皆さんにとっての、「いつか弾きたい憧れの曲」は何ですか?
大曲と謳われる1曲でしょうか、それともシンプルだからこそ難しいと称される1曲でしょうか。
人それぞれに、目標や憧れがあることと思います。

私は、大まかに考えてピアノ歴20年ですが
振り返ってみると、その時々で「いつか弾きたい曲」というものがありました。

今回弾き方を考える曲は、その中の1曲。
おそらく皆様の中にも「憧れの曲」として存在している1曲――ベートーヴェンの「エリーゼのために」の弾き方について考えていきたいと思います。

今、この曲に挑戦している方。そして、これから挑戦される方。
もう弾いた方には、新しい発見がありますように・・・!



難易度はどのくらい?


楽譜でいうと、「バイエル」や「ブルグミュラー25の練習曲」を終えたくらいの腕があれば、弾きやすいと思います。

ソナチネ・アルバム前半くらいの難易度でしょうか。「初級の上」といったところですね。
ある程度の技術を要する曲ではありますが、弾き終えたときの達成感は格別です♪

ベートーヴェンってどんな人?


それではまず、この曲を作ったベートーヴェンさんについて、簡単に紹介いたしましょう。

ベートーヴェンは、音楽家の家系に生まれ、幼いころから音楽家として活躍。
ベートーヴェンの父親は、「モーツァルトはたった数時間弾いただけで、大金を稼いでいる」という前例をうけて、自分の息子にも同じことをさせようとスパルタ的音楽教育を施しました。

ベートーヴェンは、そんな愛憎の入り混じった対象であるモーツァルと、ベートーヴェンが16歳の時に対面を果たします。当時モーツァルトは30歳。
ベートーヴェンは弟子入りを希望しましたが、最愛の母の危篤の知らせを受け、帰郷。
結局弟子入りは叶わぬまま、モーツァルトはその4年後に帰らぬ人となりました。

30歳を前に難聴にも悩まされ、苦悩のすえ演奏活動からほとんど撤退し、作曲家業に専念することに。
「エロイカ」や「運命」「田園」などは、難聴になってから作られた曲です。

家族関係や人間関係にも相当悩まされた生涯だったようですが、ベートーヴェン自身も、相当な癇癪持ちであったとか。
弟子の中には楽譜を破かれたり、かみつかれた(!)なんて人もいたそうです。

うーん!波乱万丈な生涯ですね・・・。
スパルタ的教育だなんて・・・きっと私は耐えられそうにありません。
演奏活動をあきらめ作曲家に専念する際には、自害を考えるほど悩んだそうですが・・・、私は、音楽の在り方は1つではない。という証明でもある気がしました。

拍子をしっかりと把握して!


ところで、この曲って何拍子だと思いますか?
お恥ずかしながら・・・私は長い間、4拍子だと思っておりました。

(動画 0:01~)

1ミレ♯2ミレ♯3ミシ4レド
1ラー2ー3ード4ミラ・・・

・・・という具合です。どうしてそう感じてしまったのかと言いますと、「アウフタクトのことをわかっていなかった」からなのですよね・・・。

正しくは、
(4)ミレ♯1ミレ♯2ミシ3レド
1ラー2―ド3ミラ・・・

もしも、弾きにくいな、ノリにくいな。
なんて思っている方がいらしたら、一度拍子を確認してみてください。
拍子が変われば、リズムの感じ方や、強弱の付け方も変わってきます。

・・・それにしても、3拍子の曲を4拍子で弾くなんて・・・昔の私は、難しいことをよくやっていたものだなぁ(すっとぼけ)。

焦らず急がずゆったりと♪

はじめはppで。
poco moto(=やや動きをつけて)という指示もあります。
単調な演奏にならないよう、感情のままに弾いてみてはどうでしょうか。
初めの切なさ、悲哀・・・そういったイメージでしょうか。

(動画 1:05~)

ガラッと雰囲気が変わるのは、23小節目から。
つい速く弾こうとしてしまいがちですが、そんな必要はありません。
「速く」というよりも、広々としたイメージでたっぷりと弾いてみてください。

