モーツァルトと言えば左側の絵が有名ですよね。

この絵はモーツァルトが亡くなって30年近くたって描かれたもので、当時ザルツブルクで活躍していたバルバラ・クラフトが想像で描いたものなんだそうです。モーツァルトの絵はたくさんありますので、それを参考にして描いたとは思われますが…

私たちがよく見るモーツァルトの絵はモーツァルト本人を見て描いたわけではなかったんです。

右側の絵の方はモーツァルトの義兄にあたるランゲが描いた絵で、晩年のモーツァルトを描いたものだそうです。モーツァルトの妻であるコンスタンツェによるとよく似ているそうです。(この絵は未完で肩から下は色が塗られていません。)

モーツァルトには有名な曲がたくさんありますよね!彼は35歳という短い生涯でしたが、作曲数は多く、いろんなジャンルの曲を書いています。

いろんなジャンルの曲を書いている作曲家は他にもたくさんいますが、モーツァルトは他の作曲家よりも、作曲することにおいては優れていました。

それは駄作が少なく、各ジャンルに有名な曲があるというのが理由の1つです。モーツァルトは他の作曲家よりも音楽のセンスがあり、そして天才だったということなのでしょう。

音楽家としては天才的才能を持っていたモーツァルトですが、その素顔はとんでもない人物でした。今回は素顔にも触れながら「きらきら星変奏曲」の難易度と弾き方のコツを書いていきます。

モーツァルトは旅ばかりしていた。


モーツァルトは1756年にザルツブルクで生まれたオーストリアの音楽家です。

モーツァルトの父レオポルトは宮廷ヴァイオリン奏者で、ヴァイオリンの教則本を書いており、後進の育成などにも力を入れている人でした。

もちろん自分の子供たちにも熱心に音楽を教えました。モーツァルトには5歳年上の姉ナンネルがおり、2人とも父から音楽を教わりました。

モーツァルトは3歳ごろから父にクラヴィーアとヴァイオリンの手ほどきを受け、この頃からすでに普通の子供とは違う音楽の才能を見せていました。

父レオポルトはナンネルのために曲を作り、それを弾かせていたそうなのですが、モーツァルトは4歳にしてその曲を覚えて弾いていたそうなのです。

5歳も年上のナンネルのために作曲した曲なので、4歳の子にとっては簡単な曲ではなかったと思いますが、モーツァルトはすらすら弾いたそうです。そして5歳のころには、即興で作曲するようになっていたそうです。

モーツァルトの才能を目の当たりにした父は、彼の才能を世間に知ってもらうため、または彼の才能を伸ばすためにもザルツブルクにいてはダメだと考え、大きな都市や大きな宮廷のある場所へと旅に出ることを決意します。

ここからモーツァルトの旅が始まるのです。

少年時代の旅行

モーツァルトは6歳から7年間様々な場所を旅行しています。

現在のように交通の便が良いわけではなかったので、移動は大変だったようです。このころの移動手段は馬車しかありませんでした。

幼いモーツァルトにはかなりキツイ旅だったようで、体調を崩すことも多く、腸チフスや天然痘にもかかったようです。

この旅は家族4人で行くこともあれば、姉と父とモーツァルトの3人のこともあったようです。ずっと旅をしていたわけではなく、1度ザルツブルクに戻り、期間をあけてまた旅に出るという感じだったようです。

このような幼いころのキツイ旅のせいかはよくわかりませんが、彼は体が弱く、あまり成長しなかったようです。身長はとても低く150cmほどだったと言われています。

早くに亡くなったことも、もしかすると関係があるのかもしれません。

彼はこの旅で主要なヨーロッパの宮廷や宮殿で演奏し、才能を認められています。目隠しをして弾いて見せたなんていうエピソードが有名ですよね。

これは鍵盤の感覚をつかめていれば出来ることなので、本当はそこまで驚くことではないんですけどね…。

イタリア旅行

13歳から17歳までの間はイタリアに旅行をしています。少年時代の旅行と同じくザルツブルクとイタリアの各地を行ったり来たりしています。

14歳の時にローマを訪れたとき、モーツァルトはシスティーナ礼拝堂で、ある音楽を聴きました。この音楽は門外不出とされているものだったのですが、モーツァルトはこの曲を聴き、書き起こしてしまいました。

その曲というのは、アレグリ作曲の「9声体のミゼレーレ」でした。この曲はアカペラの合唱曲で9つのパートがある曲でした。



9つの音が鳴っているにも関わらず、モーツァルトは1度聴いただけで正確に音を覚え、楽譜にしてしまったのです!まさに天才です!!

