「あれっ、この曲なんだっけ・・・。」

ある日テレビから聞こえて来た音楽。
バラエティ番組のBGMで。CMの曲として。ディスプレイから、スマホから。
聞いた事があるはずなのに。弾いたことがあるはずなのに、思い出せない。わからない。

そんな経験はありませんか?

私はしょっちゅうそんな事があります。
映像やCMって、流行りの曲も多いですが、結構な割合でクラシック曲が使われているのですよねぇ。

今回は、あなたもどこかで聞いた事があるのでは?
ゴセックのガヴォット(ガボット)の弾き方を考えてみます!



ゴセックってどんな人?


この曲の作者、フランソワ=ジョセフ・ゴセック(1734-1829)は、フランスで活躍したベルギー出身の作曲家・指揮者です。

亡くなられたのは95歳。
現代に置き換えても長生きな彼は、バロック音楽の終わりから初期のロマン派音楽が勢いづいた頃を生きられました。

彼がフランスの器楽の発展に果たした役割は大変大きく、その功績を讃えて「フランス交響曲の父」と称される程。
その生涯の中、作曲家としても、教育者としても、そして指揮者としても大変尽力されました。

うーん!音楽の大きな移り変わりを実際に体感、経験できるなんて、うらやましい気がします。
ですが、現代の音楽も移り変わって行っているはず。日々のいろんなことに注目して生きていきたいものです。

ガヴォットっていったい何?


ゴセックが作った交響曲は30曲以上。
ほかにもオペラや室内楽、声楽曲などを作りました。この「ガヴォット」もその中の1つです。
歌劇「ロジーヌ」の中で使用された曲で、元はヴァイオリンとオーケストラによって奏でられました。

そして、タイトルの「ガヴォット」とは、16世紀頃より主にフランスで流行した活発で優美な4分の4拍子、あるいは2分の2拍子の舞曲の名称です。
(「ガヴォット」という音楽の形式や意味は、時代によって少しずつ変わってくるのですが、ゴセックのガヴォットに関しましては、上記の認識でおおむね間違いないと思います。)

ヴェルサイユ宮殿を残したことで有名な、フランスの国王ルイ14世(1638-1715)の王政時代、王族や貴族の間で、芸術は生活を彩るものとして重宝されていました。
音楽やダンスも社交界のつながりを保つために大事なものであったとか。

出世にも響いたので、当時の人々は相当熱心に踊りを練習したようです。

なるほど、ガヴォットは舞踏の曲・・・つまり舞曲なのですね。
では、踊りたくなるような、踊りやすいような演奏ができたら完璧でしょうか♪

難易度はどのくらい?

バイエルを終了した方でしたら、次の挑戦曲として良いレベルの曲だと思います。
出版されている楽譜などでも難易度「A」ですとか「初級~中級」に位置付けられていることが多いですね。

私なりの考えですが、オクターブなど技術的に難しいものは出てきません。
はじめの16小節、中間の16小節、終わりの16小節と分けて考えてみると弾きやすいのではないでしょうか。

スタッカートさん、気楽にやろうぜ?


さて、それでは演奏方法について考えていきましょう。

まず楽譜を見たときに、まず目に入るのがそのスタッカートの多さです。
それも音が上へ下へと跳ねている・・・(特に左手)。うーん、タッチミスが増えるかも。
すでに難関の予感がしますが、ここは一つ一つ攻略していきましょう。

「Allegretto」は「やや快速に」。テンポでいうと♩=108前後です。
そして「con grazia」とは、優雅に。気品をもって。優しさ、洗練、品のよさ。といった意味です。
軽快なスタッカートでありながら、優雅さと気品の感じられる一曲に仕上げたいですね。


スタッカートは、ベチャベチャ、バチバチした音にならないように気を付けてください。

跳ねる、たたく、というイメージで鍵盤を弾くよりも、ひっかく、ひっかけるようなイメージで弾いてみてください。
指先が寝ていると、ベチャッとした音になりがちなので、きちんと指先を立てることが大事です。

ただ、強弱記号はpなので、あまり強い音は必要ありません。
(個人差はあると思いますが)体の力を抜いて、リラックスした状態で簡単に出るくらいの音で良いと思います。

スタッカートが多いとはいえ、間にはスラーやテヌートが出てきます。
ハッキリと区別をつけて弾いて、スタッカートとのメリハリを出しましょう。

いっそ左手抜いちゃダメ?

