ピアノを学習していく中で多くの人が使う教材「ツェルニー(チェルニー)」。
100番練習曲、30番練習曲、40番練習曲などたくさんの練習曲集があります。
その中でも特に30番練習曲は使用されることが多く有名です。

難易度はどのくらいでしょう?

ツェルニー30番レベルになるとどんな曲が弾けるようになるのでしょうか?

30番の前は?

40番は?

などなど、素朴な疑問にひとつずつ答えていきたいと思います。

■ 目次

ツェルニーって?

まずはツェルニーについて少し知っておいた方が良いでしょう。

カール・ツェルニーさんはオーストリアのピアノ教師です。
なんとあのベートーヴェンのお弟子さん!
そして超絶技巧で有名なフランツ・リストの先生でもあります。

ツェルニーの音楽の才能は幼少期から花開いていたにも関わらず、自らが表舞台に立つよりも指導をすることを天職としました。
温厚で真面目な性格だったようです。

生涯で多くの練習曲集を残しましたが、一般にツェルニーと呼ばれる教本は易しい方から順に100番、30番、40番、50番、60番とあります。

100番の難易度は?



全音の難易度表では100番は初級となっています。
導入教本ではありませんので、音符がある程度読めるようになった段階から(バイエルで言えば後半程度でしょうか)から始めるのを想定して書かれているようです。
ピアノを楽しく弾く為に必要な、いろいろな指の使い方や基礎的な訓練を学べるようになっています。

タイトルの通り1番から100番まで練習曲が収められていて、1番から順に進んでいきます。

同じくツェルニーが作った教本で「リトルピアニスト」というのもあります。
レベルで言えば100番と同じくらいですが、最近では小さな子供の場合、この「リトルピアニスト」を使って基礎を学ぶ場合の方が多くなってきました。

というのも、100番は初級と言ってもけっこう難しい!!
半分越えたあたりからどんどん難しくなり、80番以降なんてきっちり弾けたらツェルニー30番やってる人より上手いんじゃね?ってレベルになります。

繰り返し練習する意義と、忍耐を目標にひたすら練習するのが好きなM度の高い学習者向けかもしれません。(笑)
30番目指してどんどん進みましょう!!



100番だとどんな曲が弾けるようになるの?

100番前半をやっている子供たちでしたら

紡ぎ歌
チクタク時計
お人形の夢と目覚め
ト調のメヌエット

など明るい曲が人気が高いです。

100番後半になりますと

ベートーベン エリーゼのために
モーツァルト トルコマーチ
ダカン かっこう

など、少し雰囲気があり、テクニカル的な見せ場もあるような名曲も弾けるようになってきます。

30番の難易度は?



全音の難易度表では30番は中級となっています。

そう!
ツェルニー30番は晴れて初級脱出の証!!
バイエルやブルグミュラーやソナチネ(の中の簡単なやつ)をやってた自分から大きく前進します!!


と喜んでたら最初の1番でいきなりうげ~ってなりますけど。笑

30番練習曲もタイトルの通り練習曲が30曲収録されてまして、オーソドックスに1番から順番に30番までやっていきます。
でも1番がけっこう曲者で、3番とかの方が簡単だったりするんですよね・・・。

曲別の難易度をものすごーく大雑把にA~C(Aが易しい→Cになるほど難しい)で分けてみますと

A 2・3・4・6・7・8・11
B 1・5・9・10・12・14・16・19・24・25・28
C 13・15・17・18・20・21・22・23・26・27・29・30

こんな感じでしょうか。
(“右利きで、左手は右手ほど自由ではないと感じていて、スラーやスタッカートなど音楽的要素もある程度表現できる人”を想定した、あくまで主観的な意見です。)

けれども、上記のCランク程度になっても、曲そのものもたいして面白くないし、別段美しくもない。

それもそのはず。
ツェルニー先生自らがおっしゃってます。
「この曲集は面白くありませんが」って。(笑)

でも生徒思いなツェルニー先生がテクニック向上を出来るだけ近道で学習出来るように考えて作った教材です。
その恩恵は計り知れません。

ちなみにこれはよく言われることですが、ツェルニー先生は古典の時代の人ですし、ベートーベンのもとで学んだ人なので、偏った演奏スタイルしか習得できないという話もあります。
確かにそうかもしれません。
右手メロディー、左手伴奏、和声もそれほど美しいわけでもなく、速いパッセージと速いテンポ。
ベートーベンのソナタを弾くのが目標でしたらこの上ない練習曲集ですね。

「でもツェルニーやってもロマン派や近現代の曲上手くはならないよね?」
と言われる方もいるかもしれません。

声を大にして言いたい。

ツェルニー30もベートーベンのソナタも弾けないヤツがロマン派や近現代を美しく弾けるかー!!!!

