私達はひらがなやカタカナ、漢字などとても多くの文字を覚え、それらを使って生活しています。文字を読んだり書いたりすることは日常生活の中で常に行っていることなので、1文字を読んだり書いたりするときに考えこんだりすることはあまりないでしょう。

考え込むことなく感覚的に読めたり書けたりするのは、よく目にしていて慣れ親しんだものだからだと思います。

一方、楽譜はどうでしょうか?音はドレミファソラシのくり返しで出来ているわけですから、私たちが普段使っている文字から比べるとかなり少ないので文字を覚えるよりは簡単なはずです。

難しいと感じるのは音を読むことが難しいからではなく、ただ慣れていないからです。私のピアノ教室では幼稚園の年中さんくらいでピアノを始められることが多いのですが、1年生に上がるまでにだいたいのお子さんが4オクターブまで読めるようになります。

※ト音記号は真ん中のド(一点ハ)から見て2オクターブ上のド(三点ハ)まで。ヘ音記号は真ん中のドから見て2オクターブ下のド(は)まで。


小さな子供でも読めるのですから、慣れれば必ずスラスラ読めるようになります。(4オクターブ以上の音というのももちろん出てきますが、覚える必要はありません。)

小さな子供でも毎週のレッスンで音読みの訓練をすることでしっかり読めるようになります。小学生やそれ以上の年齢の子供は理解がもっと速いので習得にそれ程長くはかかりません。

皆さんは楽譜をどのように読んでいますか?

楽譜が読めない人やピアノを始めて間もない初歩レベルの人は真ん中のドから数えていくことが多いのではないかと思います。音数が少ない初めのうちはまだそれでもいいのかもしれませんが、1音ずつ全部それをやっていてはとても大変ですよね…。

今回は1つずつ数えない音の読み方についてや効率の良い音の読み方について書いていきたいと思います。

■ 目次

考えなくても反射的に1つ飛ばしが言えるようにする


長調の場合、音はドレミファソラシの7音のくり返しで出来ています。(もちろん音階によっては♯や♭を使いますが、ここは移動ドで考えて下さい!)

たった7音のくり返しで出来ているのです!

上がる時はドレミファソラシド。下がる時はドシラソファミレド。まずこの並びをよく覚えることが大切です。(小さな子供の場合はドシラ~の下りる方がなかなか言えなかったりします。)

真ん中のドからドレミファソラシドと5線譜の上に書いていくと真ん中のドは自分で線(加線)を引き〇を書くことになりますね!レは1番下の線にぶら下げて〇を書き、ミはその線の上に〇を書くことになりますよね。

つまりドレミ~と順番に上がって行く場合は5線譜上では〇が線、間、線、間~ときれいに並んでいくことになります。もちろん下りも同じですね。


間隔が空かずに線、間となっていた場合は隣の音ということになりますが、いつもそういう訳にはいきません。線、線という並びこともあるでしょうし、間、間ということもあるでしょう。

線同士、もしくは間同士のような場合は隣の音ではなく、ドとミ、レとファのように1つ飛びの音になっているということです。そのため1つ飛ばしで音を言えるようにしておくと読むのがとても楽になります。ドレミ~、もしくはドシラ~を順番に数えていくよりもスピードアップできます。

線だけの1つ飛ばしでしたらドミソシレファラ。

間だけの1つ飛ばしでしたらレファラドミソシといった感じです。
(できたら下りの1つ飛ばしもすぐに言えるようにしておくと良いです。)

先ほども書いたようにピアノの場合は4オクターブが数えなくてもしっかり読めれば問題ありません。加線が出てきた場合は数えてもいいのですが、1つずつ数えていては時間がかかるので、この1つ飛ばしがとても役立ちます。

下から数えてはいけない


真ん中のドだけは確実にわかっていて、そこから1つずつ上がる、もしくは下がるというのでも音は読むことができるのですが、それを難しい曲になってもずっと続けている人はほぼいないのではないかと思います。

ピアノの場合はト音記号、ヘ音記号どちらも読まなくてはいけませんし、1度にたくさんの音を鳴らさなくてはいけないので、そんなことをして音を読んでいてはとてつもない時間がかかります。そのため、数えて読んでいる人は楽譜を読むのが嫌になって続かないというパターンが多いのではないかなと思います。

初めから全ての音をスラスラ読めというのは難しいと思いますが、数えなくても見ただけで確実に読める音というのを真ん中のド以外にもいくつか作っておき、そこから数えるのだとできそうだと思いませんか?

