この曲集は、グリーグらしさが存分に出た傑作のひとつだと言えます。
ひとつひとつの作品は1~7分と短い小品ですが、長い期間をかけて作られた曲集なのです。
グリーグといえば、最も有名なのは「ピアノ協奏曲 イ短調」(1868年に発表)ではないでしょうか?
私自身が初めてオーケストラと演奏したのもこの協奏曲でした!
わたしも大好きな一曲ですが、初演当時もかなりの人気を博していたようで、グリーグはこの協奏曲で一躍有名となりました。
この数年前から書き始められたのが今回紹介する「抒情小品集」です!
1867 年に初めて出版されたこの曲集は長年をかけて作り上げられ、完成は1901年だったそうです。
書き始めから40年近くの月日!とても長いですよね!!
全部で10集あり、66曲の小品がおさめられています。
「トロールハウゲン(トロルドハウゲン)」というのは土地の名前で、グリーグとその妻ニーナが暮らしていた場所です。
そして、この曲はニーナにプレゼントされたものです。
音楽家の中でもおしどり夫婦だと言われているグリーグ夫妻ですが、奥さんに曲をプレゼントするなんて粋な人ですよね!
素敵です!!!!!
いいな!!!
難易度はソナチネ後半からソナタ導入程度。
ある程度の技術力、表現力、そしてリズム感を必要とする曲です。
また、場面によってガラッと雰囲気が変わる曲でもあるので、さまざまな技能を駆使しなければなりません。
参考動画はこちら!
それではさっそく曲の要点を説明していきます!
ペダルの使い方は、、、?
曲想を左右するなかの一つにペダリングがあります。
この曲の出だしはテンポを定める大切な箇所ですが、合わせてペダルにも気を使いましょう。
この前奏2小節はペダルをふみっぱなしで演奏されることがほとんどです。
まれに一音目のスタッカートを生かしてペダルなしで演奏することもありますが、2小節をひと組として考えるならばペダルを踏むのがベター。
また、拍の考え方も一拍目に頭がくるというより、アクセントの付いている三拍目を強調しなければなりません。
ここを生かすには、ペダルをずっと踏むことによって強弱をより鮮明に弾くことが大事!
強弱記号がピアノで始まる前奏は、「何かが始まるぞ!」という予感を聴き手に感じさせましょう。
結婚式がテーマですから、きっとその音楽が遠くから聞こえてくるようなイメージかもしれませんね。
いつまで続く?!同じ音!
何気なく聴いているとあまり気付かれないのですが、実際に弾くとある発見をします。それは、ある音がずっと和音の中に含まれているということです!
右手に注目してみてください。
3から5小節の中である音がずっと出ています。
それは「ファ」の音!!
和音があるたびに必ず「ファ」が出ています。
そして、その後はバトンタッチするかのように6小節目を境に
7から9小節では「シ」の音が和音に必ず含まれていますね。
このテーマでは、ずっと出現している音が変わった時の和音を重要と考えなければなりません!
上の楽譜でいうと、6小節目の一拍目のことです。
この変化から転調を経て旋律も変わっていくという、このテーマのかなめの音になっているからです。
この「ファ」が出てくる旋律と、「シ」が出てくる旋律はこの曲の中の第一テーマなので、ささいな音の変化も見逃さないようにしましょう!
再びこのテーマが出るのは一オクターブ上で同じ旋律がくるときです。
音が高くなることで、気分も高まります!
最初の時とは違いをつけるといいと思います。
変化をつけるとおもしろい!
次のテーマが出てくるのは21小節目。(動画0:39~)
変化をつけると断然面白くなるのはこの第二テーマです。
フォルテからピアニッシモ、再びフォルテからピアニッシモ。
このいきなりくる強弱の差をうまく表現してみましょう。
コツは、とにかく弾きやすい速さでゆっくりと弾くことです。
テンポは後からおのずと上がるので、まずは表現しやすいテンポで演奏してください。
また、ピアニッシモのところはuna cordaと書いてあるのでペダルにも助けてもらってください。
そしてdolceという楽語があります。
弱く、優しく。
会話のように小声で話す様子をイメージするといいですね。
最初は小声でもだんだんと盛り上がってくる様子が楽譜からでもわかります!
こうして上行を繰り返しながら音域も高くしていく作曲奏法、、、
こういった箇所にもグリーグらしさが出ています!
そうして気分も上がっていった頂点には、和音が連続で出てきます。(動画1:20~)
和音が始まる一拍目は全音符で書かれていますが、ここを押さえながら演奏するのは不可能なので、ペダルを使います。
一拍目は全音符で弾けない分、指を離してもある程度音がきちんと耳に残るくらいの強さで弾くようにしましょう。
さらにマルカートなので一音一音をはっきり弾くようにしてくださいね。
グランドピアノの場合は、ソステヌートペダルが使える場面でもあります。
次に出てくる第一テーマは左手が最初と大きく変化しています。(動画1:28~)
でも、かなり楽しいところ!
16分音符に五連符が出てきます。
しかもフォルテ三つ!
かなり盛り上げて弾くとかっこいいいです。
ただ、技術的にはかなり難しいところ。
練習時間は他より多く取るべきかもしれません!
秘密のおはなし?!
さて、このあと出てくるのは今まで出てきたテーマとは、うってかわっています。拍子も四分の二拍子になりました。(動画1:43~)
ここのイメージは、これから結婚する新郎新婦が二人だけで式前に静かに語り合うような感じです。
夢をみるようなイメージ。
グリーグがこの曲を作曲したのは晩年。
年をとって、自分と妻のニーナとの結婚を思い返して作曲していたのかもしれません。
ここはとにかく歌うように弾きましょう。
技術的には難しくはないですが、音楽的に表現するという意味では曲中で最も難しいといっても過言ではありません。
そして右と左とでメロディーが追いかけっこのようになっています。
新郎新婦の会話でしょうか。
そういった場面イメージもできると、より音が生きてくると思います!
幸せに満ち溢れた雰囲気が伝えられると最高ですね!!
最後に
この曲は三部形式なのでA-B-A(Coda)の作りになっています。さきほどの部分が中間部のBなので、あとは再びAに戻ります。
弾むようなリズミカルなAの部分と、優しくておだやかなBの部分が弾き分けられるとより素敵な演奏になると思います。
曲全体として楽しさを表している曲なので自分自身も楽しみながら演奏することを心掛けてくださいね。
タイトルからも、結婚式の余興などでも使われることが多いです!
実際、わたしも友人の結婚式の余興でこの曲を演奏したことがありましたが、大変喜ばれました!
やはり聴いていて楽しいですし、幸せな気持ちになれます。
グリーグが妻にむけて作ったといわれるくらいですから、とっても心のこもった優しい曲なのでしょうね!
少し技術的にも音楽的にも難しいところはありますが、とっても素敵な曲なので是非、持ち曲にしてくださいね。
「トロルドハウゲンの婚礼の日Op.65-6」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1897年にペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「抒情小曲集第8巻Op.65」の後半、第4曲、第5曲、第6曲が収録されており、第6曲Op.65-6は10ページからになります。
グリーグ「抒情小曲集」の記事一覧
- グリーグ「春に寄す」の気になるピアノ難易度、弾き方を伝授!(「抒情小曲集(叙情小曲集)」より) 2017年11月30日
- グリーグ「トロルドハウゲンの婚礼の日Op.65-6」難易度と弾き方~抒情小品集第8集より 2018年12月20日 ←閲覧中の記事