きらきら星は、誰もが知っている曲ですね。
モーツァルトはこの旋律をつかって変奏曲をピアノ独奏曲として作曲しました。

どの変奏もそれぞれ違った特徴があって、聴いている人も弾いている人も楽しめる曲です。
レパートリーとして持っていると万人受けするので喜ばれると思いますよ!

難易度はツェルニー30番~40番程度。
変奏によって簡単なものもあれば難しいものもありますが、最も難しい変奏曲に合わせるならばツェルニー40番です。

楽譜はいろいろな版がありますが、わたしはヘンレ版を使っています。



■ 目次

変奏とは、、、?

変奏といってピンときますか?
少しずつ雰囲気が変わるというのはなんとなく分かると思います。

具体的に何がかわっているかというと、音楽要素です。
音楽要素は8つ。
「音色」「リズム」「速度」「旋律」「テクスチュア」「強弱」「形式」「構成」


簡単に説明しましょう。

「音色」・・・声や楽器の音色、身の回りの音など。
「リズム」・・・拍や拍子、さまざまなリズム、間など。
「速度」・・・さまざまな速さの設定やその変化、序破急など。
「旋律」・・・音のつながり方、音階や調など。
「テクスチュア」・・・音や旋律のさまざまな組み合わせ方や重なり方など。
「強弱」・・・さまざまな音の大小の設定やその変化など。
「形式」・・・さまざまな音楽のつくり。三部形式、ロンド形式やソナタ形式など。
「構成」・・・反復、変化、対照による音楽のまとまり方など。


これら8つの要素を、最初のテーマをもとに変化させた曲のことを変奏曲といいます。


最初のテーマはこちら!

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜1
テーマは単純なものが多いのですが、きらきら星のテーマは中でも群を抜いて耳にきちんと残る単純なメロディー。
聴き手は、このテーマをもとにしなければならないので、ピアノで弾くときはあまり凝ったことはせずにサラッと弾くのが一番良いでしょう。

 
参考動画はこちら!

☆第一変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜2
こちらはまず最初に出てくる第一変奏です。(動画0:35~)
きらきらと、たくさんの星が輝いている様子がイメージしやすいですね。
ここは右手がテーマの旋律音をなぞりながら、アレンジされています。

左手は、あまりテーマから変化していません。
右手のたての線がそろうとめちゃめちゃかっこいいので右手の練習をよくしてくださいね。

☆第二変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜3
ここは第一変奏とは逆で、左手の腕の見せ所!(動画1:03~)
右がメロディーなのは変わりないですが、左手がずっと16分音符で刻み続けます。
左手の和声にもモーツァルトならではの工夫が凝らされています。

和声も合わせて感じながら弾いてみるとgood!
しかしあくまでメロディーは右。
メロディーラインが浮き出るように弾きましょう。

☆第三変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜4
こちらが第三変奏。(動画1:32~)
わたし、これが案外苦手なんです、、、
「16分音符のほうが速いのに?!」と不思議に思うかもしれませんが、三連符にトリルを入れるのがなんとも難しいんです!!!!

上の楽譜の二小節目を見てください!
ミにトリルがついていますよね。
ここのトリルは、ロマン派の時代とは異なり、きっちり拍をとりながらいれなければなりません。

ただ、トリルの入れ方に関してはさまざまな見解があるので今回は二種類を紹介します。
まずは。親音からいれる場合だと、「ドソファミファミレド」
二度上から入れる場合だと、「ドソファファミファミレド」

自分でいいと思ったほうを選んで演奏してください。

☆第四変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜5
今度は、右の三連符から変わって左が三連符になります。(動画2:03~)
手が小さい人にとっては、5小節目からの左手が大変に思うかもしれないです。
しかし、1拍目と2拍目の拍頭はスタッカートが付いていますので切ってok!
むしろその前後のスラーと対照的になるように弾くとメリハリがついて良いです。

また、フォルテとピアノの二種類しか出てきません。(途中にクレシェンドはありますが。)
なので、強弱をパッと変えたりするとより面白みのある演奏になります。

☆第五変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜6
第五変奏は他の変奏に比べると音数が少ない、、、!(動画2:34~)
いってしまえば、すこーしばかり休憩です(笑)

でも気を抜いてはいけません。
華やかではない分、聴き手にとっては中だるみしやすい部分。
退屈に思われないよう、今までになかった雰囲気を出しましょう。

ここは、右と左が対話しているかのような音形です。
二人がなかよくお話しているようなかわいらしさが出ると素敵ですね。

そして全体的にはあまり大きくしすぎず、近くで話しているような雰囲気をもちましょう。

☆第六変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜7 モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜8
第六変奏は、メロディーが右に行ったり左にいったりします。(動画3:08~)

8分音符、もしくは4分音符になっているほうがメロディー。
16分音符が伴奏です。

16分音符のほうが速いし弾くのに必死になってしまって、目立ってしまう人が大勢います。
16分音符は大変ですが飾りです。
主張しすぎないように気をつけましょう!

