「舞踏会って楽しそう!」そんな気持ちにさせてくれる、ウェーバー作曲の『舞踏への勧誘』。
昔カレーのCMで、中村紘子さんが演奏されるこの曲が流れていましたよね!
そのため、私は今でもこの曲を聴くと、ダンスをしたくなるというよりカレーが食べたくなります。
そんな人もいらっしゃるのではないでしょうか。・・・私だけでしょうか。
当時は、「なんてカッコイイ曲なんだろう!」と思いながらCMを見ていました。
この曲の特徴は、迫力があって力強いのに、それでいてとっても軽快なところです。
『舞踏への勧誘』というタイトルの通り、ついつい身体を動かしてしまいたくなるような作品ですね。
今回はこの『舞踏への勧誘』について、難易度と弾き方の紹介をしたいと思います。
■ 目次
『舞踏への勧誘』の概要を知ろう
フラットが5つ付く変二長調であるこの曲は、ウェーバーが1819年に作曲し、妻のカロリーネに捧げたと伝えられています。
奥さん、なんて羨ましい!
この曲はウェーバーのピアノ曲の中で最も有名であり、他にも『舞踏への招待』や『舞踏への誘い』といった訳でも知られています。
ベルリオーズが編曲した管弦楽版も広く知られており、弦楽器と管楽器の掛け合いがピアノ曲とはまた違った印象となっています。
個人的には、ピアノ曲の方は迫力があり、管弦楽の方は華々しく感じます。
管弦楽版の動画はコチラ。是非ピアノ版と聞き比べてみてください。
この曲の難易度は?
全音ピアノピースによる難易度は、中級上のDとなっています。だいたいツェルニー40番後半程度といったところでしょうか。
同じ時代に作曲された、ショパンの『華麗なる大円舞曲』よりも若干易しいのかなとも思います。
構成としては、
① 導入部分(動画冒頭~1:21)
② 舞踏の様子(動画1:22~6:39)
③ 導入部分を再現しながらエンディング(動画6:40~ラスト)
の3部で出来ています。
この曲の難しいところは、全体を通して、
・トリルを含む、左手の語りかけるような旋律
・速いテンポでの3拍子のメドレー
・右手の複雑な動き
であると思います。
ただし、じっくりと繰り返し練習をすれば、すべて克服出来ると思います。
それでは弾き方のポイントを見ていきましょう。
楽譜は、便利な全音ピアノピースがオススメ!
弾き方のポイントを知ろう
導入部分は男女の掛け合いを意識して!
この曲の導入部分(動画冒頭~1:21)では、男性が女性を誘っている場面が表現されています。
左手の旋律が男性、右手の旋律が女性を表しており、男性からの誘いに女性が応えているといった場面です。
右手は可憐に弾くこと。男性に誘われて、恥ずかしそうに応えている女性の様子をイメージしながら弾くように心がけてください。
上の楽譜の最後の小節に、「S」を横にしてひっくり返したような記号がありますが、この記号は「ターン」というものです。
奏法は、主要な音(ここでは「レ♭」)の2度上の音と2度下の音を回して弾きます。
この場合、最初の「レ♭」を弾いたあと、3拍目の「ファ」を弾く前に「ミ♭レ♭ドレ♭」を装飾音として弾くことになります。(動画0:35~0:36)
次に、左手のメロディーを右手がそのまま歌い継ぐような動きが出てきます。(動画0:37~)
メロディーをしっかり歌いながら、その他の音がうるさくならないようにしてください。
上の楽譜の5小節目から出てくる左手の装飾音やトリルは、私はかなり苦手です。
つい左手の動きにばかり気が取られてしまい、余分な力が入りすぎてしまうのです。
そうすると、今度は右手の刻む8分音符のリズムがズッコケちゃいます。
ここはもう、特に何も考えなくても左手が動かせるようになるまで、地道な片手練習が重要だと思います!
私みたいに左手のトリルが苦手という人は、机の上などでひたすらカタカタと練習してみてください。
そのときに左手の小指がピーンと立ってしまうようなら、余分な力が入っている証拠です。
余分な力が入ることなくカタカタ動かせるようになったら、次に鍵盤の上でカタカタ。それから次に出てくる装飾音を入れてみる、といったように、段階的に練習をしてみてください!
