op.10、op.25、「3つの新練習曲」合わせて27曲あるショパンのエチュードですが、テクニックよりも音楽的な充実に主眼を置いて書かれたのがop.25の12曲です。

ですが、op.25-6「三度のエチュード」や、op.25-11「木枯らしのエチュード」は全27曲中最高の難易度を誇り、コンクールでも技巧に自信のある人だけが選ぶ難曲です。

技術的には比較的易しいとされるop.25-1「エオリアンハープ」やop.25-2であっても、ショパンの理想に適った奏法を用いるには高度な技巧と感覚が要求されます。

『第1番op.25-1』 最もエレガントなアルペジオの練習曲「エオリアンハープ」



まさにハープを奏でているイメージで、羽のように軽快なタッチと繊細さが要求されます。まずは自由な指使いでメロディーだけを紡いでいく練習、それから5の指だけでメロディーを持続させる練習を徹底しましょう。


動きは終始一貫しているため一見簡単なのですが、音域がかなり広がる部分もあり、そこでは音が硬くなったりテンポが揺らいだりして、エレガントな雰囲気を崩してしまい易いのです。

特に、手を大きく広げる部分を完璧に弾くには、手の柔軟性や強度を成長させる必要があるかもしれません。とてもゆっくりの練習をして、指や手首がより柔軟になるように根気強く頑張りましょう!

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『第2番op.25-2』 繊細なピアニッシモとレガートの練習曲



高速パッセージの中で、ピアニッシモとレガートを要求される練習曲です。地味な部類の曲ではありますが、軽やかな走句の多いショパン作品を演奏していく上で欠かせない技術です。


テンポはPrestoなので、可能な限り速く軽やかに繊細に弾くことが求められていると考えて良いと思います。ですが、練習は徹底的に遅いテンポで行うべきです。

レガートは、音と音をなめらかに紡いでいくわけですが、いい加減に何かの音が伸びていていいわけではありません。次の音に移動した瞬間に、前の音は消えているように弾かなければなりません。いわゆるフィンガー・ペダルを使用する場合以外は耳を研ぎ澄まして分離よく弾く習慣をつけましょう。(遅いテンポでの練習時に身につけるべきです)

左手は、エオリアンハープで会得した柔軟性があればとても弾きやすい部類に入ります。左手だけでも表情豊かに、音楽の推進力を保てるように練習すると曲がまとまりやすいとおもいます。イメージとして、一瞬で吹き抜ける風のように一息で弾ききりたい作品です。

『第3番op.25-3』 手の分離と高速トリルの練習曲



軽快な技巧とスケルツァンドなキャラクターを描く練習曲だと思います。まず右手が2つの声部で書かれていることに注目すべきです。


赤丸で示したように、8分音符の連続は右と左で逆方向に動いています。まずはこの動きだけを取り出して、曲の大まかな流れを把握しましょう。この練習はあまりにテンポが遅いと効果がなくなってしまうように思います。

16分音符の方についても、もちろんそれだけを取り出して練習します。曲のイメージ的には装飾音のように弾きたくなりますが、正確な音価で書かれているので従いましょう。逆に言えば、正確なリズムで弾いて装飾音に聞こえるような音量バランスとテンポ感が正解といえます。

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この部分だけトリルになっていますが、とても単純な変奏だと思います。むしろトリルが増えたことで軽快さは演出しやすくなっていると思います。音が増えたことでテンポが変化してしまわないように注意しましょう。

『第4番op.25-4』 跳躍の練習曲



これは得手不得手の分かれる跳躍の練習です。実にショパンらしい跳躍の練習曲と言えます。


跳躍の練習とは言え、F.リストの難曲で登場するヴィルトゥオーゾ・スタイルの跳躍を攻略するためのものではありません。むしろ、ショパン作品でよく見られる「右手の速いパッセージと跳躍する左手のバス」のようなケースに対応するものだと思います。

上記のような箇所は、超一流ピアニストたちが演奏するとあまり難しそうに聴こえないため盲点なのですが、学生の試験やコンサート、コンクールではミスが非常に多くなるポイントなのです。

技巧的な意味では左手を最短距離で最適ポジションに移動できるように手に覚えこませることが重要です。もう一つ重要なのは、右手だけの練習をして、片手で裏拍感を出せるように訓練することです。テンポのキープとタイミングがかなり難しいと思います。メトロノームの力を借りましょう。

