパターンがほぼ一緒ですが、提示部とは調が違う部分もあるのでじっくり譜読みしましょう。
(動画3:48~)
最後のコーダ部分もカッコいいですね。
全音符の長い音と休符はしっかり拍を数えて、適当に弾かないように気を付けましょう。
私は耳で曲を覚えるタイプだったので、こういう休符などを適当に数えて弾いて、ピアノの先生によく怒られたものです(笑)
両手で和音、しかもフォルテッシモで弾くのは難しいですが、鍵盤をつかむイメージで力強く最後を決めましょう!
まとめ
・譜面は簡単そうに見えるけど、ヘ短調なので油断大敵!
・スフォルツァンドはペダルを使ってしっかり目立たせる!
・アウフタクトやシンコペーションのリズムが崩れないように注意!
以上がポイントになります。
とにかくこの曲は、強弱の差をしっかりつけることが大事です。
発表会やコンクールで演奏する方は、自分が思っているより大げさに表現してみてください。
メリハリのあるカッコいい演奏を目指しましょう!
この曲をマスターするとベートーベンの曲の特徴がつかめるので、他の有名なピアノソナタもぜひ挑戦してみてくださいね♪
「ピアノソナタ第1番ヘ短調Op.2-1」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1919年にリコルディ社から出版されたOp.2-1全楽章のパブリックドメインの楽譜です。
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