ショパンのワルツ集の後半にある第14番。華やかさの中にどこか叙情的な雰囲気が漂う、何とも魅力的な作品です。

この曲に出てくる技法というのもバリエーション豊かで、それゆえに難しく感じられる方もおられるかと思います。だからこそ憧れる曲でもあるのですよね。そんな憧れをご自分のものにしたい方々、必見です!


はい、こんにちは! ピアノ弾きのもぐらです。

今日はハイテンションで穴掘りをしていたら、昔のお友達に出くわしました。お友達のあまりの変貌ぶりに一瞬誰なのかよくわからなかったのですが、お友達からは「もぐさんは変わらないね!」と言われました。

変わらないことってどうなのでしょうか。
そして、生き物はなぜ変わってゆくのでしょうか。

という、どうでもいい考え事にふけっていました。

まあそれはさておき、さっそく本題に入りましょう!

難易度は少し高めでも楽譜をしっかり読めば大丈夫!


ショパン『ワルツ第14番ホ短調遺作』の難易度としては、ツェルニー30番から40番の最初くらいがマスターできていれば充分弾けるかと思います。
それに加えて、アルペジオやスタッカートなど、いろいろな技法が出てくることも考えると、ある程度臨機応変に楽譜を読む力も必要になってくるかと思います。

また、ショパンのワルツ集の中で考えると、この曲は中くらいの難易度ですので、できればこの曲を練習する前にワルツ集の中でも簡単な曲を1曲、2曲マスターして、ワルツの雰囲気に慣れてから挑戦してみるという手もあるかと思います。

ですが「いや、これを最初にマスターしたいんだ!」という方々もおられるかと思います。とりあえずは堅苦しく考えずに弾きたい曲を弾いていきましょう。

場面の移り変わりがわかりやすい構成になっている!


この曲は、場面の移り変わりがとてもわかりやすい構成となっています。ですので、練習するにあたって、細切れにするポイントもわりとはっきりしています。

そして全体的に見ると難しそうに見えますが、同じようなフレーズが繰り返される場面も多く見られますので、それほど複雑ではありません。

では、まずは以下の動画を聴いてみてください。




この記事では曲の説明をするにあたって、以下の通り1曲をいくつかのセクションに区切りました。

セクションA(最初~0:20)
セクションB(0:20~1:11)
セクションC(1:11~1:40)
セクションD(1:41~2:28)
セクションE(2:28~終わり)

※カッコ内の時間は動画に沿ったものです。動画をよく視聴して、曲の構成や雰囲気掴んで練習していきましょう。

では、さっそく各セクションを見ていきましょう!

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションAの弾き方 ~不穏な予感を表現~

セクションAではこの前奏の後に、曲の主題とも言える印象的なフレーズが始まります。

※「Vivace」の意味は「活発に」
※「cresc」は「クレッシェンド」の略で、意味は「だんだん音を大きく」

冒頭は指の運びに充分注意しましょう。このフレーズにはご覧の通り、大きなスラーが指示されているので、途中で指が足りないということにならないよう、なるべく譜面の指番号に忠実に弾くのが無難かと思います。

この部分の抑揚のつけ方は十人十色です。
譜面に指示はありませんが、私の場合はフレーズが上昇するにつれてだんだん速度を上げて、切迫感を表現することもあります。

ですが、上記はあくまで私個人のやり方です。譜面に指示が無くても「こう表現したい!」というイメージが湧いたら、自由に自分なりの弾き方を試してみてください。それだけでも楽しさは倍増します。表現の幅が広いのもこの曲の特徴です。

※「grazioso」の意味は「優雅に、華やかに」

このフレーズは後々もいろんな場面で出てきます。(0:08~)
とにかく軽快に弾きましょう。そのために気をつけるべきところとしては、ペダルの踏み方です。

ペダルの踏み方というのもいろんな解釈がありますが、私個人の解釈だと、この部分ではほとんどペダル無しでも響きは不自然でない気もします。

ですがやはりペダルが入ったほうが音の伸びも良くなるので(ただし伸ばしすぎないことが大事)、入れるとしたら浅めに入れると良いかと思います。

☆セクションBの弾き方 ~とにかく丁寧に~

ここでつまずいてしまう方もけっこうおられるのではないでしょうか。かく言う私もここでかなりつまずきました。(0:20~)

