モーツァルトのピアノソナタ、有名な曲がたくさんありますね。そしてその中でも『ピアノソナタK.545ハ長調第1楽章』は特に有名で、いろいろな場所で耳にすることも多いかと思います。

そんなこの曲、有名なだけに練習していらっしゃる方の人口もきっと多いと思います。
しかし「どういうわけだか一生懸命練習しているつもりなのになかなか上達しない」そんなお悩みを抱えられている方々、必見です!


こんにちは、ピアノ弾きのもぐらと申します。
多くの方々にピアノの魅力と可能性を知って頂くため、今日も畑の地中でニンジンをバリバリとかじりながら、こっそり楽しくピアノを教えております。

ちなみにニンジンをかじったこと、ついに畑の主にバレてしまいました。そんな私生活の苦難を忘れさせてくれるのも、やはりピアノなのです。

しっかり譜読みをして難易度を把握しよう!


実はですね、私の経験談ですが、けっこう私、この曲ナメてました。というのもモーツァルトの楽譜って右手と左手の表記というか楽譜の書き方というのか、とにかく譜面が他の作曲家と比べると、何となくシンプルな気がしたからです。

「なんだ簡単そうじゃん!」などとさっそく練習し始めたら、後になって案の定大変なことになりました。


で、しがないもぐらがこんなことを申すのはおこがましいのですが、この曲を練習しようとして譜読みをする段階で、私のように「簡単そう」という印象をお持ちになった方、少なからずおられるのではないでしょうか。
「おまえと一緒にするな!」と思われた方はすみません、どうかお許しを。


確かにこの曲は一般的な難易度からすれば、まあツェルニー30番の前半から中盤くらいが弾ければ充分弾ける曲です。なので一般的には「まあまあ簡単」と言ったところですね。

しかしこの曲って実は譜面をよく見ると、けっこう技巧的なところもあるのですよ。そこをよく把握しておかないと、過去の私のような大変な事態に陥る場合もあると思います。

だけどこの曲はコツというか、とにかく練習方法さえわかれば何にも難しいことはないので、効率的に練習していきましょうね!

構成は調の変化が特徴的!


この曲の構成は、一般的にはいわゆる『ソナタ形式』です。ソナタ形式というのは「主題(テーマとなる旋律)→展開部(例:調が変わる、場面が変わるなど)→再現部(主題がもう一度出てくる)」という「主題、展開部、再現部」の3つの場面展開ということです。

しかしこの一般的なソナタ形式、あえてこの記事ではあまり重要視しないことにしました。

なぜかと言いますと、ソナタ形式よりももっと重要視しなければならないことがあるからです。ですのでソナタ形式というのは、ちょっとした知識として頭の片隅に置いておく程度で大丈夫です。

ではもっと重要視しなければならないこととは何か?
それは、めまぐるしい調の変化です。

「え? でもこの曲ってハ長調だよね? 曲のタイトルにも書いてあるし」
と思われた方、そう、そこがこの曲の落とし穴なのです。
この曲、ハ長調とか最初に言っておいていざ曲が始まると、随所で調がコロコロ変わるのです。

「ハ長調じゃないじゃん! 何だよ!」と私はモーツァルト先生を恨みました。そんなこと恨まれてもモーツァルト先生も困るのでしょうけれど……。

当たり前なことかもしれませんが、このようなお話はこの曲に限ったことではなく、タイトルには「○○調」と表記されている場合、それは最初に出てきた旋律の調という意味なのです。
ですので、必ずしも最初から最後まで同じ調とは限りません。

弾く前に調や旋律の変化などがどうなっているのか、よく楽譜全体を見渡しておきましょう。譜面を最初に分析してあるかどうかで練習の効率も全然違ってくるのです。



そんなわけで上記にご説明した内容を踏まえて、まずはこちらの動画をご覧ください。




調の変化、おわかり頂けますよね。

何となく「あ、今なんか雰囲気変わったな」というくらいの気づきだけでも大丈夫です。解釈に正解や不正解はないので、あまり難しく考えずに自由に音源を聴きながら譜面を分析してみてくださいね。

この記事では以下のように、曲をセクションごとに細切れにしてご説明していきます。尚この記事では、特に調の変化を重視して区切ってあります。

セクションA(最初~0:23)
セクションB(0:23~0:53)
セクションC(0:54~1:17)
セクションD(1:18~終わり)

※ 各セクションごとのカッコ内の時間は動画の時間に沿ったものです。動画をよく見て曲の構成をしっかり理解しておくと練習しやすいです。
※ 上の動画では繰り返しは省略されています。


ではさっそく始めていきましょう!

