メンデルゾーンのピアノ曲の中でも特に有名な曲の1つが、この『春の歌(Spring Song/Frühlingslied Op.62 No.6)』。
春の明るい陽射しの中、小鳥のかわいらしいさえずりが聞こえてきそうな曲ですね。
よくテレビでも流れているので、その美しいメロディーを耳にする機会も多いかと思います。
今回はこの『春の歌』の難易度と、きれいに弾けるようになるための弾き方のポイントをご紹介したいと思います。
楽譜は、全音から『無言歌集』全曲が解説付きで出版されています。
「ピアノ名曲選」にも掲載されています。
『春の歌』以外にも、弾いてみたいピアノ曲がたくさん掲載されていますよ。
■ 目次
メンデルスゾーンとはどんな人物?
この曲を作曲したフェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn/1809年-1847年)は、ドイツ・ロマン派の作曲家、ピアニストです。
かなり裕福な家に生まれた、いわゆる「ボンボンのエリート坊っちゃん(他に言葉ないんかい)」で、色々な経験をさせてくれる、教育熱心な両親の元に生まれました。
彼は幼少期から音楽の優れた才能を発揮し、神童とも言われていました。
一度見た楽譜や一度聴いた音楽は、完璧に記憶していたそうです。
まさに神の成せるワザ!
その神ワザとしての逸話に、このようなものがあります。
彼は書き上げた代表曲のうち、1曲の楽譜を引っ越しの際に無くしてしまいました。
そして彼は、記憶だけを頼りにもう一度楽譜を書き上げたそうです。
後に紛失した楽譜が発見されたのですが、2つの楽譜は7箇所のみが違っていただけで、残りの箇所は完璧に同じだったそうです。
まさに神の成せるワザ!(2回目)
また、数カ国語を操れるマルチリンガルでもあり、さらには水彩画の才能まで持ち合わせていたそう。
まさに神!!(しつこい・・・)
この『春の歌』は、彼の『無言歌集(Lieder ohne Worte)』という、ピアノ作品集の中の1曲です。
全部で48曲、8巻からなる『無言歌集』は、メンデルスゾーンが15年間という長い歳月をかけて作曲した作品集であり、『春の歌』は1844年出版の第5巻に収録されています。
この『春の歌』の他には『狩の歌』や『紡ぎ歌』が有名です。
『春の歌』の難易度は?
全音ピアノピースサイトの難易度表によると、この曲の難易度はDで中級上となっています。
だいたい、ツェルニー30番終了程度から40番前半程度といったところでしょうか。
この曲は、装飾音で奏でるアルペジオがとても多いのが特徴です。
そのため、装飾音が主旋律の邪魔をしないよう、優しく丁寧に弾かなければなりません。
その点が、この曲を演奏する上で少々難易度が高いかなと感じる部分です。
それでは、具体的な弾き方のポイントを解説していきます!
『春の歌』はこのように弾こう!
この曲は大きく分けて、
・主題(動画 冒頭~0:23)
・中間部(動画0:24~1:15)
・再現部~コーダ(動画1:15~ラスト)
の三部で構成されています。
主題はかわいらしく歌い上げよう
冒頭から1フレーズ目までの楽譜です。(動画 冒頭~0:13)
装飾音符に〇をしてみました。
真っ赤になりました!
1小節に2つずつ装飾音符がついていますね。
演奏を聴くだけであれば、この装飾音符の部分はとても軽くてかわいらしいのですが、実際に弾いてみると意外と強調されてしまう・・・。
この装飾音は鍵盤を下まで押さえ込まない「ハーフタッチ」で弾くことをオススメします。
イメージとしては、「弾く」というより「触れる」という感覚です。
特に左手は、テンポやリズムが崩れたりしっかり弾きすぎたりしやすいので注意が必要です。
装飾音を弾く際の運指や拍の取り方に慣れるまでは、メトロノームに合わせたスローテンポで、わざと強く弾く方法もオススメです。
慣れてきたところで、ハーフタッチで弾く練習をしたりテンポアップをしたりしていき、徐々にインテンポでも軽い音で弾けるように練習してみてください。
この調子で練習していき、慣れてくると、この曲全体の装飾音符がマスターできたも同然になります。
すべての装飾音を軽やかに弾くことができるようになりますよ!
小鳥のさえずりのように弾いてください。
9小節目からは同じメロディーが繰り返されますが、9小節に入る直前にアウフタクトが付いています。(動画0:13~)
ここは、最初の1フレーズが終わり、気持ちを切り替えてもう一度メロディーを歌い直すといったイメージで、アウフタクトに入る手前で一呼吸置くように意識しましょう。
そしてお気づきでしょうか。10小節目の〇の装飾音符に。
メロディー自体は冒頭と同じなのに、2小節目で出てきた装飾音と音が違うのです!音が1つ増えているのです!
このようにこの曲は、同じメロディーであっても、よくよく見てみると微妙に装飾音符の数がちょこちょこと変えてある箇所があるのです。
メンデルスゾーンが何を意図してこのような微妙な変化を付けたのかは定かではありませんが(誰かわかる人がいれば教えてください!)、同じメロディーを弾くのにも、若干の表情の変化を持たせるように演奏するのも1つの方法かなと思います。
あえて弾き方を意識する必要はないのかもしれませんが、例えばこの10小節目の「ミ」の音は、2小節目の「ミ」の音よりも少しだけ伸びやかに弾いてみるなど、ほんの少し意識するだけでも表情が変わって面白いのかな~と思うところです。
中間部は華やかに弾こう
16小節目に入る直前にもアウフタクトがあります。(動画0:24~)
ここでも、アウフタクトに入る前に一呼吸置き、気持ちを入れ替えて弾きましょう。
上の楽譜での2~3小節目と4~5小節目は同じメロディーですが、4~5小節目は同じ「sfz」でも、2~3小節目よりも少し弱く弾いてみてください。
24小節目(アウフタクトは23小節目)からの楽譜です。(動画0:36~)
クレシェンドで盛り上げていくところですが、〇の音は「ミ」「ファ#」「ソ#」と音が上がっていきます。
この部分は音が上がるにつれ、「ミ」<「ファ#」<「ソ#」と意識してみてください。
自然とこの高音を響かせることができます!
中間部の終盤は、右手に16分音符が連続で出てきます。(動画1:09~)
「grazioso」は、「優雅に、華やかに」という意味です。
右手が転ばないように気を付けながら、少しずつ音を小さくしていきましょう。
再現部~コーダは最後までかわいらしく!
中間部が終わり、再び主旋律が紡がれますが、64小節目(アウフタクトは63小節目)からはそれまでにはなかったメロディーが出てきます。(動画1:36~)
あちこちで花が咲いているような、明るい雰囲気で盛り上げてください。
最後の部分は、かわいらしく装飾音を響かせながら音が上っていきます。(動画2:12~)
音が上りきったところの高い「ラ」の音は、優しく!かわいらしく!を意識して弾いてくださいね。
弾き方のまとめ
メンデルスゾーン『春の歌』の弾き方をおさらいします。- 装飾音は、強調しすぎないようにハーフタッチで弾く
- フレーズごとに一呼吸置く
- 全体的にかわいらしく弾くことを意識する
の3つがポイントです。
これらのポイントを押さえながら練習して、小鳥のさえずりが聞こえてくるような、春の陽気な風景を表現してみてください!
ピヨピヨピヨ♪
「春の歌Op.62-6」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1880年頃にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「無言歌第5巻Op.62」全6曲が収録されており、Op.62-6は10ページからになります。
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