いろんな考え方があるとは思いますが、私のピアノ教室に場合ではドとソを重点的に読めるようにまずは訓練させています。(ト音記号だとシは5線の真ん中になるのでそれも覚えておくといいです。)

幼稚園や保育園児、小学校の低学年にはドレミファソラシに好きな色を当てはめさせて楽譜上でわからない音があった場合は決めた色をぬらせています。

5線のノートに音を書いていき、それを読ませるということを毎週レッスンの時にしており、それを何回か読むという宿題を出します。年齢によって理解力が違うので進み具合は様々ですが、何度も音読みをさせることでだんだんと間違いが減ったり、スピードアップしたりしてきます。

ドとソが読めればその間は数えたとしてもたいした音数ではないので、そこまで時間がかかるということもありません。(もちろん数えずに読めた方がいいのですが…)

音読みをする時に1つずつ読むのではなく、前の流れを見るというのもポイントだと私は思っています。

音を読むときに1つ読んではリセットし次を新たに読んでいくというではなく、横に見ていくという癖をつけておくと、レベルアップしたり、難しい曲になったりしても音を読むのにそれ程苦労しないのではないかなと私は思います。

前の音に対して次の音は上がっているのか、下がっているのか、線の上にあるのか、間にあるのかというように比較しながら見るようにすると、今弾いている音に対して次の音はどのように指を動かしたらいいのかが連動して理解できるような気がします。

先ほど書いた1つ飛ばしの読み方も楽譜を効率よく読む方法の1つです。

例えば真ん中のドから線、線、線と〇が書かれて上がっていれば、それはパッと見ただけで1つ飛ばしでドミソシと進んでいることがわかります。そこに1つだけ間が混じっていたとしたら1つ飛ばしだけでなく隣の音も弾きながら進んでいるということがわかります。

ト音記号とヘ音記号をほぼ同時進行で読めるようにする

ト音記号だけ読めばいい楽器なのならヘ音記号は後回しでも良いのでしょうが、ピアノはヘ音記号も読まなくてはいけない楽器です。

だんだん難しくなってからヘ音記号を読み始めようとすると苦手だなと思うようになってしまうのではないかなと私は思います。初めからト音記号と一緒にヘ音記号の音読みも始められる教本を選んでおけば、両方とも簡単なものから音を読む練習ができると思います。

私が幼稚園や保育園児、小学生の生徒さん達に使っている教本でおすすめのものをご紹介します。



こちらの教本は真ん中のドから上のソ、下のソまでしか出て来ません。ほとんどの曲がメロディーを右手と左手で分けて弾くように出来ています。(先生が伴奏を弾く形の連弾になっています。)

簡単でよく知られている曲ばかりなので、歌いながら弾くことができます。歌いながら弾くことによって音読みだけでなく、音程も正確に取れるようになっていきます。他にも連弾になっているので同じテンポで弾くということも学べます。

初歩の段階で音を読む力をしっかりつけておくとそれ程考えたり、意識したりすることもなく文字を読むようにスラスラと読めるようになってきます。そうなってくると譜読みが苦痛で嫌だということはなくなってくると思います。

音だけで楽譜を読んでいるわけではない


他の人がどのように読みをしているのかというのを聞いたことがないので、これが皆さんそうなのかよくわかりませんが、私がどのように楽譜を見ているのかを書いていきますね。

初めて弾く曲の譜読みをするときにまずは楽譜全体を眺めていきます。どのくらいの長さなのかなどをパラパラとページをめくって確認し、それと同時に調号や拍子、指定されている速さなどを見ていきます。

曲によっては途中でテンポが変わったり、拍子や調号も変わったりしますよね。その情報を音やリズムを読む前に先に頭に入れます。そうすることでこの曲の大きな方向性というか枠組みのようなものがぼんやりとわかります。

その後は曲の構成について見ていきます。常に変化して、同じ部分や似た部分が1度も出てこないという曲はほぼないでしょう。曲には必ず形式があるはずです。

形式と言っても「この曲は3部形式だな」とか分析をする必要はありませんし、堅苦しく考えることはありません。ただ同じ部分、似ている部分を見つける作業をしていけばいいのです。そうすることで同じではない部分というものが結果的に見えて来てこれが対比させたい部分なんだなということが理解できればOKです。

同じ部分を見つけるとここはさっきと同じだから読まなくてもいいというように気持ち的にも楽になります。長い曲や難しい曲でも同じ部分や似た部分というものが含まれていますので、全てのページや小節をしっかり見ていかないといけないというわけではありません。

曲の構成が見えてきたら初めて譜読みに入ります。

譜読みをする時は先ほど書いたように私は1音ずつ読むというよりは横のつながりで音を見ています。横に見ることで単純に次の音へはどのくらい指を動かせばいいのか、跳躍している場合は手をどのくらい動かせばいいのかということがわかります。

その方が前の音との比較ができるので、どのくらい音が上がっているのか、もしくは下がっているのかなどの音程もわかっていいのではないかと思っています。

ピアノは音程を気にしなくても鍵盤を押せば音が鳴る楽器なので、音の高さを立体的に捉えにくい楽器だと思います。もし歌うとなるととてもキツイ跳躍もピアノだとなんてことなく弾けてしまうのです。しかし、それが人の心に響く演奏になるでしょうか?

音が上がったのならそれなりの表現をすることが素敵な演奏だと私は思っているので、音程というものにも気をつけて演奏したいなと心がけています。

メロディーラインだけでなく和音を読む時も縦だけでなく横にも見ています。

例えば違う和音が連続して続く場合、皆さんはどのように読んでいるでしょうか?1つの和音を下から順番に縦方向に見ていって、次の和音ではまた同じようにして読んでいませんか?

