ショパンの『ワルツ第10番op.69-2』は、その感傷的かつ情緒的な旋律の中に、やはりワルツというだけあって、どこか舞曲らしい雰囲気の漂う曲です。

ワルツといってもいろいろな作品がありますが、その中でもこの曲はわりと簡単なほうだと言えます。
「ショパンの曲を練習してみたいけれど、何から始めたらいいのかわからない」と思っておられる方は必見です。

そして『ショパンのワルツ』とパッと聞いただけで、何だか難しそうな印象を持ってしまうという方もおられるかもしれません。しかし、そんなときこそ思い切って一歩踏み出してみましょう。最初は少し大変かもしれませんが、その分弾けるようになったときの達成感や喜びは大きいと思います。


こんにちは!ピアノ弾きのもぐらです。
毎日寒いですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私の住む畑には雪がどんどん積もって、最近はなかなか巣穴から地上に出られないので、ちょっと退屈です。お友達のかえるさんは冬眠してしまいましたし、ねずみさんにもなかなか会えません。

かなり気が早いですが、春が来るのが待ち遠しいですね。

■ 目次

初めてワルツを弾く人にはもってこいと言える難易度!


それでは本題に入りますね。

冒頭でもお話ししましたが、この曲はショパンのワルツの中でもわりと簡単なほうだと言えます。ツェルニーであれば、30番を練習中という方なら十分マスターできるほどの難易度かと思います。特にショパンのワルツに初めて挑戦するという方には、まさにもってこいと言える作品です。

ただ、難易度自体はそれほど難しくはありませんが、この曲は譜読みの段階でけっこう苦労される方も多いかもしれません。

というのは、この曲には臨時記号や調号が目まぐるしく変化するという特徴があるからです。そのため、まず弾く前に譜面にある情報を正確に読み取れているかが重要になってきます。


構成はとてもシンプルで理解しやすい!

まずは以下の動画を聴いてみてください。


動画をお聴きになるとおわかりかと思いますが、この曲はわりと繰り返しが多く、至ってシンプルな構成になっています。
しかし、シンプルな構成をそのままシンプルに弾いてしまっては、何だか味気ない印象になってしまいますので、抑揚を付けるなどの工夫も必要になってきます。

この記事では曲を以下の通り、いくつかのセクションに小分けにしてご説明していきます。

セクションA1(最初~0:46)
セクションB1(0:47~2:13)
セクションC(2:14~2:56)
セクションA2(2:56~3:16)
セクションB2(3:16~終わり)

※カッコ内の時間は動画の時間に沿ったものです。動画を予めよく視聴しておくことで、曲の全体的なイメージなどをつかむことができるかと思います。

では、さっそく練習に入っていきましょう。

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA1 ~ワルツのリズムを意識しよう~

セクションA1は、さっそくあの感傷的な旋律から始まります。
右手は主旋律を弾き、左手はワルツのリズムを刻んでいきます。ワルツを意識しながら、まずは片手練習を念入りに行いましょう。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」Moderatoの部分のピアノ楽譜 ※『Moderato.』の意味は『中くらいの速さで』

この曲は最初の速度表記を見ると、少し速く感じられるかと思います。私もこれはちょっと速いなぁと思いました。ですが、速度についてはそれほど神経質になる必要はないかと思います。自分で納得のいく速さでのびのび弾くほうが大事かと私は思います。

ですが、メトロノームは使うようにしましょう。全体的なテンポというのは気にする必要はそれほどありませんが、必要以上に途中で速くなったり遅くなったりすると、何だかぎこちない印象になってしまいます。

特に『だんだん遅く』とか『元の速さで』などの速度表記がこれといって記されていない部分では、なるべく一定の速度を保って弾けるように練習をしていきましょう。
そしてメトロノームを使う際は、無理のない速度から始めていきましょう。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」cresc.の部分のピアノ楽譜 ※ 『cresc.』は『crescend』の略称で意味は『だんだん音を大きく』
※ 『rit.』は『ritardando』の略称で意味は『だんだん遅く』
※ 『dim.』は『diminuendo』の略称で意味は『だんだん音を小さく』

この部分は右手が何だかややこしく感じるかもしれません。(0:19~)
ここは指の運びに気をつけましょう。特にスラー(意味:なめらかに)があるところは音が切れないように注意し、そして音の粒を揃えるときれいな響きになります。