『第5番op.25-5』 響きのための練習曲



とても美しい練習曲です。この曲はスケルツァンドのキャラクターですが、かなり上品だと思います。


ハープのアルペジオを思わせる左手に、op.25-3とよく似た書法の右手です。これまでに学習した内容が応用された形で扱われており、1種類の技巧に特化していないため難しさはやや軽減されています。

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このように全く別の部分が登場する珍しい例です。左手で旋律を奏でながら右手は装飾的な役割を果たします。左手の音楽が自由になるように、とにかく右手は繊細で、空気に溶けて存在感がないように弾かねばなりません。右手の音を全て正確に鳴らすことが求められているのではありません。

『第6番op.25-6』 最高難度の「三度の練習曲」



仮にショパンの練習曲を全曲制覇しない場合でも必ずマスターしなければならないのはこの曲です。多くのピアニストの天敵である「三度」のための練習です。


この曲をすぐに弾くための特効薬はありません。手と指の柔軟性、機敏な動きが求められます。フォルテになる部分は基本的に弾きやすいので、ピアニッシモで速く軽快に動けるよう心がけましょう。

練習はとにかくゆっくり、極めて正確に弾くことが必須です。全ての動きを自分でコントロールし、わずかなテンポのブレも許さないよう神経を集中して練習しましょう。

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最初の関門はこの半音階でしょう。まずここで挫折するケースが多いです。このような三度半音階はショパン、リスト以降の作曲家は難しい曲の中で頻繁に使っているので、攻略しておかないと後々いつまで経っても弾けない箇所に悩まされることになります!

上の音と下の音を分けて練習するなど、アイデアは色々考えられますが、三度の性質上、三度のまましつこく練習する方が早く身につきます。肘、手首の位置や角度の最適ポジションを、それぞれの音ごとに細かく把握して練習しましょう。

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一番難しいのは間違いなくこの音階の形でしょう。指の都合上、完璧なレガートが不可能に近いからです。「レガートのように聴こえる」ように弾く必要があります。つまり、音が完全に揃っている必要があるのです。テンポが速い曲なので、音さえ揃っていればある程度レガートに聞こえるのです。むしろ、中途半端に指で粘りすぎると不揃いになってしまいます!

『第7番op.25-7』 チェロのように!楽器を歌わせる練習曲



チェロで弾くような長い呼吸と抑揚を学べる作品です。実際にチェロ用の編曲も有名ですね。


メロディーを持続させる練習はもちろんですが、右手の伴奏も難しいポイントです。この曲は非常に遅く、また長い音符が頻出しています。このような場合、音が伸びている間の8分音符の連打で曲に推進力をもたせます。

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このように音が増えている箇所では、旋律とその推進力を優先して、左手の細かい音符の都合に振り回されないよう練習しましょう。左手はうるさく弾くわけではありませんが、全ての音をコントロールして、小さな音でくっきりはっきり弾く努力をしましょう。

『第8番op.25-8』 6度重音のための練習曲



この曲も得手不得手が分かれやすい曲です。常に6度の重音で弾くため、手の大きさと柔軟性が要求されます。


難曲ですが、さすがにピアノの演奏技法を知り尽くしていたショパンが作っただけあって、決して弾きにくい6度ではありません。黒鍵と白鍵の配置が見事で、ほぼ全てレガートで演奏できます。より適切なポジションを覚えることが攻略の近道です!

手のポジションと柔軟性の他にもう一つ別の要素を挙げるとすれば、黒鍵から白鍵へと指を滑らせてレガートを構築する技法でしょうか。ショパンの場合、しなやかに指を滑らせてレガートを作る場合が多いのです。

『第9番op.25-9』 軽快さの「蝶々」練習曲



有名な「蝶々」です。チャーミングな軽快さを演出する練習ですね。技巧的な面では比較的易しい作品です。ただ、ある程度速いテンポで弾くにはやはりそれなりのテクニックが必要であり、一方で遅いテンポでキャラクターを描くのもとても難しいという、曲者な作品かもしれません。


技術的には、左手の困難はop.25-4での練習が活きてくると思います。跳躍の技術としてはop.25-4より随分易しいです。なぜなら、右手はよほどでなければ重くならない、つまりこの曲では速さで軽快さを出すことが要求されているわけではないからです。なので、メカニックを追求する練習よりも、遅いテンポで軽快なキャラクターを描く練習をしましょう。良い音楽の流れを作ると、不思議なほど技術的困難が軽減されるのです。

