このシューマンの幻想曲集は全部で8曲の小曲からできています!
一つ一つが何ともいえないロマンチックで美しい旋律をかなでます。
また、あるときは激しく、あるときは優しく、あるときは楽しく、、、

シューマンの性格がそのまま曲に表れているといっても過言ではないのがこの幻想小曲集なんです!

そんな中から今回は、8曲中の5曲目「夜に」を紹介していきたいと思います!
 
参考音源はこちら!


■ 目次

難易度は結構高め。



前置きなしに、結論からいいますと難易度はかなり高め。
わたしはこのシューマンの幻想小曲集を8曲やったのですが2番目に難しいと感じました。

ちなみに全曲の難易度順はこちら!
あくまでわたしの難易度なので参考までに!


☆     第3曲「なぜに」変ニ長調Op.12-3

☆☆    第2曲「飛翔」ヘ短調Op.12-2

☆☆☆   第1曲「夕べに」変ニ長調Op.12-1
      第4曲「気まぐれ」変ニ長調Op.12-4
      第6曲「寓話」ハ長調Op.12-6

☆☆☆☆  第8曲「歌の終わり」ヘ長調Op.12-8
      第5曲「夜に」ヘ短調Op.12-5

☆☆☆☆☆ 第7曲「夢のもつれ」ヘ長調Op.12-7



「夜に」はやはり技術的にはもちろんですが、それ以上にかなりの表現力を必要とする曲だと思います。

特に中間部の、転調して雰囲気ががらりと変わるところが腕の見せ所です。(動画時間 1:03~)
音楽的表現に自信アリ、な人にはかなりおすすめしたい一曲です!

でも、どんなに表現力があっても、最低限の技術力は要する曲。
教則本でいうとソナチネ終了程度の技術は絶対必要になってきますね。
バッハもインヴェンションとシンフォニアがすべて終わっていないと厳しいかもしれません。


とはいうものの、もちろん「挑戦」からこの曲を選ぶのもありです!
なので、ソナチネが終わっていなかったり、バッハのインヴェンションとシンフォニアが終わっていなくても、「がんばって挑戦したい!」という強い気持ちがあれば、やれないこともないです!


あくまで参考までに、ということなので挑戦する方はがんばってやってみてくださいね。

メロディーはもちろん右、でも、、、

シューマン「幻想小曲集op.12第5曲《夜に》」ピアノ楽譜1
上の楽譜は、「夜に」の冒頭部分です。
2小節の前奏ののち、メロディーがあらわれますね。(ドファソ♭ラ♭シラソ)

でも、この曲には伴奏部分に無視してはいけないとっても大切なフレーズが出てくるのです!
それは、ヘ音譜表に書かれている音符のぼうが上向きになっているファミの音です。
このフレーズは最初から4小節連続で出てきます。(3小節目ではト音譜表)


実はこの曲には物語があって。
はかなくて切ないストーリーが隠されているのです。


そのストーリーを簡単に説明すると、ある二人の男女がいてその二人は愛し合っていました。
けれど、いろいろな事情がからんで二人は海を越えて離れ離れになってしまいます。
男性は陸、そして女性は海の中にある灯台の塔の上へ。

愛し合っていた二人は、離れ離れになったことが耐えられなく、ついに男性は海を泳いで女性のもとに行こうと決意をします。

そして女性を想いながら必死に海を泳ぎます。
しかし、海の波はしだいに高く、激しくなっていきます。
必死に泳ぎ、灯台へたどり着こうとしますが、波は高くなるばかり。

灯台の明かりがみえた、希望が見えたその時!
大きな波に男性はのまれてしまいます。

そして男性が女性のもとにたどりつくことは永遠になかったのです。



とっても切なく、儚いストーリーですよね。

先ほどお話した繰り返し出てくる「ファミ」は、海の波を表現しているのです。
ずっと出てくるこの波の音色は非常に大切なフレーズなので、うまく波を表現できるように弾いてみてくださいね!

雰囲気をどう変える!?

この曲は三部形式でできているわけですが、真ん中の部分でパッと雰囲気が変わるところがあります。
きっと音源を聴いたらすぐにわかるでしょう。

こちらです!

シューマン「幻想小曲集op.12第5曲《夜に》」ピアノ楽譜2 (動画時間 1:03~)


調も変わっているのが分かりますね!
ここから強弱記号もPになって雰囲気をガラリと変えるとよいでしょう。

また、メロディーラインははっきりと鮮明に弾くと、より美しく聴こえます。
ここでは、練習は伴奏だけを取り出してやってみるといいかもしれません。

一見、不協和音に聴こえるところも、「よくシューマンが考えて作曲したんだなぁ」と思える和音がたくさんあります。
曲の聴かせどころといってもいい箇所なので、和音分析等してみても新たな発見があるかもしれませんよ!

そして、この中間部は先ほどお話しした物語でいうと、男女の二人がお互いを想いながら「会いたい」と切に願っている場面。
一緒になった時のことを想像している場面でもあります。

弾くときも、あまり現実感を出さずに幻想的に弾くといいですよ。
例えば、ソステヌートペダルを使うのも一つの手です。

自分なりの幻想的な音楽をぜひ探してみてくださいね!

最後は切なく、、、でも切ないだけで終わらせないで

最後は愛し合う二人は会えずに男性は死んでしまったという結末でしたが、音楽は静かに息をひきとる様には終わっていません。

最後は激しく、高らかに、そして叫びが聞こえてくるかのような雰囲気の中、音楽は幕を閉じるのです!

最後の一音まで、切羽詰まった様子が音楽からも聴き取ることができると思います。
最初と同じだと思うのに、どこか音が一音だけ変わっていたり、強弱に変化が見られたりします。
それを見逃さないように、最初と最後の楽譜をよーく見て違いを見つけてみてください!




とっても難しいですが、かなりやりがいがあって、シューマンらしさがいっぱいに出ている曲です。

頑張って練習してみてくださいね!



「夜にOp.12-5」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1879年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「幻想小曲集Op.12」全8曲が収録されており、Op.12-5は11ページからになります。

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