ショパンの雨だれの前奏曲、よく有名なピアニストのリサイタルや発表会などで演奏されることも多く、大変有名な曲ですよね。
「雨だれを弾けたら格好良いけど、何だか難易度高そうだし無理かも……」とためらっておられる方々、そして「練習しているけれどなかなか上手くいかない」という方々は必見です!
こんにちは!ピアノ弾きのもぐらと申します。たくさんの方々にピアノの魅力を知って頂くために、毎日畑の地中でミミズを追いかけるかたわらピアノを教えている、そんなもぐらです。よろしくお願いします。
■ 目次
難易度はそれほど高いというわけではない!
ではさっそく難易度からお話ししていきますね。
ショパンの雨だれの前奏曲、おそらく多くの方々は「難しくて上級者向けの曲」というイメージをお持ちなのではないでしょうか? 私もかつてはそうでした。何だかこう「ショパン」という概念だけでも難しそうに感じました。
この曲の一般的な難易度ですが、ツェルニー40番の中盤くらいまでをクリアしていれば充分弾けると思います。なので、確かに一般的な難易度としてはけっこう高く、中級者から上級者向けの曲だと言えます。
ですが、これはあくまで目安だと私は思っているのです。というか、ぶっちゃけて申しますと個人的な感想ですが、一般的に言われているほど難しい曲だと私は思えないのです。
そしてすごく極端な言い方かもしれませんが、いくつかのコツをしっかりつかんで、ある程度楽譜をスラスラ読めてさえいれば、何とか弾けると私は思ってます。まあ、本当にこれはあくまで私の感想ですが、率直にそう思います。
そんなわけでこの曲をマスターするにあたって、いくつかの重要なコツをこれからお話していきますね!
構成は意外とシンプルでわかりやすい!
ショパンの曲というのはパッと見ると難しそうだけれど、構成を考えながらじっくり譜面を見てみると、けっこう構成自体はシンプルな曲が多いのです。
まずはこちらの動画をご覧ください。
これからご説明するにあたって、一曲をいくつかのセクションごとに下記の通り細切れにしました。各セクションに区切ってご説明していきますね。
セクションA1(最初~0:37)
セクションB(0:37~1:22)
セクションA2(1:23~1:58)
セクションC(1:59~3:52)
セクションD(3:53~4:51)
セクションA3(4:52~終わり)
※カッコ内の時間は動画においての時間です。動画をよく視聴して曲の構成をしっかり理解しておくと、練習しやすいです。
では、セクションごとにご説明していきますね。
もぐら式!弾き方のコツ
☆セクションA1の弾き方 ~雨の音をイメージしよう~
さっそくお馴染みの旋律が流れてきます。冒頭は静かな雰囲気で、シトシトと雨が降る情景が目に浮かんできますね。※「Sostenuto」の意味は「音の長さを充分に保って」
セクションA1でまず注目して頂きたい部分は、左手のラ♭の音です。この音、実はとても重要なのです。
なぜかと言いますとこれはあくまで私個人の考察ですが、この音はまるで雨の音のようにも解釈できるからです。つまり、この音で『雨だれ』を表現していると私は思うのです。
ちなみにこのような連続した音はこの後のセクションでも出てきます。最初に申しておきますと、この雨の音のような連続音は曲の最初から終わりまでずっと鳴り続けます。
コツとしては、右手はとても情緒豊かな旋律なので、淡々と弾くのではなく音の音量やテンポなどに少し抑揚をつけて弾くと、まるでピアノが歌を歌っているかのような響きになります。
これは余談ですが、この曲の情緒豊かな雰囲気にどっぷり浸かることが私にとっては大きな幸せで、だけどどうやらあまりにも曲の雰囲気に染まるせいか、その姿を見ている周りからは「なんか怖い」とよく言われます。一体ピアノを弾くもぐらの何が怖いのでしょうかね。
まあそれはともかく、どっぷりと雰囲気に浸るというのは本当に楽しいので、ぜひともその楽しさをたくさんの方々にも味わって頂きたいのです。
ちなみに抑揚もつけすぎには注意しましょう。あんまりつけすぎると、どこかもったりとした雰囲気になってしまいます。でもどうしても何かこの曲に対して想いがあるが故にそうするのであれば、抑揚のつけすぎというのも一つの個性というか表現だと私は思います。
表現や解釈には正解や不正解はないので、最低限の技術をマスターしたら自分の音で自由に弾いてみてくださいね!
