ショパンの曲を好きな人って多いですよね!! 嫌いな人ってあんまりいないんじゃないですかね??
ショパン以外の他の多くの作曲家はいろんな楽器の曲を作曲していますが、ショパンはピアノの曲ばかりをたくさん作った作曲家で、「ピアノの詩人」と呼ばれています。
彼の作品は、他の作曲家よりもメロディーが声楽的になっているのが特徴の1つです。この声楽的なメロディーが人の心を掴むんでしょうね!
ノクターンはショパンの曲の中でもメロディーが素敵なものが多く、CMや映画などで使用されたりと、有名な曲が多くあります。
今回は「ノクターン」とはどのようなものなのかにふれながら、難易度順をご紹介します。
■ 目次
「ノクターン」はタイトルではない!?どういう意味があるの?
ノクターンは個別の曲のタイトルではなく、曲の性格を表す言葉です。
ノクターンの語源はラテン語の「ノクス」から来ているそうです。「ノクス」は日本語で「夜」という意味になるため「夜想曲」と訳されています。(誰が「夜想曲」と訳したかはよくわかっていません。)
ノクターンは比較的落ち着いた曲調のものが多いので、この「夜想曲」という呼び方は曲のイメージを上手く表せていると思います。
ショパンよりも前の時代である古典派の主要な作品といえば、ソナタでした。
古典派の作曲家であるハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンはソナタをたくさん作曲しました。
しかし、ショパンが活躍したロマン派の時代になるとソナタは主要な作品ではなくなります。代わりに性格的小品と呼ばれる作品が主流になりました。
性格的小品は、自由な発想で作曲された短い楽曲のことです。
この性格的小品と呼ばれるものはたくさんあり、「ノクターン」、「ポロネーズ」、「マズルカ」、「ワルツ」、「スケルツォ」、「バラード」などがあります。性格的小品とは、それらを総称したものです。
これらの曲はそれぞれ特徴的な性格をもっています。
たとえば、「ポロネーズ」はポーランド特有のリズムを使った3拍子の曲で、「ワルツ」は同じく3拍子ですが舞踏会で踊るための曲、もしくはそれをイメージして作曲された曲のことです。
なぜ、ロマン派で性格的小品が主流になったのかというと、これには時代の流れが関係します。
フランス革命後、社会の仕組みは変わり、人々の考え方も大きく変わりました。芸術家たちも同じで、それまでとは考え方が変わっていきました。
それまでは「形式」に重きを置いて作曲していたのですが、ロマン派では「個性」に重きを置きました。つまり、個人的な感情を作品に反映し、作曲家自身の特徴を作品に色濃く出そうとしていったのです。
ソナタはソナタ形式という決まったルールの中で作曲しないといけないため、個性を出すにはあまり適していないものだったということなのです。
ロマン派の作品を弾くときに、もっと歌って!!と注意を受けたりしたことがありませんか?
この時期の作曲家は作品に感情をたくさん入れているので、演奏する私達は楽譜からその思いを読み取り、感情移入して弾かないといけないのです。
ここがロマン派の作品の素敵なところでもあり、難しいところでもあります。
「ノクターン」を作曲したのは、ショパンだけじゃない!!
ノクターンを初めて作曲したのは実は、ショパンではありません。ノクターンの創始者は、アイルランド出身のジョン・フィールドと言われています。(ノクターン自体は中世の頃からありましたが、ピアノ曲に適用したのはフィールドが初めてです。)
フィールドが作り出したノクターン
左手:分散和音の伴奏形
右手:美しいメロディー
ショパンはこのフィールドのノクターンに影響を受け、それを基にして作曲しました。彼はただ真似るのではなく、フィールドのノクターンをより洗練させていきました。
ノクターンはショパンだけでなく、他の作曲家も書いています。(ツェルニー、リスト、クララ・シューマン、ドビュッシー、フォーレなど)
クラシックに詳しい人は、そのような知識があったとしても「ノクターン」と言われれば、「ショパン」のことをイメージするでしょう。
それほど、ショパンのノクターンが他の作曲家の作品よりも、曲として優れていて、有名であるということです。
ショパンは「ノクターン」をとても重要な作品と思っていた!?
