ベートーヴェン
「エリーゼのために」については皆さんよくご存知だと思いますし、この曲の記事はたくさんあると思います。

今回の記事ではベートーヴェンがどのような人物だったのかというエピソード交えながら、私が「エリーゼのために」をなぜ怖いと感じるのかについて書いていきたいと思います。

この記事では弾きかたや難易度については触れません。怖いと感じる理由を個人的な視点で書いていこうと思います。

弾きかたや難易度についてはサイト内にいくつか記事がありますので読んでみて下さいね!

■ 目次

「エリーゼのために」について

この曲はあまりに有名になっているので多くの方がいろんな情報を持っていらっしゃるとは思いますが、少しご説明させて下さい。

この曲は1810年に作曲されていたようですが、出版されたのは1867年です。ベートーヴェンは1827年に亡くなっていますので、この曲は彼の死後に出版されたということになります。

「エリーゼのために」はバガテルというジャンルに分類されています。

バガテルは「ささいな」という意味でソナタのような大きな作品ではなく小品ですよということです。ロマン派になると性格的小品というものが多く書かれますが、バガテルはその先駆けです。

この曲にベートーヴェンは作品番号をつけませんでしたが、その後WoO.59という作品番号がつけられました。WoO.というのはWerk ohne Opuszahlの略で、作品番号なしという意味です。

ベートーヴェンに曲を書いてもらった女性がどのよう人物だったのか気になりますよね。

彼の周りに「エリーゼ」という女性はいなかったので、本当は「テレーゼ」だったのではないかという説があります。この他にも「エリザベート」だったのではないのかとも言われていますが、真相はわかっていません。

ベートーヴェンはどんな人物だったのか?

ベートーヴェン
ベートーヴェンは身長が165cmくらいであまり男前ではなく生涯独身だったため、女性にモテなかったのではないかと思われているかもしれませんが、実はモテてていました。

結婚はしませんでしたが、恋愛関係にあった女性は割と多くいたようで、彼は割と惚れっぽかったのではないかとも言われています。モテていたのになぜ恋を成就させることができなかったのでしょう?

それは恋する相手が貴族女性だったからではないかと言われています。

ベートーヴェンはピアニストとしても作曲家としても才能があり、音楽では階級を超えて認められ名声を得ていきましたが、音楽以外の人々の意識では階級というものがまだまだ大きな壁になっていました。

つまりベートーヴェンは恋愛や結婚の面では階級を超えることができなかったのです。階級だけでなくベートーヴェンが気難しい性格だったことも影響したのかもしれません。

彼のこだわりが強く気難しそうだなと思わせるエピソードはいろいろありますが、有名なのはコーヒー豆でしょうか?必ず60粒にしていたそうです。

だいたいではダメだったんでしょうかね?少しくらい豆の量が違ってもあまり味は変わらないような気もしますが…。

他にも、肖像画が怒っているように見えるのは家政婦さんが作った大好物のマカロニチーズが不味くてそれに対しての怒りがおさまらないままの状態で肖像画を書いてもらったからだという説がありますよね。

肖像画は残るものなのだから気持ちを切り替えて少しにこやかな表情をしておくということはできなかったのでしょうかね?画家の人もその時の表情までしっかり描かなくてもいいのに…。

この説が正しいのかどうかは実際のところわかりませんが、間違っていたとしてもこのようなことが言われてしまうということは短気で激高しやすい性格だったというのは間違いないのかもしれません。

この他にもベートーヴェンの甥カールが自殺未遂をしてしまう経緯やハイドンに失礼なことを言ったエピソードはワルトシュタインの記事の中で書いています。

これらのエピソードから彼の性格を総合的に考えてみると、ベートーヴェンは気性が激しく、こだわりを明確に持っていた人だったのだと思います。

彼は音楽の面ではそれ以前と全く違うことをたくさんしました。何か新しいことをしようとする場合、普通の人なら批判されるかもしれないとおじけづきそうなところですが、そんなことをベートーヴェンは考えもしなかったのでしょうね。

自らの思いを実現させてやるという強い気持ちしかきっとなかったんだと思います。そうでなければそれ以前とは全く違うフリーランスという生き方をしたり、思いついた新しい考えを次々と作品にしたりすることはきっとできなかったでしょう。

ベートーヴェンが女性に献呈した作品

「エリーゼのために」は先ほども書いたようにエリーゼ(Elise)ではなく実際はテレーゼ(Therese)だったのではないかという説が有力視されています。エリーゼになってしまったのは、ベートーヴェンの字が汚すぎて読めなかったからではないかと言われています。

実はベートーヴェンには「テレーゼ」と呼ばれている作品があるんです。

ピアノソナタ第24番はテレーゼ・フォン・ブルンスヴィックという伯爵令嬢に献呈されていることから「テレーゼ」と呼ばれています。

同じテレーゼですが「エリーゼのために」の方のテレーゼはテレーゼ・マルファッティという名前なので別人です。

この他にもピアノソナタ第14番「月光」は伯爵令嬢ジュリエッタ・グイチャルディに献呈されています。このように「エリーゼのために」だけでなく女性に献呈されている曲はいくつかあります。

私が「エリーゼのために」を怖いと感じる理由

テレーゼにフラれて書いた曲?