門外不出とされていた曲なのですが、モーツァルトは怒られたり、罰を受たりすることはありませんでした。その類まれなる才能に免じて許されたのです。

このイタリア旅行の後半の2年ほどは、就職活動のための旅行だったようです。

実は13歳にしてザルツブルグの宮廷音楽家という職に就いてはいたのですが、より良い就職先を探すためにこの後も旅行を繰り返します。

マンハイム・パリ旅行

彼の旅はまだ続きます。

ザルツブルグの宮廷で働きながら、作曲依頼があれば作曲をするというスタイルで仕事をしていたモーツァルトですが、ザルツブルグ宮廷への不満から辞職願いを出してしまいます。

なぜそのようなことになったのでしょう?

当時初演は作曲者が指揮をするというルールがあり、初演演奏のたびに休暇届を出さなくてはなりませんでした。

その届けを受理していたのがザルツブルグの大司教なのですが、新しい大司教に変わってから、それまでのように優遇してくれなくなったようなのです。

他にも不満はあったのかもしれませんが、そのことなどが理由で父子ともに辞職願いを出したということなのです。

なかなか辞職願いは受理されず、3度目でやっと受理されたようです。(父は結局残ることになりますが…)

後半のイタリア旅行と同様、マンハイムやパリでの旅行も就職活動のための旅でした。

幼いころはどこに行っても「神童」ともてはやされたのですが、大人になったモーツァルトに対してはどこに行ってもあまり良い反応がありませんでした。

パリでの就職もなかなか上手くいかず、父の働きかけでザルツブルグの宮廷音楽家としてまた働くことが出来るようになりました。

しかし、結局長くは続きませんでした。モーツァルトは父の反対を押し切り、ウィーンへ行くことにしたのです。

せっかく元の職にも戻れたのに…また就職苦労するのに…と思いますよね?でも彼はそんな風には思っていなかったのです。

就職先を探す苦労はこれまでの旅行でわかっているはずなのにあっさり辞めてしまえた理由は、オペラ「イドメネオ」などによる成功でした。

この成功によりモーツァルトはフリーランスの作曲家としてやっていける自信を持ったのです。

いろんな場所を旅行して来た中で選んだのがなぜウィーンなのかというと、好きな女性がウィーンにいたので、どうしても近くにいたかったということらしいのです。(好きな女性というのは、のちに妻となるコンスタンツェのことではなく、その姉のアロイジアのことです。)

この2つの理由からウィーンで活動することを決意しました。

モーツァルトは変人?

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「アマデウス」という映画をご存知ですか?この映画はモーツァルトの半生を描いたものです。

「モーツァルト」じゃなくて「アマデウス」?と疑問に思われたかもしれません。彼のフルネームは「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」と言います。

映画はその「アマデウス」部分を取ったものだと思われます。この「アマデウス」には「神に愛される者」という意味があるそうです。たくさんの素敵な曲を書いた天才音楽家に相応しい名前ですよね!

映画のタイトルは、単純に名前を取ったというだけでなく、「神に愛される者」というこの意味も込められているのではないかと思います。

映画の中で描かれているモーツァルトは、とんでもなく下品で子供っぽいです。笑い方がとにかく印象的でバカっぽく、落ち着きがない。

この映画を見ると今まで持っていたモーツァルトのイメージが崩れていくと思います。

本当にこの映画のようだったかはわかりませんが、そのような下品で子供っぽい面は確実にあったと思います。

彼が出した手紙にはとんでもない内容が書かれたものが残っていますし、メロディーは素敵なのに歌詞がとにかく下品で最悪な曲が実際に残っています。歌詞については紹介する気にもなりません…。

モーツァルトの曲の特徴の1つはメロディーラインがすぐに違うものに変わってしまって変化が激しいことだと思います。

ころころ変わるメロディーは聴く人を飽きさせないとは思いますが、彼の落ち着きのなさを感じずにはいられません。

彼の音楽の才能はとても素晴らしいと思いますし、どの曲も素敵だなとは思いますが…
人としては嫌いです。

何だかモーツァルトの悪口を書いているようになってしまいましたね。私の場合、このような素顔を知り、思っていたイメージと違っていてガッカリしたという感じです。

モーツァルトの素顔に興味のわいた方は映画「アマデウス」を観てみて下さい。ガッカリしたくない人は、観ない方が良いですよ。

KVって何?