☆セクションBの弾き方 ~和音の響きに耳を澄まそう~
セクションBは少し切なげな雰囲気になりますね。そしてセクションA1と同じ音で、ひたすら雨の音が続いてます。(0:37~)※表記の「P」は「ペダルを踏む」という意味。
※カギかっこのような表記はこの場合「ヘ音記号上のファの音は右手で弾く」という意味。つまり右手の最後、ファの音は1オクターブ下のファの音と一緒に弾くということです。
セクションBでもラ♭が連続してます。これはセクションA1においても同じことが言えるのですが、ラ♭は均等な音量でなるべくさりげなく弾きましょう。ラ♭が大きくなると、どうしても全体的にごちゃごちゃした響きになってしまいます。
セクションBのコツは、両手の和音です。譜面をよく見ると、左手の和音と右手の旋律が被っている(=同時に弾く)部分が多いことがおわかりになると思います。
これも私個人の解釈ですが、この曲は雨の音を表す音と和音という2つの要素で成り立っているように思います。なので、この曲にはピアノを弾くにあたってよく言われる「伴奏」というものの存在があまり感じられないようにも私は思います。
なので、右手とか左手という概念はあえてここでは気にせずに、ほとんどの音は両手併せて一つの和音であり、つまりそれが主旋律だと捉えて弾くと、響きに厚みというか奥深さが出てきます。そのためには両手の音を一つ一つ、バラバラにならないようにしっかり同時に弾くことが大切です。
☆セクションA2の弾き方 ~セクションA1の繰り返し~
セクションA2はセクションA1とほとんど同じ音の繰り返しです。もうほぼマスターしたようなものですが、ここでもポイントがあります。(1:23~)ここは次の展開へとつながる重要な部分ですね。(1:48~)
まずこの曲の場合、この辺まできたらリタルタンド(意味:だんだん遅く)しながら音量を弱くしていくのですが、最後の左手の音をいかに丁寧に途切れさせないように弾けるかが重要です。
すごく細かいことかもしれませんが、音を弱めるあまり私はこの左手がけっこう途中で消えてしまうことが多く、特にここは気をつけなければいけないと思ってます。細心の注意を払いながら丁寧に弾きましょう。
☆セクションCの弾き方 ~場面と共に気持ちも一転~
何やら雰囲気がガラッと一変しましたね。私はこの曲の中では、厳かな雰囲気のこのセクションが一番気に入っております。(1:59~)※「sotto voce」の意味は「音量を抑えて」
まず右手ですが、先ほどご説明したセクションA2の最後の左手と同じ音です。いわゆる異名同音(意味:譜面上では違う音という表記だけれど鍵盤上では同じ音)というものですね。セクションA2のラ♭と、このセクションCのソ♯は鍵盤上では同じ音です。
右手はひたすら音の連続です。譜面を見ると指番号が「4 3 2 3」と書いてありますね。でも私の場合はこの部分の指番号は気にせず、というかほぼ無視して弾いてしまいます。
でも私とは逆に、指を変えて弾いたほうが音の粒が均等になって弾きやすいと思われる方々もおられると思います。なので、この指の運びはあまり気にしなくても大丈夫です。
右手の音は極力小さな音で弾きましょう。そして先ほどセクションA2でも同じことを述べましたが、音が途切れないように気をつけましょう。
そして左手ですが、ここはCDとか上にある動画でも何でもいいのですが、とにかく音源を聴いてみてください。というのもこのセクションCでは左手が主旋律なのですが、和音の弾き方によっては主旋律が全然聴こえてこなくなってしまうということもあるのです。
まず弾く前に実際に音源を聴き込んで、ある程度主旋律のメロディーがどのようになっているのかよく理解しておいたほうが練習しやすいと思います。主旋律を口ずさめるくらい理解できていればベストです。
音源で主旋律を理解できたら、まず実際に左手だけを弾いてみてください。そうすると、和音の中に主旋律を構成している音があることがおわかりになると思います。
