楽器を演奏するためには楽譜を読む読譜能力、そこから自分なり何かを感じとる力、そしてそれを音として表現する技術が必要だと思います。
感じたまま、感情のおもむくままに演奏することは本人にとっては気分が良いかもしれませんが、それを聴いている人は同じように感じてくれてはいないかもしれません。
音楽にはいろんな解釈があっていいのですが、楽譜に書かれていることや理論的なルールを守らないで演奏してしまうとそれは素敵な演奏にならないのでは?と私は思います。
こんなことを書いていますが、音高、音大時代の私は音楽関係の授業が全て好きだったわけではありません。
好きだった教科は音楽史!得意だったのは新曲視唱です。(割と音程が取れる方だったのでそれほど苦労しなかった。)好きなものや得意なものがある一方で、音楽理論やソルフェージュは苦手で好きではありませんでした。苦手と言っても勉強してきたので、一応理解しているつもりです…。
好きではありませんが、音楽理論を学ぶことや和声を勉強することはより良い演奏のためにも重要だと感じています。
今回は和音や属七のことを中心に理論的なことを書いていこうと思います。苦手だった理論について書こうとしているのでわかりやすく書けるか不安ですが、何とか頑張ってみますので、最後までお付き合い頂ければと思います!
和音とは?
和音とは2つ以上の集合した音のことを指します。もっと簡単に言えば、例えば、ドミソと3つ同時に鳴らした音のことですね!和音というと、3つの音という印象だと思いますが、実は3つの音だけを指すものではありません。
2つの音の場合は重音と呼び、3つの音は三和音、4つの音は四和音と呼びます。和音とは2つ以上の集合体のことなので、2つでも3つでも4つでも和音なのです。
しかし、和音の基本の形というものが三和音なので、ただ和音と呼ぶときは三和音のことを指すと思っておいて大丈夫です。
三和音とは根音(その和音の土台となる音)となる音の上に3度ずつ音を重ねた音のことです。そして四和音とは三和音+さらに3度を重ねた音のことです。
調には明るい調(長調)と暗い調(短調)があるということは一般的によく知られていますが、和音にも明るい響きの和音(長三和音)と暗い響きの和音(短三和音)があります。この2つに加え、減三和音と増三和音というものがあります。
減三和音は短三和音よりも音程の幅が狭く不安定な音の響きがします。増三和音はと長三和音よりも音程の幅が広くフワッと浮遊するような音の響きがします。(感じ方はそれぞれだとは思いますが、私の感覚を書きました♪)
▼長三和音…明るい響き
(長3度+短3度、根音と第5音が完全5度)
▼短三和音…暗い響き
(短3度+長3度、根音と第5音が完全5度)
▼減三和音…窮屈で不安定な響き
(短3度+短3度、根音と第5音が減5度)
▼増三和音…浮遊するような響き
(長3度+長3度、根音と第5音が増5度)
音階上の7音のそれぞれを根音にした和音がある
和音は音階上の音を根音として音に積み重ねることができます。そのため7種類の和音を作ることができます。
音階上の1番目の音の上に3度ずつ重ねた和音(ハ長調の場合、ドミソ)がⅠ度です。音階上の4番目の音の上に3度ずつ重ねた和音(ハ長調の場合、ファラド)がⅣ度、そして音階上の5番目の音の上に3度ずつ重ねた和音(ハ長調場合、ソシレ)がⅤ度です。
この3つの和音は音階上にできる三和音の中で特に重要な和音のため、主要三和音と呼び、主要三和音以外のⅡ、Ⅲ、Ⅵ、Ⅶの和音は副三和音と呼びます。
先ほど和音には響きの違う4種類があると書きましたが、音階上の音を根音にして3度ずつ重ねた場合、調和のとれた長三和音や短三和音だけでなく他にも不安定に響く減三和音と増三和音が出来てしまいます。
長調の音階と短調の音階では音程の幅が違うため3度上に音を重ねて和音を作ると違いが出てきます。
属七とは何か?
属七という言葉をよく聞きますよね。和音の1つだということは皆さんご存知だと思いますが、属七の属とは何なのか、そして属七の七とは何なのか、言葉で説明できますか?
そんなに難しいことではないですし、属七は重要な和音なのでしっかり覚えておきましょうね!それではまず属七の属について説明しますね。
属とは属音のことです!!
