いよいよ、芸術の秋が近づいてきましたね。
さて、今回は、秋の合唱コンクールでは定番の「春に」(作詞:谷川俊太郎、作曲:木下牧子)をご紹介したいと思います。
筆者は、中学校、高校と2回、クラスで伴奏しました。
中学校の時は、7クラス中2位、高校の時は、7クラス中1位をとりました。
その経験をもとに、この曲の伴奏のコツをご紹介し、その表現について探っていきたいと思います。
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■ 目次
「春に」難易度
この曲の構成自体は、前奏(1~5小節)、A(6~25小節)、B(26~46小節)、A’(47~73小節)という三部形式で、Aが弾けるとA’もほとんど弾けるため、比較的容易に弾けるようになるでしょう。
しかし、場面転換のBの部分が、音楽的表現を豊かにする必要がある部分で、記号やテンポの変化がよくついているので注意です。また、アルペジオが手を広げるポジションにあり、テンポもAに比べるとやや速いので、要練習でしょう。
教本でいえば、「ソナタ」程度が弾けると安定して弾けるレベルであると言えます。
伴奏を弾くコツ
まず、「春に」だけでなく、全般的な伴奏を弾くコツをご紹介したいと思います。
前奏はピアノがしっかりと弾く
合唱が始まる前の前奏は、合唱を歌う人にとっての準備にもなり、また、聴く人にとっては作品のつかみとなります。前奏は、ピアノを弾く人が責任をもってしっかりと弾き込みましょう。
ハーモニーを意識する
合唱とは、全体での一体感を味わう芸術です。そのため、ピアノは全体のバランスに気を付けて演奏するとよいでしょう。
例えば、今、自分が弾くところは歌が主旋律であるか、ピアノがつなぐ部分であるのかといったところから始めるとよいと思います。
その次に、歌う人の音量に合わせた音がだせるとよいでしょう。
どんな弾き方がいいの?
それでは、曲の理解も深まったところで、具体的な弾き方のコツを3つご紹介します。今回は、全体で気を付けた方がよいところをとりあげました。
指揮者をみる
合唱曲の伴奏は、「始め」のタイミングから始まります。指揮者が腕を振り上げるタイミングで、自分も息を吸って始めると一音目からテンポにはまった演奏ができるでしょう。
合唱曲の伴奏をするには、基本的には、暗譜をおすすめしますが、緊張してとんでしまったりすることを防ぐために、楽譜をおいておくこともあるでしょうし、楽譜を見ながら演奏する人もいるかもしれません。
クラシックでは、譜めくりの人がいるのですが、合唱となるとそこまでの人員がいないので、楽譜をめくらなくてもよいよう、テープ等で長い一枚の紙に繋げて最初から最後まで見えるようにするとよいでしょう。
そのようなときも合唱構成部Bの始め、中盤(“心のダム”の音楽記号)、終わりのテンポの変化の部分を中心に、テンポが変化する部分は必ず指揮者をみて合わせるようにしましょう。
また、可能であれば、ピアノの独奏部から歌へ引き継がれる部分もアイコンタクトができるとなおよいと思います。
どんなに小さな音でも聴こえるように
この曲は、基本的に「なぜだろう」という「気持ち」を表現します。そのため、語り掛けるような歌い方を合唱者がすると思うので、ピアノはその雰囲気にのまれすぎないよう注意することが大切です。
筆者がよく、音楽の先生に指摘された部分は、構成部Bでの“新芽”の部分ですが、合唱する歌い手が入るテンポをカウントできるようピアノの音はなるべく聴こえたほうがよいです。
特に、本番は、体育館やホールといった広い場所です。
細くではなく、小さくとも密度のつまった音にしましょう。
弱拍から始まる
この曲の特徴としてほとんどの出だしが弱拍であることが言えます。いわゆるアウフタクトというものでして、「弱い」という言葉にだまされて小さく始めることは望ましくありません。
この「春に」という曲は、春の生命のエネルギーを表現しています。その主題にあうように、次へ向かう推進力が必要とされます。
それが、アウフタクトとして表現されているのではないのでしょうか。
だからこそ、この「弱拍」こそ、意思をもつべきであり、歩んでいく強さを表現してほしいと思います。
合唱の伴奏は、責任のいる演奏です。しかしながら、確実に、思い出に残る演奏になることでしょう。ぜひ、やりがいのある演奏に、挑戦してみてくださいね♪