「ゴリウォーグのケークウォーク(Golliwogg’s Cakewalk)」は、ドビュッシーが1908年に完成させたピアノ組曲「子供の領分(Children’s Corner)」の中の1曲です。

ドビュッシーといえば「音の画家」や「ピアノの画家」といわれているように、美しい情景をそのまま映したような綺麗な曲が多いですよね。

ゴリウォーグのケークウォークという曲は、そんなドビュッシーのイメージを裏切るかのような、とてもコミカルで楽しい曲です。

そして何だか面白い題名の意味、皆さんは分かりますか!?

実は私、小学5年生くらいでこの曲を弾いたのですが、題名の意味がよく分からないまま弾いていました(笑)

意味を知っておくと、きっと演奏がもっと良くなりますよ♪

■ 目次

ゴリウォーグのケークウォークって何?


まずこの曲が入っている「子供の領分」というピアノ組曲ですが、これはドビュッシーが3歳の娘にプレゼントした作品です。

ドビュッシーは43歳で初めてできた娘を、それはそれは溺愛したそうです。

きっと愛しい娘を見つめながら、子供から見た楽しい世界を表現したかったんでしょうね。


「ゴリウォーグのケークウォーク」は全6曲あるこの組曲の6番目、最後の曲です。

ゴリウォーグとは当時流行っていた黒人の人形で、元は絵本のキャラクターなんだとか。

そしてケークウォークとは当時アメリカで流行っていた黒人のダンスで、後のジャズの起源といわれています。

ドビュッシーの3歳の娘は、このゴリウォーグの人形を気に入っていたそうです。

お気に入りの人形が楽しく踊りだす、それを面白く眺めている子供、またその子供を微笑ましく眺めている父親のドビュッシー。

そんな姿をイメージして、楽しく演奏してみましょう♪

難易度は?



ドビュッシーの曲はどれも難しいイメージがありますが、この曲は比較的易しく、コンクールや発表会では小学4~6年生くらいの子供が演奏しています。

練習曲でいうとチェルニー30番程度の、中級レベルです。


しかしアーティキュレーション(強弱や表現記号)の指示がとても細かく書かれているので、ただ音譜通りに弾くだけでは完成しません。

この細かい指示を忠実に守って弾くことで、ドビュッシーの表現したかった世界観が見えてくると思います。

なのでまず音源を聴いたり楽譜をじっくり読んだりして、イメージを膨らませてから練習してみましょう♪

ちなみに私はこちらの楽譜を使っていました。



指番号や解説がしっかりと書いてあるので、とても参考になります。
ドビュッシーの曲で有名な「アラベスク第1番」も入っており、こちらも難易度は同じくらいなのでぜひ挑戦してみてくださいね!

弾き方のポイントは?

1小節目から早速、細かいアーティキュレーションの指示があります。

ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜1 (動画冒頭~)

1、2小節目の1拍目は同じリズムなので同じように弾くのかと思いきや…

よく見ると1小節目の2番目の音「ラ♭」にはスタッカートが付いているのに、2小節目の方の「ファ」には付いていません。

このような細かい記号を見落とさないように、注意して譜読みしましょう!


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜2 (動画0:06~)

6~9小節目はイントロのようなイメージで、ここのリズムがこの先のメロディーを引っ張っていくので、一定のテンポで正確に弾きましょう。

フォルテとクレッシェンドが付いている裏拍の音がポイントですが、意識しすぎると拍子が分からなくなってしまうので、左手の伴奏でしっかりリズムを保ちましょう。

9小節目はピアニッシモからのデクレッシェンドなので、かなり小さくしていきます。

余裕があれば、この小節だけソフトペダルを使ってみましょう。

ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜3 (動画0:12~)

10小節目からテーマの音楽が始まります。

tres net et tres sec はフランス語で、非常にさわやかに、歯切れよく、というような意味です。

10、11小節目は右手が2声になっていて、左手の裏拍と一緒に伴奏をしていますね。

裏拍が目立ちすぎないように、上のメロディーをはっきりと弾きましょう。


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜4 (動画0:25~)