テレーゼ・マルファッティ
エリーゼがテレーゼ・マルファッティのことを指す説が正しいのであれば、曲ができたとされる1810年はベートーヴェン(1770-1827)が40歳のころです。この時テレーゼ(1792-1851)は28歳なので事実ならばかなり年下のテレーゼに思いを寄せ、書いた作品ということになります。

ベートーヴェンがテレーゼに手紙を送っていることは事実のようですが、それがラブレターだったかどうかまでは確定できておらず求婚していたかどうかも定かではありません。

この曲が作曲された時期に2人がどのような状態だったのかはよくわかりませんが、付き合っている時期に書かれた作品だったのならベートーヴェンはテレーゼを想う狂おしい気持ちを素直に表現したのでしょうか。

好きな人を想って書く曲なら「スプリングソナタ」のような明るい曲想のものの方が喜ばれそうなのに、あえて短調で書いた意図は何なのでしょう?

ベートーヴェンがテレーゼに求婚していたのだとすれば、結婚はしていないのですから彼女は求婚を断ったということになります。

求婚を断られた後や関係があまりよくない時に曲が書かれていたとしたら…今思っているイメージが少し変わるかもしれませんよ。



ベートーヴェン「エリーゼのために」ピアノ楽譜1
嘆きから始まるようなメロディーを何度も何度も執拗に使い、しかもリピートまでさせています。「何でこの想いを分かってくれないんだ。」と言っているように感じるのは私だけでしょうか。


ベートーヴェン「エリーゼのために」ピアノ楽譜2 (動画1:50~)

この部分なんて恐怖しかありません。左手のAが続くところなんてもう後ろから追われているイメージしか浮かびません。


ベートーヴェン「エリーゼのために」ピアノ楽譜3 (動画2:15~)

この部分の3連符で上がったり下りたりする部分はしつこいストーカーに追いかけ回される感じしかしないのです。PPの指示が逆に怖いです。気持ちの高ぶりは悟られないように冷静に確実に追い込んでいく感じがしませんか?そう思って聴くとどうですか?

怖すぎるでしょ!!!

家政婦さんが作ったマカロニチーズが不味かったくらいで激怒してそのことを引きずり、気持ちを切り替えようともせず、不機嫌なまま肖像画を描いてもらう人ですよ!(本当かどうかはわかりませんが…)

ちょっとのことでキレてしまう人がフラれたことを自分の中で上手く処理し、気持ちをすぐに切り替えられるとは思えません。

その気持ちを作品にぶつけたのがこの作品であるのならば、この曲調にも納得がいきます。もしテレーゼ説が正しくて、テレーゼに断られてから書いた曲なのだとしたらこの曲はかなり情念がこもった曲ということになるのかもしれません。

かなり好き勝手なことを書いていますね。これはあくまで私が曲から感じるイメージです。かなりディスった感じになっていますが、ベートーヴェンは好きな作曲家の1人です。

夢に出て来られては怖いので一応謝っておこう。ベートーヴェンさん変なことばかり書いてごめんなさい。許して下さい!

エリザベートがいなくなった寂しさを込めた曲?

もう1人の説として上がっている女性エリザベート・レッケル(1793-1883)はソプラノ歌手です。

エリザベート・レッケル
彼女の兄も音楽家でテノール歌手でした。その兄がベートーヴェンのオペラに出演したことがきっかけとなり、妹エリザベートもベートーヴェンと親交があったようです。

彼女が一時ウィーンから離れる時に書かれた曲が「エリーゼのために」だったのではないかというのがもう1つの説なのです。彼女の名前はエリザベートですが、愛称のようなものなのでしょうか「エリーゼ」と呼ばれていたようです。

親交のあった音楽家としばしの別れとはいえ、その寂しさというか切なさを曲にしたためたというのであれば、それはそれで納得がいきます。

曲調はもちろん変わることはありませんが、別れを惜しんでいるというストーリーなら恐怖はあまり感じずに済みそうですね。

まとめ

どちらの説が正しいのでしょうか?それともどちらとも違うのでしょうか?

好意を持っていた相手に書いた曲にしては暗い気がしますし、フラれた後にしてもそのような相手に対して曲を書く気になるだろうかという気もします。

曲調の感じからエリザベート説の方がしっくりくる感じはしていますが、テレーゼの書類の中から楽譜が見つかったということもやはり引っかかりますよね。真相はよくわかりませんがいろんなことを想像させてくれる名曲であることに変わりはありません。

もう1度言っておきます!私はベートーヴェンが嫌いなわけではありません!好きな作曲家の1人です!

時代や文化はいろいろ違いますが、偉大な音楽家だって私たちと同じ人間なのでいろんな感情を持って日々生きていたはずです。

楽譜を読み、演奏技術を磨くだけではなく、その作曲家の人となりを少しでも知っておくと、演奏のヒントになったりすることもあると思いますので、どんな作曲家が作った曲なのかというのは頭に入れておくことが大切です。

より良い演奏にするためにも作曲家について調べてみて下さいね!



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