モーツァルトの作品に書かれているKVというのは何かご存知ですか?読み方はケッヘルです。

KVはKöchel Verzeichnissの略で、ケッヘル目録という意味です。
KVと書かれる場合とK.と書かれている場合がありますが、両方同じケッヘルを意味しています。

ルートヴィヒ・フォン・ケッヘルというオーストリアの音楽学者が1862年にモーツァルトの全作品を作られた順に整理し、番号をふったものがケッヘル番号です。

このケッヘルさんは元々植物、鉱物学者でした。モーツァルトの研究を始めたのは56歳になってからという面白い経歴の人なんです。

作曲家によって作品番号はいろいろで、普通にOp.(読み方はオーパス。作品番号という意味)となっているものもあれば、モーツァルトのKV(ケッヘル)のように音楽学者の名前がついていることもあります。学者の名前がついているものは、同じ古典派の作曲家だとハイドンがいます。ハイドンの作品番号はHob.(ホーボーケン)です。

変奏曲ってどんな曲?

変奏曲というのはまず初めに短い簡単な曲をテーマとして設定し、そのテーマを基にどんどん変化させていく曲のことです。

変奏数は曲によっていろいろですが、モーツァルトの場合は6~12の範囲で作曲されています。

モーツァルトの頃の変奏曲は変奏するルールが決められていました。

モーツァルトの頃の変奏の仕方

第1変奏→右手16分音符による変奏
第2変奏→左手16分音符による変奏
第3変奏→右手分散和音による変奏
第4変奏→左手分散和音による変奏
最後の変奏の1つ前は少しテンポの遅い変奏
最後の変奏はテンポが速く、華やかな変奏

このように第4変奏までは右手と左手に変奏の形が移るように作曲しています。

変奏の長さは曲によって異なりますが、だいたい最後の変奏がより目立つように1つ前の変奏では少しテンポを落として作曲されています。

当時の変奏曲はいろんな弾き方を学べるという感じで作曲されたものが多く、練習曲的な要素が強いです。

そのためテーマとなる曲は、弾く人たちが聴いたことのある曲や当時流行っていた曲などがテーマとして多く選ばれています。

このような曲をテーマとして選ぶことによって、弾く人たちが楽しんで学べるようにしていたのだと思います。

モーツァルトは変奏曲を多く作曲しており、15曲も書いています。15曲ある変奏曲のテーマがどのような曲なのかを見ていきましょう。

モーツァルトの変奏曲のテーマ

オペラの旋律8曲
歌曲4曲
器楽曲2曲
自作曲1曲

自身で作曲したテーマは1曲のみで、後は当時流行っていた曲や耳馴染みの良い曲をテーマにしています。モーツァルトも他の作曲家と同じく、教育用として変奏曲を書きました。

モーツァルトの変奏曲は全て長調で作曲されています。変奏曲の途中に短調の変奏を1つ入れて作曲しており、曲調をガラッと変えることで、曲全体のメリハリをつけています。

「きらきら星変奏曲」はどんな変奏になっている?


モーツァルトの変奏曲で最も有名なのは「きらきら星」ですね。実は「きらきら星」というのは正式な名前ではありません。

モーツァルトがつけたタイトルは「あぁ、お母さん、あなたにお話しをしましょう」による12の変奏曲なのです。

現在、きらきら星として親しまれている曲は元々1760年頃からパリで歌われていたフランス民謡「あぁ、お母さん、あなたにお話しをしましょう」でした。

この曲はフランスだけでなく、世界中で親しまれるようになり、イギリスやアメリカでは「Twinkle, twinkle, little star」という歌詞で歌われました。それが日本に伝わり「きらきら星」となったのです。

さて、このきらきら星の変奏がどのようになっているのかを見ていきましょう。この曲はテーマと12の変奏で出来ています。

「きらきら星」の変奏

テーマ:「きらきら星」ハ長調
第1変奏:右手16分音符
第2変奏:左手16分音符、右手トリル
第3変奏:右手3連符
第4変奏:左手3連符
第5変奏:右手と左手の掛け合い
第6変奏:右手、左手交互に16分音符
第7変奏:右手音階、オクターブ
第8変奏:短調、同主調のハ短調へ
第9変奏:ハ長調へ、右手を左手が追いかける
第10変奏:右手左手が交差する
第11変奏:テンポゆっくり
第12変奏:テンポ速く、右手左手ともに16分音符華やかに

構成はこのようになっています。12も変奏がされていますが、どれもちゃんと「きらきら星」の変奏だということがわかるように作曲されています。

最初から弾かずにある1つの変奏だけを抜き出して弾いたとしても、きっと「きらきら星」だとわかると思います。

それはメロディーがどこかに隠れていたり、メロディーが見当たらなくても和音の進行が同じになっていたりするからなのです。

「きらきら星変奏曲」の難易度はどのくらい?

