「あなたにとって、思い出のピアノ曲を教えてください。」
と言われたら、どんな曲が浮かびますか。
ピアノをはじめるキッカケとなった曲。
1番初めに弾いた曲。
はじめて両手でひけた曲。
発表会でうまく弾けた曲。
先生や、友達と一緒に連弾をした曲。
恐らく、細かく分けていけば、キリがないことと思います。
そんな中、今日弾き方を考えてみたいのは、私にとって「左手でメロディを歌うことが楽しくなった曲」である、ダカンの「かっこう」です。
それまで私にとって、左手のメロディは、苦手なものの象徴でした。
練習も、右手は楽しいけれど、左手になった途端やる気をなくしてしまう・・・。
左手で弾くくらいなら、足で弾いた方が弾けるんじゃないの。
そんなことを考えてしまうくらい左手のことが大嫌いでした。
・・・今思い返してみると、そこまで嫌わなくてよかったのにね、ごめんね左手。今は好きだよ。
さて、前置きはこのくらいにしておいて、そんな私のふてくされた時代を変えてくれたダカンのかっこう。
ちょっぴりミステリアスな雰囲気も内包するこの曲。
皆さんの中にも、もし「左手嫌い」な方がいらっしゃったら、それを変えるキッカケになればうれしいです。
左手嫌いはもったいないですよー!!
難易度はどのくらい?
全音ピアノピースでは、難易度B(初級上)で出版されています。
今弾いている楽譜がバイエルの方は、難しさの方が勝ってしまい、楽しみにくいかもしれません。
個人的には、ソナチネアルバムを何曲か弾いている方におすすめできる1曲です。
色んな作曲家の「かっこう」
そういえば、カッコウが出てくる曲って、他にも沢山ありますよね。
ピアノ曲でいえば、ヨナーソンの「かっこうワルツ」を弾かれた方も多いのではないのでしょうか。
また童謡にも「かっこう」がありますね。私もよく歌いました。
民謡「静かな湖畔」の歌詞の最後でもカッコウがないています。
小さい子は童謡を歌う機会も多いでしょうから、「かっこう」をテーマにしたピアノ曲は、イメージしやすく、取り掛かりやすい曲なのかもしれません。
また、本物のカッコウは見たことがなくとも、あの「カッコー、カッコー・・・」という鳴き声は、皆さんもきいたことがあるはずです。
そう、「鳩時計」で!!
・・・?
「ハト」時計なのに、「カッコウ」?
そう。「鳩時計」で使われている、あの鳴き声。あれは「鳩」のものではなく、「カッコウ」の鳴き声なんです。
(※諸説あります)鳩時計はドイツ発生のものですが、日本ではカッコウは「閑古鳥」を想像してしまい、縁起が悪いということから、鳩に変えて販売されたのだとか。
振り返ってみれば、幼いころから知らないうちに、色んな形でカッコウに触れていたのですねぇ。
・・・当時私の習っていた先生が、はじめての発表会に「森のかっこう鳥」という曲をすすめてくれたのも、そういう理由だったのかな?
休符は休みじゃありません!
(動画 00:01~)最初にvivo(ヴィーヴォ。活発に、速く)の指示があります。
ですが、焦りは禁物。しっかり音を押さえていきましょう。
右手を見ますと、初めは16分休符があります。
休符というのは「休み」と考えていただいても間違いではないのですが、ここの休符は、おそらく次の音を出すために準備する休符だと私は考えます。
少し話はズレますが、休符といえば、♪ジャジャジャジャーン!で有名な交響曲、
ベートーヴェンの、「運命」も、休符から始まっています。
こうした形は演奏するときに、第一音を合わせるために、演奏者も指揮者も、相当な緊張を強いられるそうです。
そしてピアノは自分が演奏者であり、指揮者です。
何が言いたいかといいますと。
休符=お休み。
でも間違いではありませんが、休符も音楽を作る上での大切な部品の1つ。
たとえば、日常生活におきかえてみますと休日にも
・仲の良い友人と遊びに行く休日。
・家でのんびりと過ごす休日。
・休日を返上してのお仕事・・・。
など、いろいろありますよね?
なので、休符にも
・ほかの音を際立たせるための長い休符
・次の音への緊張感を高めるための短い休符
・リズムとして形をつくるための休符
など、さまざまな意味があることを知って欲しいです。
この曲では、一音目は左手が弾いていますので、厳密には「休符から始まる曲」とは言えませんが、休符によって生まれるスピード感、緊張感を実感してみてください。
かっこうの鳴き声がきこえる
(動画 00:01~)※楽譜は1-.3小節目です。
左手にも右手にも、ソ→ミへ続く形がよく出てきます。
これはカッコウの鳴き声を現しているもので間違いないでしょう。
タイトルにもなっている大切なテーマですので、他の音に埋もれてしまわないように、少しアクセントをつけるような気持ちで弾いてもよいと思います。
(動画 00:26~)
24小節目からは、ソーミではなくシーソでカッコウの鳴き声を形作っています。
音の響きも、少し明るい和音に変わりましたね。
ですが、基本的なスタンスはかわりません。
(動画 00:34~)
32小節目からは、左手が細かい動きになりますね。
よく動く手には力が入りやすくなってしまいます。力まずに、ゆるくゆるく。
右手のカッコウの鳴き声をきれいに響かせましょう。
(動画 00:59~)
66小節目からは、今までと少し違う音が出てきますね。
カッコウの鳴き声は左手に。
臨時記号が多く、間違えやすい箇所だと思いますので、じっくりと練習しましょう。
(動画 01:20~)
84小節目からは、音が違いますが、最初のパターンと似ていますね。
こちらも臨時記号などに気を付けながら、カッコウの鳴き声を意識して弾いていきましょう。
まとめ
1. 難易度はB(初級上)ソナチネを弾いている方におすすめ2. 色んな作曲家が「かっこう」にちなんだ曲を作っている
3. 休符=休みではない。
4. 右手や左手、色んな場所でカッコウの鳴き声をきいて
さて。右手と左手、カッコウの鳴き声や、16分音符、休符が入り混じった曲でしたが、かっこうは上手に鳴いていましたか。
そして、右手や左手で弾いていた16分音符。この中にも、カッコウのフレーズ、ソ→ミや、レ→シが隠れていたのに気づきましたか?
私がこの曲で左手が好きになれたのは、「ソ」「ミ」二つの音だけで、簡単に左手のメロディが弾けたからです。
とても単純。なんだそんなことで好きになったの?今だったら、そう思ってしまうかもしれません。
ですが、当時の私にとっては、たった2つの音でメロディが作れる、というのは大きな衝撃でした。
左手はいつも後ろにいる存在。左手は動かしにくい。左手は嫌い。
そんな思い込みをなくしてくれた、私にとって思い出深い一曲。
皆さんも、初めて抱いた気持ち、衝撃。興奮。
忘れないでください。
「かっこう」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1898年にシャーマー社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。