「超絶技巧練習曲集」S.139は、リストのヴィルトゥオーゾな側面を最大限感じられるタイトルと内容になっていると思います。そもそも超絶技巧とは一体何なのか?それは、技巧と音楽的内容が高い次元で結びつきあったもののことです。つまり、難易度だけが高い、技巧をひけらかすだけの曲とは異なるということですね。


ロマン派の時代には、純粋な音楽作品の「絶対音楽」と、内容と結びついたタイトルの与えられる「標題音楽」が区別されることが多くなりました。前者で有名なのはJ.ブラームスです。後者はF.リストで、この12曲からなる「超絶技巧練習曲集」のほとんどに標題がつけられています。

また、技術的な到達点が高いという意味で「練習曲」と名付けられているものの、立派な芸術作品といえる名作です。近年のピアノ奏法に関する書籍の著者たちは、ショパンとリストの練習曲を芸術的な価値が高いと認めています。すなわち、ハノンやツェルニーの指体操的な内容とは一線を画しているのです。

「超絶技巧練習曲集」全12曲を演奏するとなれば、全音のF(上級上)では全く足りないくらいの難易度になるでしょう!

まずは難易度順!

曲の順番と難易度は全く無関係ですが、曲のまとまりを考えると、全曲を順番通り演奏することには意味があると思います。事実、抜粋で演奏されることはあっても、順番を入れ替えて演奏するケースは聞いたことがありません。

簡単な順から、3-9-11-1-10-6-7-8-4-12-2-5になると思います。しかし、曲の長さも違う上、それぞれに異なる音楽的・技術的内容を含んでいるため、一概に言い切ることはできません。ただし、5番の「鬼火」だけは誰にとっても圧倒的に難しい作品です!

☆     第3番 「風景」ヘ長調

☆☆    第9番 「回想」変イ長調
      第11番 「夕べの調べ」変ニ長調
      第1番 「前奏曲」ハ長調

☆☆☆   第10番 ヘ短調
      第6番 「幻影」ト短調
      第7番 「エロイカ(英雄)」変ホ長調
      第8番 「狩り」ハ短調

☆☆☆☆  第4番 「マゼッパ」ニ短調
      第12番 「雪かき(雪あらし)」変ロ短調
      第2番 イ短調

☆☆☆☆⭐ 第5番 「鬼火」変ロ長調

第1番「前奏曲」



これはわずか2ページで、演奏時間も1分程度と非常に短い曲です。明らかに曲集全体の導入の役割を果たしていると言っていいでしょう。

技術的な要素としては、アルペジオ、オクターヴ、連続する重音といったところでしょうか。まるで一息で駆け抜けるように弾く必要があり、特に3-13小節目まで切れ目がないので、絶えず上昇する持続力が不可欠です。

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このように、細かい音符が非常に多い曲の場合は、できるだけ音価の大きい音を頼りに流れを作り出しましょう。長い音符でフレーズを作り、それらを阻害しないように(より引き立てるように)細かい音符を埋めていくのが良い方法だと言えます。

第2番 Molto vivace



この曲には標題がつけられていません。ややスケルツァンドな性格と、切迫感に溢れた曲想が特徴です。技術的には、スタッカート、オクターヴ、重音、指返しの多いパッセージ、和音の跳躍といった、非常に技巧的な要素が”超高速”の中に詰め込まれています。

このような高速が求められる作品の場合、音楽的な扱いは易しいと思います。基本的にはテンポを徹底的にキープして、音量の上げ下げにさえ注意すれば、それなりに形になります。譜読みの際に、休符の音価が完璧になるようよく注意しておきましょう。


冒頭の4つの同音連打がこの曲の重要な特徴です。最初の難関と言える右手重音の高速パッセージ部分の左に注目してみましょう。ここでも拍はズレていますが、原型のまま(MiがDoになって)出てきています。

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このleggieroの高速パッセージですが、親指のポジションを常に最適な場所へ移動させると問題なく演奏可能です。極めて速いパッセージではありますが、指返しではなくポジションの移動で弾くため、手や指に思ったほど負荷はかかりません。もし練習していて、あまりにも手が疲れるようであれば危険信号です。ポジションを直さない限りは手を傷める可能性があるので注意です。