次に左手ですが、音が上へ下へと移動するため苦労されている方も多いのではないでしょうか。

もし苦労している方がいたら、一度試してほしい練習方法があります。
これは自己流の練習方法なのですが、一度1拍目と3拍目の音だけを弾いてみてください。
(レ、ラ、レ、レ・・・)

決して2拍目や4拍目をおろそかにしていいわけではありませんが、表の拍にあたる音は、曲を構成するうえで大事な要素となっていることが多いので、もしすべての音を押さえることに必死になっていて、なかなか練習がうまくいかない方がいたら、一度この方法をためしてみてください。

はずさないようになってきたら、次はそれに2拍目と4拍目の一番上の音(レ、ド♯、レ、レ・・・)を加えてください。

着地点のわかっている音が増えてきたら、心にも余裕が生まれませんか?
一つずつ、一音ずつ。和音の響きと指の形を覚えましょう。

(動画 00:23~)

14小節目にはrit.(=ritardando リタルダンド。だんだん遅く)。
そして15小節目にはaccel.(=acceleland アッチェレランド。次第に速く)。
速さも自由に揺らして楽しんでください。


・・・ところで、少し話題はそれますが、accel.って、アクセルと読むこともできませんか?
意味も「次第に速く」というものなので、私はいつも車のアクセルを踏むようなイメージで弾いています。

(※正確には 車のアクセルは「accelerator(アクセレレーター)」という言葉の略称なので、accel.をアクセルと読んで車のアクセルを連想するのは、強引だと言われてしまえばそれまでなのですが・・・)

止まっていた車が、アクセルを踏んで動き出す――自分ではわかりやすいと思うのですが、うーん、皆さんはどんなイメージを持っていますか。

ダンスの終わりまで華やかに。

(動画 00:28~)

それでは中間部を攻略していきましょう。

17小節目では、15小節目に指示のあったaccel.を打ち消すために、a tempo(=ア テンポ。もとの速さで)が書かれています。
先ほど揺らした速度を一度リセットして、ここからはまた新たな気持ちで弾いていきましょう。

メロディーは穏やかなものとなり、左手の動きも、さっきまでのブン、チャ、ブン、チャ!の動きではなく、なめらかなものに変わっています。

(動画 00:43~)

愛らしさよりも、のびのびと、少しエレガンスな感じで弾いていきましょう。
25小節目にはdelicato(=デリカ―ト。繊細に、優美に。)の指示もありますので、より優美に、中間部を弾ききってください。

そして中間部を終えましたら、最初のテーマが戻ってきて、軽やかなスタッカートを奏でながら、曲はラストへと近づいていきます。

(動画 1:17~)

終わりの4小節間にはdim.et ritardandoの指示もあります。
これはdim.(=diminuendo ディミヌエンド。だんだん弱く。)
というものと、et(そして。~と。しかし。)。ritardando(=リタルダンド。だんだん遅く。)を同時に行ってね、と言ってるのですね。

つまり、だんだん弱く。そしてだんだん遅く。
曲――踊りの最後は、少しテンポを緩めながら幕を下ろしましょう。

焦らず急かさず1つずつ。


右手も頻繁に動き、左手も上下の幅が大きいので、なかなかテンポ通りに弾けるまでには時間がかかるかもしれません。
ですが、焦らずに、一つずつこなしていきましょう。

まずはゆっくり。そして方手ずつ練習を。
少し慣れてきたら、両手で弾いてみて、そのうち「いつもうまくいかない部分」がわかってきたら、特にそこに力を入れて練習してみてください。

楽しい舞曲ですので、必死な様子で難しい顔をして演奏するよりも、たとえばテンポが少し遅くても、楽しい顔をして演奏しているほうが、きっと曲も楽しく踊ってくれると思います。

原曲派?アレンジ派?


さいごに1つだけお話をさせて下さい。

私は、原曲がピアノ以外の物(たとえば今回の場合はヴァイオリンとオーケストラですね。)。
そういった曲を演奏するときに考えることが1つあります。

それは、「原曲のように弾くのか」それとも「ピアノらしさ」を優先するか。
ということです。

原曲――ヴァイオリンとオーケストラのような、弦が持つ響きを目指して弾くのか。
それともピアノらしさ。ピアノで奏でられる、「ピアノ曲としての」響きを優先して弾くのか。

皆さんは、どちらが良いと思いますか。

私は、どちらの解釈も素敵で、愛らしい演奏になると思っています。
ただもし、私と同じように悩んでいる方がいたら、その時は「どちらが良い」「どちらが悪い」と決めつけず、「どちらの弾き方が自分に合うか」「どんな演奏が自分の好みか」という部分で考えていくのも良いのではないでしょうか。

そうしていずれ、どちらの弾き方もできるようになれば、それはとっても素敵ですね♪

まとめ

1. ゴセックは95歳まで生きた、フランスで活躍した音楽家。
2. ガヴォット(ガボット)とは、16世紀ごろからフランスで流行した舞曲の名称。
3. 難易度は初級~中級。バイエル終了程度なら次の曲として最適。
4. スタッカートは指先を立てて軽やかに。
5. 左手が難しければ、まずは1拍目と3拍目だけでもきちんと弾けるように。
6. 可愛らしい冒頭とはうってかわって、中間部は優美な響きで。
7. 課題は多いかもしれませんが、1つずつこなしていきましょう。
8. 解釈の幅によって、いろんなガヴォットが生まれるかも!


また、私はダンスがからっきしダメ、踊れないのですが、皆様の中にはダンスが得意な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

バロック期のダンスと、今のダンスは違うものかもしれませんが、そうした「踊り」の観点から弾き方を考えてみても、面白いかもしれませんね♪

皆様の弾く、皆様が踊りたいガヴォットは、どんなガヴォットになりそうですか?


「ガヴォット」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。

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