22、23小節目は臨時記号がたくさん出てくるので、見落とさないように注意しましょう。

24、25小節目は変ロ長調で落ち着きます。

オクターブの「シ♭」に向かって右手と左手が離れるので、外さないようにしっかり鍵盤を見てくださいね。


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜5 (動画0:30~)

26、27小節のメロディーパターンは両手ともト音記号で、鍵盤の高い位置にきますね。

左手裏拍の「ラ♭シ♭」の音は右手よりも高くなるので、手が交差します。

ここは弾いている方も見ている方も楽しいところなので、左手が軽やかに動くようによく練習しましょう。

27小節目の右手のシ♭のオクターブは、グロッケン(鉄琴)や鐘の音をイメージすると良いと思います。

ポーン!と可愛らしい感じで演奏しましょう。


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜6 (動画0:55~)

47小節目からは変ト長調(♭が6つ!)になるので、譜読みが少し難しくなりますね。

Un peu moins vite は「速くない」という意味なので、ここから少しテンポを落としましょう。

49小節目にあるこんな記号<pp>←

何じゃこりゃと思われるかもしれませんが、これはppがクレッシェンドとデクレッシェンドに囲まれています。

これは左手の2分音符「レ♭」の音を少し目立たせたい、という意味になります。

弦楽器のような音が伸ばせる楽器だと細かく表現できるのですが、音が減衰してしまうピアノだと少しイメージしづらいですよね。

この2分音符は、チェロかコントラバスだと思って弾いてみてください♪


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜7 (動画1:16~)

61小節目からまた新しいパターンのメロディーが始まります。

Cedez はリタルダンドと同じで「だんだん遅く」という意味です。

avec une grande emotion は「大きな動きをもって」という意味ですが、クレッシェンドが付いているのでアラルガンド(遅くしながらだんだん強く)のイメージだと思って良いでしょう。

あくびをしているような、面白い場面ですね。

ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜8 (動画1:19~)

a tempo で速度を戻して、先ほどのあくびのようなメロディーとは対称的に、小さく軽やかに弾きましょう。

このcedezとa tempoが何回も繰り返されるのですが、少しずつ音が変わっているのでしっかり譜読みをして覚えましょう。

繰り返しのようで実は変化を付けて飽きさせないところが、ドビュッシーの作曲のテクニックですね。


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜9 (動画2:08~)

90小節目~初めのテーマに戻ってきますが、90、91小節目はまだ前の遅いテンポを引きずっています。

Toujours retenu は「前と同じように」という意味です。

92小節目からa tempo なので、初めの軽やかなテンポに戻りましょう。


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜10 (動画2:33~)

110~113小節目で、初めにはなかった新しい和音が出てきます。

p(ピアノ)で弱く弾きますが、1小節ごとに変わる和音の変化を味わいましょう♪


ドビュッシー「子供の領分第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」変ホ長調L.113-6」ピアノ楽譜11 (動画2:50~)

最後ですが、125小節目のpの部分は少しテンポを落として、「もう終わったのかな?」と聴いている人を騙すように弾いても良いと思います。

126~127小節目にかけてのクレッシェンドは思いっきり、ミ♭の音に向かって外さないように集中しましょう!

最後の音は、聴いている人をハッと驚かせるようにカッコよく決めましょう♪

まとめ


・人形が踊っているというイメージを持って、楽しく軽やかに演奏しよう♪

・アーティキュレーションの細かい指示を忠実に守って演奏しよう♪

・鐘の音や弦楽器の音など、ピアノ以外の楽器の音を想像して演奏しよう♪


以上がこの曲のポイントです!

クラシックなのにジャズのような楽しい曲なので、皆さんぜひ挑戦してみてくださいね♪



「子供の領分L.113」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1908年にデュラン社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。L.113全6曲が収録されており、第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」L.113-6は26ページからになります。


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