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2オクターヴに渡る同音の高速パッセージは先ほどと同様にポジションが命です。このパッセージそのものよりも、パッセージに入る直前の音を弾き終えた際に完全に脱力していることが重要です。少しでも移動を阻害する要素があると、連鎖的にミスや弾きにくさを発生させてしまいます。

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言うまでもなくこのPrestissimoは難関です。三角印のスタッカーティッシモ以外の音は極めて軽く、指をできるだけ鍵盤から離さないようにして弾くこと。左手が表拍で、右手が裏拍であることがはっきり聴き取れる音量バランスとリズムを維持すること。右手はとにかく最適なポジションへ最速で移動すること。以上の点に留意して丁寧に練習するればなんとか攻略できると思います。

Prestissimo部分の難しさには、やや暗譜しにくい不協和な響きという問題もあると思います。これはもう慣れるしかありません。これに似たパターンはリストの技巧的な作品には頻出します。特に有名なものだと「ピアノ・ソナタ ロ短調」S.178で登場しますが、実演で暗譜がすっ飛ぶ場面には何度も遭遇しています。ぜひとも攻略しておきたい技術です。

第3番「風景」



とても穏やかな美しい曲ですね。リストといえばヴィルトゥオーゾな作品が多いイメージですが、むしろこのようにひたすら歌い上げるような作品の方が多い気がします。ただ、彼の歌心を存分に表現するために伴奏などが難しい点は否めません。


cantandoの主旋律が現れるまでの左手だけでも充分旋律的ですね。音を並べるのは難しくありませんが、アルペジオと三度の重音を全て柔らかい音で弾くのはかなり練習が必要です。手と腕全体がゆっくりと正確に動けるよう注意しましょう。

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一つの習慣のようなものですが、このように旋律的な作品の場合に、赤丸で示した装飾音ではわずかにテンポを緩めてたっぷりと弾きます。装飾音がフレーズを収めるためのブレーキの役割を果たしているのか、はたまたフレーズの頂点を示す役割をしているのか見極めることも大切です。

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rinforzando、poco a poco diminuendo e rallentando、smorzと非常に指示の多い部分です。リストは、テンポの速い曲ではそこまで指示を多く書きませんが、遅い曲では非常に指示が細かいのが特徴的です。リストの作品には自由が許されているという主張の下、あまり忠実に再現されていない演奏が多いのは嘆かわしいことです。

ここでは音が下がっていく過程で、テンポが緩み、また音量もしぼんでいく流れを明確に指示しています。二縦線のあとは、ピアニッシモでdolcissimoの甘い雰囲気を醸し出しながら、少し前向きな動きを伴って演奏しましょう。

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緩やかな曲でもフォルティッシモが登場するあたりがリストらしいといえます。しかし、ここでは強い音ではなく、大きな響きが求められているので、やたらと鍵盤を叩かずに腕の重さで弾くようにしましょう。

非常に動きの多い第2番と第4番の間にこの曲を挟むことで、この曲の美しさが際立っているように思います。全曲演奏か抜粋かでアプローチは異なるかと思いますが、性格の対比というのは重要な要素であると思います。

第4番「マゼッパ」



V.ユーゴーの叙事詩『マゼッパ』に着想を得て作曲されたといわれている、リストの作品の中で最も有名な人気作の一つで、とりわけ「のだめカンタービレinヨーロッパ」で取り上げられたことから人気に火がついたように思います。(ちょうどその頃からこの曲の演奏依頼が増えました。)

さて、技術的にはオクターヴと重音の2点に特化しているため、複合的なテクニックは求められていません。ただし、あまりにオクターヴと重音の使用量が多く、さらに一部の重音には2-4の指使いが指定されているため、非常に難しい作品だと言えます。


冒頭の4分休符は緊張感を生み出すためにとても大切です。この曲をすっかり弾きなれた一流奏者が、この休符をほとんど無視して弾いているケースが見受けられるのは大きな問題だと感じています。

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これが問題の指使い(2-4)が指定された箇所です。おそらく、硬い音質と劇的な演奏効果を求めて書かれているのですね。ポジションの移動はもちろんですが、指の強度も不可欠です。人によっては特別なフィンガー・トレーニングが必要かもしれません。これができない場合は、(2-4,1-3)の指使いで弾くことも可能です。

