手の故障というのはスポーツをする人だけでなく、ピアノなどの楽器を演奏する人にも多くいらっしゃいますよね。他にもお仕事などで長時間パソコン作業をされる人、最近ではスマートフォンを長時間いじり過ぎて親指を傷めるということもあるようですね。

手や腕にとって1番負担がなく、脱力した状態というのは「気をつけ」の状態ではないかと思います。

ピアノを弾くためには鍵盤を押せるように手を構えなくてはいけませんね。ピアノを弾く構えとは、まず腕を持ち上げ、そして手の向きを変えるために腕を少しひねり、手首をどこにもつけずに持ち上げた状態のことです。この状態を演奏終了時まで保たなくてはいけません。

このような状態は私達が思っているよりも腕や手にとっては実は負担があるのかもしれません。

腱鞘炎などで手を痛めてしまった場合はとにかく手を使わずに休ませるということが大切なのだと思いますが、手は演奏時以外にも日常生活の中で常に使っているため、全く使わずに休ませるということがとても難しい部分だと思います。

そのため1度痛めてしまうと腱鞘炎の状態が良くなったり、悪くなったりをくり返してしまう方がとても多いようです。

そうならないためにも負担を最小限にとどめる置き方や構え方をきちんと学んでおいたり、自分の弾くフォームについて見直したりする必要があると思います。

今回はピアノを弾く上で負担のない手の置き方、構え方について考えてみたいと思います!

■ 目次

正しい構え方とは


ピアノは鍵盤の高さ自体を調節することは不可能なので、座る椅子で調整することになります。背の高さは人それぞれ違うのでピアノの椅子は誰にでもちょうど良い高さに設定できるようにかなりの幅が設けられています。

電子ピアノなら鍵盤を弾いた感覚を軽めにしたり重めにしたり操作できますが、ピアノの場合は基本的にはそのようなことができません。(調律師さんにお願いすれば可能な場合もあります。)

http://www.utamakura.co.jp/piano/pfkikaku/key.html

リストが演奏会をするとほとんどのピアノが彼の演奏に耐えられずに壊れてしまっていたそうです。この話からもわかるように、その当時のピアノは現在のピアノよりも繊細な作りだったということです。そして鍵盤も軽かったそうです。

その後、作曲家やピアニストの要望に応えるように楽器製作者たちは様々な開発をしました。そのおかげで現在のような迫力のある音が出せる楽器になりました。

立派な楽器になった現在のピアノは迫力のある音が出せるようになったなどの良い点もありますが、鍵盤が重くなってしまったという少しマイナスな点もあります。(重めの方が弾きやすい方もいらっしゃいますし、皆さんにとってマイナスではないと思いますが…)

鍵盤が重いと、演奏するものにとって手への負担が確実に大きくなります。

昔のピアノが全く手に負担がなく弾けるものだったわけではないでしょうし、どんなに鍵盤が軽くても力を入れて弾いたり、無理な姿勢で弾いたりしていれば手は故障すると思いますので、当時も腱鞘炎などの痛みに悩まされている方はいたかもしれません。

しかし、現在のように多くはなかったのではないかと思います。

ピアノは手で弾くものですが、姿勢を疎かにし、椅子の高さにも気を使わず、手と力にだけに頼って弾くというフォームをずっと続けていると故障の原因になってしまうかもしれません。

そのようなことにならないために、まず座り方をきちんとすることです!癖がついてしまってからフォームを直すのは難しいことだと思いますので、ピアノを習い始めた初期の段階でしっかりと正しいとされている基本的な構え方と手の置き方について学び、それを維持していきましょうね。

どんなに手の構え方が良かったとしても姿勢が悪くては体を上手く使えないので、まずは背中を丸めないようにし、骨盤や背骨を立てるように意識して座るようにしてみましょう。

ここでポイントになるのがあごの位置です!

一般的に良い姿勢というのは軽くあごを引いた状態で耳の真下に肩が来ているときを言うようですが、あごが上がってしまうと途端に耳と肩の位置がズレてしまいます。あごが上がってしまうと肩も前に出やすくなりますし、姿勢も崩れやすくなります。

ピアノを弾く場合、多くの人が肩を前に巻き込んで弾いているのではないかと思います。私もその1人なのですが、これが常習化すると巻き肩になってしまいます。

本来正しいとされている位置に肩が来ていない状態になるとあらゆるところが凝ってきてしまい、上半身を効率良く使うことができなくなります。

私の場合あきらかに右肩がグッと内側に入っていて肩甲骨の動きも悪い状態でした。左側は肩甲骨の動きも良く肩も巻いていない状態だったので、左右の違いを観察しつつ、色んな動画を見たり、本を読んでみたりして、現在はだいぶ改善してきました。

肩を内側に入れないようにするには最初は肩だけを意識していましたが、それだとどうも力が入ってしまって良くないということ気づきました。いろんな情報を集めてみると肩甲骨を寄せるようにとかお腹を引き上げるイメージとか色々と書いてありましたが、1番私の中でしっくり来たのは「あごを引く」ということでした。

あごを引くという1つのことで自然と正しい姿勢に近い状態になるので驚きました。1つずつに注目するということも大切なことなのでしょうが、体は全てつながっているので全体を見ていくということも重要なことなのかもしれません。

姿勢良く座ることができるようになったら今度は椅子の高さや手の構え方について考えてみましょう。椅子の高さは鍵盤とひじの高さが水平になるようにするのが良いとされています。私もこれが1番負担のない構え方だと思いますが、椅子の高さや姿勢は人によって様々です。

ピアニストにもいろいろな人がいます。正しいとされている姿勢や構え方とピアニストのそれが違っていたとしても、その方にとっての正解の椅子の高さであり、今現在それが正解のフォームなのです。

それはその方の長年の経験で得てきたものなので、それをそのまま真似するのは間違っています。まずは基本の正しいとされている姿勢と椅子の高さ、手の構えで弾く練習をしましょうね!

