メンデルスゾーンの無言歌集より『二重唱(デュエット)』は、穏やかで優しげな旋律の中にどこか厳かで神秘的な雰囲気が感じられる名曲です。個人的な感覚ですが、この曲を弾いているとその響きで心が洗われるように感じます。

そして、つらいことがあったとき、自分の心が疲れてしまったときにこの曲を弾くと、弾き終わった瞬間、なぜかすごく救われたような気分になれるのです。そういうわけで、この曲は個人的に不思議な癒し効果のある曲だと思っております。

そんな癒し系なこの曲を披露できたなら、聴く側も弾く側もきっと心穏やかになれることでしょう。そんなふうに音楽で人の心を癒すことができたら幸せですよね。

「落ち着いた重みのある曲を弾いてみたい」、「メンデルスゾーンの無言歌集に興味がある」という方々は必見です。


こんにちは!ピアノ弾きのもぐらです。

畑に積もっていた雪も徐々に消えてきました。地中からはよく見えないのですが、各地では桜も咲いているみたいですね。

でも、暖かかったり急に寒くなったりと、まだまだ気温は安定しません。
特に夜は寒いですので、皆様もお身体ご自愛くださいね。

チャレンジしよう!ピアノ初心者を卒業したい人におすすめの難易度


さて、本題に入りますね。

この曲の難易度については、中級者向けでやや難しいと言えます。ですが難しいとはいってもちょっとした工夫をして地道に練習を重ねていけば、それほど苦労もなく弾ける程度ですので、安心してくださいね。

具体的な難易度の指標としては、ツェルニー30番の後半から40番を練習中という方であれば、充分弾けるほどです。

また、この曲は中級者向けではありますが、「そろそろ初心者から中級者になりたい!」と思っておられる方が、ステップアップのために挑戦するにももってこいと言える曲です。

とにかく、難易度についてはあまり堅苦しく考えず「弾きたい!」という気持ちを優先していきましょう。


旋律をよく聴こう!響きの変化を意識した構成

まず、以下の動画を聴いてみましょう。



この曲についてお話ししていくにあたって、説明をわかりやすくするために、この記事では以下のように一曲を小さなセクションに細切れにしてあります。

セクションA(最初~0:53)
セクションB(0:53~1:19)
セクションC(1:20~1:39)
セクションD(1:39~2:04)
セクションE(2:04~終わり)

※カッコ内の時間は動画の時間に沿ったものです。動画をよく視聴して、予め響きの変化をしっかり捉えることで、実際の練習もよりスムーズに進められるかと思います。

動画をお聴きになるとおわかりになるかと思いますが、この曲は同じような旋律が調を変えながら何度も繰り返し現れ、その旋律の変化によって曲全体が進行していくという構成になっています。

ですので、この曲はまったく同じ場面の繰り返しというのはありません。全体的に学ぶべきことはやや多めですが、その分弾けたときの達成感や充実感は大きいですので、一つ一つを新鮮な気持ちで練習していきましょう。

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA ~旋律をしっかり際立たせよう~

セクションAから、さっそくテーマとなる穏やかな旋律が現れます。

これは曲全体において言えることですが、この曲は主旋律と16分音符のアルペジオ(分散和音)の両方を片手(主に右手)で鳴らしていかなければなりません。

そのためアルペジオを弾きつつ、その中で主旋律をいかに綺麗に際立たせられるかがカギになってきます。そのため、アルペジオについては常に音量を控えめに弾くことが必要です。

※『Andante con moto.』の意味は『少し動きを出しつつ、ゆっくりと』
※『piano』の意味は『音量を小さく』

先ほどもお話ししました通り、この曲は主旋律を綺麗に際立たせることが重要です。それにはまず、譜読みの段階でどれが主旋律になってくるのかを、予め音源を聴きながら確認しておくことが大事です。

譜面上でご説明すると、この部分の右手の箇所に関しては、音符の棒が上向きになっているフレーズが主旋律となります。

この曲の基本的な練習方法としては、片手練習の段階でいきなり完璧に弾こうとするよりも、その前に「主旋律だけ」、「アルペジオだけ」、「左手のベースになる音だけ」というように一つ一つのパートをそれぞれ取り出して練習し、それができたら初めてそれらを組み合わせて片手練習を行う、という方法がおすすめです。

この曲は『二重唱』という題名の通り、まるで合唱曲のようにも感じられます。

合唱というのは、例えばソプラノ、アルト、テノール、というように各パートに分かれますよね。
それと同じように、この曲にも複数のパートがあるということです。主旋律を際立たせるには、そのあたりを常に意識しながら弾くということも重要になってきます。

