ブルグミュラーというと「乗馬」や「アラベスク」が入っている「25の練習曲」Op.100をイメージされる方がほとんどだと思います。
彼の作品はそれだけではなく、「18の練習曲」Op.109と「12の練習曲」Op.104があります。この他にも「25の練習曲」の前の導入期に学ぶことができる3巻の曲集も存在するようです。
私はブルグミュラーが導入期の曲集を書いていたことを今回初めて知りました。実際に楽譜を見たことはないのですが、ブルグミュラーが導入期に何を学ばせようと考えたのか知りたいので、中身を見てみたいです!
ブルグミュラーの作品はそれ程難しい曲というわけではないのに、弾き応え、聴き応えがある作品が多いように思います。
ブルグミュラーに挑戦される方達はきっと「今の自分には弾くのは少し難しいけど、頑張って練習すれば弾けそうだな」と感じるのではないでしょうか。
彼の作品は発表会などでもよく弾かれていますよね。私も発表会で弾く曲として生徒さん達に選びます。以前に発表会で弾く曲についての記事を書いたのですが、私が考える発表会で弾く曲の条件にぴったり当てはまるので選ぶことがあります。
多くの人が学ぶ「25の練習曲」についてはすでに書きましたので、今回は「18の練習曲」について書いていきたいと思います。
■ 目次
「25の練習曲」と「18の練習曲」の違い
以前の記事でも説明していますが、「25の練習曲」は小さな手でも弾けるように運指や構成なども考えて作られています。つまり、「25の練習曲」は小さな子供もでも弾けるようなやさしい曲を集めていますよということだと思います。「18の練習曲」はというと「25の練習曲」の次に弾く曲集として考えられていたようです。
何のつながりもない別の曲集として出版されていますが、実は「25の練習曲」、「18の練習曲」、「12の練習曲」の3つの曲集は「25の練習曲」は第1巻、「18の練習曲」は第2巻、「12の練習曲」は第3巻になるように想定して書かれたもののようです。
確かに「25の練習曲」よりも「18の練習曲」、「18の練習曲」よりも「12の練習曲」の方が難しくなっているのが楽譜を見ただけでわかります。
「25の練習曲」と「18の練習曲」では共通している点が2つあります。まず1つめはタイトルがついているということ、2つめは曲の長さが長いものでも2ページまでということです。
調号についてはどの曲集も4つまで♭または♯がつくので、これは3つの曲集の共通点と言えると思います。
「25の練習曲」と「18の練習曲」の違いは「18の練習曲」の方が曲の中でテンポを変える指示が多く出て来ることだと思います。
「25の練習曲」の方にもriten.とrall.は出てきていますが、「18の練習曲」の方がより多く出てきます。曲によってはaccelerandoの指示が出てくる曲もありますし、13曲目の大雷雨ではCodaの部分でpiù lentoになっています。
「18の練習曲」では一定のテンポというのではなく、「25の練習曲」よりももっと音楽に揺らぎがあり、表現することを求められているのではないかなと私は思います。
「18の練習曲」の難易度
この曲集の難易度は「25の練習曲」が終った後に弾くというのは間違いないのですが、「乗馬」の後にすぐ弾けるのかというとそうでもないように思います。
この曲集はどこにメロディーがあってどの部分を目立たせるべきなのかということを「25の練習曲」よりももっとしっかりと見極める必要があると思います。
メロディーを際立たせるような弾き方をするには指をコントロールすることが必要です。粒をそろえて弾くというだけでなく、打鍵のスピードを指1本1本が上手く加減し、調整していかなくてはいけません。
このような弾き方に挑戦できるようになるには、ソナチネやバッハのインヴェンションやシンフォニアなどを少し経験してからの方が素敵に弾けるのではないかと思います。
ソナチネに進んで何曲かこなしていた生徒さんに「18の練習曲」の中の曲を発表会で弾く曲として選んだことがあります。その生徒さんはそれ程無理することなく弾くことができました。曲想もつけることができたので、そのくらいのレベルになってから弾くのが良いのかなと私は感じています。
「18の練習曲」の難易度順
この曲集の18曲にはそれ程難易度に差がないように思いますが、私なりの難易度順をつけてみましたので参考にしてみて下さい。★ 1「内緒話(Confidence)」
2「真珠(Les perles)」
3「家路につく牧童(Le retour du pâtre)」
7「子守歌(Berceuse)」
★★ 4「ボヘミアン(Les bohémiens)」
6「陽気な女(L’enjouée)」
8「アジタート(Agitato)」
★★★ 5「泉(La source)」
13「大雷雨(L’orage)」
14「ゴンドラの船頭歌(Refrain du gondolier)」