そのくらいピアノを弾く上での基礎力を底上げしてくれる教材です。
(注意:私個人の見解です。もちろんツェルニーをお勧めしない先生もいらっしゃいます。)

そんなツェルニー30番、話を戻しますと難易度で言えばやはり中級でしょう。
素人さんから見ると「おぉ!!」と思ってもらえるレベルです。

しかし、勘のいい人はもうお分かりのように、ピアニストや音大の人から見ると「あっそ」レベルであるのも現実です。笑

でも30番を制覇するか否かによって、これからの長いピアノ道が明るいものになるか、はたまた陽の差さない暗い道になるか・・・ってくらい変わります!!
ツェルニーをしっかり練習する人は、これから上級に上がりたい!という野望を強く強く持った中級者 と言えるかもしれません。
さらなる向上を目指して、ツェルニー先生の教本で基礎力の底上げをしましょう!

30番に入るとどんな曲が弾けるようになるの?

30番と言っても、30番に入りたて、ツェルニーというものが少しわかってきた中盤頃、もうすぐ40番だー!の30番ではずいぶん差があります。

指定速度(ツェルニーの練習曲はどれもめちゃくちゃ速い!)で弾けるのか、半分の速さなら弾けるのか によっても大きく差があります。

先生にもよりますが、だいたい6割~7割のテンポでしっかり強弱もつけて止まらず弾けたら合格となる場合が多く、ツェルニー好きの先生なら30番まで行ったらまた1番に戻って(2周目ってことね)今度は指定速度で!なーんてしばらくツェルニー漬けになるレッスンもあったりします。

とりあえず「6割のテンポできっちり止まらずに弾けるくらいのレベル」を想定して、同レベルの曲をあげてみるとすれば

ショパン ワルツ集の中の簡単なもの。
(子犬のワルツとか7番とか。大円舞曲とか子猫のワルツとかだとまだ大変。)

ショパン ノクターン集の中の簡単なもの。
(戦場のピアニストで有名な遺作嬰ハ短調とか。)

ドビュッシー アラベスク1番

メンデルスゾーン 無言歌集

ベートーベンやモーツァルトの簡単なソナタ
(ベートーベンだと悲愴第3楽章やテンペスト第3楽章とか。)

いかがでしょう?
ソナチネをやっていた頃に比べるとツェルニー30番になった途端、一気にレパートリーが華やかになりますね!!
かなりピアニスティックな素敵な曲が増えてきます。


ツェルニー40番の難易度は?



40番は30番で習得した基礎技術をもとに、更に速度を増せるように書かれている練習曲集です。
更に速度を増す ということは、指の動き、流暢さ、腕や手首の脱力などがこの教本で学べます。

上級・・・とは呼べないまでも、中級の中でも難しい方、中の上という位置づけになるでしょう。

「ピアノ、どの教本まで進んだ?」
と聞かれて
「ツェルニー40番」
と答えると、おぉ、けっこう頑張ってるな!というレベルです。

ただ、新しいピアノ教室に行くことになって「40番やってます!」と言っても、ただ音符を追っかけて弾いているだけでは、
「30番からやり直しましょう」
という事態になるのもよくある話です。

40番になっても相変わらず良くも悪くもツェルニー的な曲ばかりの教本ですが、それでも、30番に比べると鍵盤の使う幅が広くなったり、短調の曲も増えたり、音楽的にしっかりレベルが上がった曲が多くなります。

その分、演奏者にもそれなりの音楽性とテクニカルな基礎技術が育っていないとただの音符の羅列になってしまいます。

30番同様、確実な指使いで速く弾くことによりメカニックを鍛え上げる教本ですので、メトロノームを付けて練習し、常にテンポ感を念頭において取り組みましょう。

40番に入るとどんな曲が弾けるようになるの?

40番初期ですと、

ショパン「ノクターン集」「ワルツ集」の難しい部類のもの

ショパン「ポロネーズ集」なら簡単なもの
(軍隊や英雄ポロネーズは40番終了してからの方が上手く弾きこなせます)

ベートーベンのソナタ「月光」「悲愴」

ずいぶん名曲が増えてきますね!


40番後半になりますと、

シューマン「幻想小曲集」「ノベレッテン」

ラフマニノフ前奏曲「鐘」
浅田真央ちゃんのオリンピック使用で有名になりましたね。

ドビュッシー「月の光」

などなど、音楽的に成熟した曲をレパートーリーとすることが出来ます。

ツェルニー50番、60番の難易度は?