「一つ一つのパートを取り出すなんて、何だか面倒だなぁ」と思われるかもしれませんが、この方法こそこの曲をスムーズにマスターするための近道と言えますので、根気よく練習していきましょう。

※『cantabile』の意味は『歌うように』
※『sf』の呼称は『スフォルツァンド』で意味は『その音だけ強く』

ここで少し譜面に変化が出てきましたね。(0:15~)
その変化というのは、先ほどの譜面と比較するとおわかりになるかと思いますが、右手にある主旋律とアルペジオの位置の上下が逆になったところです。

このように、この曲ではしばしば旋律の上下が変わっていきます。そのため全体的に譜面の表記がややこしく感じられるかもしれません。そんなときは単純に「アルペジオ(16分音符)以外の音が主旋律」と大まかに捉えるという感覚だけでも充分です。

弾き方のコツとしては、特に両手練習に入る際、主旋律と左手の音をきっちり揃えることです。左手については「右手の主旋律よりも低い音域のパート」という捉え方が最もしっくりくるかと思います。


この箇所の右手で、ふと立ち止まってしまったという方もおられるかもしれません。(0:25~)
私も実際に練習していて、立ち止まって悩んだ思い出があります。

具体的には、この小節の1拍目にある右手の動きです。
「これは一体どうやって弾くべきなのだろう?」と少し疑問に思いますよね。

この部分は文字でご説明しますと【『ド』→《『ファ(ナチュラル)』+『シ♭』の和音》→『レ♭』】という順番で弾くということです。何だか説明がわかりにくくてすみません。

譜面を見るとこの曲では16分音符、そして16分休符も含め、常にそれらが3連符で構成されているのです。

その3連符になっている16分音符(あるいは16分休符)のアルペジオに主旋律を乗せていくということですので、譜面上では一見すると和音で弾くような表記ではなくても、実際に弾いてみると和音になる部分というのも存在するのです。

また、このような表記は他の場面にも登場しますので、ここで理解を深めておきたいところです。

ですが、こればかりは説明よりも、どちらかというと感覚で覚えていったほうが良いのかもしれません。

ですので「もぐらの説明、いまひとつよくわからないなぁ」という場合は、音源を何度も聴いて「何となくこういうふうに弾くものなのだな」と最初は見よう見まねでも良いので、自分なりにそれっぽく弾いてみるという方法も有効かと思います。

※『cresc.』は『crescend』の略称で、意味は『音量をだんだん上げる』
※左手の部分にあるカギかっこの意味は『音をまとめて和音として弾く』
※『d』という表記の意味は『その音は右手で弾く』

この箇所からは、今まで変イ長調だったものが変ホ長調に変わります。(0:40~)
響きが少し変わりますので、その違いを味わいましょう。

この箇所は、一見左手で弾くべきかと思うような部分を右手で弾いたり、またその逆もあったりと、移り変わりが多いため、慣れないうちは「この音は右手で弾く、この音は左手で弾く」というのを自分で見てわかるように、譜面に指示を書き足しつつ練習してみましょう。

☆セクションB ~調の変化を感じ取ろう~

セクションBではセクションAとは打って変わって感傷的な雰囲気に変わります。(0:53~)

調号の表記は変わりませんが、セクションBからは実際弾いて見ると、調がいろいろと変化する場面も出てきます。その変化に細心の注意を払いながら弾いていきましょう。

※セクションBは上記の譜面において、1小節目の6拍目から始まります。

調の変化としては、直前まで変ホ長調だったものが、ここではヘ短調に変わります。

セクションBに入る際は、ほんの少し抑揚をつけると音に表情が出ます。また、少し不安げな雰囲気を醸しだすため、全体的に音量を少し下げるというのも方法の一つです。

上記に限らず「こんなふうに弾いたら素敵かもしれない」という理想が出てきたら、ぜひ自分なりにそのアイディアを演奏に活かしてみてくださいね。


この箇所は、全体的に音量を盛り上げていきましょう。(1:03~)
そして、主旋律の和音の響きに重厚さを出していきましょう。

また、ここではペダルをけっこうがっつり入れることで、より響きに深みが出ます。ただし全体的に音の数が多めですので、踏み方を誤ると響きが濁りやすくなってしまいますので、気をつけましょう。

☆セクションC ~場面の移ろいを楽しもう~

セクションCは、セクションBをさらに変化を伴いながら展開させていくようなイメージです。(1:20~)

このセクションCというのは、個人的な感想ですが、セクションBで表現された感傷を受け入れて、次のセクションへ橋渡しをするという役割を担っているように思います。

私はこのセクションCに来ると、なぜだか報われたというか、救われたような気分になります。それは上記のように、感傷を受け入れてもらえた安心感ゆえかもしれません。

※セクションCは上記の譜面において、1小節目の6拍目から始まります。

セクションCに入ってすぐに出てくる左手の和音(オクターブの和音)は、しっかり音を揃えて右手の主旋律と連携させましょう。ここは右手の主旋律をサポートするというイメージです。

