ショパンの『ポロネーズ第1番嬰ハ短調op.26-1』は、まるで高ぶる感情を表現しているかのような曲で、その雰囲気に聴いている側は思わず圧倒されてしまうことでしょう。その一方で、中間部には何とも穏やかで甘美な旋律が登場し、そのギャップにも驚かされます。

この曲には様々な技術が随所に散りばめられています。ここでは、練習の際の苦労を少しでも和らげてくれる効果的なコツについてお話ししていきます。

尚、この記事は主にピアノ中級者の方~上級者の方向けに書かれております。そのため、やや難しく感じられる部分もあるかもしれません。ご了承お願いします。


こんにちは!ピアノ弾きのもぐらです。
寒いですね、もう冬です。地上では雪がちらほらと降り始めました。巣穴の中にいるとはいえ、これから本格的に雪が積もることを思うと、何だかテンションが低くなってしまいます。

ところで私は冬になると、巣穴の中に蓄えておいた畑のお野菜で鍋をつくって食べます。一番のお気に入りはキムチ鍋です。とにかく寒い冬は鍋でテンションを上げて、元気に乗り切りたいものです。

難易度は高くても諦めないで挑戦してみよう!


さて、本題に入りますね。

まず単刀直入に申しますと、この曲は難易度的にはお世辞にも簡単とは言いにくいです。ショパンのポロネーズ集の中で考えれば簡単なほうと言えますが、そもそもショパンのポロネーズ集そのものの難易度が高めですので、やはりこの曲についても難易度は高めと言えます。

具体的な難易度の指標としては、ツェルニー40番をある程度マスターできている、あるいは修了したという方であれば弾けるくらいかと思います。

ですが、難しいからといって決して諦めないでください。これは私の勝手な持論ですが、難易度なんてものは結局『すぐに弾けるか弾けないか』という練習時間の長さの問題で決められているに過ぎません。

ですので、この曲をマスターする重要なカギとして私が考えていることは、練習に時間はかかって当たり前だと予め念頭におくこと、そして根気よく練習を続けることです。

難しい曲でも時間をかけて根気良く練習していれば、いつかは弾ける日がやって来ます。希望を持って練習に励みましょう。


繰り返しが多めな構成になっている!

では、まずは以下の動画を聴いてみてください。



この曲は一見、ものすごく道のりが長いというような印象がありますが、譜面をよく観察すると、繰り返しが多いことがおわかりになるかと思います。そうとわかれば「マスターできるかも!」という自信も湧いてきます。

ここでは以下の通り、一曲をいくつかのセクションに小分けにして、セクションごとにご説明していきます。

セクションA1(最初~0:53)
セクションB1(0:54~1:49)
セクションC1(1:50~2:35)
セクションD(2:35~3:16)
セクションC2(3:16~4:02)
セクションA2(4:02~4:53)
セクションB2(4:54~終わり)

※カッコ内の時間は上の動画の時間に沿ったものです。動画をよく視聴して、曲の全体像をおおまかに把握しておくことで、練習もよりスムーズに行えるかと思います。

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA1 ~メリハリが大事~

曲の冒頭であるセクションA1では、いきなり衝撃的なモチーフが登場し、何とも激しくエネルギッシュな雰囲気を放っています。
この部分は曲の第一印象になる部分ですので、弾く前にどのように音を鳴らしたいのかを自分なりにしっかりと決めておくことが重要です。

※『Allegro appassionato.』の意味は『速く、情熱的に』

この冒頭の1小節目と2小節目ですが、ここは弾く人によって弾き方が変わってくる部分です。特にこの箇所における複符点八分音符の長さは、人によって随分と解釈の違いが見られます。

複符点八分音符というのは、本来なら八分音符の1.75倍の長さで弾きますが、ここではスタッカートのように短く切る人と、反対に長めに保つ人とに解釈が分かれるところです。

ちなみに私はどちらかというと、ここは長めに保ちたいほうです。

ですが、ここを短く切るというのもそれはそれで音の輪郭が強調され、より印象深さを出せるという効果もあります。
ここは弾き方をいろいろ試してみて、自分の中でしっくりくる方法を選びましょう。


この部分は、左手に注意しましょう。特にこれは他の部分の左手にも言えることですが、一つの小節の中には重き(アクセント)を置くべき音というのがあります。(0:10~)
たくさん音が並んでいるからといって、全部の音を同じような大きさで弾いてしまうと、何だかメリハリのない響きになってしまいますので注意しましょう。

