ピアノを習っている人にとって、憧れの曲の一つによく挙がるのがリストの「ラ・カンパネラ」ですね!しかし、この曲はプロのピアニストにとってもなかなかの強敵です。
私は、音大も大学院もピアノ専攻で卒業し、リストの曲をかなりたくさん弾いてきましたが、未だにこの曲をステージで弾く際にはすごくプレッシャーを感じるものです。
かなり苦労して習得したこの曲の難しい箇所と攻略法をご紹介します!
冒頭の難敵「跳躍」
まずは最初の1ページで特に苦しめられるのが高音の跳躍!旗の付いている8分音符がメロディーで、高音部の#レが「ラ・カンパネラ」のタイトル通り「小さな鐘」を表現していますね。
ミスタッチしてしまう確率が高い難所ですが、高音の#レに気をつければ安定性は格段に向上します!コツは「小指を点で当てずに、面で斜めに当てろ!」です。

黒鍵に対して斜めに小指を当てていけば、ミスタッチをしたり鍵盤から滑り落ちるリスクを軽減できます!
もう一つ、跳躍を余裕で弾くには、できるだけ手を鍵盤から離さないのがポイントです。スーパーヴィルトゥオーゾの大ピアニストたちはまるで意に介さず悠々と弾いていますが、よく慣れるまでは低空飛行をオススメします。
崩れやすくなる拍節感
ここからは跳躍だけでなくオーナメント(装飾音)など、新しい要素が加わり難しくなっていきます。図1

拍の頭がオーナメントで、左が休符なので、夢中で練習していると拍節感がつい曖昧になってしまいがちな部分です。#レが4回続く箇所も、アクセントの位置がその小節の2拍目に当たるので、十分に意識しましょう。
また、跳躍の危険を少しでも減らす方法として、図1で示したように一部の音を左手で弾くのが有効です!これでかなり楽になりました。
鬼の連打テクニック
この一帯で挫折した方も多いのではないでしょうか。私も、最初の挑戦ではこの連打に敗北し、練習を諦めた経験があります。ここが難しいと感じた場合、根気よく練習することが必要です。図2

むやみに練習してもここは絶対に仕上がりません!まずは、丸で囲んだメロディーの音質を揃えましょう。3つの音で1セットなので、囲んだ音以外の2音はできるだけ小さな音で揃える練習をしましょう。これで体感難易度がずいぶん変わってきますよ!
直後にまた違った種類の連打が待ち構えています。
図3

図1で登場した箇所のパワーアップ・バージョンですね。この高速連打に関しては、力ずくで制覇できない場合は、わずかにテンポを落として演奏するしかありません。テクニック的には、手首をやや高めに保ち脱力することで速い連打が可能になります。
また、とてもマルカートな鋭いタッチで練習すると、脱力が苦手でも指が速度に追いつくようになります。私はここでうまく脱力できないため、指の運動能力を鍛えることで攻略しています。
持久力勝負のトレモロテクニック
いよいよゴールに近づいてきました。図4

ここでは全ての音をキッチリ鳴らすことが重要です!難しいようですが、結果的にそれが一番簡単なように思います。
冒頭の跳躍のように最短距離を低空飛行で移動するのとは違い、むしろ手首を柔らかくして、反時計回りの円を描くような手首の動きを用いると手が勝手にこの音型に馴染んできます。
コーダに入る直前の半音階も難しいポイントですよね。
図5

私は最初の#レを左で取ってしまうことで乗り切っています。ここは左手が空いている箇所なので、うまく補助する工夫をすることで難易度がグっと下がります。
ただの半音階なら指がもつれたりしませんが、悔しいことに、ここで失敗することがとても多いのです。
オクターヴ祭りのコーダ!
ここからが一番の盛り上がりを魅せ、また技術的に一番易しい部分のように感じます。基本的にオクターヴのみなので譜読みは簡単です!たくさんの音にメロディーが埋もれてしまわないように、右手小指に力を集中しましょう!手が大きい方なら、小指と薬指を使って弾くとより効果的です。まとめ
・ まずは跳躍。・ 次に連打。
・ 最後にオクターヴ。
・ 全曲を通じてとにかく音をよく揃えることで容易になっていきます。
攻略法と言っても、地味な練習のやり方のまとめになってしまいました。
しかし、一つ一つ丁寧に取り組むことで必ず弾けるようになる範囲の曲だと思います!これが弾ければ間違いなく人気者です!頑張りましょう!
最後に、ヴァレンティーナ・リシッツァの「ラ・カンパネラ」を再掲します。凄まじい速さとパワーで演奏していて、目指すべき目標と言えます。
「ラ・カンパネラ」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1913年にペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「パガニーニによる大練習曲」全6曲が収録されており、「ラ・カンパネラ」は22ページ目からになります。
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解説記事ありがとうございます。私は素人ですが、やはりステージの上で弾くにはかなりプレッシャーになる曲なんですね……。演奏される方の解説ということで大変興味深く読ませていただきました。
コメントありがとうございます!
運営者のshirokuroと申します。
おっしゃるように、
ものすごいプレッシャーがかかっているんでしょうね。
ピアノの英才教育を受けてきた人たちが、
膨大な練習量をかけ、様々な工夫を凝らして、
それでも不安がぬぐい切れない
最高難度の曲のひとつではないかと思います。
他にもいろいろな方が書いてくださっているので、
ぜひ楽しんで見ていってくださいね!