かつてこの曲を練習していた私は、この部分がとても苦手でした。
というのは、左手は左手で和音がいろいろ変化していき、それだけでも大変だというのに右手にも注意を払わなければならないからです。

これはこの部分に限ったお話ではありませんが、たとえ両手練習の段階に入っていても途中で行き詰ってしまった場合は、もう一度片手練習に戻って練習することをおすすめします。

☆セクションB1 ~抑揚の付け方を考えよう~

セクションB1は、セクションA1の旋律が少し変化というか展開したという雰囲気ですね。(0:47~)
ここについても、まずはやはり一定の速度で弾けるようになることが大事です。それができて余裕が出てきたら、次は抑揚の効果的な付け方についても考えていきましょう。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」con animaの部分のピアノ楽譜 ※ 『a tempo』の意味は『元の速度に戻す』
※ 『con anima』の意味は『いきいきと』

上の譜面の少し前の部分(セクションA1の終盤)では、セクションB1に向けて速度をだんだん遅くするという表記がありますが、ここにきてまた元の速さに戻ります。

この右手のテンポは、一定にしながらもまるで歌うように抑揚を付けていくと、セクションA1との変化がより強調され、とても表情豊かになるかと思います。
そして左手は、セクションA1のときよりも少しだけ軽やかに弾いてみても面白いかもしれません。

そしてワルツというのは、どの作品にも言えることですが、本当にペダルの踏み方には毎回悩まされます。
これは私の個人的な感想ですが、ペダルの踏み方という面で考えると、ワルツというのは数あるショパンの作品の中でも、特に良い勉強になる作品だと感じます。

これを機に、ペダルの踏み方についてじっくり研究してみるというのも、練習をする上ではとても有意義だと私は思います。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」旋律が盛り上がる部分のピアノ楽譜
この部分は旋律が盛りあがるところですが、左手に関しては音量を控えめにしたほうが落ち着いた印象になります。(1:06~)

また、右手はやや長めの半音階で下降していくといった弾き方になります。
このような部分は、指が途中でもつれたり旋律が止まってしまわないよう、スムーズに指を動かせるような練習が必要です。

上記でも触れましたが、ここでも両手練習で行き詰ったときには、また片手練習に戻って練習を重ねましょう。

☆セクションC ~調の変化に注意しよう~

セクションCでは調が変わり、雰囲気も打って変わって明るく華やかになります。(2:14~)
調はロ短調からロ長調に変わります。一気に『♯』などの臨時記号も増えますので、譜読みをするときは音を間違えて読まないように注意しましょう。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」ロ長調に変わる部分のピアノ楽譜 ※ 『dolce』の意味は『やさしく』

この部分はまず、気持ちの切り替えをしっかり行うことが大切です。ここからしばらくは楽しく華やかな旋律が続きますので、セクションB1までの感傷はとりあえず置いておきましょう。

しかしそんなことよりも「この臨時記号の多い場面、一体どうやって乗り切ればいいの?やっぱりこの曲難しいよ!」とモチベーションがここへきてだんだんと下がってきている方もおられるかもしれません。

かくいう私も実際に練習していた当時、この部分はかなり手こずりました。楽しい響きにもかかわらず譜面があまりにもややこしくて、雰囲気を楽しむどころの話ではなかったような思い出があります。

ですが、ここをクリアすればこの曲はもうほぼ弾けたも同然です。諦めずに粘り強く練習するのみです。少々無責任な言い方になってしまいますが、ひたすら頑張りましょう。いつか弾けると信じて練習していれば弾けます。まさに『継続こそ力なり』なのです。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」右手が和音の部分のピアノ楽譜
和音で構成されているこの右手も、つまずきやすい箇所かと思います。(2:34~)
このような部分は、遅めのテンポでしっかり片手練習をするのはもちろんですが、それに加えて少し工夫が必要になってきます。

正直このような箇所というのは、最初から完璧になめらかに弾こうとしても、なかなか上手くいかないことが多いように感じます。私もここでつまずいていました。

では、具体的にどのような工夫をすれば良いのかという部分ですが、まず片手練習のときにはあえてなめらかに弾くことは考えず、とにかく和音を一つ一つ確実に鳴らせるようになることを第一目標に考えることが重要です。

