モーツァルトの『ピアノソナタkv.545』、第1楽章はとても有名ですよね。第1楽章はわりと馴染みがあって弾けるという方も多いかと思います。

ですが、今回お話しするのは第3楽章です。
この第3楽章は、弾いているとテンションが上がってくるような、無邪気さと活発さが感じられる作品です。

また、ピアノソナタというのは第1楽章だけでなく他の楽章もマスターしていくことで、曲の全体像がより鮮明にイメージしやすくなります。

ちなみにこの曲の第1楽章については、以前私が執筆させて頂いた他の記事でお話ししておりますので、よろしければそちらもチェックしてみてくださいね。

【参考記事】
調の変化に注目!モーツァルト『ピアノソナタK.545第1楽章』弾き方のコツと難易度


こんにちは!ピアノ弾きのもぐらです。

ついに私の住む畑にも雪が降りました。巣穴の中も冷えてきましたので、先日こたつを導入しました。こたつって良いですね。一体誰が最初に考案したのでしょうか。

こたつでぬくぬくと音楽のことを考えながら、まったりと過ごす時間は私にとって至福のひと時です。本当にこたつは冬の寒さを忘れさせてくれますね。

難易度は低いけれど気を抜かない!


さて、本題に入りますね。

この第3楽章の難易度はそれほど高くはありません。ツェルニー30番を練習しているという方であれば、十分弾ける程度です。

ただ、この楽章は技術面ではそれほど難しいというような印象はありませんが、表現の面では力が試される部分が多いように思います。

ちなみに『ピアノソナタkv.545』の中で考えると、私個人としてはこの第3楽章が最も難しいように思います。

とにかくこの楽章は、弾き手によってはまったく違った印象に聴こえます。個性を出すためには、譜読みの段階で譜面をしっかり分析する力も必要になってくるかと思います。簡単ではありますが決して気を抜かずに弾いていきましょう。


構成をしっかり踏まえて工夫して練習する!

まず、以下の動画を聴いてみてください。


この記事では以下のように、一曲をさらに短く細切れにしてお話ししていきます。

セクションA(最初~0:11)
セクションB(0:11~0:32)
セクションC(0:32~1:06)
セクションD(1:06~終わり)

※カッコ内の時間は動画に沿ったものです。動画をよく視聴して、曲の全体像をしっかり把握することで、練習もよりスムーズに行うことができるかと思います。


譜面を見たり動画を視聴したりすると。曲が短いにもかかわらず、場面がコロコロ変わっていくことがおわかりになるかと思います。
そしてそれぞれのセクション自体も短いので、そうこうしているうちにあっという間に曲は終わってしまいます。

短い曲こそ、一つ一つの箇所のポイントをしっかり念頭に置いて練習することが大事です。特にこの楽章はソナタの最後を飾る重要な部分です。決して「何も考えずに何となく弾いて終わり」ということにならないように、工夫をすることが大切です。

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA ~スタッカートとスラーに注目~

セクションAですが、冒頭からさっそく特徴的なフレーズが出てきます。ここではスタッカート(意味:音を短く切る)やスラー(意味:なめらかに弾く)の弾き方によって、雰囲気も変わってきます。

また、このフレーズはこの後に続くセクションにも度々登場します。まずはここでしっかりとマスターしておきましょう。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜1 ※『Rondo』の意味は『主題が繰り返される楽曲』
※『Allegretto』の意味は『やや速く』

冒頭の和音ですが、右手と左手でバトンをつなぐようなイメージで弾いてみましょう。
この和音の音量については、両手を同じ音量にしたほうがいいという意見と、左手は少し控えめにしたほうがいいという意見に分かれる部分です。

ここは音量一つで随分と雰囲気も変わってきます。どのような演奏にしたいのかというイメージをしっかりと思い描いて弾くことが重要です。この部分の音量に関しては、基本的に正解や不正解という基準はありませんので、自分で納得のいく弾き方を見つけましょう。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜2
この部分は指の運びに気をつけましょう。また、譜面を見ると16分音符四つごとにスラーが区切られています。(0:09~)
細かいことかもしれませんが、このスラーの弾き方も曲の印象に関わってきます。

セクションAではスタッカートとスラーが交互に出てくるといった特徴があります。
ここで重要なのは、スタッカートとスラーをはっきりと区別して、メリハリをつけて弾くことです。しっかりとメリハリをつけることで、躍動感を表現することができます。

☆セクションB ~調の変化を意識する~

セクションBでは少し曲の雰囲気が変わります。(0:11~)
それと同時に、これといって調号などの表記はありませんが、ハ長調からト長調へと変化していきます。響きの変化をしっかりと意識して弾きましょう。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜3
この部分は右手がト長調のような響きですが、左手は少しハ長調の名残りがあって、だけど両手で弾いたときの響きがなぜかしっくりくるところが面白いですね。

この部分の特に右手は、片手練習のときにはなるべくゆっくりと練習していきましょう。そしてスラーやスタッカートの付け方や、それがどの音に付いているのかをよく確認することが重要です。

