これまでは指や手、腕など上半身をどう使ってピアノを弾くかということばかり書いて来ましたが、今回は足元のペダルに注目してみたいと思います。

「ペダルなんて、ただ踏んで上げてのくり返しでしょ。簡単じゃん!」と思われるかもしれませんが、結構難しいんですよ…。ペダルの踏み方を誤ると演奏が台無しになってしまうことだってあります。

皆さんはミスと言えば指側がするものだと思われていませんか?確かに圧倒的に指側の方がミスは多いのかもしれませんが、足側のミスというものも存在します。

足側のミスというのはペダルを踏むタイミングをミスするということです。適切なタイミングで、適切な深さでペダルを踏まないといけません。

指側にミスがなかったとしても、足側がミスると不協和音になってしまうことがあり、足側のミスというのはその曲の雰囲気を崩してしまう場合もあるので、場合によってはミスタッチよりもマズいものになってしまう可能性があります。

どうですか?ペダルの重要性と難しさが少しわかって頂けたでしょうか?

このようなことを書いている私もペダルの踏み方があまり上手い方ではないので、より良いペダルの踏み方ができるように勉強中です!

それではペダルについて考えていきましょう♪

■ 目次

はじめペダルは足で踏んでいなかった!

ピアノが発明される前の鍵盤楽器というとパイプオルガンやチェンバロなどがありますが、これらの鍵盤楽器には現在のグランド・ピアノの右側のペダルのような音を響かせるものはありません。

ペダルはピアノの大きな特徴と言えるかもしれません。

クリストフォリ(1655-1731)がピアノを発明した当初からペダルがあったわけではないようで、その後に付け加えられた機能のようです。しかも初めは現在のように足で踏むものではなく、ひざで押すタイプのペダルでした。

私は楽器博物館でこのタイプのピアノを見たことがあります。実際に弾いていないのでペダルを操作するのにどの程度の力が必要なのか、足で踏むのとひざで押すのではどのくらい難易度が変わるのかについてはよくわかりません。

ひざに力を入れて押すと上半身も力んでしまうような気がします。慣れれば問題ない程度のことなのでしょうか?

しかし足での操作の方が容易にできたから現在はひざではなく、足のペダルになっているのではないかと思います。

グランド・ピアノのペダルの役割や名称


クリストフォリによって発明された頃のピアノにはペダルはありませんでしたが、モーツァルト(1756-1791)やベートーヴェン(1770-1827)が活躍していた頃のピアノにはペダルがありました。

この時代のピアノはまだまだ発展途上でいろんな試みがされていた頃だったので、先ほど書いたようにひざで押すペダルと足で踏むペダルが両方ついているものがあったり、足ペダルが4本、5本ついているものがあったりしました。

なぜ4本も5本もついているのでしょう?

2本は現在と同じように「音を響かせる」ペダルと「音色を柔らかくしたり、音量を抑えたりする」ペダルです。残りはそのピアノによって全然違う機能を持っていたようで、様々な仕掛けが施されていました。

この仕掛けペダルは例えば自転車のベルのようなものをピアノの中につけておいてペダルを踏むと連動してベルが鳴るというようにしていました。これはトルコ・ストップと呼ばれていたようで、主にトルコ行進曲などトルコ風の曲を演奏する時に用いられていたようです。トルコ行進曲だけでなく勇ましい曲の時にも使われていたのかもしれません。

このように様々なアイディアをピアノに施していくうちに仕掛けペダルの本数が増えていったようです。しかし現在のグランド・ピアノのペダルは通常3本ですね!(古いものは2本の場合もあります。)
そのようなおもしろい仕掛けペダルは残念ながら現在のピアノにはついていません。

現在の3本のペダルはどのような働きをしているのかを見ていきましょう。

グランド・ピアノもアップライト・ピアノも3本のペダルがありますが、全く同じ機能というわけではありません。まずはグランド・ピアノのペダルについて書いていきます。

右側のペダルはダンパー・ペダルと呼ばれており、音を響かせることができます。ペダルを踏むとダンパーと呼ばれる弦の振動を止める装置が弦から解放されます。そうすると振動を止めるものがなくなるので弦の振動は持続し、他の弦とも共鳴するので響きが豊かになります。