ん??これだけでは訳がわかりませんよね…。これを理解するにはまずは音階の話をしなくてはなりません。
ハ長調の音階を例にすると音階はドレミファソラシドですよね。このドレミ~は、ドは音階上の初めの音(Ⅰ)、レは2番目の音(Ⅱ)というように番号がついています。
その音を根音として3度ずつ重ねたものが先ほども書いたように和音になり、根音のローマ数字がそのまま和音記号となります。
音階上の1番目の音は主音と呼び、そして主音から5度上がった音を属音、主音から5度下がった音を下属音、音階上の7番目の音は主音に進もうと導かれる性質を持つ音のため導音と呼ばれています。
もうお気づきだと思いますが、属七の属というのは属音上に作られた和音ですということです。もう1つの問題は属七の七ですね。七とは四和音ですよということなんです。
★ハ長調の属七の場合
根音…ソ、第3音…シ、第5音…レ、第7音…ファ
三和音の説明で3度ずつ音を重ねていくと書きましたが、根音から3度ずつ重ねていくと、根音と次の音との音程は3度になりますよね。そしてさらに次の音を重ねるとその音は根音から考えると5度離れていることになります。
そしてさらにもう1つ重ねて四和音にすると根音から4つ目の音の音程を見てみると7度になっていますよね!この音の隔たりのことを七と言っているのです。(和音記号はⅤ₇と書きます。)
三和音と同様に四和音も音階上に作ることができるので、Ⅰ~Ⅶまで作ることができるのですが、七の和音の中では属七の和音のみが主要七の和音と呼ばれていて、その他は副七の和音となります。
属七以外の和音も使われないわけではありませんが、属七はⅤの和音と同じようにとてもよく使われる重要な和音ですのでしっかり覚えておいて下さいね!
ハ長調の属七はシファソじゃなかった?と思われている方がいるかもしれませんね。そうなんです!シファソも属七なんですよ!
基本形はソシレファなのですが、和音は並び方を変えて転回形を作ることができます。シを1番下にして並べた場合はシレファソになりますよね。そのレを省略した形がシファソなのです!
並びが基本形ではなかったとしても構成音が同じであればそれは属七の和音となります。
前の和音との繋がりなどを考えていくと基本形だけでは流れ的にどうにも都合が悪かったり、弾きにくかったりということがあるので、転回形というものがあります。(基本形ばかり弾くという方が稀かもしれません。)
Ⅴと属七(Ⅴ₇)は三和音が同じ構成になっているため兄弟、姉妹と言って良い関係です♪
どうでしょうか?わかって頂けたでしょうか??
和音にはそれぞれ役割がある
ここまでは何となく理解して頂けたのではないかと思います。もう少し和音について深く書いていきますので、もうちょっとだけ付き合って下さい!
音階上にできた和音は、いずれも同じように3度ずつ重ねられてはいますが、響きには違いがあって、役割も違います。響きの違いについては先ほど書きましたので、こちらでは役割について書いていきたいと思います。
日本語や外国語などの言語に文法があるように音楽にも文法のようなものがあります。
音階上に作られた和音は響きの違いだけでなく、重要度も違っています。先ほど書いたようにⅠ、Ⅳ、Ⅴの和音が主要三和音と呼ばれていて、他の副三和音よりも出番が多く、重要な和音とされています。
Ⅰ、Ⅳ、Ⅴの3つの和音はどれも重要度の高い和音なのですが、働きには違いがあります。役割が違うということなのですが、このことを「機能」と呼んでいます。
機能にはT、D、Sという3つの種類があります。
この3つの機能は文法で言うとTは主語、Dは述語、Sは修飾語というようによく表現されています。
▼T (Tonic トニック)…主語
▼D (Dominant ドミナント)…述語
▼S (Subdominant サブドミナント)…修飾語
ピンと来ますか?
何か分かったような…微妙な感じではないかと思います。何かもっとわかりやすい表現はないかと色々私なりに考えてみましたので次をご覧下さい!