このあたりの高いレベルになるとツェルニーから離れ、ショパンのエチュードをする人が多いです。

と言うのも、40番までをきっちり弾き込んでいれば、ベートーベンやモーツァルト、ハイドンなどの古典ソナタはテクニカル的には難なく弾けるレベルまで習得出来ているはず。
ロマン派や近現代、もしくはバロック時代の偉大な曲など、これから幅広いレパートリーを手にしていこうという段階です。

このレベルになるとツェルニーの作曲パターンやテクニックの癖が見えてしまい、ツェルニーに飽きてしまうというのが正直なところかもしれません^^;

ツェルニー以外の教本ですと、先ほどのショパンエチュード、もしくはクラーマービューロー、モシュコフスキー、ピシュナなどに移る方が多いです。

私も50番が終わるとツェルニーから離れてしまいました。

昔の厳しい厳しいピアノレッスン(音間違えるとピシー!!っと叩かれるような漫画かよみたいな時代。笑)は30番、40番、50番、クラーマービューロー、そこまで必死でやり抜いて晴れて憧れのショパンエチュード!!革命!!黒鍵!!木枯らしー!!となるのが通常パターンでしたが、今はツェルニー30番が終わると簡単なショパンエチュードをもう始めてしまうという、まぁなんとも羨ましい時代となりました。
私が経験した耐えて耐えて耐え抜いてショパンエチュード!!というのはガラパゴス?ってくらい昔のお話となりつつあります。

でも昔のような耐え抜くレッスンも精神鍛錬の為にはいいような気がしないでもないですが。

まぁこんな時代にそれでもあえて
「私は50番もやる!60番まで制覇するんだー!」
という奇特な方は是非挑んでください。


なんてったってツェルニー先生自らが
「指の熟練のための技術を最高度に会得することを目的としている」
と言い切っているんです!!

やれば技術が向上することはまちがいありません!!

そして何といっても30番、40番レベルとの違いは、急激に音楽が魅力的になっていること!
タカタカタカタカお指の練習~ってものじゃなくなってます。
美しいです。
このツェルニーの古典の時代特有の、規律正しく枠に沿っていながらも伸びやかさを忘れない、それでいて手首のしなやかさ、柔軟性を目的とした華麗な指さばきを必要とする練習曲。
ここにきて初めてツェルニー先生の凄さを知ることになります。

50番は指使いの技法
60番をヴィルトォーゾの手引き
として書かれてますから、ツェルニー先生も50番はピアノ学習者として上級程度、60番は演奏家を目指す人向けに書いたのでしょう。

60番は50番までの1から順番にやっていくスタイルではなく、個々の目標に合わせて技術別に○番を練習するというような作りになっています。
もっともっとピアノ演奏を音楽的に極めたいと思う人がその強み、もしくは弱みを強化する為の教本と言ってもいいでしょう。

50番・60番に入るとどんな曲が弾けるようになるの?

このレベルになってくると楽譜はスラスラ読めて当然。
リズムも正しく弾けて当然。
その上で、いかに音楽的に表現するかという所が一番の課題となってきます。

ショパンのエチュード集
50番だとエチュード集の中の易しい部類が無難でしょう。
50終盤、60番の頃には「黒鍵のエチュード」や「大洋」「革命」などの名曲もレパートリーに出来るレベルになってきます。

ショパンのバラード、スケルツォ
バラードもスケルツォもそれぞれ4番までありますが、これも簡単なもの(バラードなら3番、スケルツォなら2番)から取り組んだ方が良いでしょう。

リスト「ラ・カンパネラ」
パガニーニによる大練習曲の中の3番です。
ちなみにこの曲は何度かリスト自身によって改訂されてます。
一番有名になったのはこのパガニーニ大練習曲の3番ですが、初版のカンパネラはピアニストも弾くことが出来ないほど超絶過ぎて、今でも初版のカンパネラをレパートリーに持つピアニストは世界に数えるほどしかいません。

リスト「ハンガリー狂詩曲」
出ましたハン狂!!
ピアノ学習者にとっては目標であり続ける曲のひとつではないでしょうか。
1番から19番までありますが、2番や6番は難曲としても有名です。

ラヴェル「水の戯れ」
クラシックファンには好きな人も多いラヴェル。
中でもピアノ曲のこの曲は大変有名かつ、いかにもラヴェルらしい雰囲気漂う曲です。
こんな曲をレパートリーに持っていたら素敵ですよね!!

まとめ

ツェルニー100番は難易度で言えば初級
30番は中級
40番は中上級
50番は上級
60番は間違いなく上級

こういう括りになります。

生徒達への愛情がいっぱい詰まったツェルニー先生の教本。
指の鍛錬の為にはとても効率よく学べる教本です。
上級目指して毎日練習に励みましょう!

最後に、これからツェルニーの練習曲を頑張る皆様にツェルニー先生のお言葉を。

「完全な技術を習得するということは一人前になるためにまず必要なことである」

ひぃぃぃ!!すみません!!
出直してまいります!!

って逃げ出したくなるくらいぐうの音も出ないお言葉ですね。(笑)



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