15「空気の精(Les sylphes)」
16「わかれ(La séparation)」
★★★★ 9「朝の鐘(La cloche des matines)」
10「すばやい動き(La vélocité)」
11「セレナード(La sérénade)」
12「森での目ざめ(Le réveil dans les bois)」
17「マーチ(La marche)」
★★★★★ 18「つむぎ歌(La fileuse)」
この曲集の中で勉強になるなと私が感じている曲は1「内緒話」、5「泉」、8「アジタート」、9「朝の鐘」、13「大雷雨」、14「ゴンドラの船頭歌」、16「わかれ」の7曲です。
9「朝の鐘」、13「大雷雨」、14「ゴンドラの船頭歌」は発表会で弾く曲として選んだことがあります。「大雷雨」には次の曲と合わせて1つとしても考えてもよいと楽譜に書いてあるのでセットにして選んだことがあります。(個人的には「朝の鐘」と「大雷雨」をセットにするというのも良い組み合わせだなと思ったのでこの組み合わせにしたこともあります。)
「18の練習曲」おすすめの7曲を解説
最後におすすめの7曲を少し解説していきたいと思います。1「内緒話」
この曲は右手の外声と内声を弾き分けることが大切です。上向きになっている4分音符は1か所以外5か4の指で弾くことになります。
右手だけゆっくり練習して弾き分けられるように練習して下さいね。
5「泉」
この曲は内声にメロディーが隠れています。右手の8分音符が書かれているところがメロディーになります。弾くのは「内緒話」よりもさらに難しいのではないかなと思います。
最初はメロディーラインをオーバーに出してもいいのでゆっくり弾き分ける練習をしてみて下さい。
8「アジタート」
楽譜を見ただけではメロディーラインがよくわからないかもしれませんが、演奏を聴いてみるとどうでしょうか?最初の2拍までは前奏で3拍目から1番上の音が目立って聴こえますよね!これがメロディーラインです。
メロディーラインだけ抜き出して練習してみましょう。他の部分は音をひかえて弾かなくてはいけません。左手は割とひかえられると思うのですが、右手の1の指はなかなかひかえるのが難しいです。
上から落とすと大きな音が出てしまい重くなってしまうので、上から落とさないでそばからそっと弾くように心がけましょう。
9「朝の鐘」
(2:54から再生されます)Asdurの曲なので♭が4つつきます。調になれないと譜読みが大変かもしれません。スケールの練習やカデンツの練習をして調の感覚をまずは養いましょう。
この曲は交差をくりかえしながら進んでいきます。左手はバスの音を弾いた後すぐに交差してEsの音を何度も弾きます。このEsの音が鐘をイメージしているのだと思います。
この鐘をイメージしたEsの音は攻撃的に弾かない方が素敵だと思いますので、交差したあとに急いで飛びついて弾くのではなく、ちゃんと準備してから弾くように注意して下さい。
13「大雷雨」
(8:21から再生されます)弾く人によってイメージがかなり違いますね。最初の方の動画の演奏はメロディーラインがとても際立っていて、だんだん風が強くなったり雷が激しくなったりというように感じられますが、もう1つの動画の方は、最初から最後までずっと荒々しい印象を受けます。
どちらも素敵な演奏だと私は思います。自分がこの曲からどのようなイメージを持つのかをよく感じて弾いてみて下さいね。
14「ゴンドラの船頭歌」
この曲は大雷雨とは全く逆の穏やかな曲です。8分の6拍子をよく感じてよく歌って弾いて下さい。練習のときは実際に声を出して歌いながら弾くと、どこを盛り上げたらいいのかがきっとわかるはずです。
16「わかれ」
楽譜からもわかるように左手がメロディーとなる曲です。左手がメインとなって進む曲はそれほど多くはないので勉強になると思います。
ただ弾くのではなく左手も右手と同じように曲想をつけられるようにしてみましょう。どこを膨らませて弾けばいいのかはクレッシェンドやデクレッシェンドが書かれているのでわかると思います。
クレッシェンドやデクレッシェンドはただ大きく、または小さくすればいいというわけではなく、気持ちが高まっていったり、沈んでいったりという意味だと考えて下さいね。
今回は「18の練習曲」について書いて来ましたが、いかがだったでしょう?お好きな曲はありましたか?「25の練習曲」だけでなく「18の練習曲」にも是非挑戦してみて下さいね!
「18の練習曲」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1880年にリトルフ社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。
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