ギロックと聞くと発表会で小さい子が弾いているイメージがありますが、そんなことはありません!今回は大人でも弾けるとかっこいい「ジャズスタイル・ピアノ曲集」の中にある「ダウンタウン・ビート」をご紹介します。

■ 目次

「ダウンタウン・ビート」ってどんな曲?難易度は?

まずはこちらをお聞きください。
(8:00から再生されます)

実は執筆者本人が弾いております。曲の雰囲気だけでも感じていただけたら幸いです。

見開き2ページで1分もかからない短い曲です。難易度としてはピアノの教本でいうとツェルニー30番前半ぐらいの技術は必要かもしれません。(ブルグミュラー25番ではジャズの独特のリズムや音階で少々苦労してしまう部分があると思います。)

オクターブが届かなくても7度(ド~シ)が届けば弾ける曲ですので、手の大きさに悩んでいる方にもオススメです。楽譜はこちらからお買い求めください。



「ダウンタウン・ビート」を弾く前に

この曲は「ド・ミ♭・ファ・♯ファ・ソ・シ♭・ド」のブルース・ノート・スケールというジャズ特有の音階(スケール)で出来ています。

ブルース・ノート・スケールについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。スケールの音源も聞くことができます。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB

ハ短調とは違うということが理解いただけたら大丈夫です。このスケールだけでもジャズっぽく感じます。

いざ練習!弾くときに気を付けるポイント

①メロディーと伴奏に音量の差をつける

どの曲でも気をつけるポイントです。一度に押さえる伴奏の音数が多いため音量の差をつけないと「ザ・初心者」な演奏に聴こえてしまいます。コツとしてはメロディーに当たる指の先を固くするようなイメージで弾くとメロディーが目立ちやすくなります。

②一つ一つの音を丁寧に弾きすぎない

クラシックを勉強していると「丁寧に弾くこと」をよく先生に言われます。私もしょっちゅう「雑だね。」と怒られていました。この曲はジャズなので丁寧に弾くというよりは楽しく弾くことを優先するべきだと思います。丁寧に弾きすぎてしまうといかにもクラシックというか「お堅い演奏」になってしまいます。

ただし、ミスタッチを減らすための丁寧な練習は必要なので、楽しく弾きすぎないように気をつけましょう。

③リズムに乗って弾くことが大事

ジャズではあるあるなのですが、楽譜の最初にこのような表記があります。

ギロック「ジャズスタイル・ピアノ曲集」ダウンタウン・ビート ピアノリズム楽譜1
これは8分音符で記譜されていてもクラシックの8分音符のリズムで弾くのではありません。
例えば

ギロック「ジャズスタイル・ピアノ曲集」ダウンタウン・ビート ピアノリズム楽譜2
このように記譜されていたら

演奏するときは以下のリズムで弾くということです。

ギロック「ジャズスタイル・ピアノ曲集」ダウンタウン・ビート ピアノリズム楽譜3
口ずさんでみたり弾いてみたりすると分かると思いますが、ジャズのリズムになります。このリズムを感じながら弾けると「ダウンタウン・ビート」がより楽しく弾くことができます。これを機に他のジャズの曲をいろいろ聴いてみてもいいでしょう。

リズムについて細かいところをつつくと…

左手の特徴的なリズムですが、全て同じではありません。
例えば演奏動画のここ
(8:06から再生されます)

ここ
(8:12から再生されます)

聴いただけでは分かりにくいかもしれませんが、1つ目の動画は音を伸ばして、2つ目の動画は音を短く切って演奏しています。

ギロック「ジャズスタイル・ピアノ曲集」ダウンタウン・ビート ピアノリズム楽譜4
伸ばしている時の音符はタイでつながっていて、短く切っている時の音符は16分音符と短い音符で記譜されています。音を鳴らすタイミングは同じなのですが、音の長さが違うので気を付けてください。

さらに細かいところをつつくと、アクセント(音符の上下どちらかについている>)がついている音とスタッカート(音符の上下どちらかについている・)がついている音があります。

ギロック「ジャズスタイル・ピアノ曲集」ダウンタウン・ビート ピアノリズム楽譜5
アクセントはその音を強調させるように強めに弾いて、スタッカートはその音を短く切るように弾きます。これらを弾き分けられると「お!よく楽譜を見ているな!」と先生に感心されること間違いないでしょう!

まとめ

①メロディーと伴奏に音量の差をつける
②一つ一つの音を丁寧に弾きすぎない
③リズムに乗って弾くことが大事

さらに楽譜の記号をよく見て弾き分けられるとなお良し!


「ダウンタウン・ビート」だけでなく、「ジャズスタイル・ピアノ曲集」の中には他にもかっこいい曲があります。ほとんどが見開き2ページになりますので、気軽に取り組みやすいですよ。

演奏会であともう1曲弾きたいあなた♪大人になってからピアノを始めた方々♪この曲を練習して周りの人をノリノリにしちゃいましょう!

編集者による補足解説

曲の情報

  • 曲名:ダウンタウン・ビート(英語:Downtown Beat)
  • 作曲者:ウィリアム・ギロック(William L. Gillock/アメリカ人)
    1917年7月1日-1993年9月7日(76歳没)
    音楽教育家・ピアノ曲の作曲家
    ※美しいメロディーの教育用の曲を数多く作曲したことから「教育音楽作曲界のシューベルト(英語:the Schubert of children’s composers)」とも呼ばれています。ギロックがどのような人物だったかについてはこちらの記事もご覧ください。
    https://shirokuroneko.com/archives/5185.html#i

  • 曲の種類:ピアノ独奏曲/ジャズ
  • 拍子:4分の4拍子
  • 発表年:1977年(作曲者は60歳)
  • 演奏時間:約1分
  • アメリカの出版社、ウィリス音楽社(英語:Willis Music Company)が1977年に出版した5曲からなる曲集「続々・ニューオリンズ・ジャズ・スタイル(英語:Still More New Orleans Jazz Styles)」の第3曲
    同社からこれ以前に出版された2つの曲集とあわせて、全音楽譜出版社(英語:Zen-On Music Company Limited)が日本語に訳して販売している曲集が、15曲からなる「ジャズスタイル・ピアノ曲集」です。




 ピアノ曲の記事一覧