これも私の場合ですが、体とひじの間隔が左右で違います。さる手(左手よりも右手の方がひどい)が関係しているのかどうかはわかりませんが、左手と同じように構えると右手がとても弾きにくいのです。

何も考えずにパッと鍵盤の上に指を乗せた場合、指の重心が右手の方は左手よりも小指側にかなり傾いているので、それを修正するためにひじを体から離して構えているようです。(この脇が開いている弾き方だと特に4と5の指を強く出したい時に力が上手く伝わらないということがあります。これに気づいてからは強く出したい時には意識的に脇をしめるようにしています。)

このように骨格は人によって全く違うので、それぞれに合った構え方というものを何度も試して探っていくことが必要です。

この他に手を壊してしまわないため大切なことは力を抜くことです。

もちろん音を出すには力をある程度使わなくてはいけないのですが、必要以上に使わないことが大切です。脱力するというのはとても難しい問題で、これはピアノを弾き続けるのであればずっとついてまわる問題だと思います。

手にだけ負荷をかけず、力を必要以上に入れないように弾くには、腕や肩、肩甲骨を上手に使って弾くことだと私は思っています。脱力や体を上手く使って弾くというのはすぐにできることではないと思いますし、私も日々試行錯誤しています。

このような弾き方を可能にするには姿勢と手の構え方がとても大切になってきますので、是非ご自分のフォームを見つめ直してみて下さいね。

https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/piano/play/play002.html

欲しい音色を出すためなら…


正しいとされている姿勢や手の構え方について書いて来ましたが、ピアニスト達はその正しいとされている姿勢や手の構え方をキープし続けて演奏していますか?

ほとんどの方が背筋をのばし、姿勢良く手を構えていると思いますが、ずっとその状態で最初から最後までは弾いていないと思います。基本の姿勢は保ちつつも、体を左右、前後に上手く使って弾いていませんか?手の使い方もきっと欲しい音色によって変えていると思います。

体幹というか核となるもの自体は変えずにキープしつつ、出したい音色などによって上手く体の使い方を変化させているのだと思います。

その場に相応しい音を出すためなら正しいとされている姿勢や手の構えを必ずしもしなくてもいいのではないかと私は思います。気持ちを入れると多少体が動いてしまうものですし、逆に体が柔軟に動いてくれるから気持ちが入るというものです。

だからと言って不必要にぐにゃぐにゃと動くのは良くないですし、音を出すのに関係のない無駄な動きというのはない方がいいと私は思っています。基本があるから応用ができると思うので、やはり基本は大切ですね。

正しいとされている姿勢や手の構え方にとらわれ過ぎて演奏に支障が出てもいけないので柔軟な気持ちを持って下さいね!

指をどのように鍵盤に置くか


http://pianoland.co.jp/howto/howto-2971#section2

手の形や弾き方、タッチについての本はとてもたくさんありますが、写真と説明だけでわかりにくかったり、理解しづらい言葉づかいだったりと読んでもイマイチ理解できないものが多いように思います。

樹原涼子先生の書かれた教材「プレ・ピアノランド」にはどこで弾くと良いのかということが子供にもわかりやすいように丁寧に書かれています。良い例だけではなく、ダメな例もしっかりと書かれています。先ほど貼ったリンクでは樹原先生ご本人が動画で説明もしていらっしゃいます!



私も指先で弾くということや手を丸くして弾くということは伝えていましたが、樹原先生のように親切にそして丁寧にどこで弾くと良いのかは教えていませんでした。なぜそのように弾く必要があるのかをきちんと理解させないまま、何となく曖昧なままになっていたのではないかと、この動画を見て感じたので自分のレッスンを反省しました…。


先生が動画で説明して下さった部分(タッチポイント)で弾くというのが基本的な形です!!その部分で弾けるようにしていきましょう。

基本の形はそうなのですが、それだけではないということも少し頭の片隅に残しておいて下さい。爪の辺りの指先も使うことはありますし、指の腹を使って弾くということも実はあるのです。

爪の辺りの指先を使うと硬い音が出ます。そして指の腹を使って弾くとその逆の柔らかく、ふくよかな音が出ます。音色により変化を出したい時はそのような弾き方もアリです。

汚い音にならないように力加減を工夫したり、指をバタバタさせ過ぎたりしないなどの注意する点は多々あると思いますが、その部分を絶対に使ってはいけないということではないのです。

ピアニストによっては基本が指の腹で弾く状態という人もいますし、人によって全く違います。

結局は「力まないで弾けること」、「きれいな音で弾けること」というのが何よりも1番なのです。人それぞれ手の形や骨格が違うので、教科書通りにはいかないのが普通だと思います。

正しいとされている構え方や椅子の高さなどをまずは試してみて何か弾きにくさなどを感じたら、それにとらわれることなく微調整していくと良いと思います。

その時に「自然な動きになっているか」、「力んでいないか」を常に意識して自分のフォームを見つけていって下さいね!

まとめ

◆背中を丸めないようにし、骨盤や背骨を立てるように意識して座る
◆椅子の高さは鍵盤とひじの高さが水平になるようにするのが良いとされている



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