全体的に強い音が満ちているこの曲ですが、スタッカートなど特に印の書かれていない音にアクセントがつかないよう注意してください。どうしても力みやすい曲であることは間違いないので、日頃からよく耳をすまして練習しておきましょう。

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両手のオクターヴで半音階を弾く手法ですが、これはロマン派以降のヴィルトゥオーゾ・ピースに頻出するものです。初めてこの音型に出会うと面食らってしまいますが、非常に手に馴染みやすいテクニックですので、ゆっくり練習すればすぐに弾けるようになります。両手それぞれの親指の音だけ弾いて、半音階が滑らかに聴こえるように調整しましょう。

(動画:先の動画の続き)

比較的易しい部分で、左手で主旋律を演奏します。メロディーと同時に広範囲のアルペジオが伴うのはリストがよく使う手法です。また右手の装飾的な軽い伴奏音型も歌曲などでよく使われます。

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Allegro decisoからの部分がこの曲で一番難しい部分です。急速かつ正確無比なポジションの移動が要求されています。特にメロディーとバスの音は絶対にミスしないようにゆっくり練習しましょう!

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最後のVivaceは金管楽器による華々しいファンファーレです。決して力んで強いだけの音にならないよう注意しましょう。巨大な響きを生み出すために脱力して腕の重さを使うことがたいせつです。

難しい曲ではありますが、いくつかの厄介なポイントを攻略すればあとは同じ技術の使い回しなので、練習量でなんとかすることが可能です。じっくり頑張りましょう!

第5番「鬼火」



難曲揃いの「超絶技巧練習曲」でも圧倒的な難易度を誇るのが「鬼火」です。ゆらゆらと揺れる幻影のような曲想なので、タイトルから感じられる凄まじさは意外に無いと言っていいでしょう。事実、本当に難しいピアノ作品は、この曲のように速さ、重音、繊細さの3点を要求されているものがほとんどだと思います。


32分音符と半音だらけの楽譜面が、挑戦者の心を折ってしまいがちです。ですが、Allegrettoなので決して聞き取れないような速度では演奏しません。音の配置は規則的とはいえ、弾きながら目で追っていくのは難しいので、5回ほど口で音符を歌ってみてください。そしてゆっくり指で確認すれば難しくはありません。

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急速な下降音型は、ポジションの移動だけで演奏可能です。アルペジオが手に収まりやすい形ですので特に問題ないと思います。右手よりも、左手の和音のポジションを取る方がより難しいです。どの音を弾くときにも、腕に力が入らないポジションをじっくり探しましょう。

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この重音は本当に難しいです。ポジションをこまめに調整し続けるのと、3-4-5指の完璧な分離が不可欠です。重音にせず、上の音だけ、下の音だけとそれぞれ分けて速いテンポで弾く練習も有効です。左手のアーティキュレーションを忠実に守って微妙なテンポの揺らぎを生み出すと、音楽的な効果も高まりますし、右手の難しさを和らげることにもつながります。

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ここでの問題は、「ラ・カンパネラ」の右手並みの跳躍が左手に登場していることです。最適なポジションへの移動と、腕と手の柔軟性が大切です。さらに、これをステージで演奏するのならば、片手だけ目を瞑っていても弾けるだけ慣れる必要があります。ここまで難しい曲では、小細工で攻略するより、問答無用で弾ける状態にする方が確実です。

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この箇所は、プロのピアニストが演奏してもテンポが前のめりになって拍節感が曖昧になってしまいやすい部分です。特に最初の16分休符に注意しましょう。右手の最初の音は裏拍で軽いので、そこが一拍目に聴こえないようにしなければいけません。

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音が多くて目が回りそうになりますが、ポジションの移動自体はそれほど多くないので、意外に弾きこなせるかもしれません。とはいえ、左手をここまで酷使する曲も少ないので、どうしても左手が動いてくれない場合があるかもしれませんが、それは根気強く練習するしかありません…

