美しい旋律と心に訴えかけるような至極のハーモニー、悲愴第2楽章。
年齢問わず人気の高い曲です。
ピアノ学習者にとっては第1楽章、第3楽章と合わせていつか演奏してみたい憧れの曲であることも多いようです。
気になる難易度と、演奏の際に気を付けるべきコツを伝授したいと思います。
■ 目次
まずは「悲愴」について知ろう!
この曲はベートーベン(ベートーヴェン)の作曲したピアノ・ソナタのうち8番目にあたる初期のピアノソナタです。「悲愴」のタイトルで知られるこのソナタは、諸説ありますが、1797年から98年ごろに完成したとされています。
ベートーベンは1970年生まれですので、28歳~29歳頃の作品ということですね。
作曲家としても演奏家としても世間に認知され、そして聴覚障害の兆候が現れ始めた頃です。
耳が聴こえなくなるという絶望により、1802年には「ハイリゲンシュタットの遺書」が記されます。
その遺書が書かれる3年前・・・
耳が聴こえなくなっていく恐怖と絶望の中で、この「悲愴」にベートーベンが何かしらの思いを託して生まれた作品かもしれません。
1楽章に見られる激しい気持ちの高ぶり、3楽章の切々と哀しみを吐露するようなメロディー、その狭間にあって儚くも美しく、なんとも愛情深いメロディーを持つ2楽章。
人を惹き付けないわけがありませんね!
難易度は?
全音ピアノピースではDの中級上となっていますが、譜面上はCの中級あたりだと思います。教本で言えばツェルニー30番後半くらいでしょう。
「悲愴」を楽章別の難易度で考えてみると、簡単なものから第3楽章→第2楽章→第1楽章となるでしょうから、2楽章を弾く前に3楽章に挑戦しておくのも良いかもしれませんね。
ただ、この難易度というのはあくまでも一般的なテクニカル面での話です。
指が動けば中級!
ではもちろんなく、歌心であったり、音色の多彩さであったり、本来は演奏における表現力も加味されなければなりません。
そういった面では、「悲愴」の中で一番難しいのは2楽章と言えるかもしれませんね。
認知度の高い曲だけに、この曲で観客をうならせようと思ったら相当な表現力の高さが必要です。
でもやっぱりこんないい曲弾かないでピアノ道は進めない!!
素敵に演奏できるよう、早速演奏する際のコツについて説明していきましょう!!
演奏のコツ① 左右のバランス
まず、この第2楽章はAdagio cantabileの緩叙楽章です。Adagioはゆるやか、cantabileは歌うように。
そう。ピアノで歌うように演奏しなければなりません。
弦楽四重奏のような4声の形になっているので、常にバイオリンやチェロなどの弦楽器をイメージしましょう。
そして、それぞれのパートが喧嘩してしまわないように、主役を決めます。
この曲ではほぼ終始ソプラノが主役になっています。
ということは、大切なのは右手のメロディー部ですね。
2楽章は冒頭のテーマが何度も現れるロンド形式になっていますので、テーマが命!!
左手や右手の伴奏部が主役の邪魔をしてしまわないように、細心の注意を払いましょう!
バランスの取り方、それは耳に全神経を集中させること!!
もちろんメロディーを奏でる指は打鍵を深く、伴奏部は音量を絞って演奏するわけですが、弾いている本人がメロディーをよく聴かない(もしくは聴こえない)ようでは、聴いて下さる人にメロディーが聴こえるわけがありません。
くっきりと立体的にメロディが浮かび上がるよう、左右のバランスによーく気を付けましょう。
演奏のコツ② 指と手首を柔らかく
これはこの曲に限ったことではありませんが、ガッチガチの指や手首ではピアノで心地よい音を奏でたり、響きの良い音色なんて出せません。肩、腕から手首にかけては十分に柔らかくしなやかに使いましょう。
あたたかい音色を出したければ、指はすこーし寝かせ気味に。
フレーズの終わりには手のひらも脱力させるイメージで、出来るだけ硬さを排除さましょう。
演奏のコツ③ 3連符はスマートに
さて、途中から伴奏に出てくる3連符。これに悪戦苦闘する人が多いのではないでしょうか?
この3連符の攻略にこの曲の仕上がりが左右されると言っても過言ではないかもしれません。
間違っても3連符の3つの音を全部同じ大きさで弾いてはいけません!(ここ重要!)
同じ大きさならまだマシ。
3連符の3番目に親指がくることが多々ありますが、親指の力が強いからって3番目が一番大きくなるなんて最悪パターンです!
3連符はあくまでスマートに。
心臓がトクトクトク・・・・と時を刻むように、静かに、自然に弾きましょう。
ほんの少し「大・中・小」というイメージで弾くと上手くいくと思います。
演奏のコツ④ ペダルは臨機応変に
せっかく左右のバランスも良く、手首も柔らかく、3連符も美しくスマートに弾けても、ペダルで台無しにしてしまう人がけっこう多いのです!「ペダル踏んで~」と言ったら思いっきりぎゅぅぅぅぅぅ!!っと踏む方がいらっしゃいますが、いやいやいやいや、そんな踏んだら銭湯で大声で歌った時みたいにぐわんぐわんになりますから!!
ペダルとひと言に言っても、半分だけ踏むハーフペダル、4分の1だけ踏むクウォーターペダルなど様々です。もちろん一番下までがっつり踏む場合もあります。
基本的に小さな音の時はハーフペダルくらいに思っておいた方がいいでしょう。
逆に一番下まで踏むのはff(フォルティシモ)など大きく高らかに歌い上げたい時など。
「悲愴」で言えば、1楽章や3楽章のf以上の時には目一杯踏みます。
この2楽章ではうすーくうすーく、指で繋ぎきれない音を補うくらいのつもりでペダルを入れていくと上手く響きが出来上がります。
スイッチのオンとオフしかないような、幼稚なペダルは卒業しましょう!!
まとめ
1 左右のバランス2 手首と指を柔らかく
3 3連符の攻略
4 ペダリング
以上に気を付ければ、きっと素敵な悲愴の2楽章になることでしょう。
ちなみに、「悲愴」に合わせて、第14番「月光」、第23番「熱情」の3曲をベートーベンの三大ピアノソナタと言います。
「悲愴」弾きこなせるようになったら次は「月光」にもチャレンジしてみても良いかもしれませんね!
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