では、具体的にどこに重きをおくべきかということですが、やはりこの譜面では最初の八分音符の『ド♯』のオクターブ、そしてそのあとにベース音の役割を担っている4つの四分音符に重きを置くと、メリハリのあるシャキッとした響きになるかと思います。

一方で右手は左手と違って、至ってなめらかに旋律が進んでいきます。この右手のなめらかさと左手のメリハリのある響きが合わさることで、何とも言えない独特な雰囲気を醸し出すことができるのです。

☆セクションB1 ~長い連符も怖くない~

セクションB1は特にいろいろな技術を必要とするため、何だか難しく感じられるかもしれません。(0:54~)

ですが難しそうに感じたとしても、セクションをさらに小分けにして部分ごとに練習をしていけば、何も怖いことはありません。
一つ一つ、ゆっくりと丁寧に練習していきましょう。

※『sotto voce』の意味は『小さな音で』
※『cresc.』は『crescendo』の略称で、意味は『だんだん音を大きく』

セクションB1でつまずきやすいポイントの一つとして挙げられるのは、上の譜面の2小節目にある、何やら細かい音符の集合体のような箇所です。

「え、これってどうやって弾くの?」と最初に戸惑う方もおられるかもしれません。この部分の弾き方は譜面をご覧の通り、概ね1拍目と2拍目の中にこの音をすべて収めるということです。このような弾き方をする箇所は、このあと音の場所や数を変えて何度か登場します。

「いや、これ無理でしょ!」と練習したての頃、一度は誰でもそう思ってしまうのではないでしょうか。

かくいう私は、なぜこのような難しい弾き方にするのかと、ショパン先生に文句を言っておりましたが、いくら文句を言ったところで何も変わらないので、グッとこらえるしかありませんでした。

まあそれはさておき、この細かい音符はいきなり速く弾こうとすると、つまずきやすいですので、最初は無理なく音が鳴らせるテンポで、ゆっくりと片手練習をしていきましょう。「こんなに遅くて大丈夫なの?」と思うほどゆっくりとしたテンポから始めましょう。

慣れてきたら、左手を入れた練習に移っていきます。このとき、どのようなテンポであれとにかく譜面にもある通り、右手の細かい音が鳴り終わるまでに左手の二つの八分音符をその中で鳴らすように心がけましょう。

この部分は最初テンポが遅いために、何を練習しているのかとどうしても疑問に思えてしまうかもしれませんが、毎日少しずつテンポを上げていけば、しだいに必ず形になっていくはずです。
形になり始めるとだんだん楽しくなってきますので、根気よく頑張りましょう。


ここでは少し変化が見られます。この部分は両手共になめらかに弾いていきましょう。(1:15~)
そして左手はなるべく音が大きくなり過ぎないように気をつけて、右手を際立たせるように弾いていきましょう。

譜面をご覧になるとおわかりになるかと思いますが、左手には『シ』の音が連続しています。この部分での左手の『シ』の音はとても重要な役割がありますので、音自体は控えめですが決して途切れないように気をつけましょう。

※『ritard.』は『ritardand』の略称で、意味は『だんだん遅く』
※『a tempo』の意味は『元の速さに戻す』
※『con forza』の意味は『音を強く』

この部分は動画を視聴するとおわかりになりますが、右手が左手の上をまたぐという弾き方になっています。(1:27~)

この部分は演奏している姿からして、いかにも何だかすごいことをやっているかのような印象を受ける部分です。ですので、聴く側は耳だけでなく目でも楽しめるかと思います。

ですが、実際見た目ほどすごいことはやっていません。案外この部分は簡単に弾けてしまう部分だと言えます。ただ一つ気をつけるべき部分としては、トリルです。このトリルは音の粒を揃えつつ、だんだんと音を盛り上げていくべきところです。

しかし音を盛り上げようとすると、どうしても手全体に力が入ってしまい、そうすると音の粒が不揃いになってしまいます。トリルは指の先に力を集中させ、なるべく最小限の力で弾くのがコツです。しっかりと片手練習の段階で何度も練習しておきましょう。

☆セクションC1 ~連続音やペダルの使い方に注意~

セクションC1からは、曲の調が嬰ハ短調から変二長調に変わり、今までの強烈な雰囲気とは打って変わって、ここでは穏やかな雰囲気が醸し出されています。(1:50~)

この曲は全体的に、場面ごとの雰囲気の違いがはっきりしているので、前のセクションの余韻を一切残さないような弾き方のほうが、私個人としてはしっくりくるような気がしています。