そして、全体的な音量はなるべく少しずつ上げていきましょう。押さえるべき音が多いとついつい音量が大きくなりがちですが、そんなときはできる限り手の力を抜き、鍵盤を押すという感覚よりも、ただ指を置くという感覚を意識して弾いてみましょう。

※『molto crescendo』の意味は『より一層、音量を上げていく』

この箇所だけに限ったお話ではありませんが、長めのスラーはなるべく譜面の指示に忠実に弾くほうが望ましいです。(1:32~)

特にこの箇所の譜面を見るとおわかりになるかと思いますが、小節内における音の組み合わせの面では、不協和音が多いと言えます。そのため、ペダルを多用し過ぎるとどうしても響きが濁りやすくなってしまいます。

ちなみにかくいう私も、この曲のスラーには随分と悩まされました。私の場合は元々、スラーを守らずにペダルにばかり頼ってしまうという癖があったため、この箇所でとても苦労した思い出があります。

確かにペダルを踏むと音は伸びますが、セクションCについてはできるだけペダルを多用せず、スラーの表記を優先することに重きを置くことが大事です。

どうしてもペダルを入れたいという場合は、なるべく浅めに小刻みに踏むことで、音の濁りを防ぐことができるかと思います。

☆セクションD ~複雑な譜面も怖くない~

セクションDでは最初の旋律が再度出てきますが、今度はオクターブの和音によって主旋律をより一層ずっしりと鳴らしていきます。(1:39~)

そして、セクションDは譜面の表記が一層複雑になってきますので「ここはどうしたらいいの?」と最初のうちは疑問に思ってしまうようなところもあるかもしれません。
ですが、落ち着いて譜読みをすれば見た目の印象ほど難しくはないと言えます。

※『fortissimo』の意味は『音量をとても強く』

このような部分もセクションAでお話ししたように、一つ一つのパートごとの片手練習を徹底していきましょう。

ただ、セクションAとの違いは、主旋律のパートがオクターブの和音で構成されているところです。具体的には、セクションAで出てきた単音の旋律に、さらに1オクターブ離れた旋律が加えられていますね。

このとき「オクターブの和音が主旋律である」と位置づけて譜面を読んでみると、最初の印象よりも譜面が幾分シンプルに思えてくるかと思います。


この箇所は、右手のオクターブの和音と左手の単音をしっかり揃えて弾くことを心がけましょう。(1:48~)

それにしてもオクターブを押さえつつ、さらにその間に16分音符を刻んでいくというのは、慣れないうちはとても大変なことだと思います。実際、私自身も練習していた当時は大変でした。

この箇所はとにかく急がず焦らず、余裕を持って弾けるくらいにテンポを落としてゆっくりと練習していきましょう。そして、重厚な一つ一つの和音を噛みしめるように音を鳴らしましょう。

☆セクションE ~さりげない主旋律を大切に~

セクションEは曲の終盤ですね。(2:04~)
ここでも冒頭に出てきたような旋律が現れますが、以前のセクションよりもさりげなく鳴らすことが重要です。

そして曲の終わりはとても静かで穏やかな雰囲気です。そこへ向かっていくという意識を持ち、曲の流れが不自然にならないように気をつけましょう。


この箇所の右手、特に16分音符は、なるべく譜面の指番号を守って弾くほうが無難かと思います。(2:10~)

そして、先ほども申しましたがここでも主旋律となるフレーズが登場しています。他のセクションでは主旋律をわりと重厚にずっしりと弾いていましたが、ここではあまり目立たせないほうが望ましいかと思います。

ですが、だからといって主旋律が他の音に消されても良いというわけではなく、ここでもしっかり主旋律を際立たせることが大事です。ただし、あくまでさりげない感じで弾きましょう。

この箇所に関しては、練習の最初の段階ではあまり主旋律のことは考えず、とにかく全体的に音量を小さめに保ちながら弾く練習をしましょう。そして慣れてきたら、今度は主旋律の部分をほんの少しだけ強調しながら練習をするという方法がおすすめです。

また、『sf』(スフォルツァンド)の表記もありますが、個人的にはここではあまり意識しないほうが良いように思います。あるいは意識して弾くにしても、あまりにも極端に音を大きくすると、それこそかえって不自然になってしまいますので気をつけましょう。

※『diminuendo』の意味は『だんだん音量を小さく』

この箇所についても、右手の音符の並びが少しややこしい表記になっています。(2:22~)
ここでも和音であるという表記がなくても、実際弾いてみると和音になる箇所がいくつかありますので、ゆっくりと一つ一つ、譜面を読み取っていきましょう。

