ピアノは他の楽器にはできないことが1人でできてしまうということが多くあると思います。例えばピアノの場合1つの音を出すためには指を1本使えば済むので、多くの音を1度に弾く事ができます。そのためメロディーと伴奏を1人で弾いたり3声部や4声部の曲も弾けたりします。

1人で1度に多くの音を鳴らせるということが他の楽器にはできない最大の特徴ではないかと私は思います。

同時に鳴らすと言っても色々ありますよね。多声音楽だけではなく、メロディーと伴奏という形でも右手と左手で多くの音を同時に鳴らしています。両手だけでなく、片手も重音や和音という形で同時に音を鳴らすことがありますね!

単旋律ではもの足りない感じですが、単旋律だったものをハモらせると少し華やかになります。そこに和音が加わると一気に色彩豊かになり、音に厚みが生まれ、響きが豊かになります。

和音はピアノを弾く上で絶対に出てきますし、絶対に避けては通れない重要なものなので今回は和音の弾き方について書いていきたいと思います。

■ 目次

和音の基本的な弾き方とコツ


和音はバラして弾きなさいという指示がない限り同時に弾かなくてはいけません。指や手首の支えがしっかりできている人にとっては同時に3つや4つの音を鳴らすというのは難しいことではありません。

しかし指がしっかりしていなかったり、手首や手を上手く支えることができていなかったりすると同時に複数の音を弾くことは難しいと思います。特に幼稚園や保育園児の小さなお子さんの場合は音が1つ鳴らなかったり、ばらけて鳴ったりすることがとても多いです。

指がしっかりしているか、手や手首を支えることができるかは本当に個人差があるので、幼稚園や保育園児でも難なくこなせる子もいれば小学校に上がった子でもなかなか難しい場合があります。

指を寝かせて指の腹で弾く弾き方というのはもちろんあるのですが、まずは基本の形からスタートしなくてはいけないので、指の先の方で弾くような手の形になることを目指しましょう。


なかなか支えられない場合は下から第3関節を少し持ち上げてあげるようにするとコツを掴んでくれるようになると思います。

手首が支えられなくて鍵盤の方へ下がってしまう場合は手で持ってあげて(優しく支えてあげる程度)補助をするようにしてあげるとだんだんとどうやって支えるのか、どのくらい持ち上げればいいのかというのがわかってくると思います。


ドミソの和音を弾く場合、135の指を使いますがどのように弾いているかわかりますか?135の指だけ鍵盤を弾くようにしなくてはいけないというのはわかってもらえると思うのですが、それだけではありません。

和音を弾く時は力で押し込むというのではなく、基本的には上からストンと落とすという感覚で弾きます。落とす時に24の指を少し持ち上げておかないと1~5までのドレミファソの音全部が鳴ってしまうのです。

24の指を少しだけ持ち上げるにはほんの少し力がいります。大人や指がしっかりしてきた子供にとっては力を使っているのかもわからない程度のことですが、小さな子にとってはこれが意外と大変で、指が上がらないんです。

24の指を持ち上げる補助をしてあげなくては弾けない場合があります。(個人差があるのですぐにできる子もいます。)慣れなので、最初はできなくてもだんだんコツを掴んでいくと弾けるようになっていきます。


この指を少しあげるという感覚はなかなか言葉で説明してもわかりづらいようです。感覚が掴みづらい子には24の指先に鉛筆を挟んであげると上手くいったことがありました。グッと押し込んでしまっては指を痛めてしまうかもしれないので指先に少し差し込む程度にして下さいね。

動かしたい指と動く指が上手く一致しないという子もこのくらいの年齢の子には多いです。和音は弾けるけど、脳と筋肉が上手く連動できていないという場合には弾く指をトントンと触って示してあげると上手くいくようになります。

大人の方でも難しそうにされている方が中にはいらっしゃいました。その方の場合、私の手なんかよりも手のひらが大きく、指も長かったのですが、5の指が他の指に比べるとバランス的に短い感じでした。5の指が後に着地するような感じなってしまっていたので、和音を弾く場合にばらけてしまうという感じでした。