T→家でくつろいでいる状態
D→お出かけや旅行を楽しんでいる状態
S→いきつけの喫茶店に行くなどちょっとした近場のお出かけをしている状態
3つの機能を気持ちの面から見てみるとこんな感じです。
T→心の状態がフラットな感じ
D→気持ちが動いて高ぶっている状態
S→フラットな状態ではないけれど、高ぶるまではいかないという状態
どうでしょうか?私の感覚はこんなところです。
音階上にできる和音はこのT、D、Sの3つの機能のどれかに属していますので、和音記号と機能を組み合わせて書いてみますね。
※他にもⅢとⅦがありますが、難しくなりますのでここでは書きません。
機能の進み方には決まりがあり、DはSに進めないというルールがあります。そのため進み方は
T-D-T 、T-S-T、T-S-D-Tとなります。
DからSに行くことができないのは、Ⅴの和音(属七も同じ)の後はⅠの和音に行き、導音は主音に向う(解決する)というルールがあるためです。(Ⅰと和音の音が似ていて、Tの機能を持つⅥに進むこともできます。)
他にもⅡはⅤにしかいけないとか、ⅥからⅠに行ってはいけないなど、このようなルールがたくさんあります。
ちょっと嫌になってきましたね…私も書いていて嫌になってきました(笑)!
でもこのルールが少しでもわかっていると和音の流れをどのように弾いたら良いのかのヒントになると思うのです。
メロディーは音の高低差があるのでどこで盛り上がっているのか、どこがフレーズの終わりかということが比較的わかりやすいのではないかと思うのですが、和音は少し知識がないと読み解くのが難しいと思います。
音楽はメロディーだけで出来ているわけではなく、ハーモニーによって表情が豊かになるのだと私は思います。
今現在、和音の違いを感じて弾けているのであれば、それにさらに知識が加われば説得力のある演奏になっていくと思います。自分が感覚的に感じていたものが理論的にも正しいということが分かれば、もっと自信を持って弾けますよね!
このような音や和音に優劣をつけたような機能和声を使わずに作曲するという作曲方法が現代曲では取られている場合があります。
急に機能和声を使わなくなったのではなく、だんだんと離れて行こうとした作曲家がロマン派後期から近現代にかけて増えていき、機能和声に頼らない作曲方法を編み出した作曲家がついに現れたといった形です。
この機能和声というシステムはとても長い年月に渡って使われていて、現在でももちろん使われています。とても優秀なシステムです!!
和音の変化を弾き表せると表現が深くなる
音階上にできる和音の響きには明るいもの、暗いもの、不安定なもの、浮遊するようなものという種類があり、そして機能というものがあるということを説明してきました。
この知識を知識だけとして留めておくのではなく、演奏にも活かして欲しいなと思います。
いきなり和音の分析をして弾けというのは難しいので、まずはカデンツを弾く練習をしてみてはどうでしょうか?
↑これはハノンの音階とカデンツです。
カデンツとはこの部分のことです。機能で言うとT-S-D- -Tとなります。
※3番目の和音はⅠ度の第2転回形なのですが、Dの機能として扱い、その後に属七が来ています。
この部分をただ同じように弾くのではなく機能に注目して弾く練習をしてみて下さい。
先ほどT、D、Sの機能に対する私なりの感じ方を書きましたが、覚えていますか?もう1度書き出してみますね!
これを元にしてストーリーを作るとすると…
自宅(T)→コーヒーが飲みたくなってふらっと喫茶店へ(S)→せっかく外出したし本屋さんでも寄ろうかな(D)→お腹空いてきたなぁ、行ってみたかったごはん屋さんに行ってみよう!美味しかったぁ。大満足だ!(D)→帰宅。(T)
なんて事はない安易なストーリーですが、このように考えるときっと和音をただ同じテンションで弾けなくなると思うのです。
曲の中での和音となると分かりにくいと思いますので、カデンツでまず練習するのがいいかなと思います。長調だけでなく短調も含めた全調でやってみて下さい。調が違うと印象がガラッと変わるので、面白いストーリーが思い浮かぶかもしれませんよ♪
今回は和音や属七について書いて来ましたが、いかがだったでしょうか?
皆さんにとって分かりやすく説明できていれば良いのですが…最後まで読んで頂きありがとうございました!
まとめ
◆和音は音階上の全ての音に積み重ねることができる◆属七の属とは属音上に作られた和音という意味
◆属七の七とは四和音で構成された和音のことを指す
◆音階上に作られた和音にはそれぞれ機能がある