ショパンはノクターンを21曲、作曲しました。
19番~21番は遺作です。
20番はノクターンとは書かれておらず、Lento con gran espressione となっています。
この曲はショパンのお姉さんに贈られた曲でした。後にお姉さんが「ノクターン風レント」と記したことによって、ノクターンに分類されるようになりました。
21番は長い間、所在がわからなくなっていましたが、ロスチャイルド家が所蔵していたことがわかり、1938年に出版されました。
遺作を除く18曲は、いっぺんに出版された訳ではなく、3つ、または2つずつをセットにして出版されました。
ノクターンは、ある一定の期間だけで作曲されたのではなく、若い頃から晩年まで作曲され続けました。(ショパンがノクターンを初めて作曲したのは、10代半ばでした。)
ノクターン以外にもワルツ(全19曲)、ポロネーズ(全16曲)、マズルカ(若い頃の作品なども合わせると58曲ほど)も同じく多作で、生涯に渡って作曲しました。
これらの作品をずっと作曲し続けたということは、ショパンの中で重要なものだったということなのでしょうね。
ショパンの「ノクターン」全21曲の難易度をお教えします!!
難しさというのは人それぞれですので、多少違いがあるかもしれませんが、参考にされて下さい。★ 6番 ト短調 Op.15-3
★★ 2番 変ホ長調 Op.9-2
21番 ハ短調(遺作)
★★★ 9番 ロ長調 Op.32-1
11番 ト短調 Op.37-1
15番 ヘ短調 Op.55-1
19番 ホ短調 Op.72-1(遺作)
20番 嬰ハ短調(遺作)
★★★★ 1番 変ロ短調 Op.9-1
10番 変イ長調 Op.32-2
★★★★★ 14番 嬰ヘ短調 Op.48-2
17番 ロ長調 Op.62-1
18番 ホ長調 Op.62-2
★★★★★★ 3番 ロ長調 Op.9-3
5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
7番 嬰ハ短調 Op.27-1
16番 変ホ長調 Op.55-2
★★★★★★★ 4番 ヘ長調 Op.15-1
8番 変ニ長調 Op.27-2
12番 ト長調 Op.37-2
★★★★★★★★ 13番 ハ短調 Op.48-1
※難しさを★の数で表しています。数字はノクターンの番号です。
私が最も初心者向きだと思っているのは6番です。
6番は左手の動きが少なく、右手のメロディーは地味です。ショパンらしさがそれほど感じられません。難易度は低く弾きやすいですが、弾いていてあまり面白くないかもしれません。
この曲はショパンが「ハムレット」を観た次の日に作曲したと言われていて、出版される前に削除されましたが、「墓地にて」というタイトルが付いていたそうです。そのことを知るとこの曲の憂鬱な曲調に納得がいきます。
逆に、私が最も難しいと思っているのは、13番です。13番は有名な曲ですよね。この曲に関しては、後で説明したいと思います。
私はこのパデレフスキー版を持っています。(19曲しか入っていません。)ヘンレ版や全音版には遺作も入っています。
有名な曲にしぼって、難易度を解説!ノクターンの弾き方のコツとは?
有名な曲のみの難易度!!
2番(変ホ長調 Op.9-2):★★映画「愛情物語」で使用されていたようですね。
この曲はショパンのノクターンの中で最も有名な曲ですが、難易度は低く、弾きやすい曲です。
ノクターンの中で有名な曲を挑戦されるのでしたら、まず2番から弾かれると良いと思います。
左手の伴奏形を見て頂くとわかると思うのですか、1つ→2つ→3つと弾く音数が増えていきます。左手が3和音になったときに音が大きくなると幼稚な演奏になります。音が大きくならないように気を付けましょう。
13番(ハ短調 Op.48-1):★★★★★★★★
ショパンのノクターンの中で最も雄大な曲です。
難易度はノクターンの中で1番高く、難所は3か所です。
① ハ長調になった部分のアルペジオ
② 中間部のオクターブの連続
③ Doppio movimento(主部が戻って来る部分)の和音を弾きながらメロディーを弾く部分
20番(嬰ハ短調(遺作)):★★★
映画「戦場のピアニスト」で使用されていました。私にとってこの映画は突っ込みどころ(ずっと弾くことが出来なかったハズなのにあんなにバリバリ弾けるわけがないなど…)が満載だったので、印象にすごく残っています。
映画の話は、置いといて…
この曲は「ピアノ協奏曲第2番」で用いられたメロディーやモティーフが使われています。実はこの曲はお姉さんが「ピアノ協奏曲第2番」を弾けるようにするための練習の曲として作られました。
難易度としては、それほど高くはありませんが、後半に出てくる連符を上手く弾くのが難しいと思います。
そこまで有名ではないかもしれないけど、私が個人的に好きな曲!!