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションAの弾き方 ~まずはハ長調~

さっそく有名なフレーズが出てきましたね。
このセクションAはそれほど臨時記号が出てこないので、けっこうサクサク弾けるかもしれません。

※Allegroの意味は「速く」

この楽譜ではなぜか強弱記号にカッコがついていますね。というのも実はこの曲の原典版(直筆楽譜に基づいたバージョン)には強弱の記号がまったく書かれていないのだそうです。ちょっとびっくりしますよね。

一口に楽譜と言っても出版社によってはいろんな表記の仕方や解釈があります。この記事では説明をわかりやすくするため、カッコにはなっておりますが強弱等がついたバージョンの楽譜に基づいて解釈、ご説明していきます。


そして小さなトリルが出てきますが、これは装飾音的になるべくさりげなく軽く弾くと響きも綺麗かと思います。あんまりこのような小さなトリルで力みすぎると、旋律の流れが一時停止してしまうので気をつけましょう。


ここはひたすら音階の練習です。音の粒をしっかり揃えて、すべての音が均等に鳴るように、最初はメトロノームを遅めに設定してゆっくりと丁寧に練習していきましょう。(0:09~)

ある程度の速さで弾けるようになってきたら、自分なりに自由に強弱をつけてみましょう。

※カッコ内の「stacc.」は「スタッカート(音を短く切る)」の略

この部分は左手がアルペジオのように動くのですが、私はこの左手がとても苦手で、いつも音が均等に鳴らずに崩れるような弾き方になってしまいます。(0:20~)

この左手の効果的な練習方法としては、メトロノームを使いながら左手だけ一時的な練習としてスタッカートで弾いてみることです。そのときメトロノームは、これはかなり遅すぎると思うくらいに設定しておきます。そこから無理のないペースで速度を上げていきましょう。

☆セクションBの弾き方 ~ト長調に変化~

ここで、さっきまでハ長調だったのが突然ト長調になりました。(0:23~)
ちなみに調が変わっても、譜面上には特別何か転調の表記があるというわけではないので、ここからは譜面の中に随時出てくる、♯や♭などの臨時記号を頼りにト長調と解釈していきます。

尚、これから出てくる他の調への変化についても同じように解釈してあります。


この左手での弾き方はトレモロと呼ばれる技法なのですが、おそらく最初にここでつまずいてしまう方もおられるのではないでしょうか。私も実はこの部分は未だに苦手なのです。

これはトレモロに似ているトリルという技法にも同じことが言えますが、トレモロを弾くときに手首や腕や肩などに余計な力が入っていると、だんだん指が疲れてきます。
そうするとどうしても音が重たくなり、この後右手が入ってきたときにとてもごちゃごちゃした響きになってしまいます。

なので、トレモロ(トリルも同様)を練習する前には肩から腕、そして手首の力を一度完全に抜くことをおすすめします。そのための軽いウォーミングアップがあります。

まずピアノに向かう前に、腕全体の力を外に出すイメージで、腕をひたすらぶらぶらさせます。そうするとだんだんと力が抜けて、特に手首がふにゃふにゃとしてきます。

そうしたらピアノに向かい、トレモロを弾いてみましょう。力が入っているときよりも格段に弾きやすくなっていることがおわかりになると思います。途中で「力が入っているな」と気づいた場合でも弾くのを中断し、また先ほどの通り力が完全に抜けるまで腕をぶらぶらしてみてくださいね。


この部分の右手のトリルも、この曲の中では装飾音的な要素なので、なるべくさらっと軽やかに弾きましょう。(0:27~)
そして左手のトレモロですが、これは弾く人の解釈に委ねられる部分が多いと私は思ってます。

なぜならこの部分の弾き方はいろいろな解釈があり、例えば「レの音は小さく弾いてその他の音はわざと際立たせて弾いたほうがいい」とか、またその逆で「いや、ここはあくまでトレモロの一部なのだから全部均等な音量で弾くべきだ」などなど弾く人によって全然違ってくるからです。