全体に音が多くて複雑に見えますが、半音を除いた音の骨格と、最適なポジションさえ見極めれば難易度はグッと下がります!この曲が弾ければ、挑戦不可能なピアノ曲はほぼ無いと言っていいので頑張りましょう!(「イスラメイ」、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」などのパワー系難曲はまた別枠ですが)

第6番「幻影」



アルペジオを主体とした死を連想させるような重い雰囲気を持つ作品です。一説によるとナポレオン1世の葬式における幻影とも言われていますが、真偽は定かではありません。


技術的にはアルペジオがほとんどの割合を占めていますが、大切なのはメロディーと音楽の流れです。曲の雰囲気に加えて、Lentoという極めて遅いテンポが指定されているため、メロディーが不明瞭になりやすいのです。単音、または4分音符単位の和音だけで曲の見通しをスッキリさせることが上達の近道です!

また、ドロドロに弾いてしまいそうになるアルペジオですが、全ての音を軽くてハッキリした発音で弾きましょう。その上で、「幻影」の名に相応しい不明瞭さを演出する際にはペダルや指で調整すれば良いのです。

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このように響きが一番大きな箇所ではテンポやリズムのコントロールが曖昧になりがちです。一度メトロノームで正確なリズムを叩き込みましょう。

また、フォルティッシッシモの部分は混濁してしまいやすいので、赤丸の音は豊かに響かせ、青丸のアルペジオはとても鋭く素早く弾くことで、音響を立体的なものにしましょう。

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ここは非常に難しい部分です。四分音符は強く弾いて、残りの難しい重音はメゾフォルテ程度の音量で、全ての音が明瞭に聴こえるように弾きましょう。ドラマティックな部分なので、多少テンポが遅くなっても問題ないかと思います。

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赤丸の小節以外は、すでに8小節も前からSo音によるトニック・ペダルが用いられていると考えられます。すなわちこの赤丸部分以外は調性的にとても安定感がある状態なので、赤丸部分は少しえぐるような音の響きを強調すると良いと思います。

第7番「エロイカ」



英雄的な雰囲気に溢れた作品です。装飾的な音がとても多く、メロディーには明瞭さが要求されているため、バランスを整えることと、正確なペダリングが不可欠です。


小節をまたぐ半音というのは不明瞭になりがちです。最後の音の直前でペダルを上げる指示が書き込まれているので、完璧なタイミングになるように練習しましょう。また、くっきりした音が必要なので、1-3の指使いを提案します。

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マーチの部分ですが、音価が正確に聴こえるよう注意しましょう。なんとなく和音がたくさんあるように聴こえてしまうと、どこを聴けばいいかわからなくなるので、弾き分けが鍵を握っているといえます。

アルペジオも非常に多い曲ですが、基本的にはメロディーの律動が徹底して乱れないように弾くことが大切です。装飾的なアルペジオは音価がかなり多彩なので、タイミングは正確に把握しておきましょう。

第8番「狩り」



「荒々しい狩」「死霊の狩」とも言われる荒々しい雰囲気の作品です。演奏自体はそこまで困難ではないと思いますが、かなり強いタッチで弾かなければ曲の雰囲気が全く出ないと思います。


冒頭からフォルティッシモです。ピアノを勉強していると、ただ強い音というものは忌み嫌われ、音楽的な解釈のともなった音を要求されることが多いと思います。しかし、ここでは圧倒的な「強い音」そのものが求められています。個人的な感想ですが、ここで求められている音を最も的確に表現しているのはL.ベルマンの演奏だと思っています。


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この曲の場合、鋭いスタッカート(くさび形)が付いている音が骨格をなしていると考えられます。速い32分音符などはスピード感や切迫感を強めるためのものです。テンポは速い方が良いのですが、この32分音符が拍に収まる範囲内でテンポを決定しましょう。

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このin tempo部分は荒々しい雰囲気から、のどかな雰囲気へと変化しています。ここはホルンの音色を模倣するのが相応しいと思います。音の雰囲気からしてもそうですし、ホルンは、狩のために使われていた楽器を基に誕生しているため、リストの頭の中にもホルンの音のイメージがあったと思うのです。

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ここは左手が難しい部分です。また、劇的な部分とは異なり、難しさを出してはいけない曲想なのでより余裕を持って弾くことが求められます。左手の上向きに書かれた8分音符が浮き上がってくるように弾けるととてもオシャレです!