※『Meno mosso.』の意味は『今までのテンポよりも遅く』
※『con anima』の意味は『いきいきと』
※『dolce』の意味は『やさしく』
※『sempre tenuto』の意味は『常に音の長さを十分に保って』

ここからは穏やかで甘美な旋律を右手が担い、左手は連続した八分音符の和音を鳴らしていきます。特に左手は極力音量を落として、音の粒を均等に揃えて弾くように心がけましょう。

またこの部分では、旋律を奏でる右手にも同時に連続した八分音符が出てきます。右手の八分音符は、左手と同時に鳴るように細心の注意を払いましょう。
というのも、ここで両手の連続音にばらつきが出てしまうと、何だかごちゃごちゃして何を表現したいのかよくわからないような響きになってしまうからです。

※『riten.』は『ritenuto』の略称で、意味は『急速に速度を緩める』

この3連符の掛け合いの部分というのもなかなかに技巧的です。(2:09~)

この部分をきれいに鳴らせれば、このセクションの大半はマスターできたようなものだと私は勝手に思っております。それぐらいこの部分は大切なところであり、そして難しい部分だと言えます。

右手はとにかく指の運びに注意しましょう。この部分の指の運びについては、なるべく譜面の指示を忠実に守って弾くほうが無難であると言えます。指の運びに気をつけて、特にタイ(意味:音をつなげる)の表記がある部分はきちんと鍵盤から指を離さないで弾けるように心がけましょう。

練習していた当時の私は、この部分がとても苦手でした。特に上記でも触れたタイのついた部分で苦戦しており、ついついタイを守らずにペダルで音を伸ばして、それっぽく弾いているかのようにごまかしていました。

ペダルには「こういう使い方はしてはいけない」というような制限などは特別ありません。ですので、タイをペダルで表現すること自体は決して悪いことではないのですが、この部分ではやはりペダルに頼らず、しっかりと右手のタイを守って弾くべきだと私は思います。

かつての私のように、ペダルに頼りすぎた練習を続けていると、いつの間にか表現のためではなく、苦手な箇所のごまかしのためにペダルを踏むという癖がついてしまいます。
そうすると、自ずと指の動きもそれに慣れてしまって、結果的に練習そのものが雑になってしまいます。

ちなみに私は一度ついてしまったこの癖を直すのに数年かかりました。悪い癖というのはとても恐ろしいものなのです。

ですので、ペダルは両手練習に入るまでは基本的に入れないことをおすすめします。ペダルで音が伸びると何だか急に上手に弾けるようになったかのような感覚を覚えるかもしれませんが、残念ながらそれは幻です。

片手練習というのはどうしても退屈になるものです。するとついついペダルに足を伸ばしたいという衝動に駆られるかもしれませんが、ここはグッとこらえてまずはペダル無しの状態でもきれいに音を鳴らせるように練習を重ねましょう。

※『dolcissimo』の意味は『より一層やさしく』

この部分の細かい音符については、どちらかというと装飾音というよりも主旋律の中の一部分だと捉えたほうが何だかしっくりきます。(2:13~)

ですのでこの部分に関しては、さりげなく繊細に弾くことと同時に主旋律であるということも意識しましょう。

ちなみに私は、この部分の細かい音符を弾くときには、多少全体的なテンポが遅くなっても構わないと思って弾いています。ですが、もちろん素早くさらっと弾くほうが納得するという方もおられるかと思います。

ですので、この部分に関してもいろいろな弾き方を試してみると面白いです。

☆セクションD ~左手の旋律を丁寧に~

セクションDでは主旋律が左手に変わります。(2:35~)
そして、これはセクションDだけに限ったことではありませんが、ここでは特に音の微妙な変化が、わりと短いスパンで次々と現れます。

そのため、譜読みの段階では特に臨時記号を一つ一つしっかりと確認することが大切です。

※『con molto espressione』の意味は『とても情緒的に』

譜面を目で追っていくと、このあたりの特に左手ですが、同じようなリズムを保ったままフレーズごとの音色が少しずつ変化していく過程がおわかりになるかと思います。
この部分は先ほども申しましたが、とにかく臨時記号に気をつけましょう。

ここで臨時記号や音色の変化をしっかり把握できていないまま両手練習に入ってしまうと、スムーズに練習が進みにくくなってしまいます。まずは片手ずつ、納得のいくまで弾き込みましょう。