※「dol」は「ドルチェ」の略で意味は「優しく」
※「legato」の意味は「なめらかに」

この部分は次のフレーズがやってくることに気を取られるあまり、上の空な演奏になってしまわないように気をつけましょう。

そして、実はこの部分というのは、特に左手において、次に出てくるフレーズと関連性があります。


私としてはこの部分がこの曲の中で一番の難所だと思っています。左右共に音符が広範囲に飛躍するという、何とも技巧的な部分です。(0:26~)

でも大丈夫。ゆっくり段階的に弾いていけば何とかなります。

まずは、片手練習を完璧と言えるくらい練習します。

それができたら今度は右手と左手を合わせるわけですが、いきなり全部を合わせようとするとつまずくので、左手は最初の1拍目だけ弾いて右手と合わせてみてください。

そしてそれが充分できるようになったら、ここで初めて左手すべての音を鳴らしてゆっくり両手で練習してみてください。

この部分の前の部分で、左手に関連性があるとご説明しました。弾いていく中でお気付きの方もおられるかもしれませんが、左手の1拍目の音が1オクターブ違ってはおりますが同じ音、つまりベースとなる音が同じなのです。

なので、この部分は前部分の変奏のようにも捉えられるため、響きとしては同じような音で構成されていることがおわかりになると思います。

☆セクションCの弾き方 ~叙情的で甘美な旋律に注目~

ここからホ短調だった旋律はホ長調に変化します。気を抜かずに弾いていきましょう。(1:11~)

※「dol」は「ドルチェ」の略。意味は「優しく」

この部分では、右手の甘美な旋律を引き立たせることが大事です。
左手はなるべく静かに、鍵盤を押すというよりも撫でるように弾くと優しい響きになります。そして、右手のフレーズは情緒を前面に出して歌うように奏でましょう。

この曲はワルツですが、このセクションCではどちらかと言うとワルツのリズムを強調するというよりも、抑揚を存分につけて情緒豊かなバラード感を出すほうが、私としてはしっくりきました。

☆セクションDの弾き方 ~感情の起伏を表現~

そしてセクションDでは、先ほどの甘美な雰囲気とは打って変わって緊迫した雰囲気に変わります。(1:41~)


上の譜面の1小節目から見ていきましょう。
右手は重厚な和音、そしてここでは左手が主旋律になります。ここで注意するべきポイントは右手と左手の音量のバランスです。

強弱記号はフォルティッシモ(意味:非常に強く)となってはおりますが、何でもかんでも単純に強く弾いていては、いったいどこを聴かせたいのかがわからなくなってしまいますよね。これはこの曲に限らずいろんな曲にも同じことが言えます。

ここで強調していきたいのはどちらかというと左手なので、右手の和音は指示の通り確かに強めに弾くべきなのですが、ちょっとだけ左手を意識して音量を加減してあげましょう。

そして、ペダルも重要です。左手と右手の音符の構成を考えると、全体的に不協和音っぽい音が多く散りばめられているのがおわかりになるかと思います。

なので、ペダルはもし入れたいのならば浅く細切れに入れると音が濁らずすっきりした響きになります。ちなみに私はこの部分のペダルは、その日の気分によって入れたり入れなかったりします。気分屋なもぐらなのです。


そして後半になるとまたセクションCとほぼ同じような甘美な旋律が現れます。でもこの部分では左手がアルペジオになっていますね。(1:58~)

もちろんここでも左手は控えめに弾くべきですが、やりすぎない程度の抑揚(例えば音符の動きに合わせて盛り上げる等)をさりげなくつけて弾くと、一層雰囲気が良くなるかと思います。

☆セクションEの弾き方 ~自由に表現してみよう~

いよいよ華々しいフィナーレです。セクションEでの弾き方というか解釈は本当に人それぞれなので、ここは自分の個性を思いっきり表現していきましょう。(2:28~)

だけど、セクションBと同じく、この部分もなかなかの難所だと私は思いますし、もしかするとこの部分を練習するのがちょっと億劫になっておられる方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに私もこの曲を練習していた当時はセクションDまでは何とかトントン拍子に進んだのですが、どうもこのフィナーレで足止めを食らっておりました。

