モーツァルトの『ピアノソナタkv.330』の第1楽章、まるで子どものような無邪気さと愛らしさが溢れる珠玉の名曲ですね。ちょっと前にテレビの某コマーシャルにも使われた曲で、聴き覚えのある方々もたくさんおられるかと思います。

この曲は弾き方次第で印象が大きく変わる曲です。
特に「何となく弾けるようにはなったけれど、もうちょっと表現の幅を広げたい」と思っておられる方々は必見です。


こんにちは、ピアノ弾きのもぐらです!

この間のことなのですが、いつものように巣穴からちょっと顔を出して地上の様子をそっと確認しようとしたら、巣穴の入り口付近に何やら私宛ての小包が置いてありました。

もしかしたら新種のもぐら退治用トラップかもしれないと一瞬思いましたが、一応そっと開けてみました。すると小包にはオルゴールが入っておりました。贈り主さんは結局よくわかりませんが、もぐらにオルゴールを贈ってくださるなんて、心優しい方もいるものだなぁとしみじみ思いました。

まあそれはさておき、さっそく本題に入りましょう!

難易度は弾き方次第で変わってくる!


この曲の難易度ですが、モーツァルトのソナタ集の中ではわりと簡単に弾けるほうだと思います。ツェルニー30番がある程度マスターできていれば充分に弾けるかと思います。

ただ、確かに楽譜を見るだけだとわりと簡単な印象ですが、この曲は弾き方の工夫次第では、あたかもものすごく技巧的かつ聴き応えのある曲のように感じさせることも可能なのです。そういう意味では一概に簡単だと言い切れない部分もあります。

構成を把握するときは自由に解釈することも大事!


この曲は題名の通りソナタというだけあって、やはり構成というのも典型的なソナタ形式です。でもソナタ形式とは言っても細かく譜面を見ていくと、調の変化などの様々な要素が盛り込まれているので、ソナタ形式という概念だけに必ずしもガチガチにとらわれる必要はないかと思います。

基準となる構成を学ぶことも確かに大切ですが、自分なりに曲を解釈してみることも同じくらい大切なのです。

ではここで以下の動画を視聴してみてください。



この記事では説明をわかりやすくするために。以下のように一曲をいくつかのセクションに区切ってあります。
一般的なソナタ形式については、ここでは頭の片隅にちょっと置いておくだけで充分かと思います。

セクションA(最初~0:30)
セクションB(0:31~1:43)
~セクションAとBの繰り返し~
セクションC(3:27~4:21)
セクションD(4:22~4:52)
セクションE(4:52~5:34)
セクションF(5:34~終わり)

※カッコ内の時間は動画の時間に沿ったものです。動画をよく視聴し、曲の雰囲気をつかんでおくだけでも練習効率は上がるかと思います。

ではさっそく各セクションに入っていきましょう。

もぐら式!各セクションの弾き方のコツ

☆ セクションAの弾き方 ~明るく楽しく~

セクションAはハ長調、冒頭はお馴染みの旋律で始まります。曲の第一印象にもなる大事な部分なので、しっかりマスターしましょう。

※「Allegro moderato」の意味は「ほどよく快速に」
※「legato」の意味は「なめらかに」

主旋律となる右手は、味気ない弾き方になってしまわないようにしましょう。ここはまるで歌うように弾いていきたい部分です。そのために私がよく行う練習方法としては、片手練習のときも両手練習のときも、実際に主旋律を口ずさんでみることです。

弾きながら口ずさむこともあれば、ピアノに向かわない段階で楽譜を見ながら口ずさむこともあります。フレーズの盛り上がりなどが頭だけでなく体全体で理解できるようになるので、フレーズを口ずさむことは表現力を身につけるのにとても良い効果があります。


短めのスラーとスタッカートの組み合わせが見られる部分は個性が出るところです。弾くときには、どの音に重きを置くかを自分なりに考えてみましょう。重きを置く箇所が変わるだけで、印象も大きく変わります。(0:18~)

音階の部分は片手練習の段階で、特に一本一本の指がもつれたり音が不揃いになったりしないよう、よく音を聴きながらゆっくりと練習しましょう。

☆ セクションBの弾き方 ~進行をスムーズに~

セクションBではハ長調だった旋律がト長調に変わります。リズムの変化を敏感に察知しながら弾いていきましょう。(0:31~)


最初ここで戸惑ってしまう方もおられるかもしれません。実際私はとても戸惑いました。というのは、いきなり左手が三連符に変わり、でも右手はその前と同じようなリズムを維持しているからです。(0:44~)

ここは決して難しいかと言われるとそうでもないのですが、正直慣れるまではすごく弾きづらい部分かと思います。
ですが、弾きづらくてもここはとにかく何度も弾いて、リズムに慣れていくことが大事です。


「フォルテピアノ」に「S」がついたこの記号の意味は「特に、強く直ちに弱く」です。

「フォルテなのかピアノなのかどっちだよ!」と思われた方々もおられるかと思いますが、その辺りはあまり気にせず、アクセント記号の仲間みたいなものだと捉えておく程度で大丈夫です。(1:06~)

この部分はスタッカートをどのように弾くかが表現のカギとなります。スタッカートと一口に言っても、ものすごく短く切ると解釈する人もいれば、ソフトな感じを出すためにスタッカートとは言えあまり短くは切らないと解釈する人もいます。その辺りは自由です。


このようなフレーズは随所に出てきます。指示は特に書いてありませんが、私は次のフレーズに向けてクレッシェンド(意味:だんだん音を強く)を入れて抑揚をつけています。(1:17~)

