ピアノを習っている子供達に
「ショパンと言えば?」
と聞くと
「子犬のワルツ!」
と返ってくるほど、超有名かつ常に発表会で弾きたい曲上位にランキングされるほどの憧れの曲『子犬のワルツ』。
華やかで愛らしく、気品に満ちたこの曲を上手く演奏するにはどうすれば良いか、今回は3つの重要ポイントに絞ってお伝えしたいと思います!



子犬とはショパンの恋人ジョルジュ・サンドの子犬である

まずはこの曲について知りましょう!

この曲はショパンの恋人ジョルジュ・サンドが飼っていた子犬をサンドがショパンに曲にして欲しいと頼んだことから生まれました。
自分の尻尾を追いかけてグルグルグルグル回る可愛らしい子犬。
ショパンもサンドと共にその微笑ましい様子を見ていたかもしれませんね。

この曲を演奏する際にはこの事を決して忘れてはいけません!!
なぜなら、それを忘れてただの音符の羅列で弾いてしまうと

「まぁーあなたのは子豚のワルツね!!ショパンに失礼よ!!」

と小学生当時の私のように先生にケチョンケチョンに罵られることになります。(笑)
ヨーロッパの抜けるような青空のもと、鮮やかな芝生の上で可愛らしく駆け回る真っ白な子犬をイメージして、その子犬に相応しい音色になるようにしましょう。
(いや、真っ白だったかどうかは知りません。(笑)あくまでイメージね。)


この曲の難易度は?

難易度はと言うと、全音難易度表ではA~FのC(中級)となっています。
教本で言えばツェルニー30番前半がきっちり弾けるようになっていれば、子犬の運指も難なくクリアすることが出来るでしょう。

ただ、この曲は変ニ長調。
フラットが多く、黒鍵に苦手意識のある方は少々譜読みが大変かもしれません。
しかしフラットの数に比例して曲調は大人っぽく、品良くなるもの。
子犬の曲でありながらどこか気品があって魅力的でこんなにも人気があるのは、フラットの多さからくるものなのかもしれませんね。


さて、子犬子犬と呼ばれますが、正式名称はOp.(オーパス)64-1、作品番号64番の第1曲です。
ってことは第2曲もあるの?と思ったあなた!さすが察しが良い!
そう、Op.64には2曲目、3曲目があります。
2曲目はこれも有名なワルツ嬰ハ短調、ショパン特有の哀しみに満ちた美しい曲です。
そして3曲目はこれまた有名ワルツ変イ長調。
明るい曲、哀しみに満ちた曲・・・と対照的な曲をセットにするのがショパンの特徴でもあります。

この2曲目3曲目は難易度から言えば1曲目の子犬よりも若干難しめ。
子犬をモノに出来ればその後に挑戦してみると良いですね!

演奏のコツ①左手は指揮者であれ!

この曲では華やかに鍵盤の上を駆け回る右手に目が行きがちですが、重要なのは左手!!
左手がどんくさいとモッタリした音楽に聴こえます。

まずは各小節左手1拍目だけを取り出していき、バスのラインを鼻歌で歌えるくらい弾き込みましょう。

バスラインがしっかりと定着したら、2拍目3拍目の和音を1拍目のバスより小さく弾きましょう。
ここ、まさに重要ポイント!!
だってこの曲はほぼ全ての小節において

1拍目のバス 対 2拍目3拍目の三和音

となっています。
音の数に直してみると

1 対 3+3

ってことは

1 対 6

想像して下さい。

象1匹 対 象6匹



それを毎小節、曲が終わるまでずっと・・・・・



うるせーよ。

と普通の耳をお持ちの方なら思ってしまいます。
なので

象1匹 対 リス6匹

くらいの音量に落としてみてください。
1拍目のバスは少し重く(と言っても象は言い過ぎかもしれませんが)、2拍目3拍目の和音は手首を十分しなやかに鍵盤を浅く柔らかく弾くように。

そうするとずいぶんスッキリとした清潔感のあるワルツになってきます。

演奏のコツ②トリルを征す

さて、この曲でいっちばん印象的なのが冒頭から登場するこのトリル!!

トリルが苦手?

だいじょーぶ!!
この曲に出てくるトリルは右手の一番動きやすい2・3・4の指だけ!!
中間部後の4小節にかけてのながーいトリルなんて右手人差し指と中指のみ!!
左手の薬指と小指の「こんなもんできるかー!!」なトリルじゃありません。
毎日惜しみなく練習しましょう。

トリルの練習方法としては、ピアノではなく机の上などでタカタカタカタカ指を動かすのもおススメです。
鍵盤のように指への負担がない分、力を抜いて良いフォームでいつでも練習出来ます。
その際に是非2本の指をしっかり動かしたり小さく最小限の動きに留めたりという練習もしてみてください。
トリルに表情が出て、まるで子犬が向こうの方から走ってくるような遠近感のあるトリルが自在に弾けるようになってきます。

ちなみに、

このように冒頭のトリルがない楽譜もあります。
これはどの出版社の楽譜を使用するかで変わってきますので、お使いの楽譜に従ってください。
よく使われるのは全音、ピアノの先生はパデレフスキ版が多いですし、最近はショパンコンクールでも指定されているエキエル版を使う方も増えてきましたね。

演奏のコツ③右手の到達音を品良く

冒頭のトリルの後に続く有名なこの曲のテーマ、いかにも愛らしい抱きしめたくなっちゃうような子犬が駆けてくるようなメロディーですね。
ショパンはこれを即興で作ったというのだから、もうやはり天才としか言いようがありません。

しかーし!!
このメロディーを楽譜の指示通りきっちりクレッシェンドで弾くとえらいことになります。

ソラドシソラドシソラドシソラドシソラシドレミファソ「シー!!」

ひぃぃぃぃぃぃ!!!!

土佐犬かよ!!!!

噛みつかれる勢いです。

なので、このメロディーの到達音「シ」はすこーし優しさを持って、響きが上にスーッと引っ張られていくような、オシャレで品の良い音にしてあげましょう。
手のひらは力まず指先だけに重さを感じて。

これを体得出来ると、実はこの曲が一気にグレードアップします。
このメロディーは何度も何度も登場しますし、

ラストのこの部分の最高音「ファ」でも応用出来ます。

ただ、この弾き方は賛否両論あって、きっちりとクリアな音でパーン!と弾く方が音楽に張りがあって好きという方もいます。
今回紹介した弾き方はあくまで私の好みです。
まぁそれが音楽の面白い所でもあるんですが、表現者(演奏者)であるあなたがどう弾きたいかが一番重要なんです。
いろんな弾き方を試して、あなた自身の子犬を完成させてくださいね!!

まとめ

子犬のワルツの難易度は中級。
演奏する際は、
左手を指揮者のように
トリルを鮮やかに
そして右手のメロディーは各フレーズの中での到達音に十分気を配って演奏すれば、あなたの子犬もグレードアップ間違いなしです!

あたたかな日向でまどろんでいるような中間部もなんとも魅力的なこの曲。
「ミニッツ・ワルツ」と呼ばれるので1分台で指をタカタカ速く弾ききる!!
と思って頑張って弾かれる方も多いのですが、それ以上に子犬への愛情に満ちた良い音で演奏することが大切かもしれませんね。

素敵なワルツになりますよう!
応援しています!


「子犬のワルツ(小犬のワルツ)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1905年にペータース社から出版された楽譜です。
  • Mutopia Project(楽譜リンク
    最近整形されたきれいな楽譜です。

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