また、この変奏曲はクレシェンドがミソ!!!
パッと雰囲気を変えるような変奏ではなく、徐々に変わっていく変奏です。

クレシェンドがある場合は16分音符の伴奏をうまく使ってクレシェンドしてみましょう。
メロディーを使ってクレシェンドするより、うまくいくと思います。

☆第七変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜9
この変奏は、スケールが得意な人は素晴らしく上手に弾くことができます。(動画3:36~)
「ド」から上行していく指番号だったり、つぶのそろいだったりするのは、ハノンでしっかりできるようにしてあると良いですね。

11小節目の音に注目してみてください。
スタッカートとスラーが同時に出てきていますね。
よく、生徒さんに「どっちで弾けばよいの?」と質問をされます。
たしかにわかりにくい。。。

これは、マルカートのようなイメージ。
はっきりと弾くようにしましょう。

スタッカートのように切りすぎず、かといってスラーのようにすべてなめらかに弾くわけではない、ということです。
ある程度は切ってもよいです。

☆第八変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜10
第八変奏は曲の中で唯一短調の変奏です。(動画4:08~)
C durからc mollに移調したことをしっかり認識しておきましょう。

楽語が最初に書かれています。
Minore(ミノーレ)は「小さい、短調の」といった意味です。

ここはテンポも今までのような速さはありません。
ゆったりとしたテンポでしっとりと歌うように演奏すると良いですよ。

また、フーガのような要素も含まれています。
最初、右手のメロディーで「ドレ♭ミファソーソ」と始まりますが、その後すぐに左手が調を変えて「ファソラ♭シドード」と追いかけます。

こういった形式も感じて弾くとより味の出る演奏になると思います!

☆第九変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜11
短調を引きずらないようにここは明るい気持ちで演奏します。(動画4:47~)
また、変奏曲の中で最も短いのがこの第九変奏。
短調からフィナーレに向って気持ちを切り替える、という意味でスタッカートやスラーの違い、強弱を見落とさないように弾いてくださいね。

☆第十変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜12
この変奏は、16分休符がとても重要な役割を担っています。(動画5:17~)
16分休符があいまいだとその後に続く16分音符がそろわず綺麗ではありません。

16分音符を弾くのは左手だけではなく、右手も出てきます。
すぐに頭を切り替えて弾きましょう。

また、4分音符がメロディーです。
スラーもあり、まとまりを感じながら弾きましょう。
途中左手が4分音符になる部分は、メロディーではないですが重要な音の並びです。
しっかりとした音で弾いて良いです。

☆第十一変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜13
この第十一変奏の速度であるAdagioは、ゆったりとしたテンポ。(動画5:47~)
弾きやすいので、わりと速く弾いてしまう人がおおいのですが、速く弾くのは次の最終変奏です。
我慢してください!(笑)

気を付けたい点は、たまに出てくるフォルテピアノ。
古典派の時代、いきなり大きくしたりする表示はさほど多くはありませんでした。
そんな中で、あえてモーツァルトはフォルテピアノを使っているので汲み取って弾きましょう。

この変奏は、5小節目で装飾音符が出てきます。
ここもいろいろな解釈があるので一概に「これが正しい!」とは言えません。
でも、一つの案としては32分音符のように弾くこと。

ここはもともと16分音符に装飾がついている形です。
ただ、そのように弾くのはモーツァルトの時代には主流ではありませんでした。
モーツァルトの時代でも、前半と後半とでだいぶ変わってくるんですけどね!
この曲が作られたのはモーツァルトが25、26歳の時なのでちょうど変わり目かもしれませんが、、、

☆第十二変奏

モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜14
きらきら星変奏曲最後の変奏です。(動画8:01~)
まさかの四分の三拍子です。
こんなにサラリと違和感なく三拍子に編曲してしまうなんて、モーツァルトはやっぱりすごいなぁと感心してしまう、、、!!!

とにかくここで大事なことは16分音符を丁寧に弾くこと、これに限る!

16分音符が右でも左でも両方同時に長い間出てくる変奏はここが最初で最後。
聴き手に「おぉぉぉ!」と言わせる場所です。

オーケストラをイメージしてみると良いでしょう。
いろいろな楽器が出てきてフィナーレをかざる感じです。
ここでうまく指が回らないとかっこよく終われないので一番練習してくださいね。


モーツァルト「きらきら星変奏曲」ハ長調K.265 ピアノ楽譜15
最後は今まで出ることのなかったフォルティッシモ。
華やかに終わります!

最後に

非常に弾きがいがあり、弾き手も聴き手も楽しめるのが魅力。
それが「きらきら星変奏曲」だとわたしは思います。

楽しんでもらうには12ある変奏すべてを同じような雰囲気、イメージで弾いてはいけませんよね。
違った雰囲気やイメージをふくらませながらわくわくするような演奏ができると良いです。
色々な映画やドラマでも使われている曲なので弾けて損なしです!

是非自分だけの「きらきら星変奏曲」を完成させてくださいね。



「きらきら星変奏曲」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。ペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。

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