では何故速く弾いてしまいがちになるかというと、もしかして、22小節目の最後を急いで弾いてしまっていることはありませんか?
過去の私がそうでした。

「音(和音)が詰まっている」→「難しい」と認識してしまって、テンポやリズムをそっちのけで、とにかく目の前の音を出すことだけに意識を持っていかれてしまったのです・・・。

(22小節目、動画 1:02~)

過去の私と同じように、22小節目の最後の3音からリズムがうまくとれない方。
ひとつ前の小節を見てみてください。

(21小節目、動画 1:01~)

先ほどまで弾いていたメロディとおんなじ音符の長さで構成されています。
つまり、音の高さは変わりましたが、テンポや構成はまったく変わっていないのです。

慌てて弾くよりも、むしろ、ちょっとたっぷり目で、もったいぶって弾いてみるのなんか、どうですか?

※繰り返し部分の小節番号の付け方は楽譜によってまちまちで、1カッコ2カッコを重複カウントするものと、同カウントするものがありますが、ここでは同カウントとして説明しています。

大切な音はどれ?

(動画 1:15~)

30小節目からは、また音が詰まっていますねぇ・・・。
ですが、ここも焦らず。
ド、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ・・・と動いていくメロディを感じながら弾いていきましょう。

間に挟まる「ソ」の音は、しいて言えば「飾り」です。
鍵盤に触れればOK。大きい音もいりません。
こういっては各方面から叱られてしまうかもしれませんが、最悪、全てのソの音が聞こえなくても曲にあまり支障はないと思います(怒らないでください・・・(-_-;))。

ですので上のソの音に意識を取られるよりも、メロディラインをしっかり歌い、余裕がでてきたらキラキラとした飾り付けの「ソ」の音の練習にも時間を割いてみてはどうでしょうか。

守破離(しゅはり)といいまして。


(動画 1:22~)

35小節目から先は、左手に音がなく、右手だけの演奏となります。
ここ、個人的に思うのですが、ものすごくリズムが崩れやすいトコロです。
揺れやタメを作ってもまったく問題がない分、あまり自由に弾いてしまうと、次の拍子、テンポがわからなくなってしまう、なんてことも。

慣れてきたら存分にタメや揺れ、もったいぶった弾き方などに挑戦してほしい!と思うのですが、本来の音の長さ、テンポがわかるまでは、あまり崩さず、メトロノームに合わせた練習をオススメします。

というのも、「守破離(しゅはり)」という言葉をご存知でしょうか。修行における段階を示す言葉なのですが、簡単に言いますと
① 守(しゅ)。(先生からの)教えを守り、身につける。
② 破(は)。他の考え方も知り、発展させる。
③ 離(り)。今まで習ってきたものから離れ、自分のものを作っていく。
というものです。

この部分の演奏にあてはめますと、守=テンポを守る。破=テンポ通りではなく、揺れやタメも作ってみる。離=自分の弾きたい演奏を作る、ということです。

守るべき軸、主軸であるテンポや音の長さを知った上で、自分の演奏を探していくのと、知らないままで最初から自分の好きに弾くのでは、意味がまったく変わります。

ですので、こうした自由に弾いて良いような部分は、本来の流れを知った上で、好きなように弾いてほしいな・・・というのが、個人的な思いです。

(動画 1:58~)

59小節目からも、また雰囲気がかわりますね。
何やら焦燥感を掻き立てられるような、不安を誘うような・・・。
臨時記号も多いので、音の間違いがないよう、じっくり譜読みしていきましょう。

まとめ


1. 難易度は初級上
2. ベートーヴェンは、さまざまな形で、生涯音楽とかかわり続けた。
3. エリーゼのために、は3/8拍子。
4. 大切なメロディはどれかを把握して。
5. 守り、破って、離れたあとは、自分の好きなように演奏を!
6. 音が詰まっていても焦らずに。臨時記号には気を付けて!

最初のテーマを弾きなれてしまえば、半分ほど弾けたも同然。
所々難しいところはありますが、そこは集中して練習!
急いで弾く必要はありません。
右手、左手、片手ずつ攻略していきましょう。

ピアノ弾きなら、誰もが弾きたい一曲・・・(だと思う)。
是非、挑戦してみてください♪


「エリーゼのために」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1888年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された楽譜です。
  • Mutopia Project(楽譜リンク
    最近整形されたきれいな楽譜です。

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