ショパンのノクターンといえば第2番や第20番(遺作)が有名ですが、今回は筆者が一番好きな第8番をご紹介します!
第8番のノクターンは、第7番とセットで「2つのノクターンOp.27」として1835年に作曲、1836年に出版されました。
オーストリア駐仏公使夫人であったダッポニィ夫人に献呈されたことから、「貴婦人のノクターン」とも呼ばれています。
第8番はとても優雅な曲で、まさに貴婦人が紅茶を飲みながら聴くのにぴったりな素敵なノクターンです。
私は自分のお葬式で流してほしいと思っているくらい(笑)聴いていると心が休まります。
難易度は?
まずこの曲は変ニ長調という♭が5つもある調なので、♭系の曲に慣れていない方は難しいかもしれません。
譜面自体は中級レベルで、ツェルニー30番が修了しているくらいのレベルになります。
有名な第2番よりは難しいので、第2番じゃちょっと物足りない!というくらいの方にちょうど良いと思います。
変ニ長調をあまり弾いたことがない方は、変ニ長調のスケール、カデンツなどを練習しておくと♭系に慣れて弾きやすくなりますよ。
楽譜について
ショパンの楽譜と言ったらクリーム色のパデレフスキ版が主流でしたが、最近では原典版の楽譜の方もピアノのレッスンなどで使われているそうです。
こちらのパデレフスキ版は私も持っていて、昔から愛用しています。
しかし収録されているのは第1番~第19番で、遺作として有名な第20番は別売りになっています。
もし第20番、最後に発見されたノクターンである第21番まで揃えたいという方は、こちらのウィーン原典版もチェックしてみてください♪
第8番はノクターンの中でも人気でよく演奏されますが、単体での楽譜はあまりないので曲集で購入することをおすすめします!
弾き方のポイントは?
この曲は全体的にゆったりしていますが、譜面を見てみると意外と音符がぎっしり詰まっているのでびっくりするかもしれません。
左手は16分音符のアルペジオの伴奏が、最初から最後までずっと続いています。
この左手の伴奏を確実にマスターして、曲の流れを止めないようにすることが大切です。
(動画冒頭~)
冒頭は伴奏から始まり、2小節目から美しい声楽のようなメロディーが入ってきます。
左手の伴奏は同じ和音(レ♭ファラ♭)が続くのでペダルが踏みっぱなしになっていますが、全体的にもやっとしないように右手のメロディーをよく聴いて演奏しましょう!
(動画0:40~)
10小節目からメロディーが2声になります。ここも全体の響きをよく聴いて、ソプラノのメロディーを意識します。
デクレッシェンド、クレッシェンドが細かく書かれているので、歌っているような抑揚をうまく表現してみましょう。
(動画1:05~)
16小節目のような重音で細かく動くところは弾きにくいですが、指先だけで無理に動かさずに腕も使って硬くならないように気を付けてください。
(動画1:20~)
同じようなことが、20小節目の32分音符の動きにも言えます。
このような細かい動き(しかも今度はオクターブ!)が硬くならないように気を付けましょう。
またインテンポで弾くと機械的な演奏になってしまうので、3、4拍目(ラ♭で伸ばす音)を少し時間をかけて、32分音符の心の準備をすると良いですよ。
こういう細かい動きが何回か出てくるので、その度に機械的にならないように注意しましょう!
(動画1:40~)
25小節目にriten.(ただちに遅く)、クレッシェンド、26小節目にa tempo(テンポを戻す)が書かれています。
ちなみに私の使っているパデレフスキ版の楽譜にはriten.ではなくrit.(だんだん遅く)、26小節目にa tempoとpp(ピアニッシモ)が書かれています。
楽譜によって多少表現が違いますが、25小節目でいったん区切りをつけて、26小節目から気持ちを切り替えるように演奏しましょう。
(動画2:15~)
33小節目の右手4拍目からの「レ♭」と34小節目の右手1拍目「ド♯」は異名同音になっています。
34小節目からイ長調に転調するので、♭の響きから♯の響きになるのを意識しましょう。
このようにさりげなく転調する技が、ショパンらしくて素敵ですね!
(動画2:50~)
42~45小節目にかけてクレッシェンドが続き、この曲のクライマックスとなります。
左手バスのfz(フォルツァンド)は楽譜によっては>(アクセント)記号になっています。
この低い音が盛り上がるのに大事な音となるので、腕を使ってしっかり鳴らしましょう!
(動画3:05~)
46小節目から初めのテーマに戻ります。
優しい雰囲気の初めと違って、ここは先ほどのクライマックスで盛り上がったままf(フォルテ)で演奏しましょう。
しかし50小節でpp(ピアニッシモ)になるので、ここで急に優しい雰囲気に変わります。
(動画3:29~)
そして52小節目はこの曲の目玉!?でもある48連符が出てきます!(長い!)
con forza(力強く)の指示がある楽譜もありますが、ここは後にpp(ピアニッシモ)に修正されたという資料があるそうなので、弱く弾く演奏者の方が多いです。
キラキラと天使が舞っているように演奏したいところですね。
一気に覚えようとすると大変なので、前半と後半に分けるなど区切って練習しましょう。
(動画4:12~)
62小節目からコーダに入り、ここからはとにかくdolce(甘く、優しく)です。
あまり弱くしすぎると最後まで同じ感じになってしまうので、メロディーや和声の移り変わりを感じながら丁寧に演奏しましょう。
(動画5:08~)
75小節目、6度音程で上っていく右手は天使が空へ昇っていくようなイメージで演奏しましょう。指先に集中して、高音のキラキラ感が出せると良いですね。
最後のフェルマータもしっかり余韻を感じてください。
まとめ
- 左手の伴奏に合わせて曲の流れを止めないように演奏しよう!
- 速いパッセージ、連符の部分は機械的にならないように注意しよう!
- 調性の変わり目、和声の移り変わりを感じて演奏しよう!
以上が弾き方のポイントになります。
有名な第2番の雰囲気が好きな方は、きっと第8番も気に入られるのではないでしょうか。
ショパンのノクターンは演奏者によってテンポや弾き方に個性が出ます。
ぜひ色々なピアニストの演奏を聴いて、参考にしてみてくださいね!
「ノクターン第8番Op.27-2」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1894年にシャーマー社から出版されその後再販されたパブリックドメインの楽譜です。「ノクターンOp.27」全2曲が収録されており、Op.27-2は6ページからになります。
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