私は1つ目の和音の音を読んだら、次の和音は下からまた1つずつ読むのではなく、前の和音との共通音をまず探します。共通音がある場合はその音は変わらないということなので同じ鍵盤をもう1度弾くことになります。(指は変える必要があるかもしれませんが…)

そういう場合は手の位置は大きく変わっていないということで、たいていの場合、共通音以外の指を広げるか縮めるかで弾けるということになります。

それなのに手を1回鍵盤から完全に離して、3つの音を弾く準備をもう1度新たにしてから弾くというのは無駄な動きだなと思うのです。横に見ていくと、全く動いていなかったり、もしくはとても近い場所でしか動いていなかったりする場合があるのです。

その場だけの音に目線を向けるのではなく、もう少し周りも見ながら譜読みが出来るようになると意外と楽に譜読みが進んでいくのではないかなと思います。

もちろん横だけ見ていてはいけません。リズムを読むときは左手と右手がどのようにかみ合うのかなど、縦の線も見ていかなくてはいけないので、横も縦もいろんな目線で楽譜を見ていかなくてはいけません。いろんな目線で楽譜を見ていくといろんな発見があって面白いですよ!

ここからは実際の曲で説明していきたいと思います。皆さんがよく知っている曲がいいかなと思いましたので、ブルグミュラーの「乗馬」を選んでみました。


乗馬はブルグミュラー「25の練習曲」の最後の曲だけあって跳躍やスケール、3連符や16分音符といったリズムの種類も豊富です。

この曲は2ページあり、初心者の方には「長いなぁ。譜読みが大変そうだなぁ。」と思われるかもしれませんが、まずは構成を見ていくと少し気が楽になるのではないかなと思います。


この部分は乗馬の核となる部分です。曲全体の構成としては雰囲気の異なるものを挟んでまたこの部分に戻り、そして次へ進むという形になっています。

この部分を全て演奏するパターンと2段目だけを演奏する省略パターンの2つのタイプがあります。実際に音を読んでいく前に楽譜を見て構成を頭に入れておくと、しっかり譜読みをしなくてはいけない部分とそうでない部分というように効率良く譜読みができます。


この部分は右手も左手も音を1つずつ縦の線だけ見ていくと前とのつながりがわかりにくく、1つずつ準備をしがちになりますが、横に見ていくようにすると共通音(赤線)がわかります。

共通音があるということはその音はその場から動かないということです。そこがわかると共通音以外の音だけに注目し、指をどのくらい広げるのかまたは縮めるのかを確認していけばいいということになります。

共通の音がない水色の部分も横に見ていくと間間、線線、間間になっているので3度で弾くということがわかりますね。上の音を見ていくと、ミレドとなっているので順番に音が下がっているということもわかります。


こちらの部分は右手にも左手にもドという共通の音が続きます。他の部分には共通音はありませんが規則性があります。右手はソ、♯ファ、ファ、ミで左手は♭シ、ラ、♭ラ、ソですね。

わかりましたか?半音ずつ下がっていますよね!!

共通音がありながら、半音ずつ下がるという動きになっているということが理解出来れば、楽譜を見なくてもすぐ弾けてしまいますよね!


この部分は3連符でなめらかに駆け上がる部分と8分音符のスタッカートで軽やかに跳ねる部分の対比で出来ています。

それがリズム的には2回繰り返されるように書かれていますが、スタッカートの部分で少し音の違いがありますね。


この部分は右手をよく練習しなくてはいけませんね。

パッと見て大変そうだなと思うかもしれませんが、ここも小節ごとに見ていくと4つの小節だけ練習すれば残りの部分は同じことのくり返しか高さ違いということがわかると思います。


最後の部分はどうでしょうか?この曲の中で1番大変な部分かもしれませんね。

最後は音階の連続です。初めは1オクターブのスケールを弾くことになります。右手はドからドまでで、左手はソからソまでのハ長調の音階です。その後もスタートの音から5度上がって1オクターブ間の音階を弾く事になります。

音階を弾く時には指づかいに気をつけて、指をくぐらせる時にひじを上げないように指だけをくぐらせるように気をつけましょう。このくぐらせる部分が上手くいっていればガタガタせずにきれいになめらかに弾けます。まずはゆっくりと、指づかいとひじが上がっていないかを気をつけながら練習してみましょう。

今回は私なりの効率良く楽譜を読む方法について書いてきましたが、いかがでしたか?

音やリズムを読み取り、楽譜に書いてあることを演奏するのが最終的な到達点ではあるのですが、そこまでの道のりは人によっていろんなアプローチの仕方があると思います。

私はこのような感じで譜読みをしていますが、様々な方法があると思いますので色々試して、やりやすいと感じたものを取り入れてみて下さいね!

まとめ

◆初めからト音記号もヘ音記号も同じように読む練習をする
◆順番に音を言えるようにするだけでなく、1つ飛ばしでもスラスラ言えるようにする
◆音を読むときはその音だけではなく、前の音との関係を比較しながら読んでいく
◆譜読みをするときはいきなり音を読み始めるのではなく、全体の流れや構成から見ていく



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