なので結論としては、最低限のトレモロの技術が身についてきたら、もうこの左手は自由に表現して良いのだと私は思います。


そして今度は右手と左手の掛け合いです。ここは右手、左手と別々に考えるよりも、左手から右手へと旋律をバトンのようにつなげているというように考えたほうが自然なのではないかと思います。なので、左手は右手をめがけて音量を上げ、右手は左手に戻るために音量を下げていく、というような弾き方の連続です。(0:33~)

なので、いかに右手と左手のバトンを途切れさせないように音量を調節できるかが重要なポイントです。



そして、セクションBの終わりのほうに出てくるこのフレーズですが、右手のトリルは上記のトレモロの部分でもご説明した通り、力を抜きましょう。(0:44~)

そしてこの部分で意外と難しいのは左手です。ここは必ずメトロノームでゆっくりと地道に練習しましょう。いきなり焦って速く弾こうとすると、右手と左手がどうしてもずれてしまいます。

一見この左手は同じパターンの繰り返しですが、同じパターンだからこそきちんと均等に弾くことが求められます。このように、それほど譜面を見た感じは難しそうでもないようなフレーズが、案外弾きづらかったりするものです。奥が深いですよね。

☆セクションCの弾き方 ~譜面をとにかくよく見る~

ここからは臨時記号が特に多く見られ、調もけっこう短いスパンでころころ変わるので、とにかく何度も弾き込むことが大切です。(0:54~)


このような音階もセクションBでもご説明したように、右手と左手を掛け合わせてバトンをつなぐイメージで弾くと自然な響きになります。(0:58~)
譜面上では臨時記号ばかりでややこしく感じるかもしれませんが、このセクションCでは音階さえ弾ければそれほど難しくはないでしょう。

ちなみにセクションCの転調は、ホ短調→ニ短調→イ短調→ハ長調→イ短調→ヘ長調という順番になってます。楽譜を見て上にある動画をよく聴きながら、どこでどの調に変化していくのかを、弾く前にしっかりと把握するだけでも随分と練習がしやすくなります。

各音階の調さえわかれば、あとはその調ごとに音階の練習をするのみです。調を把握することで、音階をよりシンプルに捉えることができます。

☆セクションDの弾き方 ~へ長調でも大丈夫~

さて、セクションCでコロコロと調が変わった後ですが、セクションDは巡り巡ってヘ長調に落ち着いたという雰囲気ですね。(1:18~)


セクションDはセクションABとほぼ同じフレーズの繰り返しですが、セクションDではヘ長調に変わっています。
ここはセクションABがしっかり弾けていれば、難なくクリアできます。ただ、ヘ長調ということを踏まえて、臨時記号には充分気をつけて弾きましょう。

そしてこの後、左手にちょっと長めの音階が出てきます。左手で音階を弾くのが苦手な方もおられるかもしれません。私もけっこう苦手で手こずりました。

そんなときは「これはただの左手の音階練習なのだ」とあえて軽く捉えると練習もつらくなりません。この部分に限らず苦手なフレーズが出てきたときこそ、発想を良い方向に変えてモチベーションを楽しくキープしましょう。


終盤はハ長調に戻ります。この音階の部分はセクションBの終盤と同様に、メトロノームに合わせて遅めのテンポから丁寧に練習しましょう。右手と左手の音をしっかり揃えることに集中してくださいね。(2:08~)

振り返ろう!全体的なまとめ


いかがでしたか?
それでは、モーツァルトの『ピアノソナタK.545ハ長調第1楽章』の全体的な弾き方のコツを以下にまとめました。


1. 調の変化を譜読みの段階でしっかり理解しておく(特にセクションBセクションCセクションD
2. 音階は音が均等に揃うように丁寧に練習する(特にセクションAセクションC
3. 右手と左手の掛け合いは両手併せて一つのフレーズとして捉え、適切に強弱をつける(特にセクションBセクションCセクションD
4. トリルやトレモロは肩や腕、手首の力を完全に抜いて弾くようにする(特にセクションBセクションD


この4つのコツをしっかりと頭に置いて練習すると、驚くほど練習効率がアップするかと思います。この曲をマスターすると、自信がさらに湧いてくるでしょう。

そして、モーツァルトのソナタは他にも魅力的な作品がたくさんあるので、この曲が上手く弾けるようになったら、他の曲にもどんどんチャレンジしてみてくださいね。

それでは練習、頑張ってください。畑の地中からいつでも応援してます!

by ピアノ弾きのもぐら


「ソナタK.545」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1938年にペータース社から出版された楽譜です。

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