この曲は練習曲的要素が強い曲なのですが、初歩の人が弾けるほど簡単な曲ではありません。

12の変奏なので曲は少し長めですし、第1変奏から16分音符の連続ですから、ある程度指を速く動かせるようになっていないといけません。

それからもう1つポイントは、粒をそろえて弾けるかどうかです。これは結構難しいことなのですが、これが出来るだけで格段に上手く聴こえます。

手の形が丸く出来ている子、1本1本の指がしっかりした子であれば、割と粒がそろいやすのですが、そうでない子は粒がそろわないので苦労します。

粒をそろえる練習方法については後で書きますね。

このような理由から、指がある程度しっかりしていないとこの曲は弾けないと思いますので、難易度はブルグミュラーを終了しソナチネが弾ける程度の中級レベルです。

「きらきら星変奏曲」の弾き方



モーツァルトよりも少し前の時代にはチェンバロやクラヴィコードが主流でしたが、彼が活躍する時代のころには、徐々にピアノ・フォルテが主流になって来ていました。

しかし、現在のピアノと同じというわけではなく、当時の楽器は鍵盤がとても軽く、音量もそれほど大きく出せなかったようです。

このようなことから、モーツァルトを弾くときは腕などの力をあまり加えず、指で軽く弾く方が良いと思います。

もう少し後に活躍した同じ古典派の作曲家、ベートーヴェンからは楽器の改良などもあり、重みをかけた弾き方になるのですが、それ以前は重みをかけない弾き方をします。

この曲を上手く弾くポイントは、粒をそろえて弾くことと先ほど書きましたね。モーツァルトの曲は全体的にそのように弾く必要があるのですが、この曲は特にそれが必要になります。

この曲の場合、粒がそろえばそれで終了と言っても良いくらいです。まぁ、きちんと粒をそろえるというのが難しいのですが…

粒がよくそろっている演奏だと力の抜けたコロコロと音が転がっているような軽い印象で、気持ちよく聴けるのですが、粒がそろっていなかったり、重みがかかったりすると幼稚な演奏になってしまうんですよね。

素敵な演奏にするにはどの変奏部分も粒がそろうように練習しなくてはなりません。その中でも16分音符で動きまわる部分は特に練習が必要です!!

まずはすご~くゆっくり弾く練習をしましょう。1つずつ弾くのではなく、次の音を準備しながら弾くつもりで弾くようにしましょう。

他にもこんな練習が役に立つと思います。

<リズム練習>

この4種類のリズム練習は、16分音符部分の練習方法です。

速く弾いてしまっては意味がないので、テンポを落として練習して下さい。指は1本ずつしっかり動かすイメージで弾いて下さいね。(重みはかけず、指だけで!)

ゆっくり弾いたときと同様に、次の準備をしながら弾くようにすると音が止まらず次に進んでいる感じが出るのでより良い演奏につながると思います。

1つの変奏を聴いただけではそれほど違わないかもしれませんが、曲全体を聴いたときにこのような地道な練習をしたのと、していないのとではかなり差が出てしまいます。是非、試してみて下さい!

この曲はもちろん全て通して弾くのですが、そのままスラスラっと弾くのではなく、曲間を取って弾くところを作った方が良いと思います。曲間を取った方が良いのは2ヵ所です。

●第7変奏と第8変奏の間

第8変奏は短調になるので、第7変奏と第8変奏の間で少し間を取りましょう。そうすると曲調が変わることが聴く人にもわかりますし、演奏する方も気持ちを切り替えることが出来ます。

●第10変奏と第11変奏の間

それまでテンポの指示はありませんでしたが、第11変奏はテンポ指示がAdagioになっており、その前よりも遅く弾くようになっていることがわかると思います。この変奏の前でもう1度間をあけましょう。


最後の変奏はAllegroの指示が出ていますね!第11と12の変奏の間はすぐに弾き始めて間延びしないようしましょう!

変奏曲ではもう1つ大事なポイントがあります。それはテーマとなっている音をそれぞれの変奏部分から見つけ出すことです。

中にはテーマが見つけにくいものもあるのですが、「きらきら星」はかなり見つけやすくなっています。

テクニック的に難しい部分もありますが、変奏の中で見つけたテーマを少し強調することが可能であればそのように弾けると、なお良い演奏になると思います!

リズム練習をよくして、粒のよくそろった洗練された演奏を目指して下さいね!!

まとめ

◆モーツァルトの曲には駄作が少なく、各ジャンルに有名な曲がある
◆小さい頃から旅ばかりしていた
◆モーツァルトはオーストリアの音楽家
◆下品で子供っぽい面があった
◆KVとはケッヘル目録のこと
◆変奏曲とは短い簡単な曲をテーマとし、それを変化させていく曲のこと
◆難易度はブルグミュラーを終了しソナチネが弾ける程度
◆上手に弾くコツは粒をそろえること


「きらきら星変奏曲」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1878年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された楽譜です。

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