ショパンのノクターンop.9-2は、「この曲きいたことある!」とピアノをあまり知らない人でもピンとくる有名な曲です。

最近では、フィギュアスケート選手の浅田真央さんのプログラムにも使用されていました。
ショパンといえば、幻想即興曲やワルツが有名ですが、この曲も優美な魅力があります。

筆者は、小学校5年生の時に発表会で披露しました。また、この曲は、友人の家にピアノがあったときにも披露する機会が多かった曲です。
今回は、ピアノ歴21年の私が、大人として演奏を深めるために、この曲の魅力をご紹介し、その表現について探っていきたいと思います。

■ 目次

何曲もあるノクターン(夜想曲)

さて、ノクターンの後に「op.9-2」と続いているのには、理由があります。
実は、ショパンが作曲した「ノクターン」は、彼が20歳から晩年まで手がけた21曲もあるのです!

ノクターンの語源は、夜の黙とうや瞑想の意味をもつラテン語であり、言葉自体は古くからありました。やがて、貴族文化と結びつき、アイルランド出身のジョン・フィールドによって19世紀の初め頃にピアノの独奏曲として形づくられます。
この形式は、当時フランスのサロンで音楽をつくる必要性のあるショパンにとって合っている楽曲形式であり、その形式を踏襲する形で創作されています。

つまり、ノクターンという曲は、「夜の情緒をしみじみと思う叙情的な曲」のことであり、ショパンの夜想曲はその代表的な曲であるのです。

ショパンのノクターン全曲の動画はこちら(op.9-2は5:46からです)

「ノクターンop.9-2」難易度

技術的には、さほど難しくありません。21曲あるショパンの中では、難易度としては簡単なものであり、むしろ大人としては、練習曲にもってこいの曲ともいえます。

また、前述したように、サロン向けの音楽として創作されたものであり、ショパンが作曲した時代に増えたアマチュア演奏家の需要に応えられたものでもあるからです。
ツェルニー30番程度で弾けるでしょう。

とはいえ、装飾音符や繰り返しの回数、そして、左手の伴奏の3拍子中の1拍目と2拍目の跳躍、複雑な和声といった音楽的技術も必要とされます。

どんな弾き方がいいの?

それでは、曲の理解も深まったところで、具体的な弾き方のコツを3つご紹介します。その際、どこが練習曲として使っていけるかについても説明していきます。

右手の単旋律は歌いあげる

音楽的な深みとしては単純と言われながら長く多くの人に愛される理由がこのメロディの美しさです。

この曲が簡単に弾ける理由として、終盤以外は単旋律であることが挙げられますが、視点をかえると一つの音でメロディーをつながなくてはなりません。
そのため、一音一音がとぎれないようにつなげることが大切です。これは、最終的にはペダルを使いますが、最初は、ペダルなしで練習するとよいでしょう。

そして、ただ音を鳴らすだけでなく、歌いあげるように弾くことが大切です。
ピアノの詩人とも言われるショパンの作品ですし、「歌曲」という意識をもつくらい歌ってほしいところです。

特に、主題の中でも「シソ」といった6度の音の繋がりなどのロマンチックな雰囲気は大事にしてください。

このように、右手の旋律を「歌」として聴かせられるようになるためにもってこいの練習曲といえるでしょう。

芯のある優しい音が弾けるように

夜想曲なので、盛り上がりは見せても「夜」の雰囲気はほしいものです。
その雰囲気によって、「p」が聞こえないほど弱弱しくなったり、逆に、気持ちが入りすぎて装飾音符が強くですぎてしまったりということがあります。

どんな音でも聴かせられるように、身体全体で鍵盤を押しにいきますが、あくまでも腕や手首の力をぬいて音を弾くようにしてください。

まずは、利き手の単音指一本で、鍵盤を弾く練習をします。ピアノの中のてこのようになっている弦をはじく部分が、鍵盤を押したときに動く振動を指先に感じるくらいに力をぬき、音量や音の長さをかえてもその感じが継続して音の鳴るポイントをつかむようにします。

そのポイントがおさえられていると芯のある音になります。

このように、密度のある「p」や装飾音符が弾けるようになるための練習になるでしょう。

左手の跳躍はベースを意識する

さて、形式的な音楽を作り出している左手の動きだからこそ、この曲の基盤にもなります。あくまで、ワルツ風といえる軽さが重要であり、3拍子と数えて1拍めにスタッカートがついていますが、ベース音として軽くは扱わない方がよいでしょう。

なぜなら、その後の2拍目、3拍目が和音であることを考えると単音でも2拍目以降に繋げる推進力が必要とされるためです。

また、和音が複雑なのでそこに気がとられがちになるため、丁寧に弾きたいところです。
どのようなニュアンスでワルツをとらえるかはショパンの曲を弾くときに個性を出していい部分であるので、それは、2拍目につけるとしたらその前にある1拍目こそ、その準備として大切にするとより引き立つのではないかと思います。

このように、跳躍前のリズムが丁寧に準備できているかという練習になるでしょう。

簡単な小曲だからといって甘くみてはいけません。音楽的技術として習得できる部分も多いので、聴きごたえのある演奏になるようにしっかり意識して練習することが大切です。
ぜひ、練習してみてくださいね♪



「ノクターン第2番Op.9-2」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    1905年にペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「ノクターンOp.9」全3曲が収録されており、第2番Op.9-2は5ページ目からになります。


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