左側のペダルはシフト・ペダルと呼ばれています。このペダルを踏むと鍵盤が右側に動き、ハンマーの位置も右側にずれます。ずれることによって3本ある弦のうち2本だけを打弦するというように打つ弦の本数が減ります。そのため音量が抑えられたり、音色が柔らかくなったりと変化をつけることができます。(このシフト・ペダルもダンパー・ペダルと同じようにしっかり踏むこともできますし、少しだけ踏むということもできます。)

最後に真ん中のペダルです。このペダルはソステヌート・ペダルと呼ばれています。ドビュッシーなど近現代の曲を弾く時に使用することがあります。(ロマン派や古典派の作品でも人によっては使用しているようですが、私は使いません。)他の2本のペダルより圧倒的に出番の少ないペダルです。

機能としてはダンパー・ペダルに似ていますが、持続させたい音のみをピンポイントでのばすことができるので少し違いがあります。

ダンパー・ペダルは全てのダンパーを解放しますが、ソステヌート・ペダルは特定の音のダンパーだけを解放します。1音だけではなく複数の音を持続させることが可能で、ダンパー・ペダルやシフト・ペダルとの併用もできます。

https://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/10376

現在のグランド・ピアノは3本ペダルなのですが、最近注目されているFAZIOLI(ファツィオリ)のグランド・ピアノは4本ペダルのものがあります。(通常の3本ペダルももちろんあります。)

音色が変わらず、音量だけ抑えられるっていいなぁ!弾いてみたい!!
http://fazioli.co.jp/manufacture/index.html

アップライト・ピアノのペダルの役割や名称


アップライト・ピアノのペダルはグランド・ピアノのペダルと全く同じ部分と異なる部分があります。

右側のペダルはグランド・ピアノと同じ機能で呼び方もダンパー・ペダルと言います。左側のペダルはソフト・ペダルと呼ばれています。このペダルを踏むとハンマーと弦の距離が近くなるので、打弦が弱くなり音がソフトになります。

真ん中のペダルはグランド・ピアノのペダルと全く違う機能です。このペダルはマフラー・ペダルと呼ばれています。このペダルを踏むと弦とハンマーの間にフェルトが入り込みます。こうすることで普通に弾くよりも音がかなり小さくなります。

このペダルは音色変化のために踏むというのではなく、近所迷惑にならないための装置ということですね。

https://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/10471/related/1/session/L2F2LzEvdGltZS8xNjE2MTU4OTc0L3NpZC9BNEIqeGo2cA%3D%3D

椅子の座り方とペダルを踏むときの足の置き方について


皆さんペダルを踏むときの足はどのようにしていますか?かかとはどのような状態で、ペダルを足のどの位置で踏んでいますか?

ペダルの話をする前に椅子の座り方はそもそも大丈夫ですか?

ピアノの椅子は普段座っている椅子とは少し違う座り方をする必要があると思います。背もたれにもたれかかったり、椅子の端まで深く腰掛けたりするのはいけません。

人によって座り方は違いますし、椅子の高さもそれぞれ違うので一概にこれが正解ですとは言いづらいのですが、ふんぞり返るような座り方はダメです。

子供に多いのが足をぶらぶらさせたり、足を浮かせて椅子にくっつけたりしている子が多いのですが、これも良くありません。床や足台に足をつけていなくても弾けることは弾けますが、足でしっかり体を支えて重心を安定させて姿勢を正しくしていないと良い音が出ません。

手を交差して弾く曲や音域の広い曲など難易度が上がって来た方には椅子に座る時に腰でどっしりと座らないように気をつけて頂きたいなと思います。

腰にだけ重心が来ていて、足はただ床についているだけの状態では手を交差して弾くときなどに体重移動が上手くできず、場合によってはぎこちない動きになってしまいます。

足でしっかり支えていて腰が椅子に乗っているだけという状態であれば重心を左右に移動できるようになります。そうすると重心が変わることで手の可動範囲が広くなり、音域の広いものでもスムーズに弾けるようになります。