そしてこの部分でのペダルの使用は、なるべく最小限に留めておくことをおすすめします。というのは、特に右手に不協和音が多く盛り込まれているからです。不協和音が多く盛り込まれている部分にペダルをがっつり入れてしまうと、どうしても音が濁ってしまいます。


そして先ほどのミステリアスな左手の主旋律は、ここでようやく安定感のある響きに変わります。(2:56~)

さらにここで右手の一番上にある旋律も、左手の旋律に呼応するかのように調和を感じさせる響きに変わります。

ここでも右手の一番上の旋律と左手の主旋律の間には、やはり連続した和音があります。この連続した和音についても、やはり音量はなるべく小さく、かつ途切れないように心がけましょう。

※『cresc. ben legato』の意味は『音を大きくしながら十分なめらかに』

ここからは次の場面に向かって少しずつ全体的に盛り上げていきます。(3:06~)

この部分では思い切り抑揚をつけても大丈夫だと思います。そして一概に抑揚と言っても、つけ方は十人十色ですので、自由に個性を出して弾いてみましょう。

☆セクションC2、セクションA2、セクションB2 ~あとは繰り返すだけ~

ここまで来ればあとは繰り返しです。セクションC2(3:16~)、セクションA2(4:02~)、セクションB2(4:54~)という順番で繰り返すだけですので、もうほぼマスターできたようなものですね。


ただ、一箇所だけ気になる部分があります。それは上の譜面の、セクションB2の締めくくりの部分です。(5:47~)

この最後の1小節に何か特別難しいところというのはありませんが、ある程度この曲を弾けるようになってきたときに、この箇所で違和感を覚えるという方もおられるかもしれません。

この箇所のどういうところが違和感であるかという部分ですが、何となく上の譜面のフレーズで曲を締めくくると、正直なところ中途半端に曲が終わってしまったような感覚になって仕方がないのです。

私個人としては「なぜこの曲はこのような終わり方をするのだろう?」という疑問を覚えてしまいます。

尚、曲の感じ方は人それぞれ違いますので「いや、特に気にならないよ」と思われる方は、この部分のお話は軽く読み流して頂いて大丈夫です。

しがないもぐらが偉大な作曲家の作品に対して、一体何を言うのだと思いたくなるようなお話ですが、とにかくここはもうちょっと「曲が終わった感」のあるフレーズにしてほしかったというのが、ショパン先生に対して私が抱いている正直な要望です。

そこで、この部分では「曲が終わった感」が伝わるような工夫をすることが必要だと私は勝手に主張しております。

ですがこの箇所については私自身、これまで散々文句を言いながらいろいろな弾き方を試してきましたが、未だにしっくりくるような方法を見つけられていないのが現状です。

この箇所はその分、表現方法においての可能性が大いに秘められているとも言えますので、ぜひ自分だけの納得のいく締めくくり方というのを研究してみてください。

ポイントを確認!全体的なまとめ


ここまで、ショパンの『ポロネーズ第1番嬰ハ短調op.26-1』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ではここで、以下に全体的な弾き方のコツをまとめました。

1. どの音に重き(アクセント)を置くべきか考える(特にセクションA1セクションA2
2. 細かい音符の集合体は無理のないテンポから始めて、根気よく練習する(特にセクションB1セクションB2
3. 連続音を途切れさせないように、かつ主旋律がどこかを見極めて音を引き立たせる(特にセクションC1セクションDセクションC2
4. 難しいからといってペダルでごまかさない、両手練習に入るまでは基本的にペダル無しで練習する(全体的に)
5. 不協和音が多く盛り込まれている箇所でのペダルは控えめに入れる(特にセクションD
6. 場面ごとの雰囲気のギャップを出すため、前の場面での余韻を次の場面にまで残さない(全体的に)

以上の6つのコツを念頭に練習をしてみてください。
冒頭でも申しましたが、この曲は決して簡単な曲ではありません。ですがその分、マスターできたときの達成感はとても大きいです。

また、この曲には弾き応えのある演奏技法がたくさん盛り込まれています。この曲をマスターすることで、難易度が高めな他の曲にも自然と取り組みやすくなると思います。

それでは練習、頑張ってくださいね!畑の地中から全力で応援しております。

by ピアノ弾きのもぐら


「ポロネーズ第1番Op.26-1」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1883年にアウゲナー社から出版された楽譜です。「2つのポロネーズOp.26」全2曲が収録されています。


 ピアノ曲の記事一覧