右手も単純なようでいて3声で書かれているのでバランスが難しいところです。細かい16分音符はとても軽く分離よく弾く必要がありますね。この形はF.シューベルトも伴奏型でよく用いています。

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TempoⅠからは右手が16分音符と休符、左手が8分音符で書かれていることに注意して弾きましょう。左が主導権を握り、右手がベストなタイミングで軽い音で入ってくることが重要です。

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1段目の最後の小節も左手が重要です。右手が複雑になるとそっちに集中してしまいがちですが、左を強く意識することで曲が引き締まります。また、この最後のページはとても荒々しく弾きましょう!不協和な音のぶつかり合いも、より一層強くぶつけることが演奏効果につながります。

第9番「回想」



詩的な趣を持つ「回想」の名にふさわしい内容の作品です。


まるでレチタティーヴォのような導入です。自分の声で歌っているかのような自由さを持って弾きましょう。

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この装飾音は、歌手が息を大きく吸って歌い始めるような効果を狙って書かれています。また、8分休符があるため主旋律の開始音が裏拍にあり、軽さと同時に音楽の推進力を得ることに成功しています。この巧みな工夫には惚れ惚れしますね。

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leggierissimoのパッセージはハープによるグリッサンドをイメージして弾きましょう。音のイメージを掴むために、右手で柔らかいグリッサンドを弾いてみてください。そのイメージのまま音符を当てはめればうまく弾けると思います。

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一見難しそうですが、両手で弾いてしまえばただの半音階です。この形はリスト作品ではとても多いので(ハンガリー狂詩曲6番など)、覚えておくと無駄な苦労をせずに済みます。

演奏におよそ10分を要する、曲集の中では最大規模の曲でしたが、基本的にメロディーを歌い上げることを中心に書かれています。あとは装飾的なパッセージをいかに手になじませて、メロディーを引き立たせて弾くかが重要なポイントだと思います。

第10番 Allegro agitato molto



この曲には標題がつけられていませんが、全12曲中で最も演奏頻度の高い作品です。演奏時間が4-5分程度と短いことと、難易度の割に極めて演奏効果が高いのが人気の理由でしょう。

テクニック的には重音の交差と、アルペジオを主体とした広い範囲に渡る左手の伴奏、それにオクターヴのテクニックです。しかし、オクターヴに関しては第2番や第8番の方が圧倒的に難しいので恐れることはありません、


重音の交差は第一関門と言えます。実はそれほど難しくありませんが、頻繁に使用するテクニックではないため、面食らってしまうのです。表拍をしっかり意識することと、正確なポジションを覚えることが大切です。左右の手のポジションは、左手が上側、右手が下側になります。

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テンポが急速なため、1オクターヴの跳躍が難しいですが、右手ではなく左手のリズムを優先して弾けるように訓練しましょう。次のSo♭-Fa-Mi、Fa-Mi-Re、Mi-Re-Do♭…の動きは、高い音程と低い音程を行き来することでとても立体的な音響になっています。ガタガタと流れが悪くならないように注意しましょう。

また、左と右のリズムが2:3になっていますが、これはかなり機械的に合わせましょう。ある程度右手は自由にさせたいところなので、左手により余裕が必要と言えます。

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ここは非常に旋律的な部分です。左手の伴奏がやや難しいですね。特に赤丸をつけた音をうまく繋いでいきたいのですが、指が遅れてしまいがちで重い印象を与えてしまいやすい箇所です。赤丸以外の音をとても軽く弾くことと、手と肘のポジションをうまく移動することが大切です。

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ロマン派の作品でpoco rall.などのやや自由な指示があると拍がさっぱりわからないくらい崩れていることも珍しくありません。まず一度はメトロノームに合わせて正確なリズムとテンポを把握しておきましょう。その上でわずかに緩めるということを覚えておいてください。

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disperatoの指示があるこの箇所はとにかく激烈な表現が必要です。赤丸の最低音は最大最強のパワーで弾き、同時に流れを持たせましょう。赤丸の音は小指なので、本当に目一杯弾いても足りないくらいです。