重心を傾けるだけでは間に合わなくて座っている位置を瞬時に移動したいという場合も中にはあると思います。このような場合もやはりどっしり座っていると移動しづらいので腰で座るというよりは足で支えるようにして座ると捉えて頂くといいかなと思います。

さて、ペダルの話をしましょう。

ペダルを踏む時にどの辺りで踏むと良いのかというのは、他のピアノ弾きの人と話をしたことがないので、皆さんそうなのかはよくわかりませんが、私の場合は一番幅が広い部分のやや親指側で踏んでいます。

ペダルは必ずかかとを床につけて、かかとが支点となるようにして踏みます。かかとが浮いた状態でも踏めなくはないですが、上半身が不安定になってしまいますし、見た目も良くありません。

指先の方で踏み過ぎると滑ってしまう場合があり、ペダルから足を滑らせてしまうとすごい音がするので注意して下さいね。

ペダルをあげる時にペダルから完全に足を離すようにして上げてしまうと、これもまた大きな音がしたり、ピアノによってはガコガコ音がしたりしてしまいます。足の裏はペダルから完全には離さないようにしましょう。しかし、上げ方が甘いと音が濁ってしまうので要注意です。この加減をしっかりと習得しなくてはいけません。

靴下、靴、スリッパなど履いているものによって足の位置を微調整する必要があるかもしれません。靴もヒールのないもの、ヒールのあるもの、ヒールも高さによって微妙に足の位置を変えたりしながら踏みやすい位置を探ってみて下さい。

ペダルはいつから踏むのがいいのか?

ペダルはどのくらいの年齢から踏み始めるのが良いのかという質問を受けることがあります。これは色んな考え方があると思いますので、これも正解はありません。ペダル付の足台もありますので踏もうと思えば幼稚園、保育園児や小学校低学年でも踏むことは可能です。

https://www.yamahamusic.jp/shop/ikebukuro/event/kenban_otayori/piano-hojopedal_ashidai_assist_pedal.html


私の場合は足台に頼らなくても自分の足で踏める身長になったらペダルの必要な曲に進むようにしています。ペダルの必要がない曲はたくさんありますので、そんなに早くからペダルの必要な曲を弾く必要はないのではないかと考えています。それよりも粒をそろえて弾いたり、いろんな弾き方を学んだりする方を先にして欲しいと思います。

ペダル付の足台はピアノのペダルにかませるようにしてセッティングして使うのですが、物によっては固くて力を入れて踏まなくてはいけないものがあったりします。(私が持っている足台は最近買ったものではないので、最新のものは踏み心地が改善されているかもしれません。)自分で直接踏むのと足台を挟んでペダルを踏むのではまた少し感覚が違うと思います。

ペダルが自分で無理なく踏める身長の目安は135cm以上です。140cmに近くなれば、ほぼ立った状態で弾いているという感じではなくなります。ペダルは年齢ではなく、身長を基準にされる良いのではないかなと私は思います。

ペダルの基本的な踏み方と踏むタイミングやコツについて

ペダルは基本的には和音が変わる時に踏みかえます。音の響きが変わる時に踏みかえないと音がにごってしまい、不協和音になってしまいます。

しかし和音が変わらなくても和音以外の音が多く出て来る旋律の場合などは踏みかえることがあり、その場所によって踏み方は異なりますし、人によって踏み方も違うものです。これだけが正解というものはありません。

ピアノのペダルの場合、音を弾いた後に踏むというものが一番よく使われるペダルの踏み方だと思います。

この踏み方は慣れないと難しく感じる踏み方です。最初は音と同時に踏むペダルをまず練習し、それが出来てから音を弾いた後に踏むという練習をすると良いと思います。

ペダルの練習はこのような感じでしてみてはいかがでしょうか?