いくらなめらかに弾けても肝心な和音にばらつきが出てしまうと、一体何をしたいのかわからないような印象になってしまいますし、何より和音のばらつきというのは正直耳に心地の良いものとは言えません。和音がしっかり鳴らせるようになってから、なめらかさを追求していきましょう。

次になめらかに弾くために大事なことは、指の動きをなるべく最小限に留めることです。一つ一つの指の動きが大きいとスムーズに和音が進まず、その結果なめらかに聞こえなくなってしまうのです。

そして次の和音に指が移る際には、前の和音をしっかりと保ちつつ、たすきをつなぐようなイメージで次の和音に指を置くことがポイントです。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」リズミカルな部分のピアノ楽譜
このようなリズミカルな部分は、軽快さを意識して弾いていきましょう。(2:39~)
このときに最も注意すべきことはペダルの踏み方です。ここで踏み過ぎてしまうと、全体的に響きが重くなってしまいます。

ペダルのタイミングについても、譜面上では3拍目で離すという指示になってはいますが「3拍目で離すのはいまひとつしっくりこない」と感じる人や「まったくペダルを入れないほうが良い」と解釈する人もおられるかもしれません。

譜面の指示を忠実に守ることも大切ですが、ある程度弾けるようになってきたら、譜面の指示だけでなくその曲に対する自分の解釈も織り交ぜて、曲を仕上げていくことも大事なことだと私は思います。

ショパン「ワルツ第10番ロ短調Op.69-2」ロ長調からロ短調に変化する部分のピアノ楽譜
先ほどまでロ長調だった旋律が、ここから急にロ短調に戻ります。(2:45~)
いきなりの変化で戸惑ってしまうかもしれませんが、落ち着いて譜読みをしていけば大丈夫です。

そしてこの箇所は次のセクションに曲を導く大切な箇所ですので、だんだんと不安げな雰囲気を醸し出していきましょう。

☆セクションA2、B2 ~自分なりのイメージを思い描こう~

セクションA2(2:56~)、セクションB2(3:16~)は、セクションA1セクションB1の繰り返しです。もうマスターできたも同然ですね。

ただ、ここは曲の構成上で考えれば終盤です。先ほどのセクションA1セクションB1には、次に明るい雰囲気のセクションCが待っていましたが、ここはそうではありません。

つまり、ここは一見繰り返しのようですが、構成上は新たな場面です。気持ちというかイメージを切り替えて弾くことで、一つ一つの音にもまた違った変化が出るかと思います。

ちなみに私はこの部分について『束の間の幸せの後に来る悲しみ』というイメージを勝手に自分の中で思い描いています。

イメージは十人十色だと思いますが、私の場合はイメージを持った上で、さらにいろいろな思い出を曲に重ね合わせつつ弾くようにしています。
具体的にイメージを思い描くことで、その曲をより一層堪能できるのではないかと思います。

おさらいしよう!全体的なまとめ


ここまでショパンの『ワルツ第10番op.69-2』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ここでいくつか全体的な弾き方のコツについて、以下にまとめました。

1.メトロノームを使ってゆっくりと練習する(特にセクションA1セクションB1セクションA2セクションB2
2.臨時記号や調号の変化に気をつける(全体的に)
3.両手練習でつまずいたら片手練習に戻ってみる(全体的に)
4.ペダルの踏み方を自分なりによく考えてみる(特にセクションB1セクションCセクションB2
5.和音は音がしっかり揃うようになってからなめらかさを追求する(特にセクションC
6.自分なりのイメージを持って弾く(全体的に)

以上の6つのコツを念頭に練習をしてみてくださいね。

この曲はわりと簡単であるとはいえ、一つ一つを見ていくとけっこう弾き応えがあるというのがおわかりになるかと思います。大変なときもあるかもしれませんがそれを乗り越えて、徐々にレパートリーが増えていくことでモチベーションも上がり、より一層ピアノの練習も楽しくなってくるかと思います。

それでは練習、頑張ってくださいね!畑の地中から盛大に応援しております。

by ピアノ弾きのもぐら



「ワルツ第10番Op.69-2」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1894年にシャーマー社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「ワルツOp.69」全2曲が収録されており、Op.69-2は5ページ目からになります。

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