ウェーバーは、古典派後期~ロマン派初期の時代に活躍したドイツの作曲家です。
同じ時期で有名なベートーベンやシューベルトと比べると、あまり知られていないかもしれませんが…
ピアノ曲や協奏曲、オペラなどたくさんの作品があります。
今回はウェーバーが1812年に作曲した、ピアノソナタ第1番Op.24の第4楽章をご紹介します!
この曲は4楽章だけ単独で、「無窮動(むきゅうどう)」という題名で親しまれています。
とても速い曲で聴き映えするので、発表会で弾かれたりピアニストがアンコールで弾いたりと、実は人気のある曲なんです。
速い曲が好きな方は、挑戦してみてはいかがでしょうか!?
無窮動(Perpetuum mobile)とは?
無窮動は「常動曲(じょうどうきょく)」とも言われ、文字通り「常に動く曲」です。初めから最後まで一定の音符の流れが続き、速いテンポであることが多いです。
以前シューベルトの「即興曲Op.90-2」の記事を書きましたが、この曲も右手が3連符のメロディーでできた常動曲ですね。
ウェーバーの無窮動は曲の長さも長いので、演奏者にとっては体力勝負!
発表会で弾くにはかなり勇気のいる曲ですが…(笑)
弾けたらカッコイイですし、腕自慢になりますね!
難易度は?
少しゆっくりめに弾くなら中級レベル、楽譜通りPrestoの速いテンポを目指すなら上級レベルに入る曲だと思います。
ツェルニーの40番練習曲の前半レベルが弾ければ、テクニック的には問題ないでしょう。
実際ツェルニーの40番は「右手が16分音符で左手が伴奏で、テンポが速い」という曲が多いので、とても雰囲気が似ています。
私はこの無窮動を初めて聴いた時、「ツェルニーの長いバージョンみたいだな」と思った記憶があります(笑)
Prestoだと、4分音符=180くらいのテンポで弾くのが理想ですが(ピアニストも大体これくらいのテンポで弾いています)…
180はかなり速いので、160~170くらいのテンポで弾ければ十分だと思います。
弾き方のポイントは?
うーん…やはりピアニストの演奏は速いですね!
(動画冒頭~)
楽譜を見てみると基本的に、右手にスラー、左手にスタッカートが付いています。
右手と左手それぞれが音楽的に(曲として聴こえるように)なるように、まずは片手ずつ丁寧に練習しましょう。
両手一緒に弾いて覚えるというタイプの人もいるかと思いますが、この曲は片手ずつ暗譜で弾けるくらいにしないと、最終的に速いテンポで弾くのが難しくなります。
(動画0:26~)
初めの難関が27小節目の終わりから39小節目まで続く、右手の重音です。
当たり前ですが1音より2音弾く時の方が手に力が入りますし、神経を使いますよね。
ここの右手の2音と1音の繰り返しは、手首を左右に振るようにして、指に力を入れすぎないように弾いてみてください。
右手にかなり神経を使わないといけないので、左手は単音になっているのかもしれないですね。
(動画0:46~)
57小節目の終わりから初めのテーマに戻ってきますが、ここは初めと違ってフォルテで左手も1オクターブ低くなっています。
左手もしっかり音を出して、視界が広がったようなイメージで演奏しましょう。
(動画0:51~)
65~68小節目の部分は、指が広がるので少し弾きにくいですよね。
右手は小指の「ドドミミソソ」という上の音をめがけて弾くと、音を外しにくいですよ。
左手のオクターブの音は4分音符ですが、ここはペダルに任せて伸ばしすぐに次の音に移動しましょう。
(動画1:09~)
91小節目~dolceになる部分は、左手の「ズンチャッチャッチャ」という伴奏が意外に難しいです。
ここも左手の素早い移動が必要なので、鍵盤からなるべく指を離さないように、低空飛行で演奏しましょう!
(動画1:22~)
111小節目と112小節目の間ですが、右手がかなり跳躍しますね。
ここは一瞬息つぎをしても良いので(空きすぎは良くないですが)、音を外さないように気を付けましょう!
(動画2:00~)
161小節目の終わり(ppになる部分)からヘ短調になり、ころころと転調していきます。
今までの臨時記号はほぼ♯でしたが、ここから急に♭ばかりになるので、惑わされずしっかり譜読みしましょう。
(動画2:22~)
192~208小節目まで、左手に楽しいメロディーが現れます。
低い音でスタッカートのこのメロディーは、コントラバスがピチカートで演奏しているようなイメージで「ぽんっぽんっ」と跳ねるように弾いてみてください。
途中でト音記号も出てきてあっちこっち忙しいですが、右手をまたいで演奏するのがとても楽しいところです♪
(動画3:10~)
さて、再現部になり260小節目の終わりからはフォルテッシモが出てきて、いよいよクライマックスです。
ここから最後までずっとフォルテッシモになるので、最後の力を振り絞らなくてはなりません(笑)
(動画3:19~)
そしてこの曲一番の難関(と私が思う)であるのが、273~278小節目に出てくる…
右手の重音演奏+左手の跳躍です!
右手は重音で難しくなりますし、左手は半音ずつ下がっていくバスの音を確実に弾かなくてはなりません。
気合で何とかなればいいのですが(笑)
付点のリズム練習などをして、しっかりと指に音を覚えさせるしかないと思います。
(動画3:56~)
今まで臨時記号だらけでしたが、最後はハ長調で落ち着きドミソの和音でフィニッシュ!
この和音は両手を高く上げて「どうだ!」と言わんばかりに、カッコ良く決めたいですね。
まとめ
・prestoのテンポで弾くのは上級レベル!
まずは4分音符=160くらいのテンポを目指そう!
・右手と左手それぞれだけで暗譜できるようにしよう!
・音が跳躍するところはペダルをうまく使ったり、なるべく低空飛行で演奏しよう!
この曲は速いテンポで弾くだけでも難しいのに、強弱や音楽表現の指示もたくさんあり大変ですよね。
速く弾けてもなんだか適当に聴こえるよりは、多少遅くても音楽的に弾ける方が良いと思います!
テンポを上げるにはまず完璧に音を覚えることと、リズム練習などで指を柔軟にすることが大切です。
弾きやすいテンポからぜひチャレンジしてみてくださいね♪
「ピアノソナタ第1番Op.24」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。ペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。Op.24全楽章が収録されており、第4楽章(無窮動)は13ページからになります。