また、右手の「レ」の音はあまり目立たないように弾くことをおすすめします。「レ」の音を加減することで、旋律がより綺麗に浮き上がってきます。

☆ セクションCの弾き方 ~臨時記号をよく見る~

セクションCでは雰囲気が少し変わりますね。途中でまた調が変わっていくので、その変化も意識しましょう。(3:27~)


セクションAとBは軽快で、わりとスタッカートの要素が強めでしたが、セクションCではスラーをしっかり読み取ることが重要になってきます。また、休符も「静寂」という名の立派な音の一部なので、しっかりと守りましょう。

途中も「スフォルツァンド」(意味:ここだけ強く)が出てきますが、ここでは1小節目の指示の通り基本的に「ピアノ」(意味:音を弱く)なので、あまり極端に音を強調しすぎると何だか不自然な響きになってしまいます。強調のしすぎには注意しましょう。


ここでも休符をしっかり守りましょう。リズムが特徴的なので、休符でしっかりとメリハリをつけることでリズムの良さをより一層引き立たせることができます。(4:14~)

☆ セクションDの弾き方 ~ほぼ繰り返し~

セクションDはセクションAのほぼ繰り返しです。もうマスターできたようなものですね。
しかしほんの少しですが、音の違いなどもあるので、あらかじめ譜面をしっかりと見ておきましょう。(4:22~)

☆ セクションEの弾き方 ~調はほぼハ長調~

セクションE(4:52~)はセクションBと似ていますが、調の違いがあります。
まずは下記の二つのフレーズが書いてある譜面を眺めてみてください。

(5:00~)

(5:05~)

眺めてみると、この二つのフレーズはセクションBではト長調でしたがここではハ長調ですね。ちなみに上の一つ目のフレーズは臨時記号が多く見られ、一見するとト長調みたいですが、よく見るとこのフレーズはハ長調なのです。

調をある程度把握してあるのとないのとでは、練習効率も大きく違ってきます。

調の変化を意識せずにいきなりピアノに向かうと、似たようなフレーズであるのにもかかわらず、まったく新しいフレーズのように思えてしまいます。すると「また新しいことを覚えて練習しなければならないのか……」とモチベーションの維持も大変になってしまいます。

でも調の変化をしっかり意識しておくと「これはさっきのフレーズの、調が変わったバージョンだから弾くコツはさっきのフレーズと似たような感じだろうな」と何だか気持ちに余裕が出るので、変に身構えずに練習できるのです。

☆ セクションFの弾き方 ~美しく聴かせよう~

セクションFは軽快さと華やかさを強調して美しく表現しましょう。あともう一息です。頑張りましょう。(5:34~)


この部分の右手が苦手という方もおそらくおられるかと思います。フレーズの中に短い装飾音的なトリルが散りばめられていて、うっかりしていると指がもつれたり左手と右手がずれてしまったりしやすい箇所です。

ここは片手練習の段階で自信がつくまで弾き込みましょう。そして左手と合わせるときにはまずはゆっくりと焦らず弾いていきましょう。

かく言う私もこの部分が苦手です。ちょっと大げさですが、私個人の見解としてはここがこの第1楽章の中で一番の難所のように思います。ですが難所をスムーズに鳴らせるようになれば、この曲は一気に技巧的で華やかな曲になります。

この曲に限らずどんな曲でも、難しい部分ほど上手く弾けたときの達成感は大きいので、根気よく練習していきましょう。


そしてこの終わりに向かう部分もどこかで見かけたような気がしませんか? そう、この部分は、調こそ違いますがセクションCの冒頭のフレーズにとても良く似ているのです。(6:02~)

ですがここは曲の終盤です。確かにセクションCとフレーズは似ていますが、ここは「これで曲を締めくくる」という雰囲気を醸し出す場所です。

例えばリタルタンド(意味:だんだん遅く)とかデクレッシェンド(意味:だんだん音を弱く)などを入れながら抑揚をつけていくと、自然な感じに曲を締めくくることができるかと思います。このやり方はあくまで例なので、自分なりにどんな締めくくりにしたいのかを考えて、自分なりに表現してみてくださいね。

要点を確認しよう!全体的なまとめ


ここまでお話してきましたが、いかがでしたか?
ではここで、モーツァルト『ピアノソナタkv.330ハ長調第1楽章』の弾き方の全体的なコツについてまとめました。

1.主旋律は歌うように鳴らす。練習しながら旋律を実際に口ずさむことで表現力アップの効果もある。(特にセクションAセクションD

2.スラー、スタッカートの入れ方、アクセントを付ける位置を事前にしっかり考えて弾く。それらを取り入れる場所や程度によって曲の印象も大きく変わってくる。(特にセクションAセクションBセクションDセクションE

3.三連符の箇所はとにかく慣れることが大事。片手練習はもちろん、両手練習でもまずは遅いテンポからゆっくり根気よく弾き込んで、三連符の感覚に慣れる。(特にセクションBセクションE

4.調の変化をしっかりと理解しておくことで、似たようなフレーズが出てきたときに関連性に気づくことができるようになる。そうすると練習効率アップにつながる。(特にセクションC

5.難所だと思ったところこそ大事な聴かせどころなので、苦手な箇所ほど根気よく丁寧に練習をする。(特にセクションF

以上の5つのコツを念頭に置いて練習していきましょう。
ですが上手く弾けるようになったときがゴールではありません。むしろそれはある意味スタートです。そこから今度は自分の味を加えていきましょう。

一つの曲を自分のレパートリーにするには、ある程度の時間が必要です。その時間をいかにモチベーションを維持しながら楽しく練習するかということが大事ですね。

それでは練習、頑張ってくださいね。畑の地中から全力で応援しています!

by ピアノ弾きのもぐら