とにかくここは片手練習をいかに丁寧にできているかどうかがカギです。時間をかけてじっくり練習しましょう。

また、この左手についてはスラーやスタッカートの指示は特に見られません。なめらかに弾いても、あるいは音を切って弾いても、解釈はどちらでも良いかと思います。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜4
譜面をご覧になるとおわかりかと思いますが、この部分は全体的に音の数が少ないです。(0:19~)
しかし、このような部分にこそ工夫が必要なのです。

ここで重要なポイントは休符です。休符というのは、単に音を鳴らさないようにするだけのものではありません。休符というのは『音の無い音符』といっても過言ではないくらい重要なものだと私は思います。

そのため、音符だけでなく休符についても、譜面にある指示に従ってしっかりと音を消すことが大事です。休符が適切に入ると音符の響きの輪郭がより一層強調されて、表情豊かな演奏になります。そのような意味で、休符というのは音符と同じくらい大事な要素なのです。

☆セクションC ~意外な箇所が難しい~

セクションCにおいても、さらに雰囲気が変わっていきます。(0:32~)
ここでは、いくつか意外と難しい箇所も出てきますので、とにかく丁寧な練習を心がけましょう。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜5
ここではわりとハイテンションだった前のセクションから、いきなりどこか不安げな雰囲気に変わります。ここでもメリハリが必要です。
そしてこの部分については、弾いていく中で左右どちらが主旋律になっているのかという変化を、しっかりと把握することも重要です。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜6
この部分は譜面を見ているだけであれば、それほど難解に感じないかもしれませんが、実は意外と難しい箇所だと私は思います。(0:49~)

というのは、右手は音が細切れのスラーで区切られている一方で、左手は音が途切れないように弾かなければならないからです。片手練習ではスムーズに弾けても、いざ両手で弾こうとすると何だか頭の中が混乱し、意外にもつまずきやすいのです。

かくいう私も、右手に集中すると左手の音が途切れ、そうかといって今度は左手に集中すると右手がおろそかになってしまって、当時は本当にどうしたらいいものかと悩みました。

しかし、どうするもこうするも、結局は慣れるまで気長にゆっくりと、何度も練習を重ねることに尽きるかと思います。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜7 ※『cresc.』は『crescendo』の略で、意味は『だんだん音を大きく』

この16分音符の旋律は、うっかりしていると両手の音が不揃いになりやすくなるところです。(0:54~)

このような部分の練習には、メトロノームを使用するのがおすすめです。メトロノームでだんだんとテンポを上げていくことで「自分はこの速さになると途端に音がばらつき始める」ということが客観的にわかるようになるからです。

ただし、このとき両手の音が不揃いのまま「これでいいや」と妥協してどんどんテンポを上げて弾き続けてしまうと、悪い癖がついてしまう原因になります。ですので、音がばらけないように弾けるまで、無理のないテンポで練習することがポイントです。

☆セクションD ~表情豊かに盛り上げよう~

セクションDではこれまでのテンポを淡々と維持しつつ、その中で表情豊かに曲を盛り上げていくことが重要です。(1:06~)

特に譜面に指示が無い箇所は、何も無いからといって素っ気無い弾き方にならないよう、工夫をしていく必要があります。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜8
この部分の2小節目は、右手のスラーのすぐ後にスタッカートがあるというところに注意しましょう。(1:07~)
特にこのスラーの付いている最初の音にアクセントを入れると、次に続くスタッカートがより一層際立ちます。

ただし、だからといってアクセントをあまりにも強く入れすぎると、不自然な響きになってしまうので加減が大事です。

モーツァルト「ピアノソナタ第15(16)番ハ長調K.545第3楽章」ピアノ楽譜9
この部分は、右手と左手の音を完全に一致させて、とにかく音がばらつかないように注意しましょう。(1:13~)
そして、しっかりと鍵盤を深く押すイメージで、キリッとした印象になるように音を切って弾くことで、より格好良く聴こえてきます。

おさらいしよう!全体的なまとめ


さて、ここまでモーツァルトの『ピアノソナタkv.545第3楽章』についてお話ししてまいりましたが、いかかでしたか?

ここで以下に全体的な弾き方のコツをまとめました。

1. スラーやスタッカートを適切に弾きこなしてメリハリを出す(特にセクションA
2. 休符は音符と同じくらい大事なのでしっかり休む(特にセクションB
3. 音のばらつきが出やすい箇所はメトロノームを使用して練習する(特にセクションCセクションD
4. 譜面に表記が無い箇所こそ工夫する(全体的に)

以上の4つのコツを念頭に練習してみてくださいね。


この曲の譜面はとにかくシンプルで、表現や強弱の指示などがあまり見受けられません。
そのため、自分でしっかりと曲の表現方法を考えなければならないのですが、それはある意味では表現の自由度が高いということでもあります。

そしてこの曲の不思議なところは、どのような弾き方であってもそれほど違和感を覚えにくいところだと私は思います。

そのため、多少譜面の指示通りではない弾き方になったとしても、問題は無いかと思います。神経質にならず、とにかく楽しく弾くことが大切です。

それでは、練習頑張ってくださいね!畑の地中から毎日応援しています。

by ピアノ弾きのもぐら



「ソナタK.545」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1938年にペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。第3楽章は8ページ目からになります。

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