ピアノを弾いたことのある人は、ほとんどの人がツェルニーの練習曲を弾いたことがあるのではないかと思います。(チェルニーと書いてある場合もあります。)

ツェルニーの練習曲はとてもたくさんあるのでどの練習曲集の何番を弾いたのかはっきり覚えていない方も多いかもしれませんね。

練習曲を書いた作曲家はツェルニーだけではなく、他の多くの作曲家も練習曲を書いています。しかし、ツェルニーのようにとんでもない量の練習曲を書いた作曲家は他にいません。

彼の練習曲は他の作曲家の練習曲に比べて曲が単調でおもしろくないと評価されてしまうこともありますが、ツェルニーの曲集は現在も多くの人達が使っており日々練習しています。

今回はツェルニーについてとおすすめの練習曲集などについて書いていきます。

ツェルニーってどんな人?


ツェルニーのフルネームはカール・ツェルニー(Carl Czerny)と言います。1791年にオーストリアのウィーンで生まれ、1857年に同じくウィーンで亡くなりました。

ツェルニーの父はボヘミア出身でしたが、ウィーンに移り住むことになりました。ウィーンに住んではいましたが、家庭内ではドイツ語ではなく、チェコ語が使われていたそうです。

祖父はアマチュアのヴァイオリニストで父はオルガン奏者、ピアノ教師という音楽一家に生まれたツェルニーは父からピアノの手ほどきを受けました。

ピアノや作曲に関してはとても才能のある少年に成長していきましたが、学校に通わせてもらえなかったようで同年代の子たちと触れ合う機会もなく育ちました。

先ほども書きましたがツェルニー家ではチェコ語で会話しており、学校にも通っていなかったことから、ドイツ語の習得は他の子に比べるとかなり遅かったようです。

彼は学校での教育は受けられなかったようですが、音楽の教育は一流のものを受けさせてもらっていました。

9歳の頃に父に連れられてベートーヴェンに面会し、彼の前で演奏する機会を得て弟子入りをしました。その後12歳になるまでベートーヴェンのもとで演奏技術や作曲、編曲技術を学びました。

ベートーヴェンだけでなく、フンメルやクレメンティーにも師事し、いろんな先生から様々な奏法や作曲技法を学んでいきました。

気難しいベートーヴェンが弟子入りを許したのですから演奏技術は相当高かったのだと思います。9歳のころにはモーツァルトの協奏曲を弾きこなしていたようですし、その頃から演奏家としても活動していたようです。

演奏家として活躍できる技術は十分にありましたが彼は演奏家としてではなく作曲家や教育家の方が自分には合っていると判断し、演奏活動を途中でやめてしまいます。

15歳の頃からはピアノ教師として多くの生徒を教えながら作曲も行っていきました。

元々の性格なのか、厳しくしつけられたからなのかわかりませんが、ツェルニーは内気な性格だったようです。注目を集めるような華々しいところは自分にあまり向かないと思ったのかもしれません。

そのおかげと言ってはいけないのかもしれませんが、多くの練習曲を書き残してくれているので私達にとってはありがたいことですね!

ツェルニーが教えた生徒はとても多くおり、中でも有名なのはフランツ・リストですよね。習っていた期間は短かったようですが、リストはツェルニーに感謝していたようで「超絶技巧練習曲」を献呈しています。

ツェルニーは真面目でとても穏やかな人だったということもあり、たくさんの人に慕われていました。多くのピアニストや作曲家たちはツェルニーからたくさんのことを学び、それを生かして演奏活動や作曲活動をしていきました。

作曲したのは練習曲だけじゃない


ツェルニーはピアノの練習曲ばかり書いた作曲家として認識されていますが、実は練習曲だけを作曲していたわけではありません。

協奏曲や室内楽曲、宗教曲、合唱曲、交響曲も書いていますが、どれも知られていません。

これまでは練習曲以外はほぼ知られておらず他の作品については研究もあまりされていない状態だったのですが、最近では練習曲以外の作品も研究されたり、演奏されたりしており、ツェルニーの評価は見直されようとしています。

「練習曲ばかり作曲した作曲家」という認識が変わりツェルニーの作品が評価されれば、演奏会で彼の作品(練習曲以外)を聴ける日が来るかもしれません。

練習曲にもタイプがある

練習曲には「演奏会でも弾ける芸術性の高い練習曲」と「もっと難易度の高い曲を弾けるようになるための訓練のための練習曲」の2つのタイプがあると思います。


◆演奏会でも弾ける芸術性の高い練習

ショパン「エチュードOp.10、Op.25」

リスト「3つの演奏会用練習曲」「2つの演奏会用練習曲」「超絶技巧練習曲」「パガニーニよる大練習曲」

ドビュッシー「12の練習曲」

ラフマニノフ「練習曲集 音の絵」 etc…

これらの曲はテクニック的に難しいのはもちろんなのですが、表現の面でも難しい曲です。指練習のためだけに書かれているわけではありません。


◆もっと難易度の高い曲を弾けるようになるための訓練のための練習曲

ツェルニーのたくさんの練習曲

モシュコフスキー「15の熟練のための練習曲」

クラーマ―=ビューロー「60の練習曲」 etc…

これらの曲は表現というよりは指を鍛えるため、弾きかたのコツを覚えるために作曲家が工夫して書いてくれた曲集です。

ツェルニーの主要な練習曲集

先ほど書いた通りツェルニーはたくさんの練習曲を残してくれました。よく知られているものを書いてみますね。

◆100番



「100番」は指の基礎的な訓練のための曲集です。この曲集はバイエルが終わるくらいの頃に多くの方が始められています。

◆30番



「30番」は技巧的な動きを学ぶための曲集です。指を速く動かすことだけでなく、正確に弾くことや粒をそろえることなどを目的にしています。

◆40番



「40番」は30番で学んだことをよりレベルアップさせることが目的です。指だけで弾くのではなく、手首の柔軟性も大切になってきます。

ここからは指だけで弾こうとすると疲れてしまう曲が増えていきます。1つずつ弾かないようにする弾き方を学ぶ必要があります。

◆50番



「50番」は指の熟練のための技術とタイトルがなっており、さらに難易度がアップします。この曲集では1つずつ頑張って指で弾くのは無理です。力むと疲れて弾けなくなるので、手首やひじの力を抜いて弾くようにしましょう。