そして導入部分の終盤ですが、左手と右手で同時に到達音に向かって上っていきます。(動画1:07~)
ここでは、男女が手を取り合って歩み始めたような場面をイメージしてください。
そして右手の到達音、「シ♭」の音はたっぷりと弾くように心がけましょう。
最後の小節は十分にため込んで弾いてください。
舞踏会場のライトが落とされ、「あれ?これから何が始まるんだろう?」というような雰囲気を漂わせながら、しっかりフェルマータを効かせましょう。
レッツダンス♪
いよいよ舞踏会でのダンスが始まります。(動画1:22~)
「Allegro vivace」とは、「快活に、速く」という意味。
落とされた会場のライトが突然照らされ、華々しく舞踏会が始まった様子をイメージしましょう。
元気で華やかなダンスを表現してください。
そして、右手の軽やかな旋律が出てきます。(動画1:45~2:01)
まるで女性がドレスの裾を持ち上げて、華麗にクルクル回っているかのように、可愛らしく弾いてください。
ここからの左手の動きは、単純だからこそ逆に難しい部分。
クルクル回っている女性が転ばないよう、そっと支えるようにしてください。
再度、主要主題の舞踏メロディーが出てきたあとは、見慣れない「Wiegend」と書かれた部分が出てきます。(動画2:24~)
「Wiegend」は「ヴィーゲンド」と読み、「揺れて」という意味です。
ここでは、手を取り合った男女が、左右に揺れながらダンスをしている様子をイメージしてみるといいと思います。
3拍子が転びやすいので、自分自身も左右に揺れながらリズムを取って弾いてみるのもいいかもしれません。
そのあとで出てくるのが、左手と右手のメロディーの受け渡し。(動画2:50~)
左手のメロディーとまったく同じものを右手が繰り返します。
途切れ途切れにならないよう、きれいに右手にメロディーを渡しましょう。
手を取り合って左右に揺れるダンスのあとには、突然激しいセクションが現れます。(動画3:44~)
まるで、足を踏みならしながら激しく踊っているかのように、情熱的に弾いてください。
「Vivace」とあるように、先ほどの「Allegro vivace」よりももっと活発に弾きましょう。
ここからの右手の動きは、冒頭で触れた、私が難しいと感じる右手の複雑な動きです。
特に上の楽譜の□で囲んだ部分。イヤになりますね、まったく。
和音がバラバラにならないように弾かないといけない。
しかもそこに装飾音も付けないといけない。
なおかつその装飾音も2つの音で出来ているときたもんだ。
さらにここは「Vivace」で激しく活発なセクション。
・・・なんということでしょう。本当にイヤになります。
ここでも、地道な片手練習しかないです。残念ながら。
どちらの小節も、まずは1拍目和音の「ド」の音を抜き、それ以外の指の動きだけをつかむようにしてみてください。
動きを右手に覚え込ませることが目的なので、最初は机などの上でひたすら練習してみることをオススメします。
ある程度動きをつかめたら、次は鍵盤の上で練習。
2音をきれいに弾くことが出来れば「ド」の音を入れて練習。
このように段階的に練習してみてください。
このセクション最後の4小節(動画4:37~4:42)は、転調に向けて気持ちの切り替えをする場面となっています。
「ritard.un pochettino」は「リタルダンド ウン ポケッティーノ」と読み、「時間をかけて少し遅く」という意味です。
最後の装飾音の「ラ」にナチュラルが付いていることからも、転調を示唆していることが感じ取れますね。
そのことからも、この「ラ♮」は装飾音でありながらも、すこーしだけ目立たせる意識で弾いた方が、より「転調への準備」が整ってきますよ。
(動画4:42~)
次のセクションでは、なんとフラットがすべてなくなります!
1つもないのです!
フラットが嫌いな人は、ほっと一息出来る箇所かもしれません。
ここは高音を可愛らしく響かせるように弾きながら、中盤では力強く盛り上げます。
ダンスもいよいよ終盤に差し掛かっている場面ですね。
そして、また変二長調に戻るための準備です。(動画5:13~5:16)
「assai animato」は「アッサイ アニマート」と読み、「とても活き活きと」という意味です。
主要なワルツのクライマックスに向けて、とにかく存分に盛り上げていきましょう!
再び元気のよいワルツを繰り返すのですが、後半の部分からはそれまでとは違い、右手はひたすら8分音符の軽快なメロディーを弾き続けることになります。(動画5:47~)
ここで右手が転んでしまっては、せっかくのクライマックスが台無しになってしまいます。
しっかり片手練習とリズム練習を繰り返し、このメロディーの動きをモノにしてください。
(動画6:02~6:08)
左手は軽く軽く!楽しくステップを踏むように。
いよいよ舞踏場面の終わりです。
ここで、なんともまぁ複雑な、右手の高音から下降してくるアルペジオが現れます。(動画6:28~6:39)
重要な旋律なので、音を外さないように動きを指にしっかりと覚え込ませましょう。
そして最後はかっこよくキメちゃってください!
導入部分の再現-別れを惜しんで!
最後に導入部分のフレーズが再現されます。(動画6:40~ラスト)
舞踏が終わり、男女が別れを惜しんでいるようにも感じられます。
華麗な舞踏メロディーの余韻を残しながらも、少し切ない様子をかもし出してください。
イメージとしては、舞踏会の幕をそっと締めくくるように弾いてみましょう。
弾き方のポイントをおさらいしよう
『舞踏への勧誘』の弾き方をおさらいしましょう。- 導入部分では、男性の誘いと女性の応答といった掛け合いを意識する
- 主要メロディーは元気よく、楽しく華麗なダンスを表現する
- 3拍子のリズムが転ばないよう、自分も踊っているつもりで弾く
- 複雑な動きの部分は、片手練習をすることで、動きを指に覚え込ませる
- 最後は別れを惜しんでいるように、舞踏会の幕を締めくくるように弾く
この5つのポイントを押さえ、華麗で楽しい舞踏会を表現してみてください!
「舞踏への勧誘Op.65」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。ペータース社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。