第11番「夕べの調べ」



とても美しく、比較的演奏も容易なため演奏頻度の高い名曲です。鐘の音を連想させ、宗教的な雰囲気さえ漂わせています。リストは、演奏活動から身を引いた後は、僧籍に入っているのです。それを示すかのように、後期の作品には宗教的な内容の作品が増え、ヴィルトゥオーゾ作品は影をひそめるようになっていきました。

余談ですが、僧侶になったリストは「僧衣を着たメフィストフェレス」と揶揄されました(メフィストフェレスとは悪魔の一種)。確かに信仰心はあったようですが、女性にだらしない面のあったリストは、僧籍に入ってからもそこだけは変わらなかったようなのです。


Andantinoでテンポの遅い曲ながら、見ての通りとても音が多いのです。臨時記号も非常に多いので、間違った譜読みをしてしまわないように注意しましょう。

またこれほど臨時記号と和音、アルペジオが多くなると、全体が見えないまま弾いてしまうケースが少なくありません。たとえ暗譜までしていても、聴き手には何がどうなっているかわかりにくいのです。まずは和音を省いて旋律だけをよく歌わせる練習をしましょう。旋律を先に覚えてしまうと驚くほど譜読みと暗譜が容易になります。

赤丸の音は厳かな雰囲気のある鐘の音、青丸は軽やかなハープの音を表しているように思います。

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この形は、ピアノという楽器をより歌わせるための書法です。イメージとしては一番高いRaの音を単音でクレッシェンドし続けて歌いたいのです。

しかし、ピアノは音を鳴らした瞬間の音が一番強く、後は減衰していくだけなので実現不可能に思えます。そこで、内声部にこのような連続する和音を足すことで、あたかも単音をクレッシェンドしているように聴かせる手助けをしているのです。連打は、推進力のある響きを生み出す目的であるため、決して叩いてはいけません。

第12番「雪かき」



地味な曲想ですが、「鬼火」同様に繊細であるがゆえに難しい曲です。


まず冒頭からこの細かいトリルが難しいですね。鍵盤と指を完全に密着させた状態で、いかに素早く緻密なコントロールを達成できるかに全てがかかっています。

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この部分の跳躍の難しさは「ラ・カンパネラ」をはるかに凌駕しています。跳躍の距離自体は大したことありませんが、旋律を持続させながら、淀みなく完璧なトリルをピアニッシモで弾くことが難しいのです。

このような場合は、技術に偏った練習ではなく、耳を研ぎ澄ましてゆっくり練習しましょう。旋律が美しく流れるように聴こえればいいため、機械的な意味で正確である必要はないと思います。「鬼火」や「ラ・カンパネラ」の場合であれば、正確性を見せつけることにも一つの意味がありましたが、この曲の場合は音楽のイメージが先行しています。

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このtremolandoは先ほどまでの跳躍&トリルに比べれば楽に思えますが、不用意に加速してしまったり、均一でなくなることが多々あります。なんとなく手を振って弾くのではなく、やや硬質なピアニッシモの音で正確に演奏しましょう。

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このstrepitosoの跳躍は全て旋律の音であるため全部の音をしっかり弾かねばなりません。吹雪が吹き荒れているかのようなイメージです。吹雪が連想できる範囲内であれば、機械的に均一でなくとも問題ないように思います。

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最後の最後で左手の三度が出てきます。ドロドロに弾いてごまかすこともできますが、可能であれば三度の音程がはっきり聴こえるくらい精密に弾きたいところです。それにはマルカートなタッチと、指先と鍵盤の緊密なコンタクト、さらに完璧なポジション移動が要求されます。ひたすら練習あるのみです!

まとめ

「超絶技巧練習曲」全12 曲を見てきましたが、どれも一筋縄ではいかない難曲揃いであることがご理解いただけたかと思います。しかしながら、超一流のピアニストであったF.リストは、とても合理的な演奏技法を用いていたため、「実現可能な範囲で最大限難しい」というのが本当のところだと思います。

また、この曲集を攻略できれば、他のあらゆるピアノ曲に応用することができると思います。全曲を弾いても、あるいは抜粋でも、あなたにとって自慢のレパートリーになることは間違いありません。ぜひトライしてみましょう!


「超絶技巧練習曲集」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1917年までにペータース社から出版された楽譜です。