①1234~を繰り返し言いながら1で踏んで4で上げる
②1212~を繰り返し言いながら1で踏んで2で上げる
③1ト2ト~を繰り返し言いながら1トのトで踏んで2トのトで上げる
④イチトウニイトウ~を繰り返し言いながらチで踏んでニで上げてイで踏みなおす
⑤④の踏む練習ができたら同じくイチトウを言いながらドレミファソファミレド(ニの所でレを弾く)と弾きながらペダルを踏む

まずは音を弾かないでペダルだけを踏む練習をしてみて下さい。できたら音を入れてみるとそれ程戸惑うことなく踏めると思います。

楽譜に書いてあるペダルの位置について


楽譜に書かれているペダルの位置を見ると同時に踏むような感じに見えるものが多いのではないかと思います。

これは音と同時に踏むというのではなく、基本的には少しずらして踏むようにして下さい。ピアノの場合、音を弾いてからペダルを踏むというのが基本的な形なので、同時に踏むように見える位置に印刷されていたとしても、後から踏むようにすると良いと思います。

和音を迫力ある感じで弾く場合などは音と同時にペダルを踏むということもあるので同時に踏むことが全くないとわけではありませんが、基本的には後から踏むことが多いです。

ペダルの踏み方は様々


ペダルの踏み方は同時に踏むペダル、弾いた後に踏むペダル、底までしっかり踏み込まないペダル、揺らすように細かく踏みかえるペダルなどがあります。

ペダルの踏み方もレガートペダルやハーフペダル、4分の1ペダル、ビブラートペダルなどなど様々な名前がついているようですが、こんな言葉を覚えるより音を良く聴いてどんな音色にしたいのかをよく考えて下さい。

同じ曲であっても毎回同じように踏んでいるわけではなく、音の響きによって微妙に違う感じで踏んでいます。

踏み方は色々あるにも関わらず、楽譜に書いてあるペダルの記号は一種類しかありません。(Pと文字で書かれたり、ペダルの記号で書かれたり、線で書かれたりしますがそれは書き方が違うだけで、どの踏み方にしなさいという指示ではありません。)踏む位置と上げる位置や踏みかえる位置が書いてあるだけで、どのような踏み方をしなさいと細かくは書かれていないのです。

色んな踏み方がある中でその場所にふさわしい踏み方を自分で選択し、踏み分けることが大切です。

書かれていない部分は踏んではいけないと思われている方も多いと思いますが、絶対に踏んではいけないということはありません。逆にペダルのマークが書いてあっても踏まなくても良い場合もあります。ここはペダルに頼らず指でつなぐことにした方が良い感じだなと思えば踏まなくても全然問題ありません。

大事なのはその場に相応しい踏み方をしているのかということです。音が濁ったり、プツっと切れたりなど、何かしらの違和感を人に与えずに聴かせることができればどんな踏み方も間違いではないのではないかと私は思っています。

ペダルに頼り過ぎない

ペダルを踏めるようになると上手になったように聴こえると思います。音の響きが豊かになったり、余韻が残ったりするので素の音よりもよく聴こえます。

しかしそれは少々危険でもあります。ペダルを使うことで音の長さを疎かにしてしまったり、欠点を隠すためにペダルを使ってしまったり、ペダルを入れることで欠点が見えにくくなってしまうということがあるのです。

ペダルを入れて練習をすることはもちろん大切です。しかし、ペダルに頼り過ぎてはいけません。のばしておかなくてはいけない音をペダルがあるからと指を離してペダルだけにしてしまうというのは良くないと思います。(持っておけないものも中にはあります。その場合はペダルに頼っても大丈夫です。)

ペダルを入れない練習というのも時にはしてみて下さいね!

何よりも大切なのは音をよく聴く事!

楽譜にペダルの印が書いてあるから踏むというのではなく、このような音の響きが欲しいから踏むというようにできるといいですね。

そのように考えられるとその場所にはどんな踏み方がふさわしいのかということが次第にわかってくるようになると思います。

自分で出したい音や出している音をよく聴くということがとても大切です!耳をよく使って弾くということが何よりも大切なことなのでペダルのマークにとらわれ過ぎないようにして下さいね!


今回はペダルについて書いてきましたがいかがだったでしょうか?この記事がペダルのことについて考えるきっかけになって頂ければ嬉しいです!


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