この場合は小さな子供とは違って支えができていないというわけではないので、少し5の指側に傾けるような感じで弾くようにするとばらけないで弾くことができました。

大人の場合、このように手の形や指の長さ、骨格的なもので同時に鳴らすのが難しいという場合もあるのですが、支えている重心の位置を少しずらしてやることで上手くいく場合もあるので、どうしてもばらけてしまうなぁという方は試してみて下さい。 

目立たせたい音がある場合

和音は3つの音や4つの音を同時に鳴らしますが、この時の和音の音のバランスというのを考えたことがありますか?

メロディーと伴奏で音量のバランスを取るとそれだけで格段に聴きやすい演奏になり、上手に聴こえるいうのは何となく想像できると思いますが、和音もバランスを取って弾くと上手に聴こえます。

初級や中級レベルくらいの場合は和音をばらけることなく正しく響かせるというのが大事という感じで良いと思いますが、中級レベル後半~上級レベルになってくるともう1歩進んだ弾き方が求められます。

例えばショパンのエチュードOp.25-4はずっと右手が3、4つの音を弾かなくてはいけない曲になっています。


→軽やかでどんどん前へ前へと進んで行っていますが、和音の変化などは弾き飛ばすことなくちゃんと弾き表していてとても素敵です!メロディーラインは力みのない輝かしく澄んだキラキラした音!素敵!!

この曲の場合、右手だけで和音が完成しているわけではなく、左手が合わさって初めて完全な和音が完成するという構成にはなっていますが、右手は和音としての役割を持ちつつ、1番上の音はそれ以外にもメロディーラインとしての役割があるという曲です。つまり1番上の音というのは和音の構成音でもあるけどメロディーでもあるわけです。

最初は全てのパートがスタッカートですが、途中から上の音だけレガートになったり、アクセントがついたりと他の伴奏パートとは違う自由な動きをするようになります。

そのように考えると自然と上の音を目立たせて弾かなくてはいけないなということがわかりますよね。

上の音を目立たせるということは5の指側を目立たせるということですよね。具体的にどのようにしたらいいのかというと、普段よりも重心を5の指側にするんです。先ほど和音を弾く時に同時に鳴らないようなら少し傾けてみて下さいと書きましたが、目立たせる場合もそのようにして重心を5の指側に傾けて重みを使うようにします。

通常の構えから5の指側に傾けると手首が少し動き、腕が脇の方へ近づいてきませんか?このようにすると自然と重みを5の指にかけやすくなります。

雑巾を縦に持って脇を閉めるようにして絞ると固く絞れると言いますが、ピアノを弾く時も同じような気がします。脇が閉まっていると腕の重みなどをダイレクトに鍵盤に伝えることができるような気がします。逆に柔らかい音にしたい場合や重みが欲しくない時は腕を脇から自然と離して弾いているように思います。(指先や手首など他にも気をつけるところはあるので、それだけで弾いているわけではありませんが…)

脇を閉めると書きましたが、ひじにグッと力を入れているわけではなく、肩から腕を動かすイメージで脇の方に自然に寄せるという感覚ですので、ご注意下さい!!

このショパンのエチュードOp.25-4は大好きな曲で常に複数の音を弾きながら上の音を目立たせるという点でとても苦労した曲でもあったので、例に出してみました。(他にも難しい点は色々ありましたが…)

目立たせたい音があるのに普通に弾いていたら上手く音が目立たないなと感じられたら、その和音を弾いている時にどこに重心が来ているのかをよく考えて、目立たせたい音の方に重心が来るように少し変えてみると上手くいくと思いますので試してみて下さい!!

まとめ

◆和音は力で押さえこむのではなく上からストンと落とす感覚で弾く
◆手首や指の支えが出来ていないと上手くは弾けない
◆同時に鳴らせない場合は重心を5の指側にしてみる



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