それがわかってきたらまた左手だけを弾くのですが、今度は和音の中にある主旋律になる音だけが目立つように弾きます。要はひとつの和音でも、和音を構成しているそれぞれの音の大きさを変えるということなのです。それができるようになると、主旋律が際立って聴こえてくるので全体的に響きもはっきりとしてきます。
☆セクションDの弾き方 ~3つの旋律が奥深い~
次にセクションDです。前のセクションCと比べると少し落ち着いたようにも感じられますね。(3:53~)「譜面を見たけど何だかこの部分、いまひとつどうやって弾くのかよくわからないなぁ……」と思われる方、おそらく多いのではないでしょうか。特に右手の部分、ちょっと難解な表記になってますよね。
でも大丈夫。ここは3つの旋律に分けて考えれば納得できると思います。
だけど「3つの旋律? ますます意味わからないよ!」と思われる方もおられるかもしれません。
そこで、3つの旋律とはどのようになっているのか、箇条書きで簡単にまとめてみました。
【3つの旋律】
旋律1:右手の和音(1オクターブの和音)
旋律2:ソ♯の連続音(八分音符)
旋律3:左手の和音
以上の3つです。この3つの旋律でこの部分は成り立っています。それを意識して譜面を見ると、きっとおわかりになると思います。
※この解釈はあくまで私個人の解釈です。四つ、五つ旋律があると解釈する方もおられるかもしれません。ですが私の場合は3つの旋律が一番わかりやすいと考えたのでこのようにご説明してあります。
というわけで、試行錯誤の末に私が編み出したシンプルな練習方法を以下にご紹介します。
まず三つの旋律をそれぞれ抜き出して個々に弾いてみましょう。そうすると、上記にある旋律1と旋律3は主旋律を構成する和音ということがわかります。
片手ずつ弾けたら、旋律1と旋律3だけを両手で弾いてみましょう。
次に右手の旋律1に今度は旋律2を入れていきます。このときいきなり両手で合わせて弾くのはちょっと大変なので、右手だけで練習しましょう。
そして右手の旋律1と旋律2がしっかり弾けるようになったら今度は左手の旋律3と共に両手で弾けるように練習します。
このときも他のセクションでも述べましたが、旋律2の雨を表す連続音は小さな音で、でもけっして途切れてしまわないように注意しましょう。
☆セクションA3の弾き方 ~自分の個性を表現してみよう~
さて、そろそろ終盤ですね。ここもセクションA1、A2と同じようなフレーズです。心穏やかに曲をしめくくりましょう。(4:52~)※ 「smorzando」の意味は「だんだん消えるように、弱くしながら遅く」
※ 「slentando」の意味は「だんだん遅く」
ちょっと長めの連符が出てきて難しそうですが、この部分の連符(10連符)は特に速く弾かなければならないということもありません。私はむしろこの部分はすごくゆっくり弾くほうが個人的にはしっくりきます。ここは弾く人の個性が出てくるところなので、自由に弾いてみましょう。(5:06~)
※「ritenuto」の意味は「すぐに遅く」
そして最後は音を限界まで小さくしていきますが、最後の1小節の和音も音は小さいけれど、ちゃんとそれぞれの音が抜け落ちないように鳴らしましょう。(5:49~)
尚、この曲はペダルを適切に使いこなすことも重要です。ペダルの踏み方一つ変えるだけでも印象はかなり違ってきます。ペダルも個性の表れやすい要素ですね。
最初は譜面に対して忠実にペダルを踏み、だんだんと上手になってきたらこの曲に対する自分の理想に向けて、工夫を織りまぜながら自分なりの表現をしていきましょう。
おさらいしよう!弾き方のコツのまとめ
では最後にショパン作曲『雨だれの前奏曲』の弾き方のポイントを以下にまとめました。
1、 連続音は常に途切らせずに弱い音でも音の粒を均等にして確実に鳴らす(全体的に)
2、 両手の和音の響きを意識し、和音の音がそれぞれバラバラにならないようにする(特にセクションB、セクションD)