1番(変ロ短調 Op.9-1):★★★★最初のメロディーが印象的で、ショパンらしい声楽的なメロディーの曲だと思います。
左手の分散和音を弾くのが少し難しいかなと思います。手首を柔軟にし、手首を利用して弾きましょう。右手は連符が流れるように弾けるように、右手だけでよく練習しましょう。
3番(ロ長調 Op.9-3):★★★★★★
メロディーがとにかく動きます。掴みどころがないのがこの曲の素敵なところです。
Agitatoの部分はそれまでのフワフワ感が全くなくなり、リズムを刻んで攻撃的な雰囲気になります。
この対比があることで曲がしまります。
12番(ト長調 Op.37-2):★★★★★★★
この曲はジョルジュ・サンドとマヨルカ島へ行ったときのことを想って作曲されたと言われています。
右手に重音がたくさん出てくるので弾きにくい曲ではありますが、この重音がとても素敵です。
音がどんどん変化していくので、その変化を楽しみ、弾きわけられるかが、この曲を上手に弾きこなすためのポイントだと思います。
この3曲もとても素敵な曲ですので、是非挑戦してみて下さい!
ノクターンを弾く上での注意点
ノクターンを弾く上で、共通して言えることは左手をおろそかにしてはいけないということです。ショパンより前の作曲家の曲を弾く時、左手は弾きにくさをそれほど感じないのではないでしょうか?それは、左手の伴奏の形がほとんど決まっており、指を動かすだけである程度弾けるからです。
しかし、ショパンは違います。左手の伴奏の部分に音階や分散和音などの音型を用いて和声を装飾しており、それまでよりも伴奏を自由な形に変化させました。
その伴奏形の変化は、弾き方も変化させました。それまでの弾き方とは違い、手首や腕を使って弾かなければいけなくなりました。
左手は伴奏なのですが、ただの伴奏ではなく、右手の旋律をより引き立たせるという役割もあるのです。
そのようなところが、弾きにくいと感じるところなのではないかと思います。
いくら右手が素敵に弾けていても、左手をおろそかにすると残念な演奏になってしまいます。右手のメロディーにばかり注目せず、左手にも目を向けてみて下さいね!
まとめ
◆ノクターンとは、曲の性格を表す言葉◆ノクターンの創始者は、ジョン・フィールド
◆ノクターンの仕組みは左手:分散和音の伴奏形、右手:美しいメロディー
◆ノクターンは全部で21曲(19番~21番は遺作)
◆最も簡単なのは6番、最も難しいのは13番
◆音階や分散和音などの音型を用いて和声を装飾しそれまでよりも伴奏を自由な形に変化させた
◆左手をおろそかにしてはいけない
「ノクターン」の無料楽譜
- IMSLP
第1~3番Op.9(楽譜リンク)第4~6番Op.15(楽譜リンク)第7~8番Op.27(楽譜リンク)第9~10番Op.32(楽譜リンク)第11~12番Op.37(楽譜リンク)第13~14番Op.48(楽譜リンク)第15~16番Op.55(楽譜リンク)第17~18番Op.62(楽譜リンク)第19番Op.72-1(楽譜リンク)
以上はいずれも1878年から1880年にかけてブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。
第20番(楽譜リンク)1945年にモーリス・スナール社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。
第21番(楽譜リンク)1955年にポーランド音楽出版から出版されたパブリックドメインの楽譜です。
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