また、左手については右手以上に繊細にさりげなく音を鳴らしましょう。手の力をなるべく指先だけに集中させるというイメージで弾いていきましょう。

もぐらの思い出コラム ~手が小さくてお悩みの方へ~

ここでは主に私の思い出話になりますが、お付き合い頂けましたらうれしいです。

私にとってこの曲は、何度も挫折しながらようやく習得した思い出深い曲です。そして大抵私の場合、セクションDに来ると必ず行き詰っていました。

もしかすると、この記事をご覧になってくださっている方の中には「手が小さくて悩んでいる」という方もおられるかもしれません。かく言う私も、手がすごく小さいことが悩みなのです。

ちなみに私が行き詰ってしまったこの曲のセクションDとは、上記の通り主旋律をオクターブの和音で弾くことになっています。そのためセクションDに関しては、特に手が小さめという方はけっこう大変だと感じられるかもしれません。

そしてこの曲だけに限らず、オクターブやそれ以上離れた和音や分散和音に出くわした途端、無意識に「弾けないかも…」とモチベーションが下がってしまうことも私自身あって、それを理由に途中で諦めてしまった曲というのも少なからずありました。

とにかく当時の私は、手が大きい人がとても羨ましくて、でもこればかりはどうしてみようもなくて、しまいには「私はピアノには向いていないのかもしれない」と悲観的になるほど悩んだこともあったものです。

そんなときにふと、私はある本を手にしました。

その本というのは、ピアニストのフジ子・へミングさんの自伝でした。そして、その本の文中に『間違えたっていいじゃない、機械じゃないんだから』という格言があったのです。そこで私はハッと気づきました。「そうだ、私は機械じゃない、もぐらなのだ!」と。

そして、私はその格言に出会えたおかげで「もぐらなりの演奏を追求しよう!」と決意することができました。

そのためには無理をしてオクターブを弾く必要というのもそれほどないように思えてきて、それからは「オクターブが完璧に弾けなくても、単音でもいいから一音一音に心をこめれば、充分良い演奏ができる」という考え方へと徐々に変わっていきました。

ですので、今では「手が小さい」という理由で弾きたい曲を諦めてしまうというのは、本当にもったいないことだなぁ、と思っております。

もちろん譜面通り完璧に弾くことも素晴らしいことですが、それ以上に大事なことは「自分にしか鳴らせない音を出すこと」だと私は思います。

ですので、私自身にも言えることですが、手が小さくても弾きたい曲にはどんどん果敢に挑戦して頂きたいのです。

指が届かなければ譜面にとらわれなくても良いのです。指が届かなくて諦めてしまうよりも、たとえ指が届かなくても曲の最後まで自分の個性を表現できたほうが、よっぽど有意義です。

音楽は楽しむことが何より大事です。ですので、細かい部分についてはあまり難しく考えず、とにかく楽しく弾いていきましょう!

フジ子・ヘミング―魂のピアニスト

要点を確認しよう!全体的な弾き方のコツのまとめ


さて、ここまでメンデルスゾーンの無言歌集より『二重唱(デュエット)』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ここで、以下に全体的な弾き方のコツをまとめました。

  1. 主旋律となるパートを際立たせる(全体的に)
  2. 片手練習、特に右手は最初のうちはパートごとに分けて練習しておく(全体的に)
  3. 調の変化を敏感に察知し曲を進行させる(特にセクションAセクションBセクションC
  4. ペダルは場面ごとに踏み方を工夫し、音が濁らないようにする(全体的に)
  5. 和音はしっかり音の粒を揃えて重厚さを出す(特にセクションD
  6. 終盤に出てくる主旋律はさりげなく弾く(特にセクションE

以上の6つのコツを念頭に練習をしてみましょう。

これまでお話ししてきた通り、この曲は一見すると譜面がけっこう複雑で、最初は不安に思われるかもしれません。ですが、譜読みが大変であるということは、裏を返せば譜面の読解力を鍛えられるということなのです。

ですので、特に「譜面を読むのは苦手だなぁ」という方こそ、あえてこのような複雑な譜面と向き合ってみることで、得られるものもたくさんあるかと思います。

苦手意識はとりあえず脇に置いて、今までちょっと敬遠していたことに向き合い、そしてそれを自分のものにできたならば、ピアノに触れる時間というのもより一層楽しいものになると私は思っております。

それでは練習、頑張ってくださいね!畑の地中から盛大に応援しております。

byピアノ弾きのもぐら


「二重唱(デュエット)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1895年にシャーマー社から出版された楽譜です。「無言歌集第3巻Op.38」全6曲が収録されており、第6曲「二重唱(デュエット)」は20ページからになります。

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