3、 長い連符はあまり速度にこだわらず自由に弾く(特にセクションA1、セクションA2、セクションA3)
4、 場面が変わるごとに主旋律はどの音なのか考えて、主旋律を際立たせるように弾く(特にセクションC、セクションD)
5、 ある程度弾けてきたら、今度は自分なりに工夫して抑揚をつける(全体的に)
6、 ペダルは適切に入れる(全体的に)
以上の6つのコツを意識しながら練習してみてくださいね。
上記の難易度のお話にもありますが、一般的にこの曲は中級者から上級者向けの曲と言われておりますが、ある程度楽譜がスラスラ読めていて、根気よくコツコツと練習さえできれば、けっして手の届かないほどの難曲ではありません。
練習をしようかどうかためらっておられる方々は、とにかくまずはチャレンジ精神を大切に、思い切って練習を始めてしまいましょう。
そして、既に練習しているけれどなかなか上手くいかないという方々、ここで諦めてしまってはもったいないです。大丈夫、個人差はあれど粘り強く頑張れば弾けるようになる日はやってきます。
ピアノは弾き手の努力を裏切ることは絶対しません。
私の場合ピアノという存在は、まるで家族のようにとても大きなものです。だから新しい曲が弾けたとき、きっとピアノも喜んでくれていると信じています。そして、皆様のお家のピアノにも同じことが言えると私は思います。
というわけで練習、頑張ってくださいね。畑の地中から盛大に応援してます!
by ピアノ弾きのもぐら
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もぐらさん、はじめまして。
実家に置きっぱなしだったピアノを25年ぶりに手元に引き取ったので、また練習を再開したくて、独学でどのような練習をしたらいいのかいろいろ探して、ここにたどりつきました。
雨だれは、高校生の時に練習したことがあります。ふだん練習しないポンコツな生徒で、レッスンのある日、先生の家に伺う直前に慌ててさらっていたら、にわかにものすごい夕立が降ってきて、あとで先生が「あなたのピアノが雨を呼んだんじゃない?」と笑っておっしゃったのも懐かしい想い出です。
私もCのパートがドラマチックで好きでした。
>ピアノは弾き手の努力を裏切ることは絶対しません。
私の場合ピアノという存在は、まるで家族のようにとても大きなものです。だから新しい曲が弾けたとき、きっとピアノも喜んでくれていると信じています。
なんてあたたかいことばでしょう!
私はずっとピアノを裏切り続けてきた気持ちがしますが、ピアノはまた私が振り向いてくれるまでじっと待っててくれたのでは、と思うと、せつなくなりました。
こんどこそちゃんと「雨だれ」が弾けるように、この記事に従ってコツコツ練習します。
きっかけをくださって、ほんとうにありがとうございました。
Hiromiさん、はじめまして、ピアノ弾きのもぐらと申します。
コメントをお寄せ頂き、大変うれしく思います。
本当にありがとうございます。
練習を再開されるとのこと、私も応援しております。
実を言うと、いろいろな事情で私もピアノが弾けない時期がありました。
それでも練習をしたいという気持ちが心のどこかにあって、今に至ります。
ですので、Hiromiさんのお気持ち、とてもよくわかります。
ピアノって、すごく健気で素直な楽器だと思います。
「こう弾きたい!」と思って練習に臨むと、ちゃんとそれに応えてくれます。
そう考えるとやはりピアノは生きているんだなぁと思えてなりません。
なので、Hiromiさんのピアノもきっと、Hiromiさんのお気持ちに応えてくれると思います。
そしてピアノの練習というのは、ピアノとの対話でもあると思っています。
だからこそいろいろな試行錯誤が生まれることもありますし、だけどそれすらもピアノを弾く上での醍醐味の一つだと思います。
練習、楽しみながらお互い頑張っていきましょうね!
ありがとうございました。