とにかく気長に少しずつ練習していきましょう。

※譜面上にある点線は「1オクターブ高く」という意味です。

上の譜面での主旋律はおそらく右手だろうと私としては思っております。(2:38~)
そして、ところどころアクセントがついていますが、ここは必ずしも譜面通りに指示を絶対に守らなければならないというわけではないと私は思います。

というのも、楽譜って実はそれぞれ出版社によっては全然解釈が違っているのです。
特にアクセントやスタッカートなどの細かい指示、そして強弱記号については、違う出版社の楽譜をそれぞれ見比べてみたら全然違っていた、なんてこともしょっちゅうあるのです。

お話は戻りますが、私だったらこの部分は左右共に、1拍目よりも2拍目に重きを置いて弾きたいかなと思います。出版社ごとに解釈が違うのと同じで、弾き方に正解とか不正解なんてありません。自分なりのイメージを思い描きましょう。


この部分については右手と左手の競い合いというような印象を私は持っています、とにかく右手も左手も「一歩も譲らない!」と、互いに感情をむき出しにして意見を主張しているというイメージが感じられます。何とも迫力のある場面ですよね。(2:41~)

この部分は練習するにあたって、終わりへ向けて速度がどんどん上がってしまい、一つ一つの音に気を配れなくなりがちな部分なので(もちろん解釈としてあえて速くしていくというのは有りです)、最初はしっかりメトロノームを使用して、テンポをキープしながら練習しましょう。


この部分の右手は同じようなフレーズの塊が続きますが、全体的にだらだらした響きにならないように、指示は特にありませんがどこかでアクセントを意識して付けていくと、メリハリのある響きになります。私としては、左手の和音が鳴る箇所の右手にアクセントを入れていくという弾き方がおすすめです。(2:46~)


この最後の大きな右手のアルペジオですが、やはり最後の見せ場なので格好良くきまるようにしたいところです。(2:50~)

しかし、アルペジオ自体はそれほど難しくはないのですが、今までのテンポのまま臨むと、私の場合はけっこうここでミスが目立ってしまいます。

私はかつて「テンポが速い=上手い」というとんでもない勘違いを何年もしておりました。で、とにかく速く流れるように弾きたくて、この部分を練習しておりました。

もちろん速く流れるように弾くことだって立派な解釈の一つなので決して間違いではないのですが、ひょんなことから私は「ちょっと違うなぁ」と感じました。

そしてこのアルペジオの部分に関して、今までとは逆にテンポを落としてゆっくりと重厚感のある弾き方に変えてみたところ「何だかこれはこれでいいなぁ」という発見をしました。

速く弾いても遅く弾いても、軽快な弾き方でも重厚感漂う弾き方でも、それは本当に自由だとは思いますが、ここで一つ、どんな弾き方であれ丁寧に弾くべきであるということは同じなので、まずはしっかり曲を自分のものにしてから個性を出していきましょう。

要点を確認!全体的な弾き方のコツのまとめ


はい、ここまでお話してまいりましたが、いかがでしたか?

では、以下にショパン『ワルツ第14番ホ短調遺作』の全体的な弾き方のコツをまとめました。

1.場面構成をまず譜読みの段階でしっかり頭に入れておく(全体的に)
2.右手は基本的に軽快に、音符が飛躍する難所は根気よく段階的な練習をする(特にセクションAセクションB
3.ペダルは必要かどうかよく考えて、不要だと判断した部分には無理に入れる必要はない(特にセクションAセクションB
4.中盤は情緒豊かに、歌うように表現する(特にセクションCセクションD
5.後半は最も個性が表れる部分なので、しっかりと基本を押さえた上で自分の色を加えて表現していく(特にセクションE

以上の5つのコツを念頭に練習していきましょう。

とにかくこの曲は場面の移り変わりが随所に感じられる曲なので、弾く側も聴く側も皆が楽しめる曲だと私は思います。そして個性溢れる演奏を大切にしていきましょう。

それでは練習、頑張ってくださいね。畑の地中から来る日も来る日も応援しております!

by ピアノ弾きのもぐら


「ワルツ第14番」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1894年にシャーマー社から出版された楽譜です。「第14番」と「第15番」の2曲が収録されています。

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