『第10番op.25-10』 オクターヴの練習曲



難しい部類の練習曲ですが、あまりショパンらしくない曲想とやや規模が大きいのが原因なのか、それほど演奏頻度の高くない作品です。


ペダルを使わずに指だけで完全なレガートを会得することが求められます。手を開いた状態での柔軟性というのはなかなか苦しいものです。手が大きい人であれば力尽くで弾くことも可能な作品ですが、手が小さくてそれほど柔軟でない人は、ゆっくり練習してこの曲のポイントを体得だけして、コンサートでの演奏は避けた方が無難です。

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穏やかなLentoの中間部は、個人的に最も好きなショパンのメロディーです。レガートとポジションの確認がしやすいため、それらの技術を体得しやすいかもしれません。一見易しい部分ですが、ポジションが少しでも悪いとすぐにぎこちなくなる箇所なので、Lentoよりさらに遅く練習しましょう。

『第11番op.25-11』 右手高速パッセージ「木枯らしのエチュード」



最難関の一つと言われる「木枯らしのエチュード」です。難しいポイントは、単純に速い16分音符です。しかし、充分な技巧を持つ人からすると、同じパターンの連続で書かれているせいでそれほど難しくないのです。(音が多く、やや長い曲のため集中力は必要ですが。)


この曲を弾くコツは間違いなくポジションのコントロールです。現時点でこの曲を高いハードルと感じられる場合は、全ての音を全力のマルカートで練習してください。これで指が分離しなかったり、指が動いてくれない問題は大きく軽減されます。そのあとにポジションの練習をすれば弾けます。

もう一つ、どの曲にも言えることではありますが、息が長く音の多いパッセージを弾く場合は停滞してしまいやすいのです。常に大きな拍感を感じることを忘れないようにしましょう。

『第12番op.25-12』 両手のアルペジオ練習曲「大洋のエチュード」



両手のアルペジオの練習です。楽譜を一見するとまるでハノンのようにシンプルな技巧の連続だけで書かれているのに、ショパンの手にかかると見事な音楽に仕上がっています。


ポジションの移動はとても簡単だと思います。動きが大きく、不適切なポジションでは弾きにくすぎるので、自然に調整ができてくると思います。基礎技巧の連続なので、音を完璧に並べる練習はきっちりやりましょう。

音楽的に重要なポイントは、ハーモニーの移り変わりをよく聴いていくことです。一度は全ての音を和音にしてハーモニーの流れをチェックしてやると良いかもしれません。

弾き方のまとめと難易度順

op.25の12曲を見渡しての技巧的な問題は、柔軟性と最適ポジションへの移動で攻略できることがお分かりいただけたかと思います。メロディーの推進力、伴奏の弾き方、ハーモニーの聴き方のコツが凝縮された作品集だと言えます。ぜひ全曲制覇を目指してください!


最後に、「エチュードop.25」全曲の難易度順をop.10の難易度順とあわせて5段階で提案させていただきます。

☆      op.10-9 ヘ短調
       op.25-1 変イ長調「エオリアンハープ」
       op.25-2 ヘ短調

☆☆     op.10-6 変ホ短調
       op.25-7 嬰ハ短調

☆☆☆    op.10-3 ホ長調「別れの曲」
       op.10-8 ヘ長調
       op.10-10 変イ長調
       op.10-11 変ホ長調
       op.10-12 ハ短調「革命のエチュード」
       op.25-3 ヘ長調
       op.25-5 ホ短調
       op.25-9 変ト長調「蝶々」
       op.25-12 ハ短調「大洋のエチュード」

☆☆☆☆   op.10-1 ハ長調
       op.10-4 嬰ハ短調
       op.10-5 変ト長調「黒鍵のエチュード」
       op.25-4 イ短調
       op.25-8 変ニ長調
       op.25-10 ロ短調

☆☆☆☆☆  op.10-2 イ短調
       op.10-7 ハ長調
       op.25-6 嬰ト短調「三度のエチュード」
       op.25-11 イ短調「木枯らしのエチュード」


ショパン「エチュード」全曲の弾き方と難易度順!の記事一覧
  1. 難易度最上級!ショパン『エチュードop.10』全曲の弾き方と難易度順! 2017年9月10日
  2. 難易度最上級!ショパン『エチュードop.25』全曲の弾き方と難易度順! 2017年10月8日 ←閲覧中の記事