指はもちろん動かさないと弾けませんが、必要以上に動かさないようにし、手首やひじを上手く使って弾くようにしましょう。

◆60番



「60番」はヴィルトゥオーソ(名手)になるための曲集です。楽譜を見ただけで難しいのがわかると思います。技術的な部分だけで言えば、この曲集が楽々弾ければテクニック的に大変だなと思う曲は数が減ってくるのではないかなと思います。

ツェルニーは多くの練習曲をただ書き残したのではなく、この曲ではこれを練習して欲しいという目的を持って曲を書き、曲集にまとめています。

どんな練習をさせたいのかというのは初めのページに解説が書いてありますので、しっかり読んで頭に入れてから練習するようにしましょう。

この主要な練習曲集以外にも小さな手のための練習曲や左手のための練習曲など他にもたくさんの練習曲集があります。

私がおすすめしたい練習曲集

私がおすすめしたいツェルニーの練習曲集は3つあります。

◆まず1つ目は「125のパッセージ練習曲」です。



125曲も入っているのですが、1曲がとても短いです。1番短いものだと1段(4小節)。1番長いものでも7段です。

この曲集はバイエルの終わり頃くらいから使用できます。後半に向かってだんだん難しくなっていき、後半はツェルニー40番くらいの難易度になります。難易度は初級~中級です。

◆2つめは「8小節の練習曲」です。
この曲集はタイトルの通り1曲が8小節で書かれており、160曲入っています。



この曲集の全体的な難易度は先ほどの「125のパッセージ練習曲」よりも少し高いですが、ツェルニー40番くらいの中級程度で弾ける曲集です。

この曲集の特徴は2つあります。

①右手がよく動く曲の次には左手がよく動く曲が来るというように、右手と左手をバランスよく練習することができるということです。

②4曲ずつくらいで調号が変わっていきます。いつも同じ調ではないので調に対しての感覚も次第についていくと思います。

◆3つめは「やさしい20の練習曲 30番練習曲集の前に」です。



タイトルの通りツェルニーの30番に入る前に弾くレベルの曲集です。難易度は初級~中級です。

このやさしい20の練習曲は「125のパッセージ練習曲」「8小節の練習曲」「第一課程練習曲」「100番」「リトルピアニスト」の5つの曲集の中から20曲を選び、まとめたいいとこ取りの曲集なのです。

子供の場合、曲が長いと譜読みをするだけ、または弾くだけで精一杯で細かいところまで丁寧に練習させるのは難しいのですが、短い曲だとそれが可能になります。

ツェルニーの主要な練習曲集を使うのもいいのですが、もっと効率的に練習をしたいと思われたらこの3つの練習曲集がおすすめです。

弾く順番は難易度の低い最初からやるというのももちろんいいのですが、自分の苦手な音型など弾きにくいと感じるものを選んで練習してみるとか、今挑戦している曲やこれから挑戦しようとしている曲に多く出て来る音型や似ているものを選んで練習してみるのもよいと思います。

弾きにくいと思っている音型などは練習する時間を多く取らないと上達しません。苦手な音型だったとしても地道に練習していれば、だんだん弾くコツがわかってきます。

どの曲もテンポを上げてミスなく弾けたら終わりにするのではなく、アーティキュレーションは正しくできているか、粒はそろっているかなどをよく聴いて弾きましょう。

練習曲を弾く上での注意点


練習曲は指を鍛えたり、手首やひじの使い方を学んだりと色々なことを練習しますが、どのように弾いたら音楽的になるのかを常に考えながら弾かなくてはいけないと思います。

ただテンポをあげてミスなく弾ければいいということではないと私は思います。どんなに単純な動きであっても弾き方を工夫すると音楽が動くようになり素敵に弾けるようになります。

その場所ごとで弾き方は異なってくると思いますが、どの場所であっても1つずつ音を止めて弾くのではなく、まとまりで弾くように心がけると音楽が動くようになりますし、弾きやすくなってくると思います。

長めの練習曲は譜読み自体に時間がかかってしまい、まとめるまでに時間がかかってしまうと思いますが、今回おすすめしたツェルニーの曲集はどれも短いので譜読みに時間がかかるということはありません。

子供の場合、曲が長いと集中力が続かずただ弾いてしまうだけになってしまいがちですが、おすすめした曲集は短い曲なので集中力を保ったまま練習をすることができると思います。

いくら難易度が高くて長い曲を弾いていても何も考えずただ指を動かしているだけなのなら、あまり意味はありません。それなら少しくらい難易度が低く短い曲であっても目的を持って集中して練習した方が絶対に上達します。

何を練習しているのかちゃんと理解して耳でよく聴きながら集中して弾く練習を心がけて下さいね!

まとめ

◆ツェルニーはピアノの練習曲をとても多く書いた作曲家であり、教育者だった
◆練習曲だけでなく協奏曲や室内楽曲、宗教曲、合唱曲、交響曲も書いている
◆機械的に指を動かすのが練習ではない
◆練習曲は指を速く動かしたり、指を強くしたりするだけのものではない